園庭の石段からみた情景〜園だより1月号より〜 2010.1.31
 <ひきがたってみて分かったこと>
 一月の子育て講座としてやらしていただいた『ひきがたり〜追加公演』でしたが十六名ものお母さん達が聞きに来てくださったこと、本当にうれしいことでした。何名かのお母さん達が「楽しみにしてます」と応援してくださったのでその前評判から「5人くらいは来てくれるかな」と会場作りをしていたのですが、お帰りの時間を終えてお残りの子ども達がホールにやってくると、「イスがもう5つくらい要るかな?」と拡張を初め、その場を走り回る子ども達を見た園長にレイアウトの変更を指示されてと、ばたばたしてしまった設営に冷や汗の始まりとなりました。
 でもこのセッティングのおかげで常に子ども達のざわめきやいぶきを感じながら『ひきがたり』が行われ、「子どもについて、自分自身について考えてみましょう」という子育て講座のテーマを良く良く体現できたように思うのです。子どもがいない静かな部屋で子ども達について、子どもに向き合う自分達について考えてみても、何か現実から逃避したもののようになったのではないか、終わってみてからそう感じました。私達の日々にはいつも子ども達が一緒にいます。その中でかわいい時もうるさい時も、うれしいときにも腹立たしい時にも、子どもの声を感じながら子ども達の想いを感じながら、向き合い受け止めてあげることの大切さを教えてくれた子ども達のざわめきでした。歌にあわせて小さい身体でぴんこぴんこリズムを取っているひよこちゃんの姿をうれしく感じたり、マイクを通して聞こえているはずの僕の声と同等のボリュームで話し遊んでいる子ども達のパワーに圧倒されながら対抗してこちらも声を張り上げてみたりと、その場の子ども達を感じることができたからこその臨場感に溢れた『LIVEひきがたり』となりました。それにしてもスピーカーの真下に座り込んで楽しそうに遊び続ける子どもの集中力とはすごいもの。日頃遊んでいる子どもに私達が呼びかけても聞こえないわけです。本当に色んなことを子ども達から教わった今回の『ひきがたり』でした。

 前回のひきがたりのMCでは原稿丸読みというスタイル、これは小田和正がTVでよくやるものでそのイメージでやったのですが、身内から「原稿なしでできたらいいんじゃないの」なんて無責任な言葉を投げかけられ、今回は原稿なしで語りをすることにしました。そもそもしゃべり言葉が苦手なことを重々自負している僕にとってかなりの覚悟がいりましたが、でもそうなりたいという想いは自分の中にも多大にありました。自分のステップアップのためにも挑んだ即興トークでした。
 原稿なしで話していると何を話していたのだか分からなくなってしまう自分への保険としてICレコーダで録音していたのですが、予想通り言葉尻だけを捉えて聞いているとなんだかやっぱり分からない。面白かったのが歌った後の話し出しには「結局ですね・・・」が口癖のように多投され、最後は「あれなんですけど・・・」としゃべっている。この録音を原稿に起こしてそれを読んだら「あれってなんだ!」と怒られそうなトークです。でもその場にいたお母さん達はその前の歌があって、その流れで話が始まって、その場の雰囲気から「結論として言いたいことはこんなことよね」と優しいうなずきで僕を励ましてくれていました。話のテーマでもあったのですが、「何も物を言わないものからメッセージを感じることのできる柔らかな感性をいつまでも持っていたいですね」という想いは伝わったように思います。そしてそれを踏まえた上で話を聞いてもらったなら、僕はしゃべってはいるのですが、その言葉のあいまいさの中にお母さん達が見つける『自分にとっての答え』が自分の心を支えうるものとなるということを感じていただけたのではないでしょうか。それが頼りない話し手の言葉の役割だったのかもしれません。だから『子育て講座』とは言いながら「あなた達の子育てはこうあるべきです」なんてカリスマ性は僕にはなく、僕に出来るのは「こんな歌の中に歌われていること、どう感じます?」と問いかけることでした。そんな時間と空間の中で一緒に感じ一緒に考え、なんかみんなでみんなの心を感じあって思いやって、ほの温かなほんわかした気分で会が終わりました。終りを待ちわびた子ども達がお母さんのところに飛んできます。それを抱きしめるお母さんのうれしそうな顔、園庭に飛び出しいつまでも遊んでいる子ども達をうれしそうに見つめているお母さん達の姿が印象的でした。

 そんな僕のつたない言葉と歌、会場で遊んでいる子ども達、そして聞きに来てくれたお母さん達の想いを上手に上手に紡ぎあげてくださったのが神様の御心。僕がイメージしていたものをはるかに超えた素晴しい『子育て講座』にしてくださいました。これをあの雪の日、雪ウサギを見つめ「きっと神様がプレゼントしてくれたんよね」と言ってくれた女の子と同じような心で、みなさんと一緒に喜びたいと思うのです。聞きに来てくださったお母さん方、一緒にいてくれた子ども達、そして守り導いてくださった神様、本当にありがとうございました。
 今回の音源を編集してCDにしたものを繰り返し聞きながらあの楽しかった時間を振り返りながらこの文章を書いています。録音を聞いてみて、子ども達の声の大きさに改めて驚いたものでした。演者として歌い話している僕にはこれほどまでに大きなざわめきとは感じられなかったのですが、この状況の中で一生懸命聞いてくださったお母さん達、本当に辛抱強く聞いてくださったと頭が下がる思いです。またピックと弦の相性が悪くギターの音に混じる金切り音も不快だったことでしょう。いろいろ不備があったのですがそれでも全部終わった時に「今日は楽しかったです」と言ってくださったお母さん方に感謝しています。僕も楽しかった。色んなことをみんなで学び感じあえた素敵な『ひきがたり〜追加公演』でした。


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