園庭の石段からみた情景〜11月の書き下ろし4〜 2011.11.26
<ツィスト&シャウト>
 冷たい木枯らしに身をすくめながら、園庭の陽だまりを探しては暖を取るような日々が続いています。めっきり寒くなりました。一方の子ども達はと言えば『お外遊びOK』となると一目散に飛び出して行こうとするので、そこへ「ジャンバーと帽子!」と声をかければみんな急ブレーキのUターン。やりたい放題の『ばら・たん組』でしたが、僕の言葉を無視して強行突破しようとする『わからんちん』もほとんどいなくなりました。みんな『自分のなすべきこと』、『幼稚園でのお約束』が段々と理解出来るようになってきたことが感じられ、その成長の姿をうれしく見つめている今日この頃です。
 毎年秋には始めていたお片づけ前のマラソン。今年は誰もが言い出しそびれてここまで来てしまったのですが、この冬の始まりを感じさせる頃になって「マラソンしないの?」と言い出したのはなんと潤子先生でした。例年、億劫げに走っているように見えたものですが、僕らの体たらくにきっと奮起して見せてくれたのでしょう。『マラソン集合!』を告げるハム太郎のCDが高らかに鳴り始めると『お部屋小僧』を引き連れてお外に飛び出し、マラソンのテーマ曲『ミッキーマウスマーチ』が始まればたんぽぽさんの手を引きながら一緒に走り出す潤子先生。途中ぶつかったりこけたりの子ども達のお世話をしながら、毎回一曲終わるまでちゃんと僕らと一緒に走りきるのです。昔から「運動は得意だった」と自慢して今でも跳び箱を跳んで見せたりもするのですが、見ている方が「やめといたら」と気遣ってしまうお年頃。気だけ若くても身体は年相応ですから。しかしこの歳になっても子ども達と一緒に走ろうと言う気になれるのはたいしたものです。人間と言うもの、自分を動かすものはやはりモチベーションだと言うことなのでしょう。

 僕らの『ばら・たん組』、今週も元気一杯でした。あのガンバルマンの女の子、縄跳びの練度をさらに高めて『一人縄跳び』でも数十回跳べるようになりました。そして今では『後ろ跳び』を軽々と跳んで、「見て!見て!」と嬉しそうにPR。誰も教えた訳でもないのに本当にたいしたものです。それを見ていたクラスメイトの女の子達。「自分達も彼女に続け!」とばかりに一人縄跳びに挑戦し始めました。この子達の向上心と言うか、自己実現のためのモチベーションには感心してしまいます。やはり目の前に身近なお手本がいて、その子が出来ない所から段々と出来るようになってゆく姿を目の当たりにしたならば、彼女達には「きっと自分にも出来る!」と思えるのでしょう。そう、自分を信じて頑張れるこの子達、『自分を伸ばしてゆく才能』をたっぷり持っているのです。ついこの間まで『涙ちゃん』だったのに自分の可能性を信じられるようになったことで彼女達は変わって来たのです。『自分で出来る』、『自分は出来る!』。そう、もともと真面目でがんばりやさんのこの子達。想いを強く持てたなら、自分を強く持てたなら、これからもきっと前に進んでゆけるはず。やり遂げたいと願う想い、それが彼女達を突き動かしている原動力・モチベーションとなって自分自身を支えているのです。
 
 クリスマスに向けてクラスでは合奏の練習を始めました。カスタネットと鈴のアンサンブルで『きよしこのよる』に挑戦しています。三拍子のワルツなのですが、潤子先生の編曲は休符から始まる「ん!ちゃん!ちゃん!」。この『お休み』から始まるリズム取りと言うものがなかなかどうして難しい。リズム感のいい最近の子ども達、リズムに合わせて叩くのは得意なのですが三拍子のどこかがお休みとなると急にわちゃわちゃになってしまいます。僕らは概念で『三拍子』と言うものを捉えています。『三拍の繰り返し』と言うお約束を守ることでリズムを刻んでゆくことが出来るのですが、子ども達にしてみればそんなロジック、なかなか分かるものではありません。三拍子を刻みながら「そう!○○ちゃん、上手!」と言われて初めて「あ、これでいいんだな」と理解します。でも何回かやっているうちにまたずれてきて「???」。でも「こうよ!こう!」と言いながら叩いて見せる教師のリズム打ちに再びシンクロしてちゃんと拍子が合った時、僕らが「そう!それそれ!」と肯定してあげたなら、その言葉によってそこにある規則性を自分でつかんでゆくのです。今はまだ練習を始めたばかりなのですが、意外な子にリズム打ちのセンスがあったりして『サプライズ』を楽しませてもらっています。
 この子達にとって『音と印象に残る手振り身振り』が合奏指導には効果的のようです。最初の休符の「うん!」を大げさに空振りさせて、それから「ちゃん!ちゃん!」と叩けば子ども達も愉快な身振りにウケながらニコニコ笑顔で「ちゃん!ちゃん!」と叩きます。なんかずれていたリズムが段々と合ってくるその姿にこっちもちょっとうれしくなってしまいます。鈴の方は「しゃららら〜」と鳴らすのですがその時はビートルズの『ツィスト&シャウト』の「Wooo」のように頭を振りながらしゃらしゃら鳴らして見せればそれに大ウケ子ども達。頭だけ一生懸命振って当の鈴が全然鳴っていない男の子もいたりして笑ってしまうのですが、大いに印象付けは出来たようです。本番でこの子達の『ヘッドバンギング』、見られるでしょうか。

 そんなこんなの一週間でしたが、『モチベーションパワー』に『素敵な見本・お手本と真似て学ぶ学習術』をみんなからお勉強させてもらいました。「こうやって」と言うと「やらんけんね!」とすねくれる子もありますが、楽しそうにやって見せればしっぽを振ってみんなに一緒についてくる。その釣糸を切らないように上手に押したり引いたりやりながら、クリスマスに向けて頑張ってゆきたいと思っています。


戻る