皆さんクリスマスおめでとうございます。クリスマスにはどうしておめでとうございますと言うのでしょうか。それはクリスマスこそが救い主がお生まれ下った日として、人々が待ち望む日であるからです。
「神はその独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」と聖書には記されています。このクリスマスこそは神さまが私たちに最高のプレゼントであるイエスさまを下さった日であります。そしてクリスマスはその最高のプレゼントであるイエスさまを私たちに与えて下さった神さまに、私たちの方がプレゼントをする日なのであります。
最初にお読みいただいた聖書の箇所にはクリスマスにイエスさまのところに贈り物をもってきた人たちのことが記されています。彼らは東方の国の占星術の学者たちでした。彼らは日々星を眺め星の研究に勤しんだ人たちでした。彼らはどうも決して豊かな人たちではなかったようであります。その彼らがどのようにして手に入れたのか黄金、乳香、没薬を贈り物としてイエスさまに献げました。黄金は文字通り金のこと、乳香とはある種の香料であり、没薬はミルラという木から取れる乳液で薬や香料として用いられたものでした。いずれもとても高価なもので、黄金は王に、乳香は神に、没薬は死につく者に献げられるものとされてきました。彼らはその宝物を救い主としてお生まれになったイエスの誕生のお祝いとしてプレゼントしたのです。
彼らを通してユダヤ人の王が生まれたことを知らされたヘロデ王は、そのことに不安を抱きました。自分の王としての立場が脅かされるとでも思ったのでしょう。その学者たちが自分の所に帰ってこないと知ると、この王はベツレヘム一隊にいた二歳以下の男の子を残らず殺しました。学者たちと違って、彼はイエスさまにプレゼントを献げるどころがそのような残虐な行為をしました。
昨日もお話させていただいたことですが、このイエスさまの誕生の場面に馳せ参じたのは、占星術の学者たちとルカによる福音書に記されている羊飼いだけでした。それは学者たちには星の知らせが、そして羊飼いには天使がその誕生を告げたからであります。では、他の人々は救い主の誕生を知るすべは無かったのでしょうか。今日の聖書の箇所を見るとどうもそうではなかったことが分かります。ヘロデ王は今も見ましたように学者たちから王の誕生を知らされました。さらに3節を見ると、エルサレムの人々も皆、同様であったと書かれています。エルサレムの人々も救い主の誕生を知らされていたのです。しかし人々は学者たちや羊飼いのようにその神さまの招きに応えなかったのです。
シリアに伝わる一つの伝説があります。クリスマスツリーに飾る金や銀の糸はこの伝説から生まれたのではないかとも言われています。
ベツレヘムに新しい王さまが誕生したと聞かされて、ヘロデ王は大変不安を覚えました。ヘロデ王がはベツレヘムとその付近とにいる二歳以下の男の子をすべて殺せ」と命じました。ところがその大惨劇がくり広げられる前に主の天使が夢でヨセフに現われ、エジプトに逃げるように告げたのです。ヨセフとマリアは夜の間にエジプトに向けて逃げました。
この伝説はそこから始まります。荒れ野の真ん中でとっぷり日がくれてしまいました。ヨセフはやっとのことで、小さなほら穴を見つけました。三人はその中で一夜を明かすことにしました。そこに一匹のくもがいました。くもは
<砂漠の夜はとても冷え込む、このままでは赤ちゃんのイエスさまが風邪を引いて死んでしまう。何とかしなくっちゃ>
くもは大急ぎでほら穴の入り口に巣をかけ始めました。一所懸命に目一杯大きな巣をかけました。そして入り口全体をふさぐように大きな巣を入り口に張り巡らしました。何時間もがんばって、やがて見事な巣が入り口に出来上がりました。くもは言いました。
「これでよし、こうしておけば、冷たい風はほら穴には入ってこないだろうから大丈夫」
しかしくもの巣なんかで冷たい風を防げるはずがありません。でもくもはイエスさまのために精一杯のことをしました。マリアもヨセフもそんなことは知りません。
真夜中近くのことです。静けさを破って、突然遠くから馬のやって来る音と兵隊の歩く足音が聞こえるではありませんか。
「パカパカパカパカ、ザクザクザクザク」
ヨセフとマリアはその音に目をさましました。駆け足で近づいてくる馬の音はますます大きくなってきました。
「ヘロデの軍隊に違いない」「まあ、どうしましょう」
マリアはすやすや眠っているイエスさまを見つめました。そしてそっと毛布をかけながら、「もしこの子が泣き声をあげたら」 二人は息を殺して耳をすませました。隊長が兵隊に命令しています。
「おい、あそこにほら穴があるぞ、お前あのほら穴を調べて来い」
<ああもう駄目だ、これで見つかれば、私たちは殺されてしまう>
マリアとヨセフはしっかり抱き合い、必死で心の中で祈りました。
<神さま、どうか助けてください>
「ザク、ザク、ザク、ザク」
兵隊の靴音が近づいてきます。そしてほら穴の入り口で止まりました。
<神さま、助けてください>
短い時間でしたが、二人には凍りついた永遠のように感じられました。
二秒、五秒、十秒。兵隊は入り口に立ったままです。入ってくる様子はありません。その時、遠くから声が聞こえました。
「おい、どうしたんだ、なぜ中に入って調べないのだ」
「隊長、入り口に大きなくもの巣があります。連中がここにいるなら、こんなくもの巣は破れているはずです」
「それはそうだな、よし他を探そう」
パカパカ、ザクザク、パカパカ、ザクザク。ひずめの音をさせて一隊は荒れ野のかなたに消えていきました。
ほら穴の入り口には、夜霧をいっぱいに浴びたくもの巣が柔らかな月の光に照らし出されて輝いていました。
くもは彼に出来る精一杯のプレゼントをイエスさまに献げました。それは常識的に考えるならば何の役にも立たないもののように思えます。しかしその小さなくものイエスさまへのプレゼントを神さまはお用いになることをこの伝説は教えてくれます。わたしたちはイエスさまに何をプレゼントしましょうか。
お祈りをいたします。少し黙想の時を持てればと思います。
|