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<残り10分のスーパーサブ> 3学期、寒い冬真っ只中ですが子ども達は元気に幼稚園に登園してきてくれています。8時半から9時までのお迎えは僕のレギュラーポジション。担任を持つことになってもここはやらせてもらえるようにお願いしました。ばら組のお部屋にいることが多くなり、他のクラスの子ども達の顔を見る機会が減った僕にとって、ここは大事なポジションなのです。朝一番で「おはよう!」と迎えてあげられるこの場所こそ、子ども達ひとりひとりの顔をしっかり見つめられる大切な場所なのです。坂を上がりながらすみれさんとする『こま談話』。「回せるようになった?」の問に「男の子はだれとだれ以外はみんな回せるようになった」と答えるすみれさん。「女の子は?」と聞くと「だれちゃんとだれちゃんだけ回せる」。へえーと思いながらもちょっとうれしくなりました。ドッヂボール以外ではなんでも女の子上位で『男の子がすごい!』ってのを見たことがなかったすみれ組。ドッヂボールなんかはボール遊びをよくしている男の子が強いのですが、縄跳びや逆上がりに関しては女のこの方がレベルは上。今時、数人の男の子が縄跳びの特訓と称して先生の前でぴょんぴょこぴょんぴょこ練習しているのを見かけます。こま回しだってももの時には数人しか回すことができませんでした。それがどうしたことか今年のすみれ男子はちょっと違うようです。これは明らかにのめり込み方の差、男の子は必死になってこま回しにがんばっているのです。あっちこっちで2人3人集ってはこま回し勝負をしています。やればできるすみれ組、すみれ男子奮闘の話を聞いてちょっとうれしかった冬の朝でした。女の子はどうしているのかというと、おっとりちゃんたちがあつまって、「私達はこっちの方がいいのよ」と優雅に楽しくかるた取りに興じています。なるほどお正月遊び、しっかり前を向いている女の子はもう文字遊びの方に興味を向けているのですね。双方とも年明けらしくにぎにぎしく遊んでいました。 9時になってお部屋に入るとばらさんのお世話をしながら子ども達を迎えます。ばらさんたち、何でも自分達でできるので驚いています。ジャンバーのハンガー掛け、「チャックができん」などとできないところだけやってきます。ファスナーの最初の掛け合わせ、製品によって合わせが硬かったりして難しいものもあります。そんなときは僕の前に座らせて一緒に掛け合わせをがんばります。ぱちっとはめるボタンも位置合わせを一緒にしながら「スイッチON!」とぼちっと押しながら遊びながらやっています。何でも経験、何でも練習で一つ一つがんばっていっています。 9時半を過ぎてそろそろ外に行きたくてうずうずし出すのですがまだ登園してこない子が数人あります。子ども達のためにみわ先生がもも組を引き連れて「外に出まーす!」と言ってくれます。ばらさんも待ちかねた子達がそれについて行って外で遊び始めます。今はサッカーで言うとレッドカード退場者が出て、ひとり少ない人数で試合をしているような状況だと思います。でもサッカーの試合でもそうなのですが、一人少なくなったことで一人当たりのスペースが増え、かえってうまくボール回しが出来るようになることがあるのです。今の幼稚園もそんな感じ。今いるメンバーが今、自分に出来ることを考え、一生懸命動こうとしてくれています。外遊びは『しん先生の専門』のような感があったこれまでよりはるかに一人一人がいい動きをしていると思います。それはそうと、それでもやっぱり僕も外で遊びたい。一番最後の子をやっと迎え入れ、ボルテージの低いその子の朝の準備を促しながらやっとのことで全員の準備完了。お部屋に残っている子をみんな引き連れていざ外遊びに出陣するのが10時前。僕と一緒にいたい子ども達を2人も3人も引き連れながら園庭をあっちこっちめぐっては子ども達の遊びを覗きに行きます。その途中で僕の追っかけちゃんたちは自分の気を引いた遊びへといつのまにか散って行くのです。さあ、そこからが『スーパーサブ』の復活です。ドッヂボールにサッカーに野球に鬼ごっこなどなどなど。HPの写真を撮りながら子ども達と遊びながら園庭を泳ぎ回ります。「勝負!」と言ってすみれさんに突っかかってゆくのも毎日の大事なお仕事。サッカーでもドッヂボールでもゲームが上手にバランスするように、同点までは本気モードで負けチームを応援し、同点になったらひらりと自分は身をひいて、最後は子ども同士の本気勝負。『おかたづけ』の時間を見計らいながら「さあ、次に1点取った方が勝利です」と実況解説にはやがわり。最後のゴールが決まった瞬間、「ゴール!こっちチームのしょうーりー!はい、おかたづけー!」と自由遊びの終了を告げるのです。子ども達もがんばった満足感と終わってしまった脱力感でほよよーんといい笑顔をしてくれているその瞬間が大好きです。 この間、ばら組のお弁当が少し遅く始まった日がありました。ばらさんたちはゆっくりゆっくりですがみんな最後までがんばってお弁当に向っている偉い子ぞろいです。最後に残った数人の子に「もう残してもいいよ」と声をかけたのですが「最後までがんばる」と自分から言うのです。それならもう少しとノートを書きながら待っていたのですがその時にすみれの女の子が部屋にやってきました。「しん先生、サッカーしよう!」、女の子が言ってくるのは珍しいことなのでうれしかったのですが、お弁当がまだ終わらないので「もうちょっと待ってて」とお願いしました。1時ごろにがんばったちゃん達が「お弁当終わった」と見せに来てくれました。「えらかった!」と一緒に喜ぶとその子は本当にうれしそうな顔をしてくれました。さあ、そこからが大急ぎです。お弁当の片付け、歯みがきをぱぱっとやっつけてお部屋の子達をみんな引き連れて「みんな、外にいくよ!」と飛び出しました。さっきの女の子を見つけ、「さあサッカーするぞ!」とサッカーを始めました。その時点でおかたづけの10分前。日本代表のスーパーサブのごとく、最後の10分間を子ども達とボールを追いかけてひたすら駆け回りました。とても気持ちのいい10分間でした。 |