園庭の石段からみた情景〜園だより12月号より〜 2013.12.7
<神様からの贈り物>
 十二月に入りました。まだ凍えるような寒さは訪れはしないものの、突然雨が降ったりあられが降ったり、なにか上空の不安定さを感じる今日この頃。毎年この季節の冬の入りはもっと静かにやってくるものと思っていたのですが、こんな年もあるのかもしれません。それと同じようにクリスマスを待ち望む子ども達にもちょっといつもと違った様子を感じます。舞台の上ではそれなりにきっちりがんばってやって見せてくれるのですが、その分クラスに戻ればお調子が過ぎたりわざとだらだらしてみたり。「でもこの子達にしてみればそれで心のバランスを取っているのでは」と思って見たならば、僕などからしてみれば笑ってしまう事も出来るのですがそれは過分な『ひいき目』でしょうか。そう、一年前のこの子達を思い出せば、今の姿は十二分に成長を感じさせてくれるもの。また教師の理想から乖離しているこの子達の現状もこれからの伸び代と受け止められたなら、『ここから一発大逆転』と自分を励ます事も出来るもの。同じ状況下に置かれていても、それを肯定して受け入れられたなら人は前を向いて進んでゆけるし、否定しそれを受け入れる事を拒むならばその瞬間から人は『不幸』と言うものを感じ始めるものなのでしょう。全ての事を感謝の想いで受け入れられたなら、その事によってすでに人は幸せになっているのだと思うのです。『いつも喜んでいなさい、たえず祈りなさい、どんな事にも感謝しなさい』、この聖句がいつも僕の心の芯をしっかり支えてくれるのです。

 あるクラスの子ども達、アドベントの日々を皆で慎ましく受け止めながら過ごす中にあってどうも心が上の空。礼拝の時にふざけてみたりお祈りの時にもじっと心静かに祈る事が出来なかったりで、少々不安定な心持ちにある様子。先日見かけたおふたりさんはみんなが静かに目を閉じてお祈りをしているさなか、組んだ両手をそっとほどき鼻の穴に親指あてて、広げた指をくねくねさせながらくすくす笑っておりました。そう、その姿は桜金造の「おやまゆーえんちー」のギャグそのもの。そんな古いギャグなど知るはずもないこの子達のパフォーマンスに笑ってしまいそうになるのをこらえながら、お祈りのあと「はい、おふたりさん。みんなの前でそのおもしろお祈り、もう一回やってみて」と投げかけました。「しまった」と言う顔でかたくなに下を向いているその子達。浮かれ気分の天国から地獄の底の針のむしろで「とほほ」と困り果ててます。「じゃあ僕がやりましょう」と皆の前でやった僕の『おやまゆうえんち』に子ども達は大爆笑。それを笑えない子どもが二人。「面白いじゃん!」と言う僕の言葉にも「…」。「そうだよね、面白くってもしちゃいけない時ってあるんだよね。神様に「今日も一日守ってくださってありがとうございます。帰り道も事故などないように守っていてください、アーメン』ってお祈りしている時に『あっかんべー、守ってくれなくったっていいもんねー』ってして大丈夫かな。神様が守ってくれなくっても、みんな大丈夫?」と問いかければおりこうちゃん達が「いけんよなぁー」と勝ち誇ったようにまくし立てます。それを聞きながらおふざけさんも小声で「いけん…」。「そうだね、困っちゃうよね。じゃあもう一回ちゃんとお祈りしなおそうか」、「うん」と言うことで再度みんなでお祈りを捧げました。この○○ちゃん、一度懲りたことはちゃんと心深くに覚えているようで、そのあとお祈りの度に「先生が見てなくても、神様がちゃんと見ているんよね」とみんなに声をかけながらお祈りの準備を促してくれています。これもこの子にとっては必要な『やっちゃった』だったのだとそんな思いで見つめています。

 人類の進化の多様性を垣間見ているかのようなこのクラス。ある男の子はどうもピリッとぴしっと出来ないで、みんなに「またぁー」と言われる日々を送っておりました。彼の言い分を聞いてみると「誰も遊んでくれない」「誰も結婚してくれない」と言う不満の言葉がありまして、自分を評価してもらえない事に対する反動なのだろうと思い至ったものでした。成功体験が少ない子どもが自分をどう表現してよいのか分からずに、人に注目されたいがゆえにはめを外しているのではないかと思った僕はクラスのかわいこちゃんを巻き込みまして、『××君かっこいいキャンペーン作戦』を繰り広げたのでありました。「△△ちゃん、××君も朝の支度、ちゃちゃって出来たらかっこいいよねー」「うん、かっこいい!」から始まって事ある毎に二人して「××君、しゃんとしてたらかっこいいよねー」「うん!」をこれみよがしに展開してみたところ、××君のやる気を奮い立たせることが出来たようで、なんか少しピシッとしてきた姿が見られるようになって来ました。それを受けてお帰りの時にみんなに「今日の××君どうだった?」と尋ねたならば「かっこよかった!」の声が帰ってきて、妙にニヤケ顔の××君。でもシャンと出来なかった日には「ちゃんとしてなかった!」の手厳しいツイート。そう言われるとすぐに自暴自棄になる彼の事も僕らはよくよく承知しています。「そんな時には仮面ライダーなんかの予告でやってるでしょ。『みんな、明日はがんばるから僕の事またみていてくれよ!』って言ってがんばればいいんだよ」とそんなアドバイス。それでその気を取り戻した××君。「がんばるから見ていてね!」の決めゼリフと決めポーズで明日の奮起をみんなの前で誓っておりました。結果はどう出るか分かりませんが、『みんなが自分を見てくれる』と言うことで勇気づけられた××君。そのために努力と素敵なパフォーマンスをすることの意義深さを感じ気づいてくれたなら、今はその一歩がとても価値ある一歩になってくれることでしょう。今は小さな小さな一歩でも、その一歩がきっと大きな大きな成長の礎となってこの子を支えてくれるはずだから。それはきっと神様が与えてくださったクリスマスの素敵な贈り物なのかもしれません。


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