園庭の石段からみた情景〜12月の書き下ろし3〜 2011.12.16
<素敵なコラボレーション>
 いよいよみんなでがんばってきた『ばら・たん組』も2学期の最終週を迎えました。夏休みには不安な想いで新学期の始まりを待っていたお母さん達も、この4ヶ月の道のりを振り返ってみたらなら感慨深いものがあるのではないでしょうか。お母さんと一緒でないと幼稚園の坂が上がれなかった女の子が、今では一番のお姉さんとして潤子先生を助けみんなをリードしてくれています。自分に自信を持てるようになったこの子は何でも自分から立ち向かい、やり遂げる喜びを感じることが出来るようになりました。毎朝、もも組に通勤しては「わたしはももさん!」と言い張っていたたんぽぽさん達が、この頃ではばら組の子達を引き連れて我が物顔で遊んでいます。その境なしの積極性によって時々大喧嘩をしては双方『泣きが入って』なんてこともしょっちゅうですが、転んでもただでは起きないのがさすがなところで自分一人では泣きません。クラスの中のそんなこんなを見つめていれば、彼女達の存在によって覚醒し自信をつけたばらの女の子達、『泣いて笑って喧嘩して』とど根性ガエルの『ひろしとぴょんきち』の間柄のような男の子達、みんなに影響を与えながら自分達も集団の中の『お約束』が守れるようになってきたたんぽぽさんと、この子達みんなが関わり合って影響し合って歩んできた結果の成長をうれしく感じる今日この頃です。

 個性の強いたんぽぽさんと『自分自分』が通って来たあだあだばら男子、もしくは『おりこうちゃん志向』の高いばら女子チームは、なるほど素敵なコラボレーションなのかも知れません。自由気ままなあるたんぽぽちゃん、ふとした拍子に相手の男の子を好きになり、「○○が好き!」と言っては彼の後を追いかけてゆくのですが気移りするのも電光石火。彼女にご指名され、幾ばくもなく振られてしまった男の子は片手で数えきれません。「すき!」と言いながら気に入らなければ言葉は出るし手は出るし、最後は「もういや!」とヒステリー。「もうこっちの方がいやだよな」なんて切ない表情が浮かんでいる彼らに同情さえしてしまいます。それでもやっぱり男って奴は彼女と一緒にいれば楽しいし、「すき!」と言われれば嬉しくいつになく張り切ってしまうもの。自分本位の男の子達が彼女のことを気遣ったり優しくしてあげている姿を見れば、彼女の気ままさを差し引いてもこれも彼らの『いいお勉強』となんだかそんな気にもなってしまいます。「君らもちょっと苦労した方がいいよ」と振り回されているその姿をおかしく笑いながら、彼らにエールを送って応援している人ごとではない僕でありました。
 別のたんぽぽさん、彼女はばらの女の子達との遊びを楽しんでいるのですが、彼女もよくよく相手が変わります。積極的な彼女と『ついてゆく方が好き』なばらさんの組み合わせは最初こそ相性もよく仲良く遊んでいるのですが、そのうち彼女の我の強さに恐れをなして「こわい」とか言ってばらさんの方が引いてしまうのだとか。そんな彼女がある日また新しく見つけたパートナーと一緒に遊んでいた時のこと。何を思ったか二人してアジサイのはっぱをバットで叩きながら大喜びしているところを先生に見咎められ「かわいそうでしょ」とお説教。人にとがめられるとかたくなに「ごめんなさい」が言えなくなってしまう彼女と、普段は一人では絶対そんなことをしないおりこうさんのばらちゃんが、悔し泣きのような表情でふたりして佇んでおりました。おりこうさんの彼女も『あんなこと、やっちゃいたいなぁ!』と言う願望はきっと心の奥底にあったのでしょう。その心のトリガーを外してくれたのが天真爛漫たんぽぽちゃん。今回は結果として叱られちゃいましたが。羽目を外してやりたいことやって、ちょっと叱られちゃいもして、これまた彼女達にとっていい経験だったのではないでしょうか。自分の心を抑え込んでおりこうちゃんを演じ続けるよりも、いろいろやって分かった上で『なりたい自分』になれたなら、彼女も本当の自分に出会えるのではないでしょうか。
 この様に、新しく入ってきたたんぽぽさんのおかげで仲良し固定メンバーで固まりがちだったこのクラスの友達関係が、とてもフレキシブルにそして多面的に展開を見せ、それぞれの成長にお互いの成長に素敵に寄与してくれたことをうれしく見つめています。このばらさんにこのたんぽぽさん、とても素敵な巡り合せでした。

 そんな『ばら・たん組』の子ども達が2学期の最後に見せてくれたクリスマス祝会の舞台での勇姿、いかがだったでしょうか。見栄を張っても背伸びしても、今の僕らにはあれが精一杯。でも彼らなりに普段とは違った緊張感やプレッシャーを感じる中であれだけ頑張ってくれたこと、僕にはそれがうれしかったです。見栄えや出来栄えはまだまだですが、自分達の精一杯を振り絞って歌い演奏してくれた彼らに大きな拍手を贈りたいと思います。「やって!」と言えば「やらんけんねー」なんて言ってた彼らが、本当はしっかりちゃんなのにお母さんの前だとそれが木端微塵に崩壊してしまう彼女達が、今回はちゃんと舞台の上に立って大きな声で歌ってくれました。『人前で自分を出せるようになること』、それが今のこの子達の到達目標。一人よがりでなく、おちゃらけでもない、『人前』と言う環境の中で自分の存在をアピール出来ること、それが今のこの子達にとって何より大事なことなのです。ついこの間まではプレッシャーがあればすぐ泣き出し逃げ出してしまっていたこの子達が、しっかりと自分と言うものと向き合って舞台を楽しんでくれたこと、それは本当にすごいことだと思います。そしてそれが出来るようになったなら、それが心の糧となったなら、この子達は自分の足でどんどん先に歩いて行くようになるでしょう。僕らの想像を軽く遥かに高く高く超えながら。


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