ピックアップ氷室 : EVE rebirth terror


『EVEシリーズ作品紹介』ページでは紹介できなかった氷室名シーンを各作品毎にピックアップしていく、その名も『ピックアップ氷室』。氷室バカtalkによる愛情たっぷりの解説付きで、氷室好きの人もそうでない人ももれなくうんざりすることうけあい!……な氷室バカならではのバカ企画となっております。

 EVEシリーズ六作目。20数年ぶりの大復活を遂げた『EVE rebirth terror』からピックアップするのはこのシーン。

・Dec.7_エール総合病院


■――あの手が支えてくれなければ。

 氷室が主役となる恭子編のラストシーンでもあるこのシーンがやはり今作『EVE rebirth terror』一番の見所でしょう。

 恭子編終盤、内調と教育監視機構に身柄を確保されていたジェス・カスターが逃亡。負傷中の小次郎を始末するために病院へと向かうと踏んだ氷室は急いで小次郎の元へと駆け付けそこでジェスと対峙します。佐久間から支給された銃を構える氷室ですが、殺し屋でもあるジェスとの実力差は歴然。あっという間にジェスにやられてしまい喉元にナイフを突きつけられます。

 このまま抵抗せずに小次郎を差し出せば命は助けてやると脅され、同時にジェスからは「小次郎と弥生の関係は特別で、恋人でもないただの仕事上のパートナーのお前は割って入る余地も無い。なのに命を張る理由があるのか?」とも問われます。ジェスからしてみれば小次郎や弥生や氷室の関係などに興味があるわけもなく、単純に無駄な抵抗をすることが理解できないということなんでしょうが、氷室からすれば自分と小次郎との関係を「ただのパートナー」と切り捨てられたことが気に入らなかったのかもしれません。ジェスに唾を吐きかけ「私とあいつはパートナーだから!」と言い放つのでした。

 この時の氷室は小次郎にかけられた深浦麻世殺害容疑を晴らすべく古巣の教育監視機構に一時的に復帰しており、久しぶりの捜査任務を行う中でかつての自分との変化を色々と感じてもいました。規則やルールを破ることなど絶対に出来なかった自分が、今は小次郎の影響を受けて自分のやるべきことに従って行動していることに自分自身でも驚いている様子が描かれています。

 そもそも一年前に教育監視機構を突然辞したのも、政府が陰謀に加担しているという事実に嫌気が差したからでもあり、そう感じさせてくれたのは奔放に見えながらも自分の意志を貫く小次郎の姿が羨ましく、そして好ましく思えたからでもありました。今こうして小次郎を助けるために動いているのは、自分がそうしたいと願ったから。職を辞した後に小次郎の探偵事務所で働きたいと思った理由も、自分でそうしたいと思ったから。小次郎と共に過ごす港の倉庫という場所を、浮気調査やペット探しの日々を小次郎と共に過ごす時間を愛しく思えるのも、自分がそう感じているから。小次郎の隣で過ごすことを選んだ理由を氷室自身は「何となく」と語っていますが、実は一年前の事件の時からその理由は少しも変わっていなかった、という事に気付きます。

 それが信頼関係なのか恋愛感情なのかはまだはっきりと言い切れないのかもしれませんが、それでも強く小次郎と共に居たいと願う気持ちは揺るぎません。今まさに自分の命を奪おうとするジェスに「私とあいつはパートナーだから!」と冷静な氷室らしからぬ啖呵を切るシーンは「アンタみたいなやつに何がわかるのよ!」とも取れますし、「ナメんじゃないわよ!」とも取れますし、或いは……というシーンにも取れますよね。他人がどう思おうが自分は自分の意志でここにいることを選び、そこに迷いは無いんだと吹っ切るシーンでもあります。

 そこに颯爽と小次郎が現れ、足元がふらついて倒れそうになる氷室を抱きかかえながらジェスに向けて発砲するシーンは、それはもう素晴らしいの一言に尽きます。このシーン、氷室編では「あの手が支えてくれなければ」となり、小次郎編では「放せよ。オレの相棒だ」ですからね。これはもうね、氷室×小次郎派としては悶絶ですよね(笑)

 EVEシリーズに於ける氷室と小次郎の関係は作品毎にニュアンスや展開にかなり差があるのも特徴で、作品によっては同僚以上恋人未満だったり夫婦みたいなやり取りをしていたりと様々。今作に於ける二人の関係はそのちょうど過渡期にあたるような時期でして、氷室視点からその気持ちの移り変わりや彼女の中でそれを自覚する過程を丁寧に描いてくれており、これより後の時間軸に於ける氷室と小次郎の関係にも綺麗に繋げてくれる素晴らしいナイスプレーだったと思います。氷室好きとしては何度見ても心が満たされる最高のシーンですが、これを十数年ぶりの新作の中で綺麗に描いてくれたことが本当に嬉しかったです。ありがとう……ありがとう!!


ピックアップ氷室 : EVE rebirth terror


・Dec.5_あまぎ探偵事務所


■うわっ。めんどくさっ。

 同じく恭子編からもう一つこのシーンをピックアップ。EVEシリーズの二大ヒロインとして知られている弥生と氷室ですが、お互いその存在は知っているものの面識はなく設定上これまで一度も顔を合わせたことがありませんでした。何せ元カノと今カノであるだけでなく同業他社のライバル同士。そのくせ小次郎と弥生は現在はたまたま恋人関係では無いもののその特別な関係までもが失われたわけではなく、互いに今でも特別に思い合っている状態。WIN版ロストではそのあたりをまりなにいじられた氷室がぼそっと心情を吐露するというシーンもありますが、それ以外では意図的にこの三人の関係については語られて来ませんでした。これが今作では遂に二人が邂逅するという、二十数年続いたEVEシリーズに於いても歴史的なシーンとも言えるでしょう。

 ではその歴史的な邂逅シーンがいったいどんな風かと言えば、案の定というかぎこちなく探り探りで会話をするという感じ。互いに相手をじろじろと値踏みするように見つめたり、些細な言葉尻でマウントを取り合ったりと、二大ヒロイン揃い踏みとは思えないくらい微妙な空気が漂います。ま、そりゃそうですね(笑)

 氷室から見た弥生は探偵としての力量や才覚は勿論、女性として容姿もスタイルも抜群で、この時点では恋のライバルとしては捉えてはいないでしょうけども何やら溜息を吐きたくなるような完璧な存在に思えたようです。一方、弥生から見てもあの一匹狼で誰の協力も必要としなかった小次郎が唯一認めた相手という事で興味があるみたいで、氷室のハッキング能力とかを聞き出しては感心して頷いたりもしていましたが、氷室も相当の美人ですし、本音としては危機感とかそういうのも感じていたんじゃないでしょうか。何より今の自分は小次郎のパートナーとして隣にはいないわけですしね。そのくせ「私は小次郎のことになんか興味ないけどな」とバレバレの言い訳口上を並べたりで確かにめんどくさい。挙句氷室が普段通り「小次郎」と呼び捨てで名前を呼んだことを聞くと「ふーん、呼び捨てなんだ」と呟いたりして、流石の氷室も「うわっ。めんどくさっ。」と辟易してしまうほどでした。表情もこの表情ですし。うーん、めんどくさい(笑)

 結局不在の小次郎に頼まれた依頼の話で半ば強引に話を打ち切るわけですが、終始何とも言えない空気のままで終わってしまうという、微笑ましいというか何というかのシーンになってしまいました。しかしゲームをプレイしている長年のEVEファン的には爆笑必至の名シーンであることは間違いないでしょう。この他にも氷室が小次郎を見舞うシーンなんかでも短いやり取りがあったり、ジェス襲撃前にも弥生が氷室について「どう接して良いものか……」と珍しく言い淀むシーンがあったりして、今作ではこうして互いに互いを意識しているであろうセリフがちょこちょこと出て来ます。しかし決定的にどうするのかというところまでは話も進みません。氷室は一年前からの想いをよりはっきりと自分の中で自覚するようになり、弥生は一年が経ったことで少し余裕をもって小次郎との関係を見つめ直すことが出来るようになり……と、今作のエンディングも含めてこれがEVE好きの皆様が思い描く三人の関係なのかなという感じですね。

 エンディングではburstのシリアとの行為を目撃したシーンを彷彿とさせる弥生の買い物袋ドサッの演出に懐かしさすら感じますが、弥生も一年前と同じようなシチュエーションでまたまた目撃するなどなかなか業の深い女性のようで何よりだと思います(笑)。ちなみにこの直前の氷室の「私がいないとダメなんだから」がまたたまりませんね。あーこりゃもう夫婦だよ的な。最後の最後まで氷室×小次郎シーンの見所満載でウハウハのホクホクでした。