ピックアップ氷室 : THE LOST ONE 〜Last chapter of EVE〜


 『EVEシリーズ作品紹介』ページでは紹介できなかった氷室名シーンを各作品毎にピックアップしていく、その名も『ピックアップ氷室』。氷室バカtalkによる愛情たっぷりの解説付きで、氷室好きの人もそうでない人ももれなくうんざりすることうけあい!……な氷室バカならではのバカ企画となっております。

 シリーズ二作目Lost Oneからピックアップするのはこのシーン。

・Jun.6 _ ワールドインポートタワー


■「……全部、かしら……」

 氷室バカ的には「ロスト言えばココ!」ということでやはりこのシーン。PC版で追加されたまりな編での氷室との会話シーンですね。見城の身辺を調べる際に氷室に同行してもらったまりなはburst事件以降、実に三年ぶりに氷室と行動を共にするわけですが、元々それほど親しい間柄でも無いですし、以前はお互い別組織のエージェント同士ということで意図的に接触を避けて情報を相手に漏らさないようにしていたこともあって、会話も弾まずに重い空気が漂ってしまいます。それならば、ということで空いた時間にお茶でもしてお話しましょ♪という、シリーズ全般を通してみても結構珍しいシーンになっています。

 まりなはこの前日、小次郎の事務所で普通にシャワーを浴びている氷室の姿を目撃してから「コイツらできてるんじゃね?」という好奇心を抱くわけですが、一方で自身の親友であり、かつての小次郎の恋人でもあった弥生の存在も気にかけての行動という点もポイント。親友を心配しているようであり、他人の恋愛話に興味津々のようでもあり……という、いかにもまりならしい強引なお茶の誘いというのが良いですね。

 このテの話に慣れているまりなが一枚上手なのか、それとも氷室がこういう話が苦手なのか、案外あっさりと小次郎との関係をまりなに告げる氷室。小次郎と氷室の関係は、勿論仕事上のパートナーとしての信頼があるのは間違いが無いのですが、どうやらそれ以上にお互いへの恋愛感情も強く芽生えている様子。この時、弥生と小次郎の関係は、おそらくは「元」のつく恋人同士であり、現在進行形の恋愛関係には無い……ということにはなるのでしょうが、だからと言って小次郎の中から弥生という存在が無くなってしまっているわけでは決してなく、氷室の知らない、二人だけの大切な記憶や過去を共有している者同士の絆のようなものは今でもしっかりと二人に刻まれている、という感じでしょうか。

 一方の氷室はまりなからの「小次郎の何処が好き?」という質問に「……全部、かしら……」と答えるほどのベタボレっぷり。勿論氷室は弥生の存在も気にかけていますし、小次郎との今の関係を続ける上でどうしても意識せずにはいられない女性であることもこの時まりなに話しています。自分のせいで他の誰かが辛い気分になるのは苦しい、と呟く氷室に対してまりなが放った言葉は「好きなんだし、しょーがないんじゃない?」程度のあっさりとした答えでした。頭で考える氷室と、感情で動くまりなの性格の差が顕著に出るおもしろいシーンですし、まりななりに氷室の気持ちを汲んでの後押し発言という意味合いも少しあるのかな、という気もします。

 まりな曰くは、弥生も弥生で小次郎との関係に答えを出し切れずにぐずぐずしてるのが悪い、とのこと。氷室のように公私ともに小次郎をしっかり支えている超強力なライバルが現れでもしないと尻に火が点かないんじゃないのー?と親友の恋愛事情を、他人事で面白く見守っているんでしょう。burstから三年後という設定に於けるこの四者の関係を端的に説明してくれているという点でも印象深いシーンですね。

ピックアップ氷室 : THE LOST ONE 〜Last chapter of EVE〜


 Lost Oneからもう一つピックアップ。

・Win版CD内収録壁紙より


■"パートナー"という存在

 ゲーム内のシーンではありませんが、WIN版ロストのゲームCDに収録されている壁紙ですね。ロストワンでは前作主人公の小次郎が脇役として登場して主人公である杏子をサポートするわけですが、ゲーム内で杏子たちとコンタクトを取ってサポートするのは、小次郎のパートナーである氷室になります。そして小次郎&まりなの活躍が追加されるWIN版ではこの二人のサポート役としての氷室の活躍と描写が大幅追加されており、こうした前作登場人物の描写を通して「三年後」という作品内の時間軸を感じさせてくれます。

 burst事件で知り合った小次郎と氷室は、三年が経ったロスト内でも探偵事務所の所長とその所員として活躍中。氷室がハッキング技術を駆使して情報を集めるシーンはburst事件での活躍を彷彿とさせますし、これ以降の作品でもこういったシーンが多いことから、直感・行動タイプの小次郎をデータ収集の方面で氷室がサポートするという図式がこの三年の間で確立されているようですね。そういった探偵としての「パートナー」という関係を、この壁紙で主役級に強調してくれているという点に於いて、やはり氷室バカ的には外せない一枚であることは言うまでもありませんね。

 さて、先に直感・行動タイプと書いた小次郎ですが、burst作品内で小次郎の思考やロジックを辿ると、彼は決してデータを軽視するわけではなく、むしろ些細なものでも「情報」というものに非常に重きを置いた考えの持ち主である点が見受けられまして、押しかけ女房的な氷室の申し出を快諾したのも、まず何よりも彼が氷室の能力と見識を高く評価していたからに他なりません。ただ、細かくて地味な作業に拘束されるのが苦手な一面もあるようで、そういったデスクワーク的な部分も氷室が支えているものと思われます。氷室は氷室でそういった情報やデータを収集・分析する能力に長けている反面、いざ行動を起こすというフットワークの面では少々慎重に過ぎる面もあるようで、そこをまた直感・行動タイプの小次郎が判断してアクションを起こすことで事態を先に進める……という感じでしょうか。互いの能力を評価し、それぞれをカバーして活かし合うという理想的なパートナーシップと言えるでしょう。ま、残念ながらなかなか仕事には恵まれていないようですが(笑)

 作品終盤では小次郎が、そういったパートナーとしての氷室を、それだけではない特別な存在として受け容れている点を杏子との電話で呟くシーンがあります。単純な男女の恋愛だけではなく、互いの能力を認め、それを信頼しながら共に仕事をして来た三年間の想いも込めての言葉ですから、まりな曰くの「弥生に超強力なライバル出現」というのもごもっともなわけですね。弥生の存在を知らない杏子なんかは普通に「素敵な関係」と感想を述べているくらいですし、ロストという作品はこれでもかというくらいに氷室を押して来ます。やはり「EVE」の存在を通して考えると弥生よりは色々と動かしやすいんでしょうかね。その辺はTFAのピックアップでも触れる予定ですので、氷室バカにまたお付き合いくだされば幸いで御座います。

 ま、要するに氷室バカとはこの壁紙一枚で余裕でごはん三杯はいける!ということです。