| 園庭の石段からみた情景〜園だより9月号より〜 2026.9.16 |
| <日土の谷に響く声> 今年は夏を挟んでイソヒヨドリのさえずりが高らかに日土の谷に響き渡っています。この留鳥のさえずりは日土幼稚園の風物詩で、母屋の飾り瓦に停まっては「ピーロロ、クピピピピー」と鳴いているのですが、今年はそれがステレオサラウンドのようにあっちからもこっちからも聞こえて来るのです。母屋裏の崖から聞こえて来たかと思いきや、それに応えて新館奥の鬼ぐるみの木からも鳴き声が。更にはすべり台上のどんぐり雑木林からも聞こえて来まして、「一体何羽いるんだろう?」とそんな感慨。初めは「ヒー!ヒー!」鳴いているので「ヒタキがいるの?こんな時期に?」と思っていたのですが、それに続いて「ピロピロ」言い出すので「ああ、練習中だったのね」と思ったもの。でそれが皆イソヒヨドリだと言う考察に行き着いた時、夏前に巣立って行ったあの雛鳥達のことを思い出したのでありました。当時は「ジェッ!ジェッ!」の地鳴きでしか鳴けなかったあの子達が大人のような鳴きぶりで鳴けるようになったんだなぁ…と感無量。そして今でも家族一緒に行動しているのか、近くにいてさえずり合っている仲良しぶりを感じることも出来まして、なんか嬉しくなってしまったのでありました。 そんな頃、幼稚園も新学期が始まりました。リスタートした新生活は僕にとっても子ども達にとっても新たな発見と体験のオンパレード。長い夏休みを明けての新生活、すっかり忘れてしまった園生活のリズムを取り戻そうと四苦八苦していた子達もありましたが、また例によって『やってみたら出来ちゃった』の実践ですぐに勘を取り戻して来てくれたよう。頭で分かっているのに出来ない物事も、その中に飛び込んで自らやってみることが何よりの『リハビリ』となるのです。その最たるものが長休み明けの僕自身だったのですが…。そこに新たに加わった新人たんぽぽさん。ひよこクラブに来ていた時はいつもお母さんの後ろに隠れていた彼女が入園初日、お母さんと離れても泣くことなく一日を過ごせたと聞いて驚かされたものでした。元々しっかりさんであることは分かっていましたが、「『幼稚園ってお母さんと離れて過ごす場所』って分かったら泣いちゃうよね」と思いつつ迎えた僕らだったので、本当にびっくりでありました。ケロッとした顔で舞台の上にすっと立ち、みんなにお披露目した始業式。自分の口で名前を言うことが出来たのが嬉し誇らしかった女の子。ちょっと凛々しい顔をしていたものでありました。 翌日、その子の大泣きが新館に響き、「そうだよね」と思いながら母屋からその泣き声を聞いていた僕。「早いうちに想いを出せた方がいいよ」と思ったのでしたが、後にそのきっかけが『トンボが飛んで来てびっくりしたから』と聞いてこれまたびっくり。「お母さんがいない!」じゃないの…と思ったものでありました。きっかけはそうであったのですが、一度火が付いた感情はなかなか収束してくれないのが三歳児。しかもなりたてのたんぽぽさんですから。「どうしたものか」と思っていると救世主が現れました。この子のお姉ちゃんです。母屋からばらたんの部屋に出向して来て寄り添ってくれたお姉ちゃん。それで女の子も落ち着きを取り戻すことが出来ました。ちょっと前までは僕に対してツンデレだったお姉ちゃん。最近では大いに心を開き受け入れてくれるようになりまして、笑顔と可愛い素振りを投げかけてくれています。でもそんなお姉ちゃんだったので妹に対しても厳しい塩対応なのかと思いきや、ずっと親身に寄り添ってくれる姿にまたびっくり。そして姉を心から信頼しその身と想いをゆだねている妹の姿から、それが単なる園での『お利口パフォーマンス』でないことも伝わって来ます。そんな彼女達の関わりの中から、この姉妹の素敵な関係・そして僕らがまだ発見出来ていなかったお姉ちゃんの秘めたる優しさを、改めて見せてもらったような気がしたものでありました。 そんな実姉による手厚いフォローアップを受けながら、幼稚園の環境と生活リズムに慣れて来た女の子。泣いている時にはただただ見つめることしか出来なかったクラスメイト達も、彼女が機嫌良くいられるようになって来たならば、一緒に関わり遊びを共有してくれるようになりました。特に女子の結束力と言うものはすごいもの。今ではすみれさんからたんぽぽまで一緒になっての『プリキュアごっこ』を楽しんでいます。自分達の連帯がどうしたら高まるかを知っている彼女達。すみれさんが僕のところにこそこそっとやって来て「ハンニンダーになって」とささやきます。現在TV放送しているプリキュアの本編を見たこともない僕なのですが、「(こんな感じ?)ハンニンダー!」とやってみせたなら、すみれさんから新人たんぽぽさんまで「キュア〇〇!」とプリキュアに成り切って名乗を上げ、「はぁー!」と攻撃して来ます。そのうちたんぽぽさん二人がシンクロし始め、バディを組んでの連携攻撃を始めました。やはり同級生同士の共感・共闘は彼女達を高揚させてくれるよう。そんな姿を嬉しく思いつつ、遠慮のない『ふたりはプリキュア・たんぽぽズ』の攻撃を受け止める僕でありました。そこに再び全員参加の波状攻撃が始まって、水戸黄門の『殺陣』のように押したり・押し返されたりを楽しむ『ツバ競り合い』をしばらく繰り返したその最後、「やられた!参ったー!」と彼女達のカタルシスを満たす演出でその場から逃げ出した僕。すると両足でぴょんぴょん跳びながら「やったぁ!」と大喜びの『プリキュア・オールスターズ』でありました。 そんな感じで再び動き出した幼稚園。親鳥・若鳥に加えて一番下の雛達も一緒に、沢山のさえずりが日土の谷に元気に響き渡っています。この子達の嬉しい想いが豊かに満たされてゆくように、これからも一緒に歩んでゆきたいと願っています。 |