園庭の石段からみた情景〜園だより5月号より〜 2015.5.20
<たのしい想いに満たされたなら>
 今年は雨が降ったら雨ばっか、降らない時にはからから天気、とそんな感じの夏の入りを過ごしている今日この頃。でも『続く』と言うことは経験を積み重ねて育ってゆく時期の子ども達にとって、一定の落ち着いたバイオリズムを与えてくれる安心の出来るリズムなのでしょう。お天気の続いた四月の終りは毎日毎日ばら組さんからすみれ組までみんな朝からお外に飛び出して、先生と一緒にお山に散歩に出かけては、抱えきれないほどの収穫物を携えてご機嫌顔を見せてくれたものでした。地生りのさくらんぼの収穫がうれしくって「さくらんぼ!さくらんぼ!」と毎日言ってた子ども達。洗ってからぱくっと食べたその後に、残った小さな種を愛しそうに握り締め、植木鉢に植えておりました。またある子は今頃『クルミ拾い』にはまりまして、古井戸跡の胡桃の木の根元に座り込み、その堆積した落ち葉の中から去年の胡桃を探しバケツ一杯拾い集めておりました。はたまた『たけのこ大好き』な子ども達は破竹を一杯採って帰り、お母さんに『お料理リクエスト』をしたそうな。こうして『幼稚園に行けばまた今日も楽しい何かが待っているはず』と言う想いをみんな感じてくれたのでしょう。登園時、あれほど「わいわい!びーびー!」言っていた新入児達のおらび声もついぞ聞かなくなりまして、ひと月分のこの子達の成長をうれしく感じているところです。

 来月のひよこクラブは『楽しいことみつけた』がテーマなのですが、その準備も兼ねまして幼稚園の子ども達の『たのしいこと』を探しながら一緒に過ごしたこのひと月。毎日預かりの部屋に「きょうりゅう!がおー!」って言いながらやってくる男の子のマイブームに乗っかって、子ども達と作り始めたのは『巨大恐竜ランド』。ダンボール箱を『開き』にいたしまして、巨大なキャンバスに描き上げたは巨大恐竜『ティラノサウルス』。おもながのはずの顔がちょっと丸顔になってしまい、ぱっと見『ゴジラ』のようになってもしまったのですが、それでも子ども達は大喜び。部屋の入り口に貼り上げられた体長1.6mほどの恐竜を見上げながら「おー!」と声を上げてくれました。それで手ごたえを掴んでしまった僕、それに加えて空飛ぶ翼竜『プテラノドン』と巨大剣竜『ステゴサウルス』も作りまして、『お残り』の子ども達と一緒に色を塗って巨大恐竜達を仕上げたのでありました。
 それを見つけた『きょうりゅう君』、上から釣ってあるプテラノドンに椅子に登って手を伸ばし、「持って帰る!」と取上げお外にふらふらと持ち出してきたのです。予想以上のリアクションにうれしい想いでこの子の顔を見つめていたのですが、ひよこクラブの計画もあるので彼のお気に入りの『プテラノドン』はお返し願ったのでありました。散々引き回されたその結果、ダンボールの剛性でぴんと伸びていた首も翼もくたっと折れ曲がり、うなだれ顔のしょぼくれ翼竜になってしまったプテラノドン。これを作る時も試行錯誤で重心バランスを探しながら3本のひもで吊ったのでありましたが、この『うなだれ首』が何とか出来ないかと色々と研究を重ね、この首を前方のひもに貼り付けることでまた朗々と飛んでいるプテラノドンの姿を取り戻したのでありました。子どもがいらんことをやらかしてくれますと、そのリカバリーに大変な想いをするのが世の常なのでありますが、その過程で自分自身が新たな発見や学びを得られもします。子ども達の『こうしたい!』と言う想いを十二分に知った上、自らの成長も得られると思えば、こんな関わり合いも自分の中に受け入れられるようになるものなのかも知れません。気は持ちよう…でしょうか。

 また今年もみんなでジオラマ作りをやりたいと『立体恐竜ランド』作りも始めました。図鑑の恐竜達をデッサンした僕の絵を塗り絵にしまして、ダンボール箱のジオラマにみんなで貼り付けてゆきました。これにも「やりたい!やりたい!」と集って来ました子ども達。何種類もある恐竜の絵を想い想いのイロドリで塗り上げてくれました。図鑑などにある恐竜の絵は、化石になって出て来たものを組み上げ再現した骨格に、肉や皮膚を付け描いた言わば『想像図』。化石として保存されにくい体毛や皮膚の色などは本当のところは誰も良くわかっていないのだとか。よくある恐竜の絵は緑とか茶色なんかの淋しい色で塗られているのですが、本当はどうなのか分かりません。この子達の塗ったオリジナリティー溢れるイロドリや彩色の方がずっとずっと素敵です。いろんな色を交えながら素敵に塗ってくれるこの子達のイマジネーションと感性をまぶしく見つめたものでした。
 僕の下手な塗り絵に勤しんでいるうちに、『これなら自分にも描ける』と思ったのでしょう。すみれの男の子が不意に「自分も恐竜を描きたい」と申し出て来ました。紙を渡すとさらさらさらと手早く描き上げてゆく男の子。いろんな恐竜を一杯一杯、それもちゃんと特徴を捉え「これ○○○!」と言われれば、「うん、分かるそっくり!」と言いたくなるような絵達を描いてくれたのでありました。その向上心と画才に僕もうれしくなってしまいました。早速スキャナーで取りこみまして恐竜バックに仕立てたり、恐竜ランド用の塗り絵なんかも作りまして、みんなで彼の才能にお相伴に預ったのでありました。そんなこんなで僕らのジオラマもこの子達のオリジナルの絵で満ち満ちあふれ、素敵な『恐竜ランド』が出来つつあるところです。
 子ども達の『たのしいこと探し』から始まった恐竜遊びがこんな風に素敵に子ども達の間に広がってます。神様から与えられたそれぞれの個性が自分達の『たのしい!』を感じ探し出し、こんな自己表現&スキル啓発へと発展・昇華してゆくのです。『想い』とはそれほどに大切なものであり、自分を支えてくれるもの。そしてそれを感じてあげることこそが、僕らの子育てを導いてくれる道標となるのです。


戻る