園庭の石段からみた情景〜園だより3月号より〜 2025.2.15 |
<僕らの大雪物語> 今年の寒波と大雪には振り回されましたが、『数年に一度』と言う形容は的を得ていたのかもしれません。まだ雪が降り続く中、母屋の会議室で仕事をしていると「どどど」と音がして、雪が滑り落ちてゆくのを感じます。当初気温がそこまで低くなく、水分を多分に含んでいたこともあって滑りやすかったみたいです。「どどど」の音を聞くたびに絵本『ぽとんぽとんは何の音』の母熊と子熊の会話を思い出し、「もうすぐ春が来るんだね」とそんな想いに浸ったものでした。しかし現実はそれから更に寒波が居座って、気温も下がり各所で凍結が起こった所から事態が悪化してゆきます。徐々に融け始めたと思われた雪も、気温の低下により雪同士が結合し、屋根の端まで来ているのになかなか落っこちてくれません。それはお好み焼きの上で踊る鰹節のように『そっくり返りながらも落ち切らずにしがみついている』そんな見栄え。普通はちょっとずつ融けたり落ちたりしながら自然に負荷が取り除かれてゆくのですが、今回の雪は水気の重量分も相まって重たく固くなってゆきます。最後は自重に耐え切れなくなってついには落下するのですが、その際に発生する『速度エネルギー』と『位置エネルギー』は雪の重みで何倍にもなり、瓦や雨どいをなぎ倒してゆきました。それはこれまでにない大きな規模で幼稚園の屋根を痛めつけて行ったのです。子ども達や職員が来れないような状況下で起きたと言うことが唯一の救い。こう言う事態を鑑みれば、日土においてはここ20〜30年で一番の大雪だったと言えるのかもしれません。他にも色々な『事件』もあったのですが、怪我人が出なかったことが一番なによりでありました。神様の御守りと御心に感謝しつつ、これも賜物として受け止めた今回の豪雪でありました。
一方で自然からのプレゼントによってその稀有なる寒波の到来を実感したことがいくつもありました。幼稚園の離れに住まう僕は毎日歩いて通勤出来、『大雪の幼稚園』を五感で体験することが出来ました。状況確認や復旧作業に勤しむ日々の中、ある夕刻の帰りがけのことでした。玄関のカギを閉め家まで帰ろうとしたその時、職員室の前の桜の木に一羽の鳥が留まりました。その体には青と黄の色が施され、このモノトーンの季節にはあまり見かけないカラーリングがとても印象的。瞬間的に「これは何?」と僕の中で分析が始まり、この色の組み合わせからして『ルリビタキ』の名前が頭に浮かんで来ました。その小鳥はすぐに幼稚園裏手へと飛び去って行ったのですが、僕らがこの地でいつも見ている鳥達とは明らかに違います。家に帰って図鑑を調べたらやはり『ルリビタキ』と言うヒタキの仲間でした。
またふるさとまつりの準備の日、帰り際にAコープのふれあいマートで食料を買おうとそちらに足を向けた僕。この大雪で八幡浜の街へ出る事も出来なかったので、このお店が開いてくれていたこと、本当に感謝でありました。歩いて行けるところにお店があることのありがたさを身をもって感じた一週間でした。この日の買い物を終え、県道を渡って遊歩道に上がろうとしたその瞬間、背後から僕を追い越して河原へと飛んで行った鳥がありました。こちらは黒と茶色の鹿の子模様。これもこの地であまり見たことのない鳥なのですが、写真や映像で見知った特徴的なその姿。『トラツグミ』です。その飛び込んで行った先を目で追ったのですが、藪の中へと消えゆき本当に『ひとめ』だけの出会いでありました。どちらもこの寒波に乗ってやって来たか、はたまた厳しすぎる寒さに山奥から押し出されて来たものか、どちらかは分かりませんがこの大寒波が連れて来てくれた珍しいお客さんに違いありません。今年の寒波は僕らに色々なものを残してゆきましたが、そんな中でもひとつふたつ幸せを数えることが出来たなら、それはまた「仕方ないね」と受け入れられる想いにもつながるもの。自然とはそう言うものなのです。 |