園庭の石段からみた情景〜園だより2月号より〜 2012.2.18
<卒園生からの贈り物>
 結婚式から早2週間、幼稚園の子ども達にも一通り冷やかされ、お母さん達のお祝いの言葉にもやっと笑顔でお礼を返せるようになった今日この頃です。僕も結婚式と披露宴で皆さんからいただいた沢山のお祝いメッセージとサプライズに、写真とお菓子とお手紙できっちり返して、「これでお返しできた」とほっと一息ついたところ。「うん、これでよし」と思っていたのですが、『喜びと幸せの連鎖』はらせん階段のように幾重にも幾重にも重なってつながってゆくものなのでしょうか。子ども達の『よしこさんブーム』は冷めることなく、お返しをプレゼントした翌日には「しん先生のよしこさんからチョコをもらった」と上機嫌のレポートが届きました。またプレゼントの写真の中の彼女が子ども達にとってはこれまたインパクトがあったようで、ドレス姿のお嫁さんを「きれいだった」と嬉しそうに話しかけてきてくれた女の子が何人もありました。ありがとう。
 なるほど遠くの親戚のお姉さんの結婚式には出席したことがあるのかもしれませんが、その『人なり』や結婚後の動向や表情など、このような追跡レポートがあるケースはまれなのでしょう。サザエさん一家の様に結婚後、若夫婦が同居して大家族を形成するなどと言うことは現代においてはほとんどありえないですから。なるほど僕らは磯野家のマスオさんとサザエさんで、園児達・幼いカツオやワカメの興味や関心の目にさらされながら、『結婚』と言うものを彼らに示してゆくことになるのでしょう。これまた責任あるお仕事を与えられたものです。

 そんなある日、僕の手元に一冊のカード帳が届きました。持って来てくれたのは幼稚園の子ども達と卒園生。中には卒園生一人一人が綴ったメッセージで埋め尽くされていました。そのメッセージは去年卒園した子ども達のメッセージから始まっていました。写真と直筆のメッセージに、「この子達も大きくなったなぁ」と小学生としての成長にちょっぴり感動。中には「見守ることしかできませんが」と『あなたは私のお母さんですかぁ?』と突っ込みたくなるようなメッセージもあって嬉しいやらおかしいやら。二人のイラストを描いてくれた子もありました。「またサッカーしてね」と言うメッセージに、このところお母さん達にいじられるのを回避するためにピアノの時にあまり園庭に出なかった自分を反省もしたりして。でもこの子達の心の中に『しん先生としたサッカー』がこんなにも焼き付き「またしたい」と思ってくれていたことをもう一度嬉しく受け止めさせてもらいました。ごめんね。
 二年生になるとあの懐かしい顔達が並んでいました。このクラスは遠方へ引っ越して行った子が多く、久しく顔も合わせていなかったのですが、あの頃よりちょっと大きく凛々しくなった写真と共に力強い筆跡でメッセージを書いてくれていました。ここではクラス担任を持ったこともあったので仲良くなったお母さん達からはうれしいお祝いの言葉が。昔僕が子ども達に、そしてお母さん達にかけた言葉を引用して返してくれたこと、うれしかったです。「覚えていてくれたんだ」。その時は夢中で投げかけていた言葉達でしたが、それがみんなの心の支えになってくれたのだとしたら、僕もちょっとは『金八先生』に近づけたのでしょうか。なんか最終回スペシャルの様になってきました。
 子ども達のメッセージは3年生4年生へと遡ってゆきます。『来年から入る弟のことをよろしく』と記すのは男三兄弟の長男次男。あの時生まれた子がまたこの日土幼稚園を自分の棲家として選びやって来てくれるのです。こんなうれしいことはありません。お兄ちゃんそっくりの末弟君。確かにしっかり承りました。「卒園の時にもらった言葉は今でもぼくの宝物です」「毎日手をつないでもらって心がポカポカしました。これからもずっとわすれないよ!」と綴ってくれたのは『真面目君』と『一生懸命ちゃん』の素敵な兄妹。僕のしてきたことを今でもこうして大事に受け止めてくれている子がいることが、今の僕の励みになってます。ありがとう。
 懐かしい写真は5、6年生までやって来ました。いつも日曜学校に来てくれていた5年生の女の子達。いつものお転婆ぶりはどこへやら。殊勝な言葉使いでお祝いのメッセージをしたためてくれていました。「ご結婚なさるとは思わなかった」とモテない僕の結婚をストレートに驚いてくれている子もありましたが。昔あるお母さんが言ってました、「しん先生は永遠のたんぽぽ」ですねと。子ども達を何人も日土幼稚園に送ってくれたお母さんが、時の流れに従って大きくなってゆく我が子の成長を見つめながら、いつまでも子どものレベルでわいわい言ってる僕を見て表してくれた賛辞の言葉でした。僕はこれでたんぽぽから一歩先に進めるのでしょうか。
 カード帳はとうとう中学生までたどり着きました。ここまで来ると久しく話をしたこともなく、女の子達など「お父さんキタナイ!」「先生、あっち行って!」とそんな類の言葉で避けられてしまうのではないかと思っていたものです。それがみんな素敵なメッセージを中学生らしい立派な言葉使いで記してくれていたのです。「ピアノの時いつも遊んでくれてありがとうございました」は三年生の女の子。ある日お母さんのお迎えが少し遅くなり「○○ちゃん、おうちがおやまの上だから一人で帰れないの」と涙を流した彼女の姿を覚えています。頑張り屋で負けず嫌いな彼女がふと見せた不安の横顔に涙ひとすじ。僕はいつまでも膝の上に彼女を乗っけて「大丈夫だよ」を繰り返していました。おーい、みんな元気でいるかい。

 こうして振り返って分かった事。僕は子ども達と一緒に遊んであげた、それだけ。それがこうして彼らの心に素敵な根っこを張り、今素敵なお返しを僕に送り返してくれたのです。ありがとうみんな。またこの想い、いつかまたちゃんと返すからね。


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