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<梅雨明けて> 今年の梅雨は駆け足でやってきましたが、去り行くときもやはり駆け足でした。梅雨が明けたとたんに上天気の連続の毎日。行事との兼ね合いでお天気なのにプールができない日もあって、子ども達も恨めしそうに畳まれたままのプールを見つめていました。でもやっぱり夏はこれくらい暑くないと。プールができなければやっぱりこれです、ホースシャワーにバケツ水撒き。朝からびじょびじょになるとお着替えのストックも読めなくなるので子ども達に、「お昼から水撒きするからね、もうちょっと待っててね」と言うとうれしそうにうなづくけなげな子ども達でした。 「お昼から水遊び!」とあっていつになくお弁当のペースも速かった子ども達。お外に裸足で飛び出せば真夏の水遊びの開始です。蛇口にホースをつないで園庭に水を撒き始めると子ども達が集ってきます。まずはひんやり肌に心地良いミストをプレゼント。薄い霧のしぶきを受けて子ども達は大喜びです。僕も頭に腕に水をかけながら涼を取ります。頭を前に突き出して水を被ればシャツや短パンは濡れません。頭を持ち上げると髪から滴り落ちる雫が適度にシャツを湿らせいい気持ち。こんな技も子ども達との遊びの中で編み出した水遊びの極意です。もっとも汗や水で壊れてしまうお化粧を気にしなくていい男だからできることなのかも知れませんが。そんなこんなで真夏の暑さを誰よりも楽しんでいたのは僕のようです。 そんな僕に向ってくるのが水小僧のばら男子。「やったなー」と水を満々とたたえたバケツを抱えて駆けてきます。そんなものかけられた日にはたまったものではありません。こちらもさっさか逃げ出します。すると自分の抱えたバケツからばちゃばちゃ水がこぼれ出し、ズボンもシャツもびっしゃんこ。まさしく自爆モードです。その自分の姿に気付き男の子、「やったなー!」とぷんぷんでやってくるのですが、「やってない、やってない!自分でやったんじゃん!」と言っても聞こえません。その子は自分のバケツの水がなくなるまで、自分の全身をくまなくその水が濡らし終わるまで僕のことを追いかけて走りまわっていました。こんな勘違い君に笑わされながら、水撒きはまだまだ続きます。 外に出た時にたらいに井戸水をため始めたのですが、その水も30分ほどでいっぱいにたまります。裏の水槽にためられた山の水がその高低差を利用し、ホースを通って園庭の方へ回ってくるのです。だからこれは魔法のホース。蛇口も何もないのに水がとうとうと流れてきます。そのホースの先端を水槽の水面より高い位置まで持ち上げてやれば水はぴたっと止まります。子ども達はこの魔法のホースをいつも不思議そうに見つめています。たらい一杯に水がたまれば今度はバケツ水撒きの開始です。水がきれいに撒かれるようにバケツを横に振りながら投げ上げます。投げられた水は左右3mくらいに広がって散っていきます。これも遊びの中で体得した技のひとつ。昔、蒸気機関車の釜焚きさんはあの狭い投入口から投げ入れた石炭が中できれいにばらけて撒けるようになるまで修業をしたそうです。そんな話を思い出しながら、自分の投げた水しぶきを見つめ、「今のは甘かったかな」なんて職人気取り。子ども達に薄くかけてやるときはこの左右撒き、しつこく挑発してくる子には「お望みとあらば」と直撃の縦撒き攻撃とバケツひとつでいろいろ技を駆使し、子ども達と遊んでいます。子ども達も「かけて!かけて!」とか「かっけてみろー!」とか言ってリクエストするくせにお家に帰ると「しん先生にかけられた!」なんて人聞きの悪いことを笑いながら話してくれているそうです。いずれにしても毎日びっちゃんこのお着替えを持って帰る子ども達。お母さん方には濡れた着替えのお洗濯、お手数おかけしました。 もうひとつ、この夏の話題と言えばすみれ組のお泊り保育。あの子達もついにこのお泊り保育の季節を迎えてしまいました。週の初めからなんとなく表情に固さが感じられたすみれさん達でしたが、がんばってこの2日間を過ごしました。みんなで行ったお買い物、やきそば作りにキャンプファイアー、それぞれがそれぞれなりにがんばっていたようです。でも時々子ども達の顔をふと見ると、心なしかお目目うるうるに見えたのは僕の思い過ごしでしょうか。たとえお家が恋しくなったのだとしてもそれを口に出して言わなかったこの子達、泣き言を言わなかったこの子達に敬意を表します。いつも口ばっかでやいのやいの言っていたこの子達が、その言葉をぐっと飲み込んで最後までがんばってくれました。それが一番の成長ではないでしょうか。自分のことがちゃんとできるこの子達、頭がまわって大人を口で言い負かそうとさえするこの子達にいつもこちらも口でやり返しています。言い負かされてもまだよもよも言っていたこの子達。でも口先だけではない、態度で示すことの大切さを身を持って感じてくれたことがこの子達にとって一番の収穫だったと思うのです。淋しいけれど淋しいと言わない、帰りたいけれど帰りたいと言わない、がんばるところでは何も言わずにがんばると言うことを実践してくれたこと、本当にうれしく思います。ここ一番では意地も見栄も張らなければ、ただの意気地なしで終わってしまいます。そこでがんばれたからこそみんな「お泊り保育楽しかった!」と言えたのだと思うのです。一番最後のプログラムが終わった時、毎年先生たちが聞くいじわる質問。「もう一日泊まりたい人?」、毎年勢いに任せて「はーい!」と言う子が何人もいるのですが今年は一人もいませんでした。「帰りたい人?」の質問に全員が「はーい!」、それだけみんながんばったお泊り保育でした。 梅雨明け一週間でもうこんなにいろんな冒険がありました。いよいよやってくる夏休み、この子達にはどんな冒険が待っているのでしょう。一息つくところでは一息つく、がんばるところではまたがんばる。そんな冒険を繰り重ね、もうひとつたくましくなった顔をまた二学期見せてください。ではよい夏休みを。 |