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<画龍点睛> いよいよ今年も節分・立春を迎え、山里の新春の景色や匂いから春への想いと希望を実感として胸に感じる頃となってきました。日当たりの良い丘の上では白梅がほころび始め、今年は遅れ気味の菜の花もその黄色い色を段々と濃くしつつある今日この頃。子ども達も元気に園庭を走り回って遊んでいます。なんのブームか今頃サッカーに興じる子が増え出して、今週はすみれの女の子達まで参戦してきました。ちょっと遅いブームの到来を残念に思いながらも、この時期であるからこその子ども達の成長をうれしく受け止めています。みんなと一緒に身体を動かすことの楽しさを、そしてもうすぐやってくるであろう別れの季節の名残惜しさを、この子達は今きっと感じているのでしょう。だからこそ寒空の下、みんなで一つのボールを追いかけ走り、一つのゴールを肩をたたき合って喜び、誰からともなく「またやろう!」と誘い合ってまたサッカーに興じているのです。そんな子ども達の姿をうれしく見つめながら、それでも手加減せずに『大人対子ども試合』で本気になって勝ちに行っている大人気などどこにもない今週の『しん先生』でした。 今週のばら・たん組、『てぶくろヤル気向上プロジェクト』の第2段としてお面作りに挑戦してみました。いつもなら絵本をスキャナーで取り込んでぬりえを作りお面にするのですが、今回の絵本『てぶくろ』はいかにもロシア調の暗い作画でおまけに動物達がアップで描かれていないので、そのままスキャンしてもいい絵が取れそうにありません。仕方なしに絵本を見ながら動物のお絵描きに挑戦しました。 昔から絵は苦手だったのですが去年の夏、なんとなしのマイブームで、宮崎駿の映画作りドキュメントDVDを続けて何本も見て過ごした時期がありました。そこで若手に指導する宮崎氏の作画理論と彼自身の鉛筆運びをずーっと見ながらひと夏を過ごしたのですが、そこで印象的だったのはとにかく『線を描いては消しゴムで消す』と言う作業を延々と行っていたこと。彼くらいの人になればもう描く線は決まっていて、繰り返し描き直すことなどないだろうと思っていたのでそれは意外なことでした。そこに最も美しい線が現れるまでこれでもかと言うほどに『描いては消す』の動作を繰り返す宮崎氏。でも『一本の線を見出す』と言うのはそういうものなのかも知れないと、その映像を見ながら思い至った僕でした。 今回はそのイメージがまだ頭の中にしっかり残っていたので、『画伯』をちょっぴり気取りながら動物のお絵描きに挑戦してみました。まずは動物を大きな塊として捉え、ラフな線を何本も描き重ねてゆきます。お手本の絵を見つめながら、画用紙上のバランスを見つめながら。絵が偏り、パースがおかしくなってきたなら思い切って消しゴムでがーっと消してしまいます。そして再び何本も何本も重ねて線を描いてゆくのです。僕はこういう作業、昔は嫌いでした。なんでも一発で綺麗に決めたいと言う指向が強いので、繰り返しやり直させられるのが苦痛でさえありました。一筆描いて綺麗な線が引けないと「へたくそだな」と諦めてしまうような所がきっと僕にはあるのです。でも宮崎映画のドキュメントを見ていて、『繰り返し繰り返し線を引きつつ欲しい線を探して行けばいいんだ』と言うことに気がついたのでした。今回は絵本の模写でしたが、7種類の動物を描くのは大いにお絵描きの練習になりました。思えば自分の小学校時代に『絵の書き方』など教わったことがありません。また先生が絵を描いているところを見た事もありませんでした。その頃、先生の筆運びやこんなドキュメンタリービデオを見ることがあれば、もっと上手に絵の描ける子どもになっていたような、なんかそんな気がしてきます。そう、お手本を見ながら真似る、学ぶと言うのは人の学習行為の基礎中の基礎なのですから。 一月の家族参観の『コマ回し』で、ばら組ながらなんの拍子か投げごまをヒョイと回して見せた男の子がありました。「すごいじゃん!どうして回せるようになったの?」と尋ねれば、「しん先生のやっているところを見てたから」と涼しい顔で答える男の子。「へー」と言いながらもこの子の観察力と洞察力に感心してしまいました。そう、人のやっている動作を見ながら自分なりの理論を導き出し、「こうしたらできるんじゃない?」と自分でやってみながら自身の仮説を実証する、きっとそれが彼の『学びスタイル』。『一を知って十を知る』を体現して見せてくれたこの子に、『見て学ぶ事』の大いなる可能性を感じたものでした。普段は先生のお話中にぼーっとしていたり、ぺちゃくちゃおしゃべりをしていて「また聞いてない」と言われてしまう彼なのですが。子ども達の目の前で何かをすると言う事にはそう言う意味があるのです。子ども達の可能性を伸ばす為の教材・触媒になれたならと思いながら下手で苦手な事にも取組みながら自己研鑚を心がけている『しん先生』です。 そうして準備した動物のぬりえを子ども達と一緒にクレヨンで塗って行ったのですが、出来たものはみな何か味気ない絵。きれい過ぎと言うかなんか面白くないのです。ひと通り全員の分が出来たのですが、その中の下地の絵を無視して目玉をぐりぐりと描きなぐっている子の絵に目が止まりました。「すばらしい」。やはり目にこそ魂は宿るのです。これにヒントにパソコンで目玉の下描きを消した絵を作成し再出力。子ども達を集めて第2回ぬりえ大会と相成りました。元は塗り絵でも子ども達の描く目玉は個性そのもの。ちっちゃくちょろっと細い線で描く子もあれば、暴れゴマのように同心円など描くことなく勢いでつづられる丸もあり。子ども達のインスピレーションはそれに留まりません。勝手に手を生やさせたりパッチワークの様に顔を色んな色のツギハギで塗ってみたり、とても素敵な動物お面が出来上がって来ています。本番ではそれを被って劇に臨みますので、どうぞお楽しみに。 |