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<『僕ら』の目覚め> 6月に入りました。先週「もう梅雨?」と思ったばかりの所に突然台風がやってきたかと思えば、今週は寒い週明けに続いてまたまた一転春の上天気。まったく「これでもか」とばかりにお天気の展示市で『持ちネタ全部』を披露されているかのような一週間でした。気がつけば一学期の折り返し地点までやってきて、こんな不順な天候もあいまって体調を崩す子ども達も見かけます。最近シャキッとしてきたこの子達の『久々の赤ちゃん帰り』を見かけた時は体調の変わり目かも知れません。ちょっと様子を気にしてあげてください。 最近ばら組では子ども達の『自意識』の中に僕らの期待・想像を遥に超えるものが息づいて、うれしい成長を感じさせてくれています。『みんなと一緒』に大きなステイタスを感じ始めたこの子達。園生活の中で感じ始めた『仲間意識』が子ども達の中で共感や連帯感を生み出し始めました。朝の準備やお昼のごはん時、子ども達の間に倦怠感が蔓延し始めるとテコ入れのために僕が打ち上げる激励花火「僕らは一緒にがんばろうーねー」。それに誘発されて何人もの子が「がんばっちゃおうねー」、「ねー」と言葉をかぶせて続きます。彼らにとってこれは不思議な魔法の呪文。一緒に「ねー」と言ってみればなんだかやる気と勇気が湧いてくるのでしょう、それが彼らのもうひとふんばりを生み出してゆくのです。でもこれは『クラスの仲間』を意識し始めたからこその出来事。「みんなもがんばってやってできたんだ、僕だって!」とその想いがこの子達を後押ししてくれるのです。 ここで面白いのがこれまで『反・僕ら』だった子ども達、みんなと一緒が大キライで「僕は僕が好きなようにやりたいんだ!」とグレイトエスケープを決め込んでいた子達までが「ねー」とやってくること。人間はどんなに一匹狼を気取ってみても『みんなから受け入れられること・みんなと一緒になれること』のうれしさを何より心地良く感じる生き物なのだと、このことは改めて教えてくれています。「がんばってやっちゃおー!できたー!遊びに行ってもいいですかー?」が『がんばったちゃん』達の一連のお気に入りフレーズ。そうやって出来たことを認めてもらって一緒に喜んでもらったことを心の糧に自分の遊びに飛び出してゆくのです。それにあやかりたい男の子。「やっちゃおー!ねー!遊びに行ってもいいですかぁ?」とお友達に倣って自己申告。こんなかわいらしいエクスキューズにこっちもついついOKを出しそうになるのですが、彼の周りを見渡せばまだ何にもできておりません。「いいわけねーだろう!」と笑いながらダメ出ししながら彼と一緒にやり直し。でもこんな友達への共感や反応をこの子のうれしい成長として受け止めています。 もう一つこの子達の心の励みになっているのが『お当番』。クラスの中もだいぶ落ち着いてきたことを受けて先週、一人一人お当番カードをみんなで作って『お当番』を始めてみました。『お当番のお約束』、「お当番はまず自分のことがちゃんとできないと出来ません」と言い渡し『ちゃんと出来たらお当番』を合言葉にみんなでがんばっています。こちらも子ども達の心の琴線に触れたようです。朝イチで顔を合わすなり、「今日はお当番だから朝寝坊しなかったよ!」とうれしそうに報告してくれる子、『朝の準備なんてへへへん!』と飛び出してゆく子に「今日はお当番、通過(つーかー)」とカードを次の子にめくる仕草をすれば「当番、やるやる!」と駆け戻って来たりもして、『お当番効果絶大』と言った一巡目のお当番でした。これまで出来ることも出来ないことも、「できない!」と両手を万歳したならばお母さんやじいじばあばの助けの手が何本も何本も伸びてきて、『自分でやる』と言うことに対してなんの必要性も達成感もありませんでした。でもこうして園生活に慣れてみれば、共同生活の中での周りや友達の様子も見えるようになってきました。『自分で出来た友達』が先生からかけてもらっている感嘆の誉め言葉。「出来ない」と赤ちゃんのような友達をそそくさとお世話している『出来るちゃん』の姿のまぶしいこと。それらが子ども達の心に響き、「私もがんばろう!」、「出来たよ、見て見て!」と言う想いにつながってゆくのでしょう。普段は実力が物を言いますから『出来るちゃん』の天下でなかなか出る幕がない子達も『お当番』となればほかの誰も手を出すことは出来ません。自分の『出来るところ』をPR出来る絶好のチャンスなのです。と言う訳で今週は「お当番!お当番!」と言ってがんばるところを見せてくれたばら組の子ども達でした。 そんなこんなでがんばっているうれしい姿を見せてくれている子ども達ですが、何事もブームが起これば過剰便乗・インフレバブルが起こるもの。ある日のお帰りの時間、思いつけば何でもやってみないと気が済まないクラスの『無邪気君』が友達の水筒をいじっているうちに水筒の中身が漏れ出して大騒ぎ。「あっ、お友達の、ダメでしょ!」とたしなめながらよくよく見ると乳白色の液体がこぼれているではありませんか。「あれ?今日の水筒、ヤクルトだった?」、持ち主の男の子に尋ねればなんかばつの悪そうな顔をしています。それでピンときた僕、「これ牛乳でしょう」。牛乳の苦手なこの男の子、このところずっとがんばって牛乳も飲んでいてこの日も「全部飲んだよ」と得意げに報告して遊びに飛び出して行ったのですが、牛乳を飲みながら上手に水筒に移し替えていたのでした。僕ら教師もまんまとだまし得た頭脳派の彼が何の作為もない『無邪気君』のいたずらのせいで現場を押さえられ『ご用!』となった面白エピソード。『ズル』は必ずばれることをこんなところで学んでしまった男の子、『神様が見ている』ってこう言うことなのかもしれません。 |