EVE rebirth terror


PS4、PSvita(CERO規格D指定):2019/04/25
Nintendo Switch

バーストエラー事件から一年。

失踪した教師、死因不明の遺体

再び起こる謎の事件。二人の運命は、

また新たなる悲劇を辿る……。

(※PS4版パッケージ裏より)


【作品紹介】

 2018年12月、突如として『EVE burst error』の続編が20年ぶりに発売!という衝撃的なニュースが発表されました。2016年にリリースされた『EVE burst error R』を始めとしてサターン時代の名作ADVゲームのリメイクを手掛けたEl-diaが手掛けたこの新作は、burstから一年後の世界を新たに再構築した完全新作。EVEシリーズとしても角川ゲームから発売された『EVE new generation』以来、実に13年ぶりという、このテの業界としても大変珍しい驚異的とも言えるシリ−ズ作品の復活です。

 EVEシリーズは一作目となる『EVE burst error』の発売から数えれば今年2019年で何と23年目。シリーズも6作目を数える作品です。元々がPC18禁ゲームとして発売された作品ながら、家庭用ゲームハードのセガサターンに移植されて後はプレイステーション、ドリームキャスト、PS2、PSPと様々なハードの変遷を経ながらもその都度リリースされて来た息の長い作品でもあります。開発スタッフやメーカーも様々に変わりながら創り上げられて来ており、作品毎の主人公像やストーリー解釈に幅のある作品としても知られており、勿論それがシリーズ全体を通しての大きな魅力でもあるわけですが、シリーズを重ねるごとに一作目の『EVE burst error』との設定の矛盾やストーリー面に於ける原点からの乖離などの不満が常に囁かれて来た作品でもあります。

 そんな中で発表された今作はこれまでの続編で作られて来た世界観の再構築を断行。敢えて「burst errorの一年後」を舞台とした「新たなEVEの続編」をもう一度作り上げることに挑戦し、それを見事に成し遂げたという点では原点である『EVE burst error』に匹敵するほどの名作と言っても過言では無いでしょう。前作内で語られずにいた設定や未回収伏線なども全てストーリーに組み込みながらも、小次郎やまりなを始めとするお馴染みのキャラたちも従来のイメージ通りに描き切ることに成功しています。本部長や弥生など既に声優が亡くなったキャラに関しても、新たに起用された声優がこれまでのイメージを損なうことなく演じているのが本当に嬉しいポイントでした。

 ストーリーに関しては『EVE burst error』の設定を色濃く受け継ぐ、まさに続編とも言うべき内容のオンパレード。小次郎編では今作のヒロイン音無橘花の依頼を受けた小次郎が、彼女を守りながら失踪したエール校教師の行方を捜しますが、その小次郎を弥生と氷室が時に肩を並べつつも見守り、時に小次郎を助けるために奔走するなどの活躍も見せてくれます。一方のまりな編では新しく相棒となった桐野杏子とまりながとある研究機関の科学者の死因を探るところから捜査が開始。おなじみ甲野本部長のサポートを受けながら捜査を展開して行きますが、やがて科学局を率いていたドールマン=孔がC計画とは別に密かに進めてきたD計画と呼ばれる計画やLose ONEと呼ばれる研究の存在が浮上して来ます。その他にも殺害されたエール校の前校長ストールマン=孔が遺したとされる遺産、そして改革派や旧情報部の残党を吸収したロイズと呼ばれる組織の台頭など、EVEファンであれば誰もが興奮を覚えずにはいられないキーワードが次々と登場します。

 こうして小次郎とまりな、二人の主人公視点で進行する二つの物語が様々な人物や事件を介することで交差したりすれ違いながら事件の真相へと近付いて行き、やがてクライマックスには二人が揃い踏みして決戦の場に赴くという、まさに「これこそがEVEなんだよ!」と叫ばずにはいられない熱い展開がラストに向けて繰り広げられて行きます。

 一方、前作となるburst事件と今作とを結ぶ複雑な設定の説明と解明には、何と氷室恭子を主人公とする恭子編が登場。古巣である教育監視機構に一時的ながら復活し、『悦楽の学園』時代の同僚・佐久間裕一と共に再びエール外国人学校に趣いて前校長が遺したとされる「ストールマンの遺産」の捜査に乗り出します。殺人容疑をかけられた小次郎を救うために奔走する氷室は、やがてその捜査の中で小次郎の影響を受けてかつての自分から変わりつつあることと、小次郎のパートナーとしての自分の気持ちに気付き始めるという、EVEファンとして、そして氷室好きとしても悶絶間違いなしの展開も待っています。

 そして全ての事件が収束し、伏線が回収されたラストにはあの御堂真弥子も登場。事件の中で自身がクローンであることを知りながらも、それでもなお前を向いていつか笑えるようにと歩き出す橘花。その横にはかつての記憶を全て失いながらも小次郎とまりなの想いを受けて目覚めた真弥子の姿があり……と、涙を流さずにはいられない感動必至のラストシーンは、多くのEVEファンに「20数年、待ち続けた甲斐があった……」と思わせてくれる最高の瞬間とも言えるでしょう。

 ただ単に『EVE burst error』のキャラや音楽、ストーリーをなぞるだけでなく、ファンの中にあるEVEらしさ、小次郎らしさ、まりならしさをこの作品の中で描いてくれたさかき傘氏のEVE愛には本当に感謝しかありません。作品の随所に「こういうのを待っていたんだ!」とか「そうそう、こうでなくちゃ!」と思わせるセリフや展開が散りばめられているのは、まさしく制作側のEVE愛があればこそ。既に亡くなられた剣乃氏の代表作とも言えるEVEを手掛けるにあたり様々な困難や意見もあったかと思いますが、それらを乗り越えて『EVE rebirth terror』という素晴らしい作品を作り上げてくれたことに一ファンとしても惜しみない感謝と賛辞を送らせて頂ければと思います。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました!


【システム紹介】

 二十年ぶりのEVE新作ではありますが、本作ならではの特徴的なシステムなどはなく、基本的には従来作品と同様のオーソドックスなサイト切り替え式の読み物系ADVゲームです。それでも初代『EVE burst error』から数えると二十年近く経っていますので、当時は実装されていなかったオート機能、調整可能なスキップモード、読み返し機能、オートセーブ・オートロードなどは一通り揃っており、ストレスなく文章を読み進めることが出来ます。

■『EVE burst error R』収録(PS4版)、ミニビジュアルノベル収録(PSvita版)■

 PS4版、PSvita版それぞれにおまけとして上記作品が収録されています。特にPS4版には前作リメイク作品『EVE burst error R』が丸々一本収録!ブルーレイという大容量メディアならではの嬉しい特典ですね。今作は少なくとも『EVE burst error』をプレイ済みであることが大前提の作品となっていますので、事前復習やクリア後の前作おさらいプレイに最適です。

■トロフィー機能■

 PS作品ではお馴染みのトロフィー機能も実装。とは言うものの選択肢によるストーリー分岐の無い作品ですし、EVEシリーズ恒例のお遊び選択肢を楽しんでプレイされる方がほとんどだと思いますので、じっくり全コマンドを一通り選んで行けば初回プレイでの100%コンプリートもじゅうぶん可能です。クリア後は日付毎にゲームを再開出来ますので、再プレイ時の未達成トロフィーの回収も容易なのも良いですね。

 見落としやすいのがまりな編12月3日の病院でのトロフィー取得。特定コマンドを選択すると強制終了してしまうバグポイントと重なってましたので未回収という御方も多いと思います。現在は修正パッチがダウンロード出来ますので、まだの御方は再プレイで回収しましょう。