園庭の石段からみた情景〜夏休みの書き下ろし〜 2011.7.29
<日土の夏の過ごし方>
 一学期の最後は大型台風の接近によりバタバタしてしまいましたが、幼稚園では無事に全ての行事を終えることが出来ました。十九日の登園に関してはいろいろ有りましたが結果として『無事に出来てよかった』とほっとしています。これを『やってよかった』と言うのは人間のおごり。飽くまでもリスクはあった訳ですから、こんな時は「神様、守ってくださってありがとうございました」と素直に感謝したいものです。高知や徳島の方では大きな被害も出ましたし、お隣の幼稚園では予定していた夕涼み会も中止となりました。こんな状況の中、好天気に恵まれたバザーから始まってお誕生会に終業式と、全ての行事を無事に行なうことの出来た日土幼稚園は言ってみれば好運、でもそれはやはり神様が守ってくださったがゆえのことだと思うのです。きっと子ども達が一緒にお祈りしてくれたおかげでしょう。
 今月に入って30℃に届くような暑さが連日続きましたが、子ども達は元気元気。朝に昼にお外に飛び出しては外遊び・水遊びを楽しみながら過ごしました。都会では熱中症が兎角話題になっていますが、夏が暑いのは昔から。そんな暑さの中、昔の人達は自然から涼を取る方法を学び実践してきました。打ち水・行水・すだれなど、電気などの能動的エネルギーを使わなくても涼を取り、夏を元気に過ごす方法を編み出してきたのです。そうは言ってもこの現代、昔とは環境が違うので都会暮らしの人々にとってはそれらは過去の風物詩。昔と環境が変わらない田舎暮らしの幼稚園だからこそ実践出来るエコライフなのでしょう。
 『打ち水・行水』を幼稚園で具現化しているのは子ども達の水遊び。この水遊びは水に触れることで身体の表面体温を下げると共に、身体を濡らした水が蒸発することによって気化熱を生み、体温を下げてくれます。また子ども達が濡らすのは自分の身体ばかりではありません。そこいら中に撒かれた水、水、水。これも蒸発する際に地表の温度を奪い、地面からの放射熱をやわらげてくれています。これが昔で言う所の打ち水。また外遊びの前に子ども達に繰り返し呼びかける「お茶を飲んで、帽子被って、おそとどーぞー」の言葉。お外で元気に遊ぶ子ども達は汗をかくことで体温を下げ、新陳代謝を促すことによって暑い夏でも元気に活動できるのです。これをお部屋にこもってクーラーで強制的に冷やしてやろうとするから身体がだるくなる。代謝の落ちてきたお年寄りは子ども達のようには行きませんが、大人でも若いうちはしっかり汗をかいたほうが元気でいられるのです。でもまあどっちもほどほどがいい頃合い。身体を使うことと休ませること、両方バランスよく行うのが良いでしょう。僕も夏休みには日に何度も水風呂に入り身体を冷やしますが、その日最後のお風呂はちゃんと沸かした『あったかお風呂』。それで代謝を高め自律神経を整えながら、そこで沸かしなおすことによって次の日また程よい水加減の水風呂が楽しめると言う素敵なエコサイクルの中でこの夏を過ごしています。
 さてもう一つのすだれ。砂場の上に使い古しのすだれを持ってきて『すだれ屋根』をつけました。子ども達が夢中になって遊ぶ砂遊び。でも『日なたにじっと』はちょっと心配にもなる訳で、砂遊びをしている子にはなるべく日陰に入って遊ぶように声をかけています。この砂場、山からの風が吹きぬけて実に気持ちの良い場所です。「同じ園庭なのにどうしてこんなにも涼しさが違うものか」と改めて自然の妙を感じます。この涼しい砂場で川を作って水遊び、僕と子ども達は暑い7月も元気に汗をかきながら元気に遊んで過ごしました。その分お着替えのお洗濯の量も一杯で、お母さん方にはお手数をおかけしました。でもこの汗の、水の一滴は子ども達の身体を大きく強く丈夫にするのに欠かせないもの。おかげさまでみんな最後まで元気に過ごせました。皆さんのご理解ご協力、ありがとうございました。

 さて一学期最後の二日間、おかえりの時間にばら組の子ども達と一緒に、一学期の2本のDVDを見ながら過ごしました。『ずっこけビデオ』の愛称でみんな大好き日土幼稚園のDVD。入園式のビデオを見ながら当時涙顔だった女の子に「あの時は泣いてたけど、今はお姉さんになったよね」と声をかければ、嬉しそうに誇らしげにうなづきます。僕らもそうですが過去の恥ずかしい写真や映像はみんなあまり見たくないもの。でも今の自分に手ごたえを感じているならば、そこからの伸び代を確かめる意味合いで嬉しく懐かしく見つめることも出来るのです。この子達、この一学期間でそんな所まで来ることが出来ました。それは13人の子ども達全員同じ想いだったようです。本当にあのわちゃわちゃちゃん達がここまでよくよく来れました。辛抱強く見守ってくださったお母さん方には本当に感謝です。
 先日行われた9月入園児の顔見せにはたんぽぽの4人娘とばら組の男の子1名が幼稚園にやってきて、元気な顔を見せてくれました。早くもニコニコモードで「帰りたくない!」って言ってた天真爛漫の女の子達。最初は一人だけのばら組で乗り気でなかった男の子も、お外に飛び出せばいい笑顔で笑ってくれました。この新しいお友達を迎え13名のばらさん達、どんな化学変化を見せてくれるでしょう。熱い火花が散るか、優しいお兄さんお姉さんの心で新しいお友達を包み込んでくれるのか。なにせ色んなことがあるでしょうが、その色んなことがこの子達の成長の糧となり、『自分と言うもの』、『友達と言うもの』を感じ、自分のエゴと友達との調和のバランスの落とし所を学んでゆくのです。これもエゴばっかでもダメ、自分が出せなくてもダメ。みんなが一緒に嬉しくなれるような関係を、この幼稚園で学んで行って欲しいと願っています。そう、幼稚園とはそういう所。おりこうカリキュラムで「先生の言うとおり出来ました、良く出来ました」じゃつまらない。みんなで感じ合い、考え、答えを探しながら、二学期もみんな一緒に歩いて行きましょう。


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