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<春を迎えて思うこと> ひなまつり音楽会を終え、気分も陽気も益々春めいてきました。誰もがひとつ上のクラスを意識し、そのクラスのお兄さんお姉さんに憧れのまなざしを向け、大きくなることの喜び、進級することへの希望に胸躍らせています。最近よくももの部屋に遊びに来るようになったばら組さん。音楽会が終わったと言うのにまだ『にじうお』達の塗り絵に勤しんでいるもも女子の姿を見つけ、「私もやりたい!」とおねだりです。塗り絵と水彩絵の具を出してあげればうれしそうにきれいに上手に色を塗ってゆきます。そうやって一足早く、もも組のお姉さん気分に浸って喜んでいるばらの女の子達を見つめながら、「そういう季節なんだよな」とこの子達のうれしい春を感じている今日この頃です。 僕のもも組、朝の準備はもう子ども達にまかせっきりにしておいても勝手にやってくれるので(細かくチェックすれば抜けはいっぱいあるでしょうが)、朝イチから男の子達と園庭に飛び出して、サッカーボールを追って駆け出します。思えば一年前、「最後の一人を迎え入れ、準備が一緒に終わるまで僕はここでこの子達を待っているんだ」と部屋に座って子ども達を待ち続けていたこと、そんなことが懐かしく思い出されます。その意気込みというか思い入れが想いも足腰も守備モードにシフトさせ、座って子ども達を見ていることが多くなっていたようなそんな気がします。『園庭の石段…』なんて気取って書いてきましたが、この一年、ジーンズのおしりが擦り切れて破れることが多くなったのはきっとそのせいだと思うのです。 クラスの子ども達が手放しでも自分たちで遊んでくれるようになったこと、この秋にジーンズを新調し「こいつには石段に座り込んで穴なんか空けたりしないぞ!」と決意したこと、お部屋のレゴ小僧だったすみれ男子が果敢に勝負を挑んできてくれるようになったこと、もも男子が熱血スポコン少年に成長してくれたこと、いろいろかれこれあいまって、朝からみんなでボールを追いかけ走り回る、こんな素敵な毎日を今僕等は過ごしています。 負けを感じるといつのまにか一人二人とゲームを放棄し逃げ出していたすみれ・ももの男の子達。そんな彼らが近頃では格段にアップした体力と負けん気でしぶとく何度も何度も勝負を僕に挑んできます。そのディフェンス力とチームワークは相当に手ごわいもの。2人3人とかわしながらゴール前までドリブルで持って行ってもふと目を上げればゴール枠は更に三重四重の子ども達に守られてシュートコースが見つかりません。足元を抜こうとシュートしても7、8本はある子ども達の足に阻まれ(奇数ってことはないはずですが)、クリアーされたボールを拾った子が敵陣ゴールまでドリブルし、きれいにゴールを決めてゆきます。大喜びの子ども達。憎らしいほどに強くなってきました。こうして『勝った負けた』を繰り返しながら僕らの勝負は今日も続いています。この輪の中に今のばらの男の子が入ってくるのはまた半年ほど後のことでしょうか。今はまだでもきっと来る、子ども達の想いが満ちる時を楽しみに待っていたいと思います。 今年の卒園記念にすみれ組のお母さん達から幼稚園に竹馬が贈られました。「もらいっぱなしでは…」と言うので残りわずかな時間でマスターできるようにとすみれの子達は毎日がんばって練習しています。使用説明書も攻略本もないただの竹馬。子ども達は自分のセンスと感覚を頼りにコツを探しながら模索しています。でもそれこそが自分で出来るようになることの基本。どうすれば出来るようになるか、誰に聞くわけでもなく、教えてもらうわけでもなく、ただひたすら自分の身体と感覚に問い続けるのです。それがこの子達の自信となり、これから見知らぬものに立ち向かってゆく際、「自分はがんばればできるんだ」という心の糧にきっとなってくれるのだと信じています。こうして一週間もやってみれば早速上手に乗れるようになった子が何人もありました。この子達は理屈をうだうだ言う前に、とにかくやってやり遂げる自分の『突破力』をきっと今頃感じていることと思います。 ある日の放課後、ピアノを終えた子ども達を迎えに来たお母さん達がその竹馬に挑戦している姿を見かけました。「きゃーきゃー」言いながら楽しそうに挑戦しているお母さん達、とてもまぶしく見えました。こうでなくっちゃお母さん。「竹馬なんて子どもの遊び。私達はそんなもの、おほほほ…でザマス」なんてお母さんより何十倍も素敵です。大人が一生懸命夢中になってやって見せること、それは子ども達にとってなにより励みになるのです。冷たい目で「はい、できるまで後30回!」なんて言うお母さんより、一緒に楽しんでやってくれるお母さんに、一生懸命やってくれるお母さんに子ども達は信頼と愛情を感じるものなのです。 これは子育てもきっと同じ。日土幼稚園の保育はお母さん達に色々ご足労願い、手間暇かけて子ども達と一緒にやってもらうことが多いと思います。でも幼稚園は一時間何百円で預かってもらうだけのペットホテルではないのです。子ども達が心と身体を成長させ、自分と言うものを作り上げてゆく大事な大事な三年間。教師の投げかけ、子ども自身のがんばり、そしてお家の方々の関わりと、全てがこの子達には必要なことなのです。この子達にかけた想いの数だけ、手数の分だけ、きっと素敵な子どもに育ってくれるはず。そのことを信じて私達は今日も子ども達に向き合っています。子ども達から色々なことを学びながら、自分自身も成長させてもらいながら。そんなうれしいプレゼントを子ども達から一杯一杯もらいながら。こんな子育ての喜びを味わいながら、これからも私たちと共に歩んでいってください。 |