園庭の石段からみた情景〜園だより5月号より〜 2019.5.20
<神様が賜う教育課程>
 雨に風に雷まで鳴り響いたかと思いきや、ぱぁーっと晴れて陽射しがジリジリと肌を焼く、そんな目まぐるしく天候の移ろった十連休でありました。例年ならば連休中に旬を過ぎてしまう幼稚園のさくらんぼが季節外れの寒さのおかげか今年はどんぴしゃりのタイミング。連休明けの子ども達に大収穫のプレゼントをしてくれたものでありました。今年はこのさくらんぼだけでなく、園庭にたたずむ染井吉野や陽光桜達までも沢山実をつけると言うさくらんぼイヤー。その分、去年梅ジュースを漬ける程に一杯採れた梅の実は数えるほどしか成っておらず、自然の妙を感じさせてくれる今年の皐月となっております。でもこれも自然の理なのかも知れません。
 毎年同じ季節の移り変わりをトレースしているように思われるこの国の四季でありますが、山の果実や草花の生育ひとつ取っても決して同じようにはなりません。そう、それらは僕らの想い通りにはならないものであるからこそ、『与えられた』その時には感謝の想いを持って神様に祈りを献げたいと思えるのでしょう。そしてそれは日常の保育や子育てにおいても同じなのではないかと思うのです。日頃丁々発止でやり合っている子ども達と想いが通じ合ったと感じることが出来た時、それは偶然の出来事ではなく、彼らの成長と僕ら自身の成長・そしてそのように導いてくださった神様の御心から生まれた必然だったと僕には感じられるのです。そしてそれを『自分が成し得たこと』ではなく『神様が与えてくださったこと』として受け止めることが出来たなら、そこに至るまでの自分にとって良し悪しすべての事柄も『神様の御心』として受け入れることが出来るようになるのではないかと思うのです。これまたなかなか難しいことではあるのですが。でも「そうなりたい」と神様に祈り求めることから、いつも僕は歩み始めたいと願っています。

 今年の春は『日土幼稚園らしい保育』を体現しようと、各クラスの先生が創意工夫を持って子ども達にプロデュースしている、そんな情景をよくよく見かけます。ばらさんは眞美先生お得意のおさんぽで、野山に繰り出しては色んな自然物を収集・収穫して来ます。先日はたけのこ狩りに繰り出したその先で野イチゴがなっているのを見つけたばらさん達。一度帰って来てすみれさん・ももさんも誘いまして総出で野イチゴ狩りに出かけたものでありました。ももさんはダンゴ虫収集と飼育を始めましたし、すみれさんは「巣をつくるところを見てみたい」と瓶に砂を入れまして蟻を飼ってお世話しています。連休中、この蟻瓶の中に白カビが生えてしまって真理先生と子ども達は大騒ぎ。「でも蟻、生きていたんですよ」と不思議がっておりました。飼育を始める前に日光で砂を焼いて「これで大丈夫」と思っていたところに発生した腐海だっただけにショックは大きかったようなのですが、でも目に見えないだけで僕らはこんな菌類に囲まれてこんな微生物達と共に生きているんだと言うことを感じた瞬間だったのかも知れません。餌を核にそこに生えたカビはどこから来た菌か分かりません。元々餌についていたのか、蟻の体についていたのか、はたまた後から空気中を漂って入って来たのか。そこよりも見るべき所は『一緒にいた中の蟻にはカビは生えなかった』と言うこと。身体の免疫作用がしっかり働いているこの蟻達にはカビは生えず、元気に活動していたと言う所です。蟻だって死骸や弱っている身体だったならカビは生えていたかも知れません。「生きる力ってすごいよね」と改めて思わされたものでありました。そして「僕らも神様から与えられたこの身体の潜在能力と免疫力をしっかりと働かせてゆくことで、ちょっとぐらいの風邪や病気や困難に負けない心と体を保って行きたいね」とそんなことを想わされた情景でもありました。そうは言っても幼心と乙女心のすみれさん、一度カビが生えたあの『蟻の巣瓶』は気持ちの良い物ではありませんので、もう一度きれいにやり直しまして『蟻の巣プロジェクト』に再挑戦していたのでありました。

 ももさんの『ダンゴ虫プロジェクト』にも色んな経緯がありまして、最初は喜んで集めるだけ集めていた子ども達がその後の配慮の至らなさから何匹も死なせてしまったことがありました。美香先生は子ども達を集めて「お墓を作ろう」と埋葬し、お祈りもしてダンゴ虫を送ってくれました。それからしばらくして『収集モード』が一旦収まったそんな頃、一人の女の子が僕の所につつーっとやって参りました。その掌を見ると死んだダンゴ虫が乗せられています。「ダンゴ虫が死んでいたの。埋めてお祈りしてあげて」と彼女は言うのです。ばら組の頃は「虫!うぇ!」って言っていたこの子のけなげなその素振りに魅せられながら、僕らは一緒にこのダンゴ虫を埋葬しに行きました。そして丁寧に穴を掘りダンゴ虫を埋めて土を被せると、もう一度「お祈りして」と言う彼女。「天の神様、ダンゴ虫君が死んでしまいました。天国に行って元気に遊ぶことが出来るように守ってあげてください。このお祈りをイエス様のお名前を通して献げいたします」とお祈りすると、一緒に「アーメン」と言ってくれたのでありました。その後、「お墓にお花を飾ってあげる」と花を摘みに行った女の子。その可憐な姿とこの子の心の成長に大いに感じ入ってしまった僕でした。先生達がこれまで投げかけ続けて来てくれた優しさや豊かな心が、こうしてこの子達の中に芽を出し息づいてくれたこと、本当に嬉しく思います。建物は古くて不便、園児数は少なくて何も誇るもののない日土幼稚園ですが、この豊かな自然とキリスト教保育の精神が、この子達の心を確かに豊かに育ててくれていることを実感させてくれた情景でありました。そして改めてこれら全ての事々を導いてくださる神様と、御心に従いながら僕らが行っている日土幼稚園の保育を理解し受け入れてくださっている保護者の方々に心から感謝したいと思ったものでした。


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