君は見ず知らずの人を泊めたことがあるか
1.偽坊主らしき覚法さんを泊めた話
何年か前の話、僕は自称「高野山の偉い坊さん」という坊さんを泊めたことがある。その人は実在する○○院の○○覚法という名前を語り、僕に人生観、世界観を説法してくれた。酒を飲み、大いに語り、一晩泊めた。
次の日は釣りに行く予定だったが覚法さんが88番札所へ行こうと言うので偉い坊さんとドライブが出来るなど滅多にないことと考え車を走らせた。その日は酒も抜けていたので、頭もはっきりしていた。話をしていると覚法さんには、何度か「この人本物?」と疑いたくなるような言動があった。例えば、ほん少し前「異常なし」の診断を貰ったばかりなのに「ただし君は肝臓が悪い」と言われたり、「なぜ戦争は起こるのですか」の問いに「それは仕方ない」と答えたり、、、がしかし、偉い坊さんを疑っては罰が当たる、これは僕の修行が足りないからだと思い強く反省した。
夕方、札所から戻るなり、覚法さんはこれから高野山に帰るのだと言うので記念に色紙を書いて欲しいと頼むと、さも待ってましたという顔で「酒と筆ペンをもって来なさい」と言う。僕が墨を擦りますからと言うと、いや筆ペンがいいと言う。仕方ないので筆ペンを渡すと「和光同塵」と書いた。これはこれでよいが、字がめちゃ下手だった。多分、墨では書けなかったのだと思う。そしてコップ酒を3杯飲み干し覚法さんは帰っていった。
しばらくして、変な偽坊主がうろちょろしているとの噂を聞いた。そして、本物の○○院の○○覚法さんはものすごく品があって、色紙なんか値段が付けられない位偉い人だと知った。
僕の元には今も「和光同塵」の色紙がある。捨てられないのだ。もしかしたら、あれ
は覚法さんの世を忍ぶ仮の姿かもしれないから。