女性(ひと)を愛する苦しみ
1.昔まだ僕が純情な高校1年生の時、僕はクラブの1年先輩のA子さんに恋をした。手が
ちょっと触れるだけでも、ほっぺが真っ赤になるような恋だった。
冬が近づいてきたある日、A子さんは僕に手編みの毛糸のマフラーをプレゼントしてくれた。
ひたすら編み続けたのか、そのマフラーは3m以上あるとてつもなく長いものだった。5回く
らい首に巻き付けるとちょうど良い具合だった。
2.当時、自転車通学の僕にとってはありがたかった。毎日毎日A子先輩の愛が僕を暖めて
く れる。だから、少々前が見にくくても毎日が快適だった。ハッピーだった。
3. ある朝、いつもより気温が高いので僕はいつも首に5回巻くところを4回にした。そして
いつも通り自転車を漕いだ。前も見やすいし、風も心地よかった。ここまではいつもと何の
変わりもなかった。しかし、、、、
4.しかし、少し強い風が吹いたとたん、突然マフラーがチェーンに絡んだのだ。一生懸命ペ
ダルを踏んでいた僕は一瞬目の前が真っ黒になった。息が出来ない。絡んだマフラーで首
を絞めたのだ。ブレーキをかけてもダメだった。ペダルを逆さに踏んでも空回りするばかり。
このままでは死ぬと思った僕は思い切って自転車を横に倒した。
5.気が付いたら、僕は土手の下に転がり落ちていた。助かったのだ。よく見ると僕の首とペ
ダルとの距離は10pもなかった。
6.このとき僕は悟ったのだ。女性(ひと)を愛することは死ぬほど苦しいものなんだと。