子育て講座2月『ひきがたり』レジメ〜歌のちから〜
    2020.2.21
 二月の子育て講座は『ひきがたり』です。今年度は時代が平成から令和へと移り変わり、世の中も大きく様変わりした一年間だったと思います。そしてその『先の時代』に想いを添わせてゆくように、多くの方々とのお別れも体験した年でもありました。共に生きた時代においてはあまり考えも感じもしなかった物事について、「あの人はどんな想いで僕らを見つめていたんだろう」と想いを馳せることもしばしば。今回のひきがたりでは歌の歌詞を拾いながら、その人達のことをリスペクトすることによって、その想いにもう一度息吹きを与えることが出来るんじゃないかとそんな風に思っています。存命の時には『想いを継ぐ』なんて意識もなかったのが、『もうその想いを聞くことも確かめることも出来ない状況』に立たされて初めてそんなことを意識し始めるのですから、人と言うのは本当に愚かなもの。しかし、そうして僕らは命の新陳代謝を行ないながら、先に生きた人々の想いを後世に伝え残してゆくと言う本能を持った生き物なのかも知れません。そうしなければ意志も情報量も膨大過ぎて、争いの種にしかならない『人の想い』と言うものを、人類の財産と成さしめているのはそんな命のメカニズムなのかも知れません。そんな想いを呼び起こしてくれる『歌のちから』を皆さんと共に感じ分かち合いたいと思っています。2月26日(水)13:00〜14:00幼稚園ホールにて。皆さんのお越しをお待ちしております。ちっちゃい子達も大歓迎、一緒に騒いで行ってください。

○<アンパンマンのマーチ〜手のひらを太陽に>
 今年も作者のやなせたかしさんの生き方や表現について事ある毎に学んだ一年でありました。アニメのアンパンマンを見る度に、そして子育て講座のために初期の作品『やさしいライオン』や『あんぱんまん』を開いた時に、また彼の手記『アンパンマンの遺書』を読み返してみたその時に、「この人の本当に言いたかったことってこう言うことだったんだろうな」と思ったものでありました。昔は『目立ちたがりの悪乗りの好きなおじいさん』と言うイメージを抱いていたのですが、しかし亡くなってから残された作品に数多く触れその想いに想いを馳せた時、彼の真実が僕の中で明確に構築されて行ったのです。そこから現代の矛盾や病んだ思いを改めて感じ、自分自身もその現代の一部であること・もっと自らを省み深く考えないといけないと言うことを思わされたものでありました。それは祖母を亡くして一年が経つこの時期だからなおさらなのかも。祖母だけでなく、亡くなってもうじき15年にもなる祖父の想いにもよくよく想いを馳せるようにもなりました。あんなに偏屈な人は世の中にいなくなりました。一緒にいた時には窮屈に思えた祖父の信念も、今となっては「このことを覚え誰かが後世に伝えてゆかなければ、この世の中はただ楽のみを求めて堕落してゆくのかも」とそんなことを思う歳にもなりました。それが今の時代では時流に逆らったやせ我慢なのかも知れません。しかし生物が自らを甘やかすようになったなら、神様から与えられた能力をも退化させていずれ滅んでゆくでしょう。そうではない一つの輝ける生命として自らの生きる力を信じ育てる教育をこの幼稚園で子ども達に・そしてお母さん達に投げかけてゆきたいと思うのです。それが神様に与えられ、先達から受け継いだ僕の使命だと思うから。

○<パプリカ>
 この一年を通して幼稚園で一番歌われた曲。11月の誕生会で子ども達にギターの弾き語りで歌いかけたなら、みんなが思いっきり歌い返して来てくれた嬉しい思い出も出来ました。世の中の流行りを保育の中のブームにつなげる手腕が本当に上手な幼稚園の先生達。僕はと言えばそのおこぼれに預かって、子ども達と楽しく歌って想いを分かち合うそんな贈り物をいつもいただいています。でもそれも自分自身も子ども達の歌に真剣に向き合っているからだとも思うのです。編曲ひとつ・リズム回しひとつとっても、納得するまで推敲と練習を重ねるのでありますが、なんで自分がそこでその節回しをしたいのか分からない時もあります。そんな中、そのフレーズがなかなか弾けず繰り返し練習するのですが、そんな時は同じ節を10分も20分も弾いています。子ども達はよく練習事で「5回やった!」「10回弾いた!」などと言いますが、自分がなりたいものになるための練習は回数ではないのです。「どれだけそれが出来る自分になりたいか」、ただそれだけ。その想いを持ってこのように音楽を続けている自分は、音楽を愛していること・音楽から愛されていることを幸せに思うのでありました。ご家庭でも子ども達とこの歌を一緒に歌ってみてください。テレビから聞こえてくるありきたりの音楽ではない、その歌の中に息づく子ども達の想いにきっと感じ入るところがあるのではないでしょうか。

○<老人のつぶやき・歌を捧げて・生まれ来る子ども達のために(小田和正)>
 去年のクリスマスは二年ぶりに小田和正の『クリスマスの約束』(TBS)が放送され、また彼の歌に対する想いを嬉しく受け止めたものでありました。一度は止まってしまった時計ですが、「また動き出すことも出来るんだ」と本当に大きな勇気をもらいました。止まってしまったもの・変わってしまったものを見つめ直す時間は、時には僕らにも必要なのでしょう。それが僕らのひとりよがりになっていないか・みんなから愛されるものとなれているのか。日々精一杯自分の出来る限りを貫いている僕らには、なかなか自らを省みることが出来ません。意地やプライドもあるでしょう。でもそんな時、昔の歌を歌いながらその時の新鮮な想い・昔自分を愛してくれた人達の想いを思い返すことにより、素直に今の自分について見つめ直し向き合うことが出来るんじゃないかとそんな風に思うのです。それが『歌のちから』。歌は時を越えて僕らに何かを思い起こさせてくれる『心のタイムカプセル』なのだと思うのです。


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