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<日土の自然が僕らに教えてくれることU> 季節の移り変わりと子ども達の成長は本当にあっという間。園庭にも初夏の陽射しがまぶしく降り注ぐ季節となりました。新入りばら組の子ども達もこの一ヶ月、よくよくがんばってくれました。まだ時よりお母さんが恋しくなったり、朝のお別れの名残を惜しんだり、そんな時もありますがもう泣き通しではありません。毎日変わりゆく自然の中で目新しいものに興味を引かれ、そんな時には泣くことさえも忘れてしまうよう。僕ら教師は本当にこの日土の自然に助けられながら保育をしているのだなあと実感しています。 自由遊びの中頃、「お母さんに会いたい」とある女の子がぐずぐず言い始めました。ひとしきり遊んで落ち着いて、ふと我に返った瞬間、お母さんを思い出したのでしょう。抱っこしながら「もうすぐおかえりだから、お母さんすぐ来るからね」とあやしながら園庭を行ったり来り。そんな僕らの目に桜の木の若葉が飛び込んできました。青々として柔らかそうな葉っぱを見ていたらついつい桜餅を連想してしまいました。「はい、桜餅でもいかが」と彼女に手渡せば「桜餅じゃないよ、はっぱだよ」と満面の笑みで突込み返し。「お餅にしたらおいしそうだよね。お母さんにおみやげ持っていく?」、「うん」。その子はもらったビニール袋に葉っぱを入れてそこからまた遊びに出かけてゆきました。しばらくしてその子の袋を見てみると青々とした葉っぱがぎっしり。「なになに?」と中身を見せてもらうと紫陽花の葉っぱが入っていたり菖蒲の葉っぱが入っていたり、あっちこっちで葉っぱ集めをして遊んできたようでした。葉っぱの青さとお母さんの喜ぶ顔がこの子の心を支えてくれたよう。僕らには何も出来なかったのに、やはり子どもとは自然とその感性を同期できる生き物のようです。 葉っぱと言えば園庭にも雑草が芽を出し始めました。『雑草引き遊び』が大好きなすみれ組の男の子を呼んで、「また野菜取りやろう、台車持って来て」と持ちかけました。「おー、ネギ?ネギ?」とうれしそうに乗ってくる男の子。先日の雨で芽を出したばかりだったのでしょう、気持ちのよいほどにさくさくと引ける雑草を台車に積んで園庭を僕らはあっちにこっちに行ったり来りしたものでした。それを見かけたばら組の男の子、「ぼくもやる!」と草引きを一緒にやり始めました。そこまではよかったのですがあのすみれ君の台車を「これぼくの!」と横取りしてしまいました。よもよも抗議するすみれ君に謝りながら「もう一台、台車持って来て」とお願いしました。この子も「これじゃないといけん」とけっこうこだわる子なので、「これじゃなくてもいいんだよ」と経験を積んでもらうこともあって彼の方にちょっと折れてもらったのですが、やりたい放題の『ばら男君』にも「お兄ちゃんがいいよって言ってくれたよ。ありがとうって言おうね」と言うと素直に「ありがとう」ってお礼を言うことが出来ました。悪気のない『小ジャイアン』とすみれ君はそれからも肩を並べながら「おー!おー!」言いながら草引き遊びを楽しんでおりました。 またある日、幼稚園の外に飛び出したいばら組の男の子がそれを止められ大騒ぎ。どうにもこうにも収拾がつかなくなってしまった様子を見て取った美和先生がその子を抱きながら数人の子ども達をお供に散歩に連れて行ってくれました。外遊びの子ども達を見ながら、なかなか帰ってこないその子達のことを気にかけていると、大きな甘夏を抱えた子ども達が駆けて来ます。幼稚園の裏に生っていたみかんに心を惹かれ、怒っていたことも忘れて甘夏にしがみつき、もぎ取って来たとのこと。早速園庭でみんなでもぎたてみかんの試食会が始まりました。少しシーズンに早い甘夏、それも手入れも十分にしていないから今時の糖度の高いみかんと違い、相当酸味の強い味がしたはずです。にもかかわらず「おいしいおいしい」とむしゃぶりついていた子ども達でした。やはり自分の手でもぎ取ってきた戦利品はなにより素敵な味がしたのでしょう。 また別の日、幼稚園の外に飛び出したいばら組の男の子がそれを止められまたまた大騒ぎ。その子の気を引こうと潤子先生が階段の上からボールをころころ転がしてきたのですが、それに反応したのはばら組の女の子達でした。自分達も階段の上からボールを転がし『おむすびころりん』に大喜び。みんなして上からボールを転がしての大騒ぎとなったのでした。『高き所にあるものは低きに落ちる』、これは物理の原理。停電してもインフラがなくなったとしてもその摂理は変わりません。今時の子ども達、全ては電気とお金で動いていると思っているかもしれませんがここでは全く違います。WiiがなくてもDSがなくっても、『ボールがただ下に転がり落ちる』そのことに子ども達は興奮し遊びとして成立しているのです。こちらが下であたふたしているのを見て大喜びの子ども達。次から次にボールを落として喜んでいます。しばらくすると階段の下は転がってきたボールで一杯になってしまいました。今度はそれをみんなでコンテナに集めます。僕らが一生懸命に集めたそばからコンテナをひっくり返して喜ぶ男の子。そんなこんなやりながら僕らは階段下のボールを集め終えることができました。大門横のくぐり戸の所に座り込んで小休止を取る僕と子ども達。格子戸を吹き抜ける初夏の風が心地良く、「ここは涼しいねえ」と子ども達と一緒にちょっとまったりした時間を過ごしたりもしてしまいました。これらもみんな日土の恵み。ここでも日土の自然に助けられた僕らの保育でした。 日土の自然はいつもこうやって、僕らと子ども達の心を支え励ましてくれます。そんな自然を大切に感謝しつつ、僕はここで保育を行っていきたいと思うのです。 |