園庭の石段からみた情景〜園だより6月号より〜 2015.5.29
<水と子どもと戯れる季節>
 急に夏の陽射しの暑い日々がやって来まして子ども達、裸足での水遊びを楽しんだり水鉄砲で水を掛け合ったり、そんな風にして過ごしている5月の終り。『水との戯れ』と言うものは子ども達の心の琴線を大きく震わせてくれるのでしょう。ついこの間までびーびー言ってたばらさんまでもが水鉄砲を握り締め、僕に向かってぴゅーぴゅー水を掛けにやって来ます。園庭に枝を張り出し緑のはっぱを茂らせる桜の木陰に陣取りまして、子ども達の襲来を受ける僕。「やめてくださいよー」と弱腰モードで相手を誘い込めば、ここぞとばかりに近くまで来て一斉射撃をしてくる子ども達。そんな彼らを十分こちらの射程範囲に引き込んでから一気に反撃、「やっつたなぁー!」の奮起の言葉と共に攻勢に打って出る僕のリアクション。そんなお約束のようなやり取りの繰り返しに大喜びで走り去りゆく子ども達。そんな潮の満ち干のような水掛け合戦を楽しみながら共に涼を取っている僕らなのでありました。
 こう言う時の彼らのしたり顔は、いかにも『やってやったぜ!』のお調子笑顔。何か一つでも『自分の楽しい』と言うものを園生活の中で感じ見つけることが出来たなら、こんな笑顔で笑えるようにもなるのです。そう、『お調子モード』になれるからこそ心を開いてくれるこの子達。でもこんな遊びの中でこそ、往々にしてやってしまう『行き過ぎ・やりすぎ』をたしなめながら教え諭し、『みんなか楽しい・気持ち良い』と思えるようなそんなカリキュラムに昇華してゆくことが重要な教育課程と成り得るのです。子ども同士の水合戦の中で起きるトラブルに「いやな子にはかけないでね」「お友達が泣いちゃった、やり過ぎだね。ごめんね言える?」とそれくらいの声かけでもへそを曲げてしまう子ども達もありまして、自分が気持ち良いことをしているその時に『自己否定』をされたと言うその事実がこの子達の感情を大いに逆なでするのです。『癇に障る』とはきっとこう言うものなのでしょう。理由や正義はきっとそれぞれにあるにしても、それでも自分のしたことが相手にいやな想いをさせてしまったそのことを、感じる心と優しい想い・そしてそれを癒してあげたいと願う思いやりをこの子達には育てて行って欲しいと思うのです。みんなの傷ついた心がちょっとちょっとずつ寄り添って、みんなの心がほっとうれしくなれるようなそんな関わり合いが実現出来たなら素敵なことだと思うのです。

 子ども達の水遊びのバリエーションは次々展開してゆくようにもなりまして、水鉄砲の他にも砂場での川遊び・園庭の水撒き遊びに『井戸水タライ』の周りの水遊び・そしてお庭の水たまりどろどろびちゃびちゃ遊びなど、それぞれが好きな遊びに勤しみながら暑気払いを無作為のうちに楽しんでいます。砂場における水遊びはシェードが涼しい日陰を作り、そこに山からの涼やかな風がそよいで来る一番の避暑地です。そこで裸足になりまして、ひんやり気持ちの良い砂と水の感触を一杯に楽しんでいるのです。『井戸水タライ』の周りには絶えずちょろちょろ流れてくる山水とうれしそうに戯れている子ども達。汲み上げるバケツの横から豪快に水がこぼれ落ち、ズボンもシャツもびっしょびしょ。この豊富な水量と降り注ぐお日様のエネルギーが子ども達の体温を適切に調整してくれています。そして園庭に撒いた井戸水が気化熱を奪いその上昇気流が風を起こすのでしょう。水を撒き終え桜の木陰で風に吹かれながら僕が座り込んでると、隣にちょこんと腰掛ける男の子。「木陰は涼しいですねぇー」と言う僕の言葉を「すずしいですねぇー」とうれしそうに返してくれる僕の『木陰涼み友達』となってくれています。そしてそんな僕らの目の前にちゃちゃっとやって来た女の子、そこにある水たまりのその中でびちゃびちゃジャンプジャンプご機嫌顔の裸足遊び。彼女のそんな所作にわーきゃー言う僕らのリアクションが面白くって、お次はこっちにむけて足をふりふり『ぴっぴっ!』と泥を飛ばしてくるではありませんか。「やめてくださいよー!」と言えばなおさらお調子、ぴっぴっぴ!。最後は「こーらー!」と重い腰を上げ追いかける素振りを見せたなら、きゃーと言ってそこから逃げ出してゆくかわゆい彼女なのでありました。
 『風流』を感じながら水遊びや裸足・泥遊びには抵抗があるその男の子と、『突撃体験派』のパワフル元気娘をあっちとこっちに見つめながら、神様の与えたもうた『一人一人の個性』と言うものの不思議さを僕はうれしく感じています。『生命の多様性』は神様のくださった個性の源。みんな同じではつまらない。多様性を持った僕らの命がお互いに影響を与え合って、色んなことが出来るように素敵に対応出来るよに、して行ってくれるのです。彼女のワイルドな立ち振る舞いをうやましそうに見ていた男の子。きっといつか「ぼくも!」とそんな『その気』になれた時、未知なる自分にチャレンジしてくれるかもしれません。彼女の方もきっとそう。素敵な感性に触れることで、慎ましやかな新たな自分に巡り会うこともあるでしょう。

 いずれにしても体内に熱が篭るのが熱中症の原因ですから、水で体を冷やしながら、日陰で涼やかな風に吹かれながら、そして活発な活動で汗をかき体内の熱を放出しながら、こんなして元気に遊ぶのが夏の健康的な過ごし方なのでしょう。気をつけるべきは水分補給と夏の陽射しの浴びっぱなし。外に出る時は子ども達に「お茶飲んだ?帽子かぶった?」と必ず声を掛け、お互いに気をつけるようにしています。ずーっと上々天気が続きまして、水とそして子ども達と戯れながら遊びに遊んだこの一週間、夕方の終業時頃や家に帰ってからほわっとした心地の良い疲れを僕も感じたものでした。おかげさまで良く食べぐっすり眠れまして、体の調子もいい感じ。きっと子ども達もお家でそんな感じなのではないでしょうか。この毎日の蓄積が夏本番に向けての『心と体の体力』にきっとなって行ってくれることでしょう。


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