EVE burst error


セガサターン版(年齢制限):1997/01/24発売
他機種:
WIN95版(R指定)、ダウンロード版(R指定)
PS Vita版他『EVE burst error R』(CERO規格D)

連続猟奇殺人事件の謎。
迫る猟奇殺人犯。禁断のサイコスリラー。
マルチサイトシステムが明かし出す驚愕の真実とは?

【小次郎編】
 売れない私立探偵。久々に舞い込んだ美味しい仕事は怪しげな美術品の捜索だった。胡散臭さを感じながらも高額報酬につられて事件を調べだした小次郎だったが、やがて悪夢のような猟奇連続殺人に巻き込まれていく。

【まりな編】
 任務達成率99%を誇る、国家機関の天才(天災?)エージェント。今回の任務は某国駐日本大使令嬢の護衛。次々と現れる謎の襲撃者を撃退していくうちに、その裏側に潜む過酷な政治抗争を知る。

(※セガサターン版パッケージ裏より)


【作品紹介】

 記念すべきEVEシリーズの出発点。大元は1995年の11月にPC98版のアダルトソフトとして発売された作品でした。移植プラットフォーム先であるセガサターンは、この当時他社ゲーム機のプレイステーションと比べると表現規制が比較的緩かったこともあって、PCで人気を博していたアダルトソフトを積極的に移植していた時期でもありました。今でこそ当たり前のように作品のウリとしてクローズアップされている声優起用についてもこの頃の家庭用ソフト群がその第一期くらいに当たります。この、今ではちょっと考えられないくらいの豪華な実力派声優起用は、EVEシリーズを通しての大きな魅力ともなりました。

 burstという作品の魅力は何と言ってもその完成度の高いストーリーや魅力的な人物による世界観の構築にあります。二人の視点を並行して進めていくマルチサイトシステムも、物語をザッピングしながら読み進めていくという手法をゲーム的に成功させた希有な例として当時から高く評価されていました。今でも「アドベンチャーゲームでこれだけはやっとけ」とか「サターン時代の名作は?」という話題が上ると確実にノミネートされる、ある意味では伝説的な作品として多くのユーザーに愛されている作品でもあります。マルチエンドなし、コマンド総当たりの古き良きアドベンチャーゲームですが、それらの作業の単調さが全く気にならないくらいのシナリオの秀逸さを存分に味わって頂けると思います。

 ストーリーの内容については他ページで詳しく言及していますのでここではあまり触れませんが、burstという作品の大きな特徴として、作品紹介にもある「サイコスリラー」という点が挙げられます。EVEというゲームは一度クリアしてしまうと、そのインパクト故にどうしても作品のテーマがクローンとか生死の倫理観方面にシフトしてしまい、これ以降の続編も全てこの影響を受けてしまったのですが、初回プレイ時に私が感じたのはそういう小難しい話ではなく、純粋に「連続猟奇殺人」を追い掛けるという緊張感と恐怖によるドキドキでした。当時「剣乃ゆきひろ」名義でシナリオを書いていた菅野ひろゆき氏のハイクオリティなシナリオ、魅力的なキャラを次々と作り上げた田島直氏による原画、梅本竜氏(※2011年、若くして急逝。ご冥福をお祈り申し上げます。)のサウンドがそれらのシーンを見事に演出…と、どれをとっても一級品の作品と言っても過言ではなく、この後にシナリオ、スタッフ、メーカーが幾度となく替わりながらも「EVE」という作品が作られ続けて来たのは、何と言っても「この作品があまりにも面白かったから」という理由に他なりません。

 後発でリファイン版(PLUS)やリメイク版(PSP版)も出ましたし、何と言っても今となってはセガサターンの作品を遊ぶこと自体がかなり困難になってしまいましたが、そんなユーザーの要望に応えて今ではAmazonでダウンロード販売版も購入出来るようになりましたので、原点たるサターン版(WIN95版)を未プレイの御方は是非プレイなさってくださいませ。


【システム紹介】

 基本的にはコマンド総当たり、マルチエンド無しの古き良き一本道アドベンチャーゲームという感じでしょうか。その分どうしても作業的になりがちな部分もありますが、後述のマルチサイトシステムにより読み進める側の楽しさも上手く刺激してくれています。また、高速メッセージスキップや再読機能などもちゃんと備えており、この時代のアドベンチャーゲームとしては、システム的な面でがっかりするポイントはほとんど見当たりません。ま、強いて挙げるとするならば、この当時にありがちだった複数枚に上るゲームディスクの入れ替え作業くらいでしょうか。「セーブをしてからサイトチェンジ」という独特のシステムが分からずに、初回時に数時間のプレイをパーにした経験をお持ちの御方もいらっしゃることでしょう。かくいう私もその一人ですね(笑)。

■マルチサイトシステム■

 小次郎編、まりな編と二人の主人公の視点を交互に、時に同時に進行させて物語を読み進めていきます。物語をザッピングするという感覚をゲーム的に昇華して成功を収めたという意味でもゲーム史に残るであろうかなり特徴的なシステムで、以降のEVEシリーズの代名詞にもなるシステムです。マイナス点があるとすれば「進行が行き詰まってストップしてしまう=他視点を読み進めてフラグを解除する必要がある」箇所を教えてくれませんので、全てのコマンドを選択しても全く進行しないぞーという状態を一度敢えて作り上げなければ行けない、という点でしょうか。これがピンと来ないとゲーム進行がストップした際、「あれ?誰かと話し忘れたかな?」とか「何かを見落としたのかな?」という不安が残り、それが長じてイライラな作業モードに突入してしまうことも。しかしこれこそが主人公視点で状況を推理するという、この作品の醍醐味という一面もあり、多少の救済措置があるものの以降の続編でも明確に「ここでサイトチェンジしなさいよ」と教えてはくれない仕様になっています。

 しかし全く不満の声が無かったわけではないようで、リファイン版やリメイク版ではこの点を改善してサイト変更ポイントを教えてくれるようになりました。

■犯人入力シーン■

 後のシリーズでも導入されておらず、またリファイン版のPLUSでも削られてしまいましたので、数あるEVEシリーズの中でも唯一登場する犯人入力方式。初見プレイで全部正解したらスゴイと思うのですが、果たして皆様は如何でしたでしょうか。私は一つか二つくらいしか正解出来ず、かなりめちゃくちゃでしたが(笑)。ちなみに犯人入力を間違えてももう一度入力をし直すことが出来ますので、バッドエンドにはなりません。おそらくエンディングを前に真弥子の設定や精神状態に想いを馳せることでより感動的にエンディングを迎えることが出来る…という効果を狙ってのものだと思いますが、なんかいかにも探偵モノ!って感じのシステムですよね。

EVE burst error PLUS


PS2版(CERO規格D指定):2003/07/24発売


【作品紹介】

 「PLUS」の名が表す通り、ストーリーそのままでグラフィック、音楽、システム面をリファインして作り直されたPS2版burst error。表現規制があるので暴力表現や性的表現の全てが再現されているわけではなく、特に氷室好きの私にとっては絶対に外すことの出来ない氷室との入浴シーンなんかはばっさりと変更されてしまいましたが、基本的にはサターン版(WIN95版)のストーリーをほぼそのまま再現しています。一方、リファインに当たってグラフィックをかなり変更したのですが、かえって当時からのファンにはそれがなかなか受け容れられず、発売当時のウチのサイトの掲示板ではその点を嘆く書き込みも数多く見受けられました。

 この時期既に低迷期にあったシーズウェアとしては看板作品のリファイン、しかも家庭用大御所機種たるPS2での発売と言うことでまさに社運を賭けての大勝負に打って出たと思われますが、内容はともかく売り上げ的には「そこそこ」の域を超えず、結果的には生みの親であるシーズウェアが手掛けた最後のEVE作品となってしまいました。


【システム変更】

■Cモーション■


 こんな感じで、単調だったキャラ立ち絵が幾つかのポーズを取って動いてくれます。しかし一回見れば慣れて感動も薄れてしまいますし、初見以降は単にダルいだけという悲しい徒花に終わってしまった感も無きにしもあらず…オン・オフの切り替えがあったらかなり評価は変わっていたと思いますけどねー。

■犯人入力シーン割愛■

 ラストにあった犯人入力シーンがカットされていますので、ラストシーンからそのままエンディングへと突入していきます。サターン版をプレイした御方からずればちょっと残念な変更かも。

EVE


WIN版(18禁):2003/11/28発売


【作品紹介】

 burst errorのリファイン作であるPLUSをベースに、グラフィックや文章に於ける18禁表現の修正を行っていない作品。いわゆるエロシーンもばっちり満載で、そう言う意味では原点であるPC98版の世界観を楽しめる作品とも言えますね。しかし18禁作品のエロゲーになったことで家庭用機種と同じキャストを起用するわけにはいかず、やっぱりそこが唯一にして最大の弱点になってしまったという悲しい作品でもありました。

 ちなみにオマケとしてPC98版『EVE burst error』と、氷室恭子や松乃広美が登場している『悦楽の学園』が収録されているディスクがついてきますが、むしろ希少価値の高い二作品を収録したそれこそが目当てというユーザーも多かったと聞きます。名作といえどもリファイン・リメイク商法までもが成功を約束されているわけではないという、業界的には厳しい現実を我々に遺してくれた作品とも言えるでしょう。

burst error EVE the 1st


PSP版:2010/03/25発売


【作品紹介】

 ストーリーそのままでグラフィックやシステム面を改善した前述のPLUSがリファイン作品であるならば、こちらはキャラもストーリーも大幅に作り直して来た、本当の意味でのリメイク(re_make)作品。詳しくは別ページのレビューにて触れていますが、面影らしい面影はほとんど無いというくらい思い切ってバッサリ変更して来た作品でもあります。ストーリーも大筋の流れを踏襲している以外はほとんどが大幅変更され、登場人物も新キャラが登場するのは勿論、既存キャラもキャラデザだけでなく、性格からががっつりと変わっているケースも珍しくなく、氷室に至ってはいきなりつるペタのロリキャラに変身しており、本当に別作品として生まれ変わったんだなぁ…としみじみ感じられる作品です。

 当然古くからのユーザーには受け容れられず未プレイの御方も相当いらっしゃる模様ですが、それでもやはり大元であるburstが偉大なのか、読み物ゲームとしてのクオリティはかろうじて維持出来ているか、も…?というくらいには世界観を作り上げることには成功しているかと思います。しかし、「あれだけベタ褒めしてる作品と比べられるわけですから…」と幾分かの同情補正をかけ、しかも思い出補正のフィルターを極力取り去ってゲーム単体として評価してみても、如何せん全体的な文章の稚拙さはどうしても気になり、やはり読み物作品としてのパンチの弱さは否定しようがなく、「新たなライトユーザー獲得」というこの作品の意図が果たしてどこまで達成されているのかはかなり疑問でもありますね。

 そういう意味ではかなりカワイソウな位置付けの作品ではありますが、ま、これで一人でも多くの御方がEVEという作品に触れてくれるきっかけになってくれればこの作品も浮かばれることでしょう。でもここからEVEをプレイされる御方がもしいらしたらかなりびっくりするでしょうね。ロリキャラ氷室とか、本当は普通にコスプレしてる三十路だもんなあ。


【システム変更】

■コマンド選択式の排除■

 マルチサイトシステムは共通していますが、コマンド選択の総当たり方式ではなくボタンを押して読み進めるだけの方式に変更されていますのでスピーディーに読み進めることが出来ます。逆に言えばスキップボタン押しっぱなしでどんどんストーリーが進行してしまうので、じっくり文章を読み、コマンドを選んで色々考えたり推理したりという接し方では無くなっていますね。当時そのままのコマンド総当たり方式が流石に古臭いのは事実ですが、EVEという作品に於いてはこのサクサク読み進めタイプは魅力と面白さを損ねてしまわないかと危惧する変更でもありました。

■クリア後に「二階堂編」と「源三郎編」を追加■

 ストーリーが大幅に変更されましたが、読み進める系だとどうしても作品の印象が弱くなったり、サイドストーリー等が本筋に織り込めない部分も出て来ますので、クリア後に別人物視点のストーリーを追加してその部分を補完するような形で二つのシナリオが追加されています。

 この二つのサイドストーリーでは、リメイク作品で大きく変更された二つの設定について触れられており、「二階堂編」ではエルディア王族を巡る血縁関係について触れられ、「源三郎編」では旧エルディア情報部で繰り広げられる暗闘について描かれています。