園庭の石段からみた情景〜夏休み書き下ろし4〜 2007.8.30
<夏の冒険実践編2>
(episode3:ベランダ掃除)
 トムソーヤのペンキ塗りにならってやってみました、ベランダ掃除。デッキブラシを担ぎながら甥っ子の目の前を通ります。チラッと彼の横顔を見ながら、「ベランダ・・・いやなんでもない」とつぶやくと甥っ子は「なになに?」と興味を示しました。「これからベランダ掃除をするんだけれど、これは大人の仕事だからいいや」の言葉に彼が「僕もやる」と言い出します。「これはね、難しいんだ。ちゃんと最後までやらなくっちゃいけないから。ゆうには無理無理」と もひとつじらすと、「ちゃんと最後までやるー!」、「そーおー?」。ムツゴロウ一匹釣れました。すると下のおちびちゃんまで「ななもー」、釣りで言うところの『一家』です。3匹のムツゴロウがベランダ掃除を始めました。
 まずはベランダに水を撒きます。暑い真夏の昼下がり、お約束通り「おっとごめん!」と子ども達にシャワーのサービス。ひゃあひゃあきゃあきゃあ言いながら甥っ子はデッキブラシでごしごしごし。おちびちゃんはスプレーとワイパーで汚れた窓をきゅきゅきゅ。二人とも機嫌よくごしごしきゅっきゅっやっています。お互いに互いの道具が気になって、ちょっとしたら交替です。隣の芝生が青々見えるお年頃、あっちがいいこっちがいいとブラシにスプレー、ワイパーとかわりばんこでごしごししゅっしゅっきゅきゅきゅとお掃除をしてくれました。
 それでも10分もすれば子ども達の集中力も限界に。そんな時は「後はいいよ、ここが難しいんだよなあ、ごしごしごし。おっ!さすが、きれいになった」と楽しそうにデッキブラシを操ってみせます。ひとが楽しそうにやっているとまたまたやりたくなるのが子どものさが。「やっぱりやるー」と言ってまたブラシをひったくってごしごしやり出します。なんだかんだ言いながら終わってみればベランダはぴかぴかになっていました。よくもまあこんなに真直ぐに(単純に)育ってくれたものだと楽しそうな2人の笑顔を見ながら思ったりもしましたが、うちの子等に対しては大成功のお掃除作戦でした。水に濡れた心地良い肌のまま、3人でご褒美のアイスクリームをいただきました。
(episode4:魚釣り)
 甥っ子を魚釣りに誘いました。自分であくせくして虫を捕まえたり魚を釣ったりするよりも、「はい」ともらった水槽の中の虫や魚を眺めている方が好きな甥っ子、実は生きている虫や魚を触るのもちょっと苦手。しばらく考えている彼に、「『僕が釣ったんだよ!』ってママに見せたらびっくりするだろうな」の言葉を投げかけると、「行くー!」、怖がり坊主も虚栄心は人一倍強いようです。ということでいざ出発、ポイントの緑橋まで歩きます。その時点から早くもぶつぶつ言い出す甥っ子。「疲れた、もう帰りは歩けないよ」などと文句を並べながらもようやく目的地に着きました。橋の上から糸を垂らすと甥っ子はさーっと川の縁まで走って行って、「ここから食べたか見てる!」と早々に見張り役に立候補。根気よくあたりを待つ気はさらさらないようです。この川で釣れるのは『ハヤ』という魚ですがこの魚、釣り堀の塩焼きニジマスのようには釣れてくれません。餌の竹輪をちょんちょんつついて上手に餌を奪っていきます。釣針を喉まで飲み込むようなまぬけ君ではないのであたりを待って上手に合わせてやらないと釣れません。こちらも日頃釣りなどやらないので何回か餌を取られましたがそれでもなんとか合わせに成功、魚がかかったのです。大急ぎで甥っ子を呼ぶと彼も目の色を変えて飛んできました。「このリールをゆっくりまわすんだぞ」と扱い方を教えると、慎重派の彼は僕のイメージしたよりも更にゆっくりゆっくりとリールを回し始めました。やがて彼の目の前に針にかかったハヤが姿を現しました。大喜びの甥っ子に針近くの糸を持ってみよと言うとぴちぴち跳ねる魚が怖くてよう持ちません。仕方がないので竿の先遠くからブランとぶら下がる魚と一緒に記念撮影です。ちょっぴり誇らしげな笑顔の写真が撮れました。釣れたハヤを持ってきた水槽に入れると彼はその中で泳ぐ魚をうれしそうにじっと見つめていました。「これ、ゆうが釣ったんか?」と聞くと「そう!」と自信たっぷりに答えた甥っ子。もう魚を釣った自分を賞賛する自分の声で頭がいっぱいです。この後もう1匹釣ったところで切り上げて帰路についたのですが、その帰り道の足と口の軽いこと。途中で出会ったひげのおじちゃんやじーじに自慢して自慢して大興奮でした。家に帰ると父親と母親に大得意で大自慢。またこれを大げさに受け止めて喜んでくれる両親を持った幸運によって、彼の幸せモードは頂点に達したのでした。その夜は繰り返し繰り返し、釣れた(釣り上げた)瞬間の武勇伝が彼の口から語られたのでした。

 まだまだ彼等の冒険話はいくつもあるのですがとりあえずはここまで。一つ一つはたわいもないことですがこの4週間の冒険生活は彼らを成長させたことでしょう。真っ白な肌のもやしっ子がてらてら光る黒坊主になりました。△△オオカブトのレプリカでは喜んで遊ぶくせに動く本物の虫に触れなかった彼が、虫かごから逃げ出したクワガタ虫を自分の手で捕まえられるようになりました。顔付けもままならない口ばっかりダイバーがプールで水中写真を撮れるまでにもなりました。みんなみんな小さな一歩ですが自分なりにがんばったひと夏の冒険の跡です。よくがんばりました。たくましくなりました。来年もまた遊びに来て下さい。こちらもいろいろ勉強させてもらいました、ありがとう愛しのモルモット君たち。ということでこの辺で僕の夏期研修も終わりたいと思います。さあもうじき二学期です、幼稚園の子ども達はどんな成長の跡を見せてくれるでしょうか、今から楽しみです。


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