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<トムソーヤの冒険> いよいよ夏休みがスタートしました、皆さんいかがお過ごしですか。「さあ、夏休み!」と意気込んで夏休みを迎えたものの、もう息切れをしている頃ではないでしょうか。終業式の次の日からいきなり土日の二連休、家族そろってお出かけで盛り上がった後、お父さんもいない家の中で子ども達と毎日顔をつき合わせて、「まいったなあー」ってお母さんも少なからずいるはず。今回は子どもとのお家での過ごし方について考えてみたいと思います。 夏休み、とにかく時間がいっぱいあります。この時間を、この暇をどう過ごすかが問題です。お父さんと一緒の土日ならともかく、平日の過ごし方に苦慮されているお母さん方の心中をお察しします。で、『子どもの気持ちは子どもに学ぼうと』いうことで、ここでトムソーヤに登場を願います。このマーク・トウェインの描いた少年、トムソーヤは日常を冒険に変える大天才。『ペンキ塗りの話』はあまりに有名ですが、そこに子どもの心理とはなんたるかを紐解くヒントが指し示されています。私達の日常において、子どもに暇な時間を消化させる手段として『お手伝いをさせる』というものがあります。同じお手伝いでも導入の仕方によって子どもの反応は全く違ったものになるのです。 一学期の終わりのある日、子どもの外遊びを見ながら園庭で草引きをしていました。なんとか子ども達を引き入れることが出来ないかと子どもの方をちらちら見ながら作業をしていましたが、引いた草を集めるのに熊手を使っていると一人の子どもが寄ってきました。熊手を園庭に這わせると引いた草が小山になって集ってきます。それを砂遊びの台車に積んでいるのを見てその子が、「手伝おうか?」と言ってきたのです。「おっ、きたな」と思いつつも「そう?」とそっけない返事を返してやると『やりたいレベル』がどんどん高まってきました。その子は「やるやる!」と熊手をひったくって草集めを始めたのです。ご機嫌に草集めを始めたその子は近くに友達を見つけると、「草集めしてるんで!」と得意そうに自慢します。自慢された子も楽しそうにやっている子の姿を見ているうちに、「楽しいのかなあ、楽しそうだなあ、楽しいんだ!」とだんだんやりたくなってきました。「僕も、私もやりたい!」ということで次々とあるだけの熊手とほうきが導入され、それでもあぶれた子ども達は台車を2台目、3台目と出動させてみんなで草引き大掃除となりました。草引きなんて大人にとっては『わずらわしい作業』と感じられるものかもしれませんが、子ども達が自分で「これは面白い!」と感じ、始めたならば『楽しい遊び』に大変身。「ここは俺がやるからあっちやって」とか「台車早く来てください!」とか作業分担まで出来上がり、大盛り上がりで草集めに興じ、自分達が集めて積み上げた草山に満足そうな子ども達でした。なんでもない夏の日のお手伝いが心に残る夏遊びの冒険となったひとときでした。 この草引き、「・・・しなさい」という言葉を使った瞬間、言った者は『ポリーおばさん』となり、このお手伝いも子ども達にとって全く魅力のないものになってしまいます。これが子どもの目の前で自分から楽しそうにやって見せると、自分が『トムソーヤ』となり、子ども達を引きこむ力を得ることができるのです。ここで大事なのが自分も楽しんでしまう『遊び心』と子ども達の反応を見極める『洞察力』。お家でも庭掃除から風呂掃除、植木鉢の水遣りにさやえんどうの筋むきまで、子ども達の興味をそそりそうな家事がいっぱいあります。自分の用事をしながら子ども達と関わり一緒に遊ぶことが出来る、子どもにとっては楽しい思い出作りに体験学習と、心も知恵も満たされて一石何鳥になることでしょう。これもお母さんの感性、そしてアイディア次第。遊び心を持って自分の家事と子どもを見つめてみてください。また楽しいこと、思いついちゃうはずです。 夏休み最初の日曜学校では子ども達と一緒にスイカを食べました。石段に座ってスイカをほおばり園庭に向って種飛ばしをしました。夏のスイカは縁側で種を飛ばしながら食べる、これこそ夏の風物詩です。お皿の上にスイカを乗せて、スプーンで種をほじって食べるなんてダメ。スイカは種を飛ばすものです。みんな一緒に食べていた中で「もういらん」、その子が差し出したのはまだぜんぜんかじられていないスイカでした。種を指でほじるのですがそんなもので取れるスイカの種ではありません。種が取れないからもういらないと言うのです。スイカを外で食べるのにはひとつのテクニックが必要です。口の中で種をより分けることが出来ないと上手に食べれません。舌を上手に使って種をより分け、口を膨らませ「ぷっ!」と種を飛ばす、これが野点(のだて)スイカの作法です。これがなかなか難しい。でも「できん」って言ってやらなかったらこんなことでさえ出来ないのです。やっていればそのうち誰でもできるようになることなのに。このスイカの種飛ばし、顔の筋肉は発達し、舌の先まで神経が行き届き、頭の活性化、そして美容にもいいはず。経験の機会に乏しい子ども達にとっていきなり「さあやってみろ」というのは酷なことかもしれませんがだからこそ、夏休みに親子で一緒に遊んでみてください。この間の日曜学校ではちょっとやって見せて教えただけで、初めは吹いても足元に種をぽろっと落としていた子が、3mも5mも飛ばせるようになりました。子どもの遊びに対する潜在能力の高さに驚かされました。もっともそうなるまでにスイカを7つも平らげたその子の食欲にはもっと驚かされましたが。 夏の暇つぶしにそんなことを書いてみましたが、夏ならではの日常を子ども達と一緒に楽しみながら、夏休みを過ごしてみてください。僕も新潮文庫の『トムソーヤの冒険』をもう一度読み返しながら、今度子ども達と会ったときにはどんなにして遊ぼうかなと思い巡らせているところです。この夏、是非ご一読ください。 |