園庭の石段からみた情景~園だより12月号より~ 2025.12.10
本当の紅葉>
 今年は日中温かな11月となったが故に、朝晩の冷え込みによって寒暖差の大きな秋となりました。そのおかげか蔦も桜も少しずつきれいに色付いて、「今年は良い写真が撮れそう」とそのピークの到来を心待ちにしていたものです。それが師走の始めに今年一番の寒波が訪れて、一夜にしてその葉っぱの半分強を吹き飛ばしてゆきました。東北や北海道では積雪観測、県内でも松山で初雪となったこの寒波。日土の里も本格的な寒さに身を震わせたものでしたが雪とまではならず、「これくらいで済んで良かった」と胸を撫で下ろしたものでした。僕らは何かにつけて「まだまだもっと」を望んでしまうもの。ベクトルが上向きであれば「まだこの先はもっと良いはず・すごいはず」と現状に心を留めずムゲに通過してしまうもの。でも今となっては最初に気付いたあの時に、もっと想いを向けていたらよかった…とちょっと後悔。今となっては門前の煉瓦蔵もほとんどの葉っぱが散り去りまして、「また一年かけて来年の紅葉を待たなくっちゃ…」と思っているところです。でも別の紅葉に目を向ければまだまだ銀杏の葉っぱは大夫残っており、夕刻の日差しがその黄金色をより一層際立たせてくれています。もみじのクレナイ色とのコントラストが美しいこの銀杏をなんとか写真に出来ないかと只今模索中。こちらは『もみじの紅葉待ち』なのですが、全てが整えられるタイミングと言うのはやはり難しいもののよう。なのでこまめに足を運びカメラを向けながら、ベストの瞬間が与えられるその時を待ち望んでいる今日この頃です。どこがベストか、今はまだ分からないけど。

聖劇練習もいよいよ4週目に入りました。言われたことはきちんと『やって・覚えて』してくれる今年の子ども達。すみれだけでなくももさんもアドベント第3週にはだいぶ良い感じになって来ました。「大きな声で」と言われればすみれ以上に大張り切りでやってみせるこの子達。複数人で一役をやったり、劇中歌も12月の讃美歌で毎日歌うものであったりと、難し過ぎないように配慮はされているのですが、それでもここまで出来るようになった彼らの努力とがんばりは大したものだと感心しています。しかしそこを先生達に褒められて自信が驕りになったのか、自分の役以外のところでフラフラしたりよそ見をしたりする姿が目立つようになって来ました。こちらの方がこの子達にとっては試練なのかもしれません。「やることはちゃんとやったんだからいいじゃない」「この場面では僕にやることはないし」って想いがあるのかもしれません。『先に色付いた木々のジレンマ』ってこう言うものなのかもしれません。「僕、上手に出来ているでしょ。そこを見て褒めてよ!」と言う想いがこれまであった緊張感や集中力を解き放ってしまったのでしょう。そんな彼らに僕が贈ったのは『お献げします、この心』と言う劇中歌にもある言葉でした。「自分の役を一生懸命やるのも大事。でも最後のこの幕では君達は『イエス様のお誕生を喜んでいるお客さん』の役なんだよ。そこでは自分の心をイエス様にしっかり向けながら・心をお献げしながら、後から来た羊飼いや博士達を見つめ一緒に喜んでいるって役なの」と諭した僕。その言葉をどれだけ分かってくれたかは分かりません。先生が「じっとしていて」と言うからただただがんばってじっとしていたのかもしれません。いずれにしてもそんな言葉をかけてから、幾分かは落ち着いて来てくれたような気がするこの子達。でも僕にとっては確かに伝わったような感じがするのです。ももさん達、しばらくすると「あー、切れて来たかな?」の様相を見せ始めるのですが、ある瞬間ふと我に返り、またがんばりを見せてくれるのです。「そう言えば君達、去年は気ままにくねくねうねうね動き回る羊だったよね…」と懐かしい情景を思い出しながら、一年分の進化と成長を嬉しく見つめています。『出来る・出来ない』はその時々のことであるのですが、そんな自分に気が付いて改めてスイッチを入れ直すことが出来るようになったこの子達。そんな『想いのベクトル』が上向きになっている姿を嬉しく受け止めている僕なのです。

 またすみれさんは直前に何人ものお休みが出て大ピンチ。リハーサルでは最初代役天使の登場に気付かず、「今日はまた声が低いな。喉の調子が悪いのかな?」なんて思っていたら実は代役の男の子でした。お休みさんの穴を埋めるのに大奮闘していたすみれさん。その分『メンタル疲弊』もあったのでしょう、本来の自分の役がぼろぼろ。リハーサルだと言うのに『劇を停めてやり直し』なんて場面もあったほどでした。いつも隣で見ているので代役も出来はするものの、頭がこんがらがって自分の役の方が大変なことになっていました。こんなことになってこの子達には本当に「お気の毒ですが…」の想いです。でもこうした状況でやってみるとお休みした子に頼っていたところがかなりあったと分かり、一人一人がもう一度自分の役や演技と向き合う必要性を教えてくれました。お互いに支え合うことは大事なのですが、それでも自分のしなくてはいけないことをきちんとやった上で挑まなければ、本当に聖劇・そしてその役をリスペクトしたことにはなりません。休んだ子に引っ張られることで出来ていたことが、彼のお休みによって全く出来なかったこの子達。それこそが課題であると先生も本人達も自覚して、改めて自らと向き合う時を過ごしているすみれ組でありました。
 一見、赤く色付いて見えたこの子達の紅葉。でもそれがまたうわべだけのものであったことが分かったリハーサル。『上手にそつなく』でやって来たこの子達にとって最大級の試練になったでありましょう。でも彼らの『本当の紅葉』はこの先にあるのです。それに向かって自分自身を高めてゆく歩みを見せてくれているこの子達。その変わりゆく彼らの演技と聖劇にかける想いを、まばゆく見つめている僕です。



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