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<ふらふらよちよち行進曲> 台風15号の通過は巡りゆく季節をいちどきに早め、朝晩などには肌寒ささえ感じるようにもなりました。幼稚園でも秋本番の風物詩であるヨウシュヤマゴボウが紫色の実をつけて、子ども達は色水ジュース作りに興じています。気温も下がり活動しやすい気候となりました。季節は今、『スポーツの秋』。ともすれば現代の氾濫する情報の波の中で頭でっかちになりがちな子ども達に、体を自ら動かし自ら制動することの重要さを教えるには運動が一番。お口は人一番達者だけれど『おトイレ』も含めて自分の身体一つ制御出来ない子は往々にして自分の心も制御出来ないもの。『出来ない身体』を自分の意識から切り離してしまえば、自分は頭の中ではなんでも出来るスーパーマン。だからそんな自分の思い通りにならないものに対しては癇癪を爆発させてしまうのです。本当はなんにも出来ないのに。それを知るにはそんな自分と向き合うには、『自分には何が出来て何が出来ないのか』を知ることが大切です。最初は『出来ない自分』を許せずに「やりたくない!」って言うかも知れません。でも『やってみたらなんか気持ちいい、もうちょっとで出来そうじゃん、がんばって出来たら心の底から嬉しかった』と言う想いがこの子達の心を支え成長させてゆくのです。幼稚園ではとっても見栄っ張りで頑張っている子ども達。「あの子に出来て私に出来ないはずはない」なんて思いも原動力。そうして励まし合い支え合って、身体を動かしながら心をも動かしながら、心身ともに成長してゆくのです。 敬老参観日が終わって各クラスとも運動会の準備が本格的に始まり、今週ばら・たんぽぽ組も上級生に混じって入場行進の練習もやってみました。この子達にとって初めての運動会かつ初めての練習と言うことで入場順に並ぶのに四苦八苦。しかし高らかに鳴り響くファンファーレとそれに続く行進曲を聞きながら子ども達もだんだんと盛り上がり、その気になってゆきました。『最初の笛の音「ぴー!」でその場足踏み』、この約束も僕らにとっては毎年のことなのでついつい説明が後付けになってしまうのですが、こちらの言葉を受けてレスポンス良く反応してくれる子ども達。「あれ、やるじゃん!」とこちらもいけそうな気がしてきます。前もって『あーだらこーだら』言葉で説明するよりも、「実際の動作を伴うリアルタイムで教えた方がいいのかも」などと子ども達の反応を分析しておりました。 こんな時、昨年の研修会で講師の先生が言っていた言葉を思い出します。「子どもへの言葉の投げかけは短い言葉でぴっと言った方がいい」。『言葉を重ねた文脈の長い言葉であーだこーだ説明しても子ども達は頭の中で整理出来ないから理解ができない。むしろ短い言葉の方が印象付けられるので伝わりやすい』との説でした。なるほど、僕が日頃子ども達に投げかける「終了!撤収!通過!」などの言葉には彼らもよくよく反応してくれます。「こういう状況でこうすることを『撤収』って言うんだ、きっと」とお片付けの後にはみんな喜んで「終了!撤収!」って言いながら部屋の中に駆け込んでゆく子ども達。きっと本当の意味は理解していないでしょうが。ならばここでは「整列!足踏み!」でいいのかもと思いながら次回の子ども達への『声掛けミッションの構想』を練っているところです。 今年、ばら組先頭はプラカードを持ってご機嫌の男の子。いつもご機嫌次第のこの子に任されたプラカードは、見事に『ご機嫌』を与えてくれました。にこにこやる気満々の男の子を先頭にばら・たんぽぽの子達が行進を始めます。「ついてきてね」とみんなに向かって声をかけるのですが『一斉指導』と言うものに慣れていない子ども達。「んー?行くの?あたしもー?」って不思議な顔で見つめ返しニコニコ笑っています。「はい、あなたもついてきて」と腕を引くとようやく行進が動き出しました。いつでもどこでも誰にでも『いの一番』をやるのは難しいものですが『見て真似る学び』が少しずつ出来るようになってきたこの子達。その後、「あのうしろをついてゆけばいいんだな」と分かってくれたのでしょう、みんなで上手について来てトラック一周の行進をそれなりにやって見せてくれました。最初の一回目にしては上出来・上出来。でも僕らが普通に思っている入場行進の作法、『同じ早さで・同じ間隔で・調子を合わせながら』も初体験の子ども達には「なんのこと?」。「前見てついてきて!」と間隔の開いてしまった子達を促せば、そこだけぞろぞろ駆け足に。わちゃわちゃあたふたやりながらもなんとか一周行進出来ました。 最後はクラス毎に並ぶ整列ですがこれが一番の難所。僕の声掛けを聞きながら回りのみんなの動きを見つめながら、「この(トラックの)線を歩けばいいんだよね」となんとなく自分達なりに解釈・理解出来るようになった子ども達。一周終わったところで、「はい、ここで曲がってこっちに入ってきて」なんてやるものだから「???」。こちらは先頭の子がちゃんとついてきたのを確認して「おっ、できるじゃん!」と前を向き視線を見切ってしまったのですが、再び後ろを向けば2周目に突入している後続グループを発見。飛んで行って「こっちこっち!」と行き先を指示したのですが、通過してしまってからの方向転換に追い越し発生・順序ぐちゃぐちゃ。「いいとこまで行ったのになあ」の結果となってしまいました。勝手が分かるとうれしくなっちゃうのは子ども達も同じこと。有頂天になって歩いてゆけば、「ここで曲がって!」の声もそれに従って曲がってゆく先頭の姿も目に耳に入って来なくなるのでしょう。本番でもありそうなこの珍風景を戒めに、『練習して体で覚え理解すること』『(自分も含めて)集中しながら臨むこと』を今後の課題としてもう一度自分に言い聞かせておきました。それにはやっぱり練習でしょう。この様に子ども達の反応や理解度を見つめながら、そして何より喜び楽しみながら運動会に向かって行きたいと思っています。またそっと子ども達を応援してあげてください。 |