園庭の石段からみた情景〜園だより12月号より〜 2016.12.18
<クリスマスの献げ物>
 今年はまったりムードで過ごして来た年の瀬でありまして、子ども達もクリスマス祝会で歌い演奏するクリスマスソングを自由遊びの中で口ずさんだりしながら遊んでいたものでありました。そのていは「発表会、よし!やらなくっちゃ!」と言う変に肩に力の入った姿ではなく、『イエス様のお誕生日であるクリスマス』を祝い待ち望むお楽しみムードに満たされた『嬉しいクリスマス』を体現してくれているかのようでした。僕ら教師もそんな子ども達の姿に心を癒され、ただただ『クリスマスおめでとう』の想いを自らの心の中に満たしながら歩んで来たアドベント週間でありました。そのほんわかムードはとってもいい感じだったのですが、ただ「あっ!あれ忘れてた!」「これ、成り立っていないじゃん」と直前になって色々な抜けに気がつく有様にちょっとドギマギ。しかし本番前にひとつひとつ気付きを与えられ、みんなで相談したり省み話し合ったりもいたしながら、『僕達のクリスマス』を整えてゆくことの出来たとても豊かな時を過ごすことが出来たように思います。長年いるはずの僕と潤子先生の記憶力はなんとも心もとないものでありますし、眞美先生はうちでの初めてのクリスマスに勝手が分かるはずもありません。まだ2回しか『日土幼稚園のクリスマス』を経験していないはずの真理先生が一番頼りの綱となってあれこれ切り盛りをしてくれまして、どうにか本番当日を心置きなく迎えることが出来たのでありました。頼りない自分達を棚に上げて言うのもなんですが、彼女の成長と飛躍を嬉しく感じさせてもらった今年のクリスマスでありました。

 今年のページェントもおかげさまで神様への『献げ物』としてなんとかお献げすることが出来ました。しかしその中にはいくつもの知られざる物語がありまして、その『なんとか』も先生と子ども達のがんばりによって素敵に編まれた『今年の一番出来』のページェントだったと、喜びをもってご報告させていただきます。
 まずは羊、今年はばら組全員で担いました。例年ですともも・すみれでまかない切れなかった数をばらから出してもらっていたのですが、「5人しかいないばら組の中から『この子とこの子だけを出して』と言うのは子ども達や親御さんの想いを考えたらなんともしがたいので、全員で出させてもらえませんか」と担任の先生から申し出がありまして、そのような挑戦を試みました。「たかが羊」と言うなかれ。本来ならもも組相当の子ども達が練習を重ねてやっと成り立っていた羊の演技。ばらさんがあたふたするのも仕方ありません。また3人の羊飼いに対して5匹の羊となった今回の『羊飼いへのお告げの幕』で「聖劇の勝手がまだよく分からぬ羊達をどのようにしたらよりよく導けるだろうか」と羊飼いとの組み合わせを模索しながら練習をして来ました。それによって羊飼いと羊のペアーがなかなか定まらず、子ども達には心細い想いをさせてしまったことでしょう。しかし羊とは本来『小心な生き物』で、牧者を頼りとしその存在を絶対的に必要としている動物なのです。『迷える小羊』と言う言葉がありますが特定の羊が迷うのではなく、どの羊もちょっとしたことで迷い自分の道を見失うのです。それが私達人間であり、その羊を導くために神様から私達に与えられた牧者がイエス様。「私は良い羊飼い」とイエス様は自らおっしゃいました。練習からずっと今年はこの幕を見る度に、その御言葉を思い出しては感慨にふけった僕。今回この情景によってそんな御言葉に想いが至り、「僕らもちゃんとしたいと願っていても、この子達のようにふとしたことで道を誤る羊なんだよね」と言う気付きをもってこの幕を愛しく見つめていたのでありました。
 また『宿屋探しの幕』では「大きな声でセリフをしっかりと言わなくちゃ」と一生懸命練習をしていたヨセフさんとマリアさん。でもどうもそっちの方に気が行き過ぎて語調がきつくなってしまいます。子ども達には分からないことかも知れませんが妻帯者の僕にとっては自分の身につまされるところがありまして、「あの言葉の交わし方は切ないよね」と変に引っかかってしまいました。一生懸命やっているこの子達のモチベーションを下げるようなことにならないように言葉を選びながら、「とっても大きな声でいいんだけれど、ヨセフさんとマリアさんはラブラブなんだからもっと優しい声で言ってあげたらもっともっと良くなるんじゃない?」。ヨセフさんの顔がくしゃくしゃになるのを見て「しくじった?」と思ったのですが、真理先生から「嬉しくって照れてるんですよ」って言ってもらってほっとしたのを覚えています。マリアさんが大好きなヨセフさん、『お互いにラブラブ』って言葉がなんとも嬉しかったみたいです。本番では大きな声で、でも相手を思いやるようなここ一番の優しい声で「マリアさん疲れましたか?」って言ってくれました。それがなんとも嬉しかった『宿屋探しの幕』。例年『マリアさんのおまけ』のように見られてしまうヨセフさんでありますが、そんな思いもあって大きな存在感を見せてくれた、公私共に「マリアさん大好き!」の『フェミニスト・ヨセフさん』でありました。

 一幕一幕・一人一人の演技を振り返ったなら言葉と想いは尽きません。でもそれはこうして一幕一幕をみんなで作り上げて来た今年の聖劇だったからこそ。『前からこう言う風にやって来た』で終わらせなかった先生達とその想いに一生懸命応えてくれた子ども達。みんなで編み上げ織り成して来た素敵な聖劇がクリスマス礼拝で神様に献げられました。これぞ讃美歌にもあった『私も僕もイエス様にお献げしますこの心』。いろんな『あちゃー』もありましたが、みんなが最後まで嬉しそうな笑顔で聖劇を演じ、『飼い葉桶にすやすやと』の讃美歌を朗々と歌い上げてくれたそのことが、「クリスマスおめでとう!イエス様のお誕生おめでとう!」の想いを心のうちから体現出来た、何よりの献げ物であったと僕はそう思うのです。


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