園庭の石段からみた情景〜7月の書き下ろし3〜 2011.7.14
<あたちたちはおねえさん>
 いよいよ一学期も最終週となりました。四月の園だよりの書き下ろしが意外とウケてしまったのに気を良くし、とうとうこのウィークリーペーパーも3ヶ月間書き続けてしまいました。辛抱強くおつきあいくださった皆さん、本当にありがとうございました。今年度は連絡ノートの方は潤子先生に全て任せてしまったので、僕も副担任として(一応担任だったんです)クラスのムードや雰囲気を何かの形で楽しく知ってもらえたならと思い楽しみながら書かせてもらいました。僕はノートを書くのが苦手で、名指しで何かを書けばただの告げ口や讒言(ざんげん)になってしまうような気がするのです。その内容にだって言いつけたからと言ってどうなるものでもないもの達。子ども達は過ちを繰り返し繰り返し重ねながら、お互いに段々と分かるようになってゆくものだから。でも子ども達を見つめていれば、彼らの『精一杯』とは実に興味深くこの目に映るもの。「これを伝えたいなあ」と言うことで、あるスタイルに定着してきたのが『エンターテイメントムービー調・子ども達の成長ストーリー物語』とも言うべき今の形なのです。毎回順代わりの匿名で登場する主人公達、これはクラスの誰であってもおかしくはない、この年頃の子ども達みんながその当事者になりうる『ヒーロー?』として登場してきます。そしてその子を中心にクラスの中に問題が起こり、心騒がせ、笑いに包まれ、共に考え感じ合い、最後は素敵な『感動ラスト』でハッピーエンド、まさしくこれってエンターテイメントムービーでしょう。でもこれは僕が物語を捏造している訳ではありません。子ども達の行動ややり取りを『エンターテイメント』と言う要素を意識しながら抽出したならきっとこう言う物語になることでしょう。ただのレポートでなく論文でなく、「子ども達の想いをお母さん達に伝えてあげたいな」、そして「皆さんの子ども達はこんなにすばらしい子なんですよ」、「こんなにがんばっているんですよ」と子育てに苦労されているであろうお母さん達を励ましてあげたいとそんな文章が書きたくて、子ども達の日常を描きつづけている僕なのです。気分は大林宣彦監督です。
 でも何の仕事であってもこんな楽しみと積み重ねてきたことに対する充実感がなければ決して続くものではありません。『子育て』もお母さんの大切なお仕事。自分の仕事を記録として、がんばった証として残すとことが出来たなら、それはとても素晴らしいことなのではないでしょうか。最近流行りのブログに始まり昔ながらのぶ厚い日記帳まで、みなさんそれぞれ取りつきやり続けるのに適したフォーマットがあるでしょうから、それは何でも構いません。何か記録に残してみませんか。それは毎日でもいい、週イチでも月イチでもいい。自分のペースで子どもと自分のことを書いてみてください。文章を書くには理屈と筋道が必要です。子どもと向き合っていればすぐにかっかとしてしまうお母さんも、後からそのことを振り返って自己分析してみるのです。あの時の情況、自分の想い、想像しうる我が子の想い。最終的には自分の考察でまとめてしまうので自己満足に収束するはずのものなのですが、満足が得られた時にはちょっと相手の想いも『おもんばかって』察することができるもの。「言いすぎたかな」とか「あの子なりにがんばってたのかな」なんて感じることが出来たならそれだけで子どもと想いが通じ合うのではないでしょうか。またいくつかの物語を時系列につづって後に見直せば、子ども達の成長の過程が浮かび上がってきます。毎日顔をつき合わせているとなかなか気づくことの出来ない子ども達の成長ですが、時間を横軸に取ってその変化を見てみると、「あっ、この時はまだこんなんだったんだ」、「そう言えば今ではこんなことなんてことなしに出来るようになったよね」と嬉しい成長の足跡が見えてきます。学生の昔からそんなレポートを書きながら物事を見つめてきた僕は、それが習慣になっているようです。もっとも昔見つめていたのは油圧や流量の計器達とポンプや制御弁の運動を記録した高速ビデオなどなどだったのですが。あんなお勉強でも今の自分に生きていると思えば、やってきたかいがあったと言うものです。ほら、また自己肯定。僕はつくづく楽観的に出来ているようです。でもそれがいつもこんな自分を支えてくれる『生きる力』なのだと思っています。子育てもきっとそう、子どもとの関わりを自ら楽しみ、その関係の中で自分も子どもも成長してゆけることを遥か遠くに目指してゆけば、いつか「やったかいがあった」と笑えるものとなるのではないのでしょうか。

 『おねえさま意識』に火がついたばら組の子ども達、今週はバザーのお手伝いで一緒に来ている小さな女の子を追いかけて一生懸命お世話してくれました。彼女達の『あたちたちはおねえさん』の意識は自分達の中にあった不安や苦手をも打ち負かし、これまでになく調子よく幼稚園生活を楽しんでいます。やはり『母は強し』、この子達の母性に促されたこの行動が自分自身の心を強くし自らの自信へとつながってゆくのです。それはきっとお母さん達もそうでしょう。「この子の為に」の想いが込められたその心は、誰よりも強く優しくけなげで情深いもの。この子達、きっと素敵なお母さんになってくれることでしょう。そんな女の子達を取り上げて僕が誉めるものだから彼女達、「だから男の子はBABYでだめよねえ」なんて『こまったものよね』って顔をしてみせながら井戸端会議でひと盛り上がり。こんなところも女の子ですねえ。でも男子もそんな女子に意識を引っ張られながら『がんばること』に意義を感じ、『自分も誉められたい』と上を目指して見せる素振りを見せてくれています。なかなか実力の方はついてゆきませんが。でも今はその想いがうれしいこの子達の成長です。この想いさえあれば、この子達はきっとどこまでも伸びてゆけるはず。さあ夏休み、お家でも日常の中で子ども達のこんな想いを拾い上げて、上手に一緒に成長ごっこを楽しんでみてください。素敵な物語をつづりながら。


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