園庭の石段からみた情景〜園だより9月号より〜 2016.9.18
<熱い季節の置き土産>
 暑かった今年の夏休み。最高気温で言えばもっと高い年もきっとあったかも知れませんが、ひと月以上雨が降らないと言うのは僕もあまり記憶にありません。大昔であるならば『日照り』で村じゅう大騒ぎ、『雨乞い』なんて風景もきっとあちらこちらで見られたのでは、などと思いつつ過ごした夏でした。そんな中、『おじちゃんのゴーヤ』ばかりは青々とはっぱを茂らせまして、毎日僕らに『日毎の糧』を与えてくれました。お昼時になって畑に出てゆき蔦の茂みの中をさぐってみれば、大きなゴーヤが現われます。冷蔵庫に残っているソーセージやベーコンと合わせて塩・コショウ・赤い唐辛子をちぎってひと房入れたなら『ピリカラ・ゴーヤ炒め』の出来上がり。そんな毎日の夏メニューのおかげさまか、暑いわりには食欲も落ちることなく元気に過ごすことが出来ました。それ程に毎日いただいても僕らが食べる以上にその実を成らせてくれたゴーヤ君。その時採れた一番良い物を木曜礼拝の壇上に献げ、牧師先生や幼稚園の先生達にも週に一度のおすそ分けを振る舞い差し上げることが出来ました。夏の恵みをみんなで分かち合えたそんなひと夏でありました。

 夏休みを明けて幼稚園にやって来た子ども達。今年は例年見られる『9月シック』も露ぞ見かけることもありませんで、順調に滑り出した新学期となりました。今月は敬老参観日に敬老会・そしてひよこクラブまで『ドラえもんフィーバー』に花咲いた、そんなひと月でありました。そもそもは眞美先生がばらのクラスで弾きつつ子ども達と歌っていた『夢をかなえてドラえもん』の歌がその一粒種。先生が子ども達に「今日は何歌う?」と投げかけたなら「シャララララン!」と言って応えていたばら組さん。ほんとに「シャラララン」しか歌えないそのくせに、毎日毎日「シャララララン!」と言ってせがむので、あの高らかな鈴が鳴り響くような軽快なメロディーが毎日幼稚園に流れたのでありました。そんなばら組にこれまたドラえもん大好きなたんぽぽさん達が加わって、フィーバーが過熱してゆきます。そのうち段々と歌詞の部分も歌えるようになって来て、この歌はばら・たんぽぽ組のテーマソングとなって行ったのでありました。
 それを聞きつけた他のクラスの先生達。潤子先生などは聞いたこともないこの楽曲を弾こうと楽譜をコピーしてもらったところまでは良かったのですが、なんかちょっとへんちくりん。初見で何でも弾きこなしてしまうほどピアノの上手な潤子先生なのですが、四分音譜八分音符で書かれた楽譜ではこの曲のシンコペーションや微妙なアタックの付け所が表現しきれず、早々に弾き語りをギブアップしておりました。でもこの歌は大いに気に入ったみたいでありまして、SDデッキに曲を入れて繰り返し繰り返し子ども達と一緒に聞いていた潤子先生でありました。
 例年『日土の敬老会』ではすみれ組が運動会で踊るダンスを一足早くお披露目していたのでありますが、今年は職員会で「違うものをした方がいいんじゃない?」とそんな意見が交わされて、最後は「私がやるわ!」と潤子先生が引き受け別プログラムを立てることになりました。そこで潤子先生が持って来たのがあの『ドラえもん』。今年は十人中八人が日土っ子と言うもも組にあって、ももの子達もダンスに入れて『ドラえもん』を踊ることとなったのです。そうは言っても結局のところ振り付けから本番での指揮までやってくれたのは真理先生。この僕はと言えばカラービニール袋で作る衣装作成のお手伝いくらいにしかお役に立ちませんでしたが、若い先生を奮起に駆り立て新たな扉が開かれた、そんな出来事でありました。でも真理先生には楽にしてあげるつもりが余計忙しくさせてしまってごめんなさいでした。

 そんな素敵なストーリーと並行しまして、僕は僕でこのドラえもんとひよこクラブをなんとかつなげられないかと考えながら夏の終りを過ごしていました。今月のテーマは『運動会ごっこ』。アマゾンで絵本を探しても『ドラえもん・運動会』で引っかかるものはありません。キーワードをあれこれ変えながらやっと探し当てたのが『うさぎとかめ』、のび太とジャイアン達のかけっこのお話でした。そこからオリンピックにちなみまして『ドラえもん達の金メダル』と言う製作を企画して、ドラえもん・のび太・しずかちゃん・ジャイアン・スネ夫の顔を漫画とにらめっこしながら描いたのでありました。それがひよこちゃん達には大好評。のび太みたいなヘタレ君がジャイアンを選んで持って行ってしたり顔、そんな情景に思わず笑ってしまいながらも子ども達のメダル製作を嬉しく見つめていた僕なのでありました。
 この塗り絵、幼稚園の子達にも大人気となりまして、お面にしたりメダルにしたり、今でも嬉しそうに遊んでくれています。そんなある時、ドラえもん達のお面やメダルをつけていたばら・たんぽぽさんを見つけまして、これはと思い『夢をかなえて…』の音源をかけてみました。すると一度も練習をしたことなどないこの子達がドラえもんの曲に合わせてあの『敬老会ダンス』を踊り出したではありませんか。これには僕も眞美先生もびっくりして「すごーい!」と大喜びしてしまいました。ばら組発のこのドラえもんブームが大きな大きな実を結び、またこのクラスに戻って来てくれたことの不思議と感動を味わいながら喜び合った僕らなのでありました。
 幼稚園にとって今は『日照り』の季節なのかも知れません。園児は減る一方、教師も足りないような状況です。でも神様はこの日土幼稚園のために必要なものをいつも備え整えて下さいます。ドラえもんの風を運んで来てくれた眞美先生に新たな挑戦で子ども達を導いてくれた真理先生、そしてその後ろで旗を振っていた潤子先生。その結果みんなで手に入れたこの熱い季節の置き土産の大きな実りを神様に感謝しつつ、また子ども達と一緒に歌い踊りしたいなぁと思っている今日この頃です。


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