ピックアップ氷室 : EVE ZERO
『EVEシリーズ作品紹介』ページでは紹介できなかった氷室名シーンを各作品毎にピックアップしていく、その名も『ピックアップ氷室』。氷室バカtalkによる愛情たっぷりの解説付きで、氷室好きの人もそうでない人ももれなくうんざりすることうけあい!……な氷室バカならではのバカ企画となっております。
シリーズ三作目、そしてシリーズの出発点でもあるZEROからピックアップするのはこのシーン。
・Jun.1 _ セントラルアベニュー路地裏 |
■謎多き美女・氷室冴子
……と、言ったところでZEROには氷室恭子が出演していないのでピックアップのしようが無いのですが、氷室繋がりということで今回は氷室冴子をピックアップ。
さてこの冴子さん、おそらく最初は、人気キャラでありながら時間軸的に登場できない氷室恭子を彷彿とさせるキャラを登場させましょうというファンサービス的なコンセプトでキャラが作られたと思うのですが、色々と設定が積み重なるに連れて既存キャラとの関係性もあれこれと出来上がってしまい、遂には「氷室と小次郎は異父姉弟なのでは?」なんて設定上の問題点も浮かび上がってしまったのです。今回はこの、EVEファンのごく一部の間で騒がれながらも、今まで誰にも触れられて来なかったこの禁断の設定についに手を出してみたいと思います。
ちなみにこの異父姉弟設定なんですが、ゲーム内で語られる文章や情報からは一切辿ることが出来ず、設定資料集などによるいわゆるウラ設定から辿ることで浮上して来た話題という点に先に触れておきましょう。要するに重箱の隅を突っつく類のネタ以外の何物でもなく、そこに数年越しに言及するこの私のヒマさを、白い目で見てやって笑って戴きたいわけです。戯れに死ねる――それがもののふというものよ……
では早速その「氷室と小次郎が異父姉弟である」とする設定を辿って参りますが、要約すると、PLUS初回特典同梱の設定資料集内に「氷室冴子と、小次郎の父親である天城健との間に子供がいる」との表記がされており、それが小次郎であるかもしれない……というもの。
ゲーム内で確認出来るのは、元々冴子は天城健を、彼が研究していたXTORTと共にマークしており、天城健死亡後もその息子である小次郎をマークし続けている、というくらいのもので、「小次郎の母親である」と断定できるような記述はありません。一方で小次郎の母親に関しての記述も全く無く、確認出来るのは天城健死亡時に、夫の事故死に巻き込まれて彼女も死亡したという点のみ。諸々の雰囲気などから考察するに、おそらく小次郎の実母はごく普通の一般女性であり、夫の研究を巡る暗闘に巻き込まれてしまったという感じだとは思いますが、しかしそうと断定する記述が無いためにこの冴子が小次郎の母親かもしれないとする余地は確かに存在はするわけです。ただし、WIN版ZEROで小次郎が冴子に掴み掛かるシーンが追加されていますが、その時に実の母親であることを言及するような記述はありません。まさか掴み掛かった相手が実の母親かどうかもわからない……ということは無いと思うので、この辺りで流石に小次郎の実母という設定は無理があるんじゃないかと結論付けれるとは思います。
一方、TFA作品内で氷室恭子と美作が会話するというシーンがあり、その会話の内容から氷室冴子が氷室恭子の母親であることが推測出来ます。実はこれに関しても作品内で断定出来る記述などは無いのですが、設定上実母とするものもあり、名前や容姿の共通点を考えてもおそらくこちらは実の親子であろうと考えるのがごく自然ではありますね。もっとも、ZERO設定集の中には「氷室冴子とは本名ではなくコードネームのようなもの」なんてものもあり、名前や容姿の共通点をもって即親子と断定出来ない余地も存在はしていますが、ま、今回はそこはスルー致しましょう。
ここまでの冴子さんに関しての記述をまとめると……
◆天城健をマークしており、息子である小次郎もマークしていた【ZERO作品内】
◆天城健との間に子供がいる【PLUS設定集】
◆冴子には二人の子供がいる【ZERO設定集】
◆冴子と氷室恭子は実の親子【TFA作品内】
というところですかね。単純にゲーム内だけの記述だけを見れば全く接点が生じないのに、設定集の記述まで考慮していくと「もしかしたら……」という余地が発生してしまうというわけです。他にも細かい部分でこの可能性を否定していく記述としては以下のようなものがあります。
◆小次郎は両親死亡後、自分は天涯孤独の身であると話している【ZERO作品内】
→氷室恭子という姉が存在していることと相反しています。少なくとも同じ家庭で育ったことにはならず、小次郎と氷室恭子が姉弟関係として過ごしたという可能性はゼロに。そもそもこの二年後の事件で知り合ってかなり深い仲になるというのに、その相手が自分の血縁者であることに気付かないというのはあり得ないですね。ちなみにこの話題で「異父関係」としているのはまさにこの点を考慮しているからでもあります。
◆小次郎の母親は天城健と共に事故死【ZERO作品内】
→氷室冴子が生存していることと相反しています。天城健は事故を装った交通事故で殺害されており、その黒幕は仁科と政治家の葉室。実行犯は仁科の意向を受けた仁科組のヤクザでして、要するに確実な暗殺を依頼されているわけです。その中で妻は彼らの目を盗んで生き延びるなんてことが可能なのかという点からしてかなり無理がある上に、更にその後も気付かれずに息子をマークしつつ、直接対面して掴みかかられても気付かれていない……というのは流石に強引過ぎるかなと。
などなど。それでもこれら全てを考慮しつつ、しかも小次郎と氷室が姉弟であるという設定を活かそうとすると氷室冴子という人物は以下のようになります。
別の男との間に恭子という娘を既に設けていた状態(※結婚せずに出産したか、この父親とは離婚したか)で天城健と結婚し、後に小次郎を出産します。夫や息子に気付かれないよう暮らしながらも夫を研究成果と共にマークしていましたが、夫に襲いかかる陰謀の魔の手を止めることは出来ずに夫は殺害されてしまいます。しかし冴子は共に死亡したと見せかけて実は生きており、その後も息子に気付かれないように顔を変えて再び夫の研究成果と、息子である小次郎をマークしているのでした……
うーん……なんか色々盛りすぎて訳のワカランことになっていますが、全てを考慮していくとこんな感じですね。ハリウッドでももうちょっと大人しく作るんでないかい?的なスーパー女スパイが出来上がってしまいましたが如何でしょう?
他にもうろ覚えの設定の中には「天城健は冴子という女性と再婚した」なんてものもあったりするので、そうすると小次郎は実母を病死か何かで一度喪った後に父親が再婚したことになりますね。こちらを加味すると、小次郎からすれば父の再婚相手であり義母である冴子は、おそらく監視目的で天城健に近付いたことに幼いながらも小次郎は気付いていて彼女のことを快く思っておらず、WIN版ZEROで思いがけずに再会したシーンでは思わず掴み掛かって行った……という風にすることも出来ます。
これならば氷室恭子と小次郎は血の繋がっていない義理の姉弟関係にあたるわけですし、しかも異父関係なので同じ家庭で育つ等の面識が無ければ、互いに知らない同士の完全な他人状態。burst以降の二人の関係から「禁断の姉と弟の恋愛関係……」なんて
このように、EVE ZEROという作品には色々とウラ設定が豊富にあって面白いのですが、玉石混交のその中にはボツ案になったものも含まれていたようで、辻褄が合わなかったり矛盾が生じたり、果てにはEVEの世界観を根底から揺るがすようなものも幾つか見受けられます。ユーザーの側としては楽しい反面あれこれ惑わされたりで大変なわけですが、これもまた、作品毎にシナリオライターが変更されてきたEVEという作品の持つ特徴的な魅力とも言えるのではないでしょうか。