ピックアップ氷室 : EVE ghost enemies
『EVEシリーズ作品紹介』ページでは紹介できなかった氷室名シーンを各作品毎にピックアップしていく、その名も『ピックアップ氷室』。氷室バカtalkによる愛情たっぷりの解説付きで、氷室好きの人もそうでない人ももれなくうんざりすることうけあい!……な氷室バカならではのバカ企画となっております。
EVEシリーズ七作目。令和のEVEとして3年ぶりの新作となった『EVE ghost enemies』からピックアップするのはこのシーン。
・Dec.4_旧エルディア大使館 |
■突然だけど法条さん、4階から飛び降りたら人間は基本死ぬって知ってる?
今作の氷室は小次郎編、まりな編ともにサポート役に回るポジションなので前作『EVE rebirth terror』のような派手な立ち回りを見せるシーンはありませんが、それ故に印象に残るシーンがこちら。
まりな編4日目、まりなたちの行く先々に現れては立ちはだかるイヴァンカと一学生に過ぎない菜穂が連絡を取り合っていた事実を氷室のハッキングによって確認したまりな。しかしその連絡先の番号は以前エルディア大使館として使われていたあの建物でした。エルディア大使館は都心のオフィスに移転しており、今は最低限の手入れがされているとは言え無人のはず……状況を確認するために氷室と共に旧エルディア大使館に侵入したまりなでしたが、そこにイヴァンカと「リュウ」と呼ばれる男、そして氷結会のヤクザたちが待ち構えていたのでした。多勢に無勢で追い詰められまりなと氷室は逃げ場を失い、とうとう四階のある部屋に逃げ込みます。そこは二年前に小次郎と大使館に侵入した氷室が真冬のプールにダイブすることになったあの部屋なのでした!という展開。
二年前のダイブがよほどトラウマになったのか、大使館侵入後もそわそわと落ち着かない様子の氷室。既視感バリバリのこの展開は、故上島竜兵の「押すなよ!絶対に押すなよ!」を彷彿とさせる様式美とも言える見事な流れで進み、案の定かつてと同じく真冬のプールに4階からダイブするという結末を迎えます。二年前と違うのは氷室を投げ飛ばしたのが小次郎ではなくまりなという点くらいでしょうか(笑)
このダイブシーン、98時代の『EVE burst error』では当時マシンスペック的にもかなり貴重なムービーシーンとして収録されており、サターン版でもPS2版でもその伝統は変わることなくムービーシーンとして登場しています。今作でも勿論松井菜桜子さんの「どうしていつもこうなるのよぉぉぉぉぉ!!」というかわいらしい悲鳴と共にムービーが挿入されており、ファンてしても「やっぱりそうこなくっちゃ!」的なお約束に見事に応えてくれた嬉しいシーンとなりました。
ちなみにこの後ずぶ濡れになったまりなと氷室は内調ビルのシャワールームにて暖を取るシーンへと繋がりますが、氷室は『EVE burst error』の小次郎とのお風呂シーン、『EVE rebirth terror』のあまぎ探偵事務所のシャワーシーンに続いて今作でもシャワーシーンを披露するという三連覇を達成しており、出番が少ない中でもきっちり存在感をアピールしているのが流石と言わざるをえません。
ピックアップ氷室 : EVE ghost enemies
・Feb.21_エール総合病院 |
■お帰りなさい、所長。
もう一つのシーンは、今作の小次郎編がまりな編の一年前であるというトリックが明かされた後に始まる「ghost編」より。一年前のディオデティ館の地下でシェリィ・メアの突然の裏切りによってスーパーコンピューター「スパイラル」の熱暴走に巻き込まれた小次郎。レイスらの決死の救助によって一命は取り留めエール総合病院に入院することになりましたが、重度の火傷でひざから下の感覚を失い、以前のように歩行することは最早不可能だろうとの診断が下されます。流石の小次郎もこの事実を前に心が折れかけたようで、氷室にも弱音を通り越した諦観にも似た心情を吐露するような一幕も。そんな小次郎に「車椅子探偵ってのもカッコイイじゃない!」と励ます氷室ですが、どうにもならない現実を前に小次郎も氷室も感情の持って行き場が分からずに戸惑っているような様子でした。
そこから時は進んで数週間後。エルディアから来日した科学者が、女王肝煎りで使用を許可されたあのXTORTを小次郎の体内に注入。かつてシャサ・ノバルティスによって開発されたナノマシン技術によって神経細胞の再生が促され、長期間のリハビリが不可欠とはいえ完治不可能と思われていた小次郎の足が動き始めるのでした。紆余曲折ありましたが以前のように探偵として、そしてあまぎ探偵事務所の所長としての復活に目処が立ち始めた小次郎。その頬に氷室はそっと両の手を重ねてこう呟きます。
「お帰りなさい、所長。」
その場に居た弥生も流石に空気を読んでこの二人の雰囲気に水を差すような真似はしなかったようです。その弥生のちょっとした不満そうな仕草もまた良いのですが、それよりなにより氷室バカの私といたしましては、
なぜここで一枚CGを用意しなかったのか!
……と声を大にして主張していきたいところですね(笑)
さてこのシーン、『EVE rebirth terror』以降の作品では既存シリーズをリブートしたため『EVE ZERO』や『EVE TFA』からの直接的な繋がりもなくなったわけですが、XTORTに関してはナノマシン技術の粋ということで「C計画」以降もこの研究成果をエルディアが秘密裏に有していたような設定でシャサの名と共に採用されています。特に『EVE ZERO』では小次郎の父親である天城健が同研究の中心人物として描かれていましたので、今作でその息子である小次郎もXTORTを使用したという展開がちょっとしたファンサービスにもなっていますね。
同じように『EVE TFA』ではプリーチャーによって腕の神経を切断されたまりなが、このXTORTを使用したことで回復不可能だった怪我を完治させたという展開がありました。こちらは女王プリシアの直接指示ではなく来栖野亜美率いるリリス研究所で管理されていたという展開でしたので、やはりリブートされたことで状況に違いは生じてはいますが、まりなと同じように小次郎もXTORTによる復活を遂げた点を重ねて来ています。
『EVE ZERO』や『EVE TFA』の時からなんでも治しちゃう超ご都合主義なトンデモ設定として使われてきたXTORT。クローンをテーマにしているなんちゃってSFモノの側面もあるEVEシリーズでも正直やり過ぎじゃね?な扱いではありますが、こうして小次郎と氷室の間に素敵なひとときを提供してくれたことには感謝をしなくてはなりません。お父さんも草葉の陰で喜んでいるぞ!お父さん、設定的になかったことにされちゃいましたけど(笑)