EVE ν(new) generation
PS2版(CERO規格D指定):2006/08/31 |
「過去に起因する血の連鎖……それが全ての始まりだった。」
主人公である天城小次郎と法条まりな。二人の視点を交互に切り替えることで、いくつもの謎が少しずつ解き明かされていく。小次郎とまりなの物語が交わるその先の真実に向かって。
主人公たちの前に現れる二人の少女”乃依”と”アルト”。彼女たちがもたらす二つの事件は、捜査を進めるに連れてあるキーワードで結ばれていく。「蜂」が示す事件の真相とは…
(※PS2版パッケージ裏より)
【作品紹介】
PS2版burst発売から約三年。この頃、EVEの開発元であるシーズウェアは作品のリリース数も間隔も徐々にペースが落ちており、公式ホームページの更新もある時期を境にピタリと止まってしまいました。サイトの閉鎖こそありませんでしたが、既にもう誰が見ても新作品を作り出すような環境には無く、シリーズ原点たるburstリメイク作・PLUSがこのEVEシリーズの最後の作品となっていた――多くのEVEユーザーはこの事態を当然のように受け容れていました。
そこにある日突然、何の前触れも無く、「EVEの完全新作がPS2で発売される」というニュースが我々にもたらされます。
当時うちのブログでも新作に出会える喜びのコメントを沢山頂きましたが、正直なところ喜びよりも先に「まさか…!」といった驚きを感じたという御方が大半でした。それくらい当時のEVEファンにとっては衝撃的な復活劇であったわけです。発売元はこれまでEVEを手掛けてきたシーズウェアやゲームビレッジではなく角川書店に変更。この少し前、剣乃作品『デザイア』のPS2版が角川から発売されていましたので、ある程度の土壌は出来ていたのかもしれませんが、それにしてもまさかEVEの完全新作を手掛けてくるとは予想もしておりませんでした。しかもEVE作品最大の注目点たるシナリオライターには『Ever17』などでその実力が評価されていた打越鋼太郎氏を起用し、キャラデザにも『Piaキャロットにようこそ!!』で名を馳せた橋本タカシ氏を起用するなどの豪華布陣であり、当時誰もが夢見ていた「誰かEVE作品を拾い上げて、新作を作ってくれないものか…」という夢が遂に実現された、奇跡のような瞬間であったことは間違いありません。
ユーザーに衝撃を与え、そして往年のファンに夢と希望を与えてくれたこのEVEシリーズの完全新作は、当然期待のハードルも相当高まっておりまして、これまでの作品の中で複雑に紡がれてきた数々の設定やストーリーをどのように引き継いでいくのかが注目されましたが、このEVE new generationはその名が示す通り、「新しいEVE」を手掛けることでそれらに挑戦して来ました。つまり、小次郎やまりなら主要人物の設定こそそのまま踏襲されていますが、エルディアや"EVE"と言った、これまでのシリーズで中核を為していた設定は完全に切り離しており、全く別物の新しいストーリーの中で「EVEらしさ」を表現しようというのが基本コンセプトとされたのです。当時のユーザーからは、やはりこれまで作り上げてきたものに触れられていなくて残念だったという想いもあった一方、これくらいの思い切った転換が無ければ新作は出せなかっただろうという感想も多く見受けられました。複雑で重厚なストーリーが繰り広げられる「打越EVE」がユーザーにどのように映り、受け止められたのか、という感じではありましたね。
ただ、その分クセのある文章とストーリーが特徴的な作品にもなっており、中身の濃い問題提起があったかと思えば、終盤部分は結構強引に伏線を回収したりもしちゃいますし、色々ミステリアスな展開があったかと思えば、その謎解きやトリックの解説になるとちょっとがっかりするようなトンデモ設定で片付けてしまったりという部分もしばしば。また、小次郎とまりなの描き方にもかなり極端にスポットが当てられており、小次郎は狙い過ぎてるほどにめちゃくちゃカッコイイ描かれ方をされている一方、まりなは極端なまでに弱い部分を強調されていたりと、ちょっと主人公像のミスマッチ的な部分も個人的には気になりましたが、それもまあ前述したような「打越EVE」の味、ということでしょう。
一度終わったと思われた往年の人気シリーズ作品が、ユーザーからの熱い要望に応えてここに復活――!
そんな誰もが夢見るような展開を実現してくれた、というだけでも特筆に値する作品ですし、「打越EVE」という作品コンセプトの随所に剣乃ゆきひろ氏が生み出した名作『EVE burst error』へのリスペクトや愛情が感じられた作品ともなりました。話自体はかなり重くて複雑な設定が用意されている作品にはなりますが、過去作品を全てプレイしていなくてもじゅうぶんに楽しめる作りになっています。おそらくはこれがシリーズの最終作品となるであろうとは思いますが、最後にこうした「新しいEVE」の形をユーザーに呈示してくれたことで、「またひょっとしたら…」なんて淡い期待も持たせてくれた作品でもありました。
【システム紹介】
システム的にはほとんど従来作品からの変更はありません。特徴的なサイトチェンジシステム以外はオーソドックスな「読み進める」タイプのADVゲームシステムなので違和感なくゲームを進行させることが出来ます。
■ディテクティブモード■
敢えて特徴的なシステムを挙げるとすればこれ。特定箇所になるとこのディテクティブモードに入り、「十字キー+○(行動)、△(会話)、□(調査)ボタン」を組み合わせることでそれぞれの行動を選びながら捜査を進めていきます。しかし結局の所幾つか用意されている選択肢を総当たりすることにかわりはありませんので、「ディテクティブ(探偵)モード」とそれらしい名称を付けた割にはあまり印象にも残っていないわけですが(笑)
EVE ν(new) generation X
WIN版(18禁):2007/03/23 |
【作品紹介】
EVEジェネから約半年後に発売されたPC18禁版作品。それに伴って発売元が角川から変更されています。アダルトシーンが追加された以外の変更点は特に無く、後発の追加版や完全版というよりはあくまで「18禁版」と言ったところでしょうか。
18禁作品と言えば勿論直裁な一番のウリは「エロ」。つまりアダルトシーンやCGになるのですが、「グロ」という言葉に代表されるような残酷描写や、アダルト表現の幅を広げることで人間関係や血縁関係のタブー表現が出来るようになったりするのももう一つの大きな特徴と魅力になります。しかし元々からストーリー密度の濃い本作にはそういった「エロ」や「グロ」を後から違和感なく入り込ませる余地は殆ど存在しておらず、追加されたものもシチュエーションや話の流れ的にかなり唐突に始まってしまう感が否めないものばかりで、折角のシーン追加がかなり蛇足的なものになってしまいました。18禁作品化に伴って声の方も変更されており、PS2版をプレイされた御方はこちらまでプレイしなくても別に良いかなあとは思うのですが、ここまで来たらそれを百も承知で購入したファンも少なくなかったことでしょう。勿論私もそうでした(笑)
また、全シリーズを通して唯一「全年齢作品→18禁作品」の流れでリリースされているのが大きな特徴ですが、全体的な完成度としてはむしろ下がってしまった部分もありますのでちょっと残念な作品になってしまいました。
EVE雀
WIN版(18禁):2008/07/25 |
【作品紹介】
18禁版EVEジェネXを基にしてリリースされた脱衣麻雀ゲームにして、紛う事なき黒歴史作品。
EVEシリーズを通して見ても、同梱ディスク以外でのファンディスク作品というのはこれまでに作られたことはありませんでしたので、そういう意味ではユーザーの要望ともマッチしていたとは思うのですが、そこでなぜ脱衣麻雀をチョイスしたのかは未だに不明。あまりにも予想外でナナメ過ぎたこのソフトの存在は当然ファンにも不評でして、発売されてこの方、好意的な評価や感想を聞いたことは一度もないという悲しい現実だけが残ってしまいました。
そもそも麻雀ゲーとしても及第点以下の出来でして、いわゆるイカサマありありの積み込み麻雀ゲーなのですが、2008年にもなってそんな古臭い脱衣麻雀ゲーをフルプライスで購入するユーザーが果たしていたかどうか、という根本的な部分に問題大ありな作品。ストーリーもCGもやっつけ仕事的な完成度でしかなく、ボリュームも全くなし…と、あらゆる点に於いて評価出来るポイントが存在しないという、まさに黒歴史と呼ぶに相応しい作品になってしまいました。EVEシリーズの息の長さと、長年それに付き合って来たファンを取り込む為のコンテンツ展開という意図は重々理解出来るのですが、その結論と方法が脱衣麻雀というのはやはりどう考えてもいかがなものかと…。
シリーズ作品としてはカウントされない類のソフトではありますが、ま、こういったモノもありますよーという意味を込めて紹介致しました。