園庭の石段からみた情景〜1月の書き下ろし2〜 2012.1.21
<家族参観狂想曲>
 三学期も2週目を迎え、子ども達の生活にもいつものリズムが戻って来ました。毎朝、毎昼食後、元気にあふれた『ばら・たん組』の子ども達は僕と一緒に誰もいない園庭に飛び出して『めーいっぱい』遊んでいます。寒がりの僕は毎度、耳当て・首巻と五枚もの洋服を着重ねして挑む外遊びなのですが、子ども達は部屋遊びの勢いそのままに薄着で駆け出します。身体の代謝が高いのもあるでしょうが、半分は部屋の体感温度をそのままに外の寒さを感じていない様子。その証拠にしばらく砂場に座り込んだ子達の顔を見て見れば青鼻を垂らして寒々そう。やはりお外の時のジャンバーは必要です。三歳児がこの季節の自由時間に汗をかくほどの運動遊びをすることはまれ。年中、年長ともなればサッカーや鬼ごっこなどの運動遊びで汗ばむこともありますが、年少児の運動遊びは三輪車ツーリングかブランコ程度。初期設定のジャンバーは必須とし、状況に応じて上着を脱がせるようにしています。
 そう言う僕も子どもの頃は寒さに無頓着で、くしゃみをしてもどこ吹く風で遊びまわっていました。そういう時は帰ってからよくよく熱を出したものです。それが経験として理屈として頭で分かるようになった今では、『くしゃみひとつで上着を着て、くしゃみふたつで風邪薬』、とそれでなんとか子ども達の風邪菌の中でもダウンして寝込むことなく過ごせています。理屈では分かるのですが面倒臭かったり忙しかったりと理由をつけては失敗を繰り返し、このことが出来るようになったのは大人になってだいぶ過ぎた『若いと呼ばれなくなった頃』のこと。僕も賢さを身に付けるのにはだいぶ時間がかかりました。そう言う訳で、自身の経験を踏まえた上で子ども達には上着の常用とこまめな脱ぎ着の体温調整を呼びかけています。

 そんな外遊びの中で、最近ようやくその気になり始めた男の子達とのサッカー対決が盛んに行われるようになり、僕も上着を脱ぐほどの運動量を稼ぐことが出来るようになって来ました。サッカーをたらたらやっていてもなかなか温かくならなかったのですが、その『たらたら』も10〜15分も続くとやっと体が温まって来ます。なるほど、フィットネスやエアロビックスの有酸素運動は20分以上継続しないと皮下脂肪が燃え始めないと言われますが、そんな感じを実感しているところです。
 そこに数名ではありますがばら組の子達も交じるようになってきて、うれしい光景を見せてくれています。もっとも「ルールなんかはわかりません!」、両手でボールを抱えてちょこちょこ駆けてゆき、ゴールの中にポーンとほおりこむラグビーサッカー。「手で運んだからだめだよ」言われたなら、なおさら喜び短い脚をフル回転させて『テケテケぽーん』。「きゃーきゃー」言いながら遊んでおりました。もっともラグビー発生のエピソードはこれと全く同じ話で、サッカーの試合をやっている時にどうしてもボールが取れなかった一人の子がおもむろにボールを拾い上げ、ゴールに向かって走ったのだとか。それを見たその場にいた面々が「これは面白い」と言ってラグビーと言うスポーツが生まれたそうです。人間とは言われずしても同じことをするものなのですね。全くおもしろいものです。そんな情景を見つめながら、子ども達とサッカーを楽しみながら、寒い寒い外遊びの中で、心と身体に温かさを感じている今日この頃です。

 今週はこんなことに加え家族参観もありました。お忙し中、幼稚園まで来てくださったお母さん方、本当にありがとうございました。カリキュラムとしてもっと設定を増やしてやろうかとも考えたのですが、ゆったりとした時間の中で子ども達のありのままの姿を見てもらうのがいいのではと思い、あのような参観になりました。そんな中でも子ども達、僕らの予想以上に張り切ってくれました。『なりきりゴマ』ではそれぞれの性格が見れて面白かったです。周りの目を意識しながらきれいに回ろうとする女の子、『自分でも制御不能の暴れゴマ』でひっくり返ってやっと止まれた男の子、「どっちがリードしてくれるのかな?」と見つめ合ったままゆっくりゆっくり回ったカップルと、子ども達の動きひとつひとつの中に想いや感性が感じられ、見ている方も面白かったです。あれも毎回同じな訳でなく、『参観日のあの状況だから』の子ども達のリアクション。ちょっとの緊張と大いなる張り切り&空回りとが入り混じった、実に興味深い子ども達の自由演技でした。
 引きゴマ回しの方は幼稚園でも先週始めたばかり。こちらは男の子達がいつになく張り切ってやっています。男子チームの方が優勢でしょうか。日頃女の子達に後塵を拝している男の子達、久しぶりにいい所を見せてくれています。小さくても現代っ子でもやっぱり男の子です。コマ遊びは紐を巻くところ、手を添え回してやるところなど、親子のスキンシップには素敵な遊びです。どうぞ今度お家にもって帰ったら一緒にやってあげてください。その頃には「もうひとりで出来る!」って言われるかも知れませんが、「いいの、お母さんがしたいの」と寄り添って手を取って一緒にしてあげてください。きっと最初は照れるかもしれませんが、そのうち心地よくなって子ども達の方からすり寄って来てくれることでしょう。
 参観の後、『一緒に帰る帰らない』でひと騒ぎした子もありますが、あれはああ言う状況下でのことなので笑って受け止めてあげてください。誰かが一緒に帰る姿を見たならば、一緒に帰りたくなるのが三歳児と言うもの。たんぽぽさんと一緒に泣いていた男の子もありましたが、「僕の方が先に泣き止んだ」と誇らしげに言ってました。まあそれはそれで彼の自負なのでいいでしょう。こちらは「そうじゃねぇだろう!」と心の中で思わず笑ってしまいましたが。いずれにしてもみんなそれなりに幼稚園生活をがんばっています。それが垣間見れたうれしい参観日となりました。


戻る