園庭の石段からみた情景〜園だより7月号より〜 2007.7.20
 <夏のはじめの小さな小さな大冒険>
 7月6〜7日にかけてすみれ組のお泊り保育が行われました。一昨年の『みゆー隊長』、去年の『世話焼き口出したんぽぽず』が引っ張ってまとめたすみれ組に対して今年のすみれ組、まだここにいたるに核になって引っ張ってゆく子の出現を待たず迎えたお泊り保育となりました。レアなたまご焼きのような感じで風味豊かな味わいがある一方、すぐにわちゃわちゃぐずぐずになってしまう集団に、「だいじょうぶかなあ」という思いはありましたが、兎にも角にもみんなで喜木のAコープに集合して、お泊り保育が始まりました。
 Aコープでのお買い物でくみこ先生が取ったのは『一人ひと係作戦』でした。『チームをまとめる係(リーダー)』、『カートを押す係』、『買うものを見つける係』、『お財布を持つ係』とみんなに役割を与え、自分の存在意義を自覚させようとしていました。例年、なんでも出来るしっかりさんがみんな一人でやってしまい、ぼやぼやくんは後からにこにこついてくる、という光景をよく見かけますが、今年はそんな『スーパーしっかりさん』がいないため、逆に『自分がなすべきこと』を感じる学びの場となったようです。『スーパーしっかりさん』のようにいろんな状況を一人で分析、判断、行動することはなかなか難しいことです。かなり気の回る子でないと年長児でもできません。でも『一人ひと係』ならできるのです。役を与えられたことによって子ども達も意気に感じ、そこに参加しやり遂げようとがんばることができるのです。そんなやる気をあたりそこいらに発散させながら、チームごとに集ってみんな一緒にあちこちと、お買い物に大張り切りでした。
 幼稚園に到着して勃発したのが『ないない事件』でした。「お米がない!」、「タオルがない!」、「下着がない!」とぼやっとくんをはじめしっかりちゃんまで『ないないコール』の続出でした。お泊り保育なんて大イベントの時に忘れ物なんて一大事、普段は「またシューズ忘れちゃった」なんてけろっとして言っている子もこの時ばかりは涙目になって「ないー!ないー!」と訴えてきました。結局みんなバッグの中に入っていたのですが、あんな小さなバッグでもないと思い込んだ子どもにとっては四次元ポケット。どこをどう探しても探しものは出てきません。「荷造りは子ども達と一緒にして、どこに何が入っているかしっかり確認、把握させておいてください」とお願いしてあったのですが上手に出来なかったようです。後でお母さんに聞いたら「一緒に荷造りしたんですけれど・・・」とのことだったのですが、「ここにタオルは入れておくからね」なんてよそ見をしている子どもに言ってみても聞いているはずはありません。こういう時は自分でたたんで持ってきてバッグに入れさせるなど、自分の手足を使った確認把握が有効となります。身体で覚えたことは頭の記憶より確かにその子の中に残るものなのです。出来ないのがかわいそうだからやってあげる、大人がやった方が早いからやってしまう、これではこれからひとり立ちを目指して歩んでゆく子ども達にとって本当のためにはなりません。いつも忘れ物をした時の子ども達の言い訳は「お母さんが忘れた」、でもいつまでもそれではいけないこと、お母さんがわすれんぼなら自分がなおさらしっかりしなくっちゃいけないということを感じ取らなくてはならない、そんな時期にそろそろさしかかってきています。時間割を見て毎日ランドセルの中身を準備するのはお母さんじゃないはず。これらもいきなりできるようになるものではありませんからそんな意識付けを持ちながら、毎日少しずつ練習、準備していきたいものです。そんな子ども達の課題も教えてくれたお泊り保育でした。
 夜のお楽しみのメインイベント、今年の夜の集いは『指令ゲーム』、指令カードを探し当ててミッションをクリアしていくゲームです。これもチーム対抗のゲームでチーム毎に幼稚園中をあっちにこっちに駆け回りました。今年のすみれさん、しっかりさんやしっかりくんがいないわけではないのです。自分のことをきっちりできるしっかりグループも数多くいるのですが、そのエネルギーを外に向って放出できるタイプの子が少ないようです。つつましいこの子達、個人的には好きなのですが。でもチーム対抗のゲームとなると子ども達の目の色も違います。日頃「おれっちには関係ないぜ」って顔している子がリーダーなると「ここはリーダーに任せてくれ!」なんて男気を見せてくれたり、ミッションの折り紙を折れない子たち一人一人について折り方を教えてあげたりといつもと違う顔を見せてくれました。21人のクラスの中では、出来るんだけれど自らあまり存在感を主張してこなかったそんな控えめな子達が、3人〜5人のチームの中で自分の実力を自覚し、「ここは俺がやるしかない」と奮い立ってくれたことを頼もしく感じました。そしてこれをきっかけに『クラスを引っ張るリーダー』へと成長して欲しいと願っています。また他の子たちもひとりひとつずつ「ここは僕が!」と自信をもって取り組んでいけるものを見つけていって欲しいと思っています。『好きなものこそ上手なれ』、集団の中でも『この一物に関しては誰よりも輝く自分』を磨く夏になって欲しいと思っています。
 兎にも角にもお泊り保育をやり遂げたすみれさん、ご苦労さまでした。ただ幼稚園に一日泊まって帰っただけのことですが、子どもにとっては大冒険だったと思います。親と離れて初めて知った自分の実力、課題、長所etc.いろんなことを教師、保護者、そして子ども達自身に教えてくれた一日でした。お泊り保育一日で何ができるようになったり変わったりするものではないことはよくよくわかっています。でもここで得た意識や課題を持って長い長い夏休みに挑めば、そこで収穫できるものはいっぱいあるはず。夏の陽射し、大自然、親子一緒の時間など夏休みに与えられた冒険や自己啓発の材料はいっぱいあります。どうぞ『成長の夏』の意識を持って夏休みに挑戦してみてください。では素敵な夏休みを。


戻る