この世の果てで恋を唄う少女
YU-NO人物辞典_現世編01
有馬 たくや

PS4版
CV:林勇
セガサターン版
CV:檜山修之 

本作の主人公。境町学園三年生。
幼少期に母親を亡くし、歴史学者である父親も二か月前に研究取材中の落石事故で亡くなる。
現在は継母と二人暮らし。 

有馬 たくや


 私立境町学園三年生の学生。世界を飛びまわる考古学者の父・広大と、広大の再婚相手である義母の亜由美と共に過ごしている。二ヶ月前、広大が調査中の遺跡で落盤事故に遭い行方不明になったとの報を受け(※後に死亡認定)、唐突に居なくなった父を罵りながらもその寂しさを否が応にも感じさせられていた。一方では悲しみに暮れる亜由美を支える事の出来無い自分に歯痒い思いをしながらも、どうにか表面上は気丈に振る舞えるようになった彼女との新しい生活に不安以上の複雑な心境で臨む事となる。
 
 ある日、死んだはずの父から小さな宝玉と、それをはめ込む鏡のような代物、そしてたくや宛てに記された手記が送られてくる。「時間の流れは可逆であり、そこに至る道もまた多様である」・・・意味のわからない論説を訝しみながらも父の生存を感じたたくやであったが、その日の夜、亜由美からの切羽詰った電話を受けて駆け付けた剣ノ岬で奇怪な現象を目の当たりにする。突然目の前に現れる金髪の女性。彼女はたくやに口付けをした後、目の前から姿を消す・・・呆然とするたくやに、広大の共同研究者であった龍蔵寺が銃を構えて宝玉を渡すように迫ってきた。傍らには当惑する亜由美の姿が。そして大きな地震が起きたと同時に彼は意識を失う・・・気が付けば彼は剣ノ岬に横たわっていた。翌日、出会っても何事も無かったのように振る舞う龍蔵寺や亜由美。決してたくやを騙すために振る舞っている様でもない。訳も分からぬたくやの脳裏に浮びあがったのは、広大が遺した『並列世界』の論文だった。そして彼が遺した代物がリフレクターデバイスという、並列世界と言う一種のパラレルワールドを行き来する為の道具である事を知る。

 亜由美が勤めるジオ・テクニクス社の落雷事故の頻発、学校近くの武家屋敷からまことしやかに伝えられるタタリの噂、剣ノ岬の碑文、人が変わったかのように何かを捜し求める龍蔵寺・・・並列世界を飛び交い様々な人の想いを経て、彼は一つの真実へと辿り着こうとしていた。


【再録】talkの独断偏見コメント


 割に主人公のキャラクターが立っているのも剣乃作品の特徴で、お約束通り髪の毛で目が隠れてはいますが、主人公と自分が時折共感するように感じることはあっても、たくやはたくやという人物として成立しているように思えます。自由奔放、「歩くリビドー」と名付けられながらも、やる時はやるタイプの剣乃主人公の鑑のような人物。剣道を嗜んでいた=人並み以上には腕が立つ=故の自信、みたいな図式も最早剣乃ファンにはしっくり来る設定だと思いますねー。

 幼い頃に実の母親を顔も知らないうちに亡くし、今はお姉さんくらいの年齢の亜由美と二人っきりの生活をしている毎日。表面上は気丈に振る舞いながらも、広大を亡くした悲しみを引きずる彼女を守りたいと思うあたりで、微妙なコンプレックス(一般に言うマザコン=母親から自立できないのとはちと違うタイプ)を感じる事ができるし、一方では唐突に死を知らされながらも何処かでまだ生きているんじゃないかと思う父親への想いも強いわけで、悪く言えばマザコンにファザコンというコンプレックスの塊のような人物ではないかと。それが「彼」という人物を語る上では重要な要素かもしれません。どんな苦境に立たされようと決して諦めようとしない強靭な精神力は実はそのあたりと関係しているんではないかな〜とも。

 後はもう並列世界の特権を生かし切って様々な女性と懇ろになるあたりは、流石歩くリビドー。奔放で、強く、優しく、自分の信念は曲げず、そして数々のコンプレックスを背負う男・・・そりゃもう母性くすぐりの要素満載みたいなモンで御座います。異世界編では子供も出来るし、業界でも指折りの主人公だったりして。


20年越しのキャラデザ変遷+名字の元ネタ


 目が見えるようになりましたね(笑)。当時のエロゲ・ギャルゲの主人公と言えばお約束で目が見えないキャラデザが殆どで、プレイヤーの一人称視点と共感させやすいように容姿を特定しづらくしていたものと思われます。現在でも読者視点・プレイヤー視点との共感を持たせる必要性からあくまでも主張の少ないキャラデザに落ち着くことが多いのですが、それでもはっきりと容姿を描写するようになったのは流石に20年経ったんだなあと感じますね。同様の理由で主人公には声が当てられていなかったのが普通でしたが、YU-NOでは膨大な主人公のセリフにも声が当てられています。檜山神の熱演も楽しめますし、イメージ優先で主人公の音声をオフにしたりとプレイヤーの好みに合わせてオン・オフ機能は持たせていましたが、これは当時でも珍しい仕様だったようです。

 ちなみにサターン版のたくやは青ジャケットの制服の袖を捲って羽織っていましたが、PS4版では爽やかな半袖の夏服衣装に変更されています。前髪で目が隠れている容姿に青ジャケット衣装と、EVEシリーズの小次郎を彷彿とさせる点も多かったのですが、これがいわゆる当時のギャルゲ主人公の典型的な井出立ちだったのでキャラ像も自然と重なっていたのでしょう。同じ剣乃作品の主人公ということで思考や台詞の共通点も多いですしね。その点、リメイク版の方は容姿がはっきりと描写されていますが、これも現在のいわゆるハーレム系主人公の最大公約数的な視覚要素は満たしていますから、新旧のキャラデザで20年間の主人公像の変遷を感じることが出来るという点も面白いです。

 名字の元ネタは肥前の戦国大名有馬氏。主人公なのになかなかマイナーなチョイスですね。

 戦国時代に有馬晴純が現われて島原半島を根拠に肥前一帯に一大勢力を広げ、さらにポルトガルとの交易で最盛期を築き上げたが、その子の有馬義貞は、龍造寺隆信の圧迫を受けて衰退する。1584年、有馬晴信は島津氏と結んで沖田畷の戦いで龍造寺氏を撃退し、後に豊臣秀吉の九州平定で本領を安堵された。(Wikipediaより)

 龍蔵寺との因縁が深いのはご覧の通り。『信長の野望』では九州の弱小勢力の一つなので大抵その龍造寺に速攻やられますが、そこさえ乗り切れば北九州の豊かな土地を擁しつつ、九州北西端という立地上後背を気にせずに勢力を拡大出来るのでその後は割と楽に攻略出来たりします。有明海、島原湾を経ての海戦ルートで南九州に攻め込むのも意外性があって面白いですし、弱小勢力ながら地の利を生かした戦略が楽しめる、ゲームに慣れた中〜上級者向けの大名です。


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