web拍手感謝短短編
arc 「悪戯っ子2人組シリーズ」
※テンション高めなギャグです
2004?
エ「よしっ、今回はだれかの荷物チェックでもすっか」
ポ「こんなことして、いいのかなぁ…」
エ「いいって、きっと」
ポ「どこからくるの、そんな自信…」
エ「お、おもしろそうなの発見」
ポ「え、なになにっ?」
押し花の粋な作り方-貴方の生活に花を-
エ「……」
ポ「……見なかったことにしようか」
エ「あ、ああ。やっぱ、人のものを見るのはよくねぇな…ハハ」
ポ「そ、そうだね、アハハ」
トッシュ「あ、おめぇら何をこそこそ―って、おめぇらっ!!」
ポ「わーっ、見てない見てないっ」
エ「そ、そうだぜ。誰も押し花の本なんて―」
ポ「ぎゃーっ、エルク、墓穴墓穴っ」
エ「あばば、しまった。逃げるぞ、ポコっ」
ト「剣の錆にしてやるぜっ!!!覚悟を決めろってんだこら!!」
ポ「と、トッシュが完璧ヤクザにっ!」
エ「はあ、さんざんな目にあった…でもこんなところでへこたれるわけにはいかねぇぜ」
ポ「いやいやいや、少しはこりようよ!」
エ「なーにチキンなこと言ってんだ」
ポ「チキン?ボクは鶏じゃないよ?」
エ「あー、うん。別にいい」
ポ「ちょ、なに?気になるじゃんか!」
エ「え〜っと、お、なんか発見」
ポ「え、なになに?」
明日からあなたも鉄人の領域へ 24時間で学ぶ料理の道(クッキングウェイ)
エ「…ぐす…シュウ…」
ポ「え?ここ涙ぐむところ!?」
エ「ああ、これは泣くべき―」
カチャ
シュウ「…何をしている?」
そのとき部屋の空気が氷点下に達したような気がした(ポコ談)
エ「シュ、シュウ…な、なにもしてねぇぜ?だ、だだだだからこの銃下ろしてくれたら嬉しいなーなんて」
シ「ほう、何もしてない?」
エ「そ、そうだ、です。なあ、ポコ」
ポ「ええええええう、うん」
シ「…そうか」
ポンッとエルクの頭に手をおいてから、シュウは立ち去った。
ポ「…助かった」
エ「九死に一生、だな…」
エ「さーて、今回はどうする?」
ポ「ねぇ、もうそろそろ止めるべきなんじゃない?」
エ「それじゃあ駄目だ、漢じゃねぇ」
ポ「人の荷物探る方が漢じゃないって…」
エ「う、仕方ねぇだろ。ここまできたら―」
ポ「はいはい、分かったよ」
エ「…あ、嫌な予感が。ポコ頼む、開けてくれ」
ポ「え、ボクも嫌だよ!」
エ「頼む!」
ポ「…今夜の夕食でボクに何か提供ね」
エ「え…?そ、それは、嫌だ。オレが開ける」
ポ「最初からそうすれば良かったのに」
がちゃ
そこには、色とりどり種類豊富の鞭が並んでいた。
ぱたん
エ「いや〜、なんつーか、見ない方がよかったな。うん。ってポコ?」
横に座っていた相棒の姿は忽然と消えていた。
エ「あれ、あいつどこにいっ」
リーザ「…ねぇ、エルク?」
エ「!」
戦闘でもこれほどまでの殺気を受けたことはないだろう、背中にひしひしと感じる圧倒的プレッシャー。
振り向いちゃいけないと本能で感じるけど、振り向かなかったらどうなるのか見当がつくから、エルクはおそるおそる振り向いた。
そこに立っていたのは満面の笑みを浮かべたリーザ。
そして手に持った鞭を…これもコレクションのひとつなのだろう…しねらせている。
怖っ。
エ「な、なんでしょうか、リーザ…さん」
もう様付けしそうな勢いである。
リ「なんだと思う、エルク君」
エ「さ、さあ?オ、オレ、私には見当もつきませぬ」
リ「そう。残念だわ」
エ「ほ、ほんとにそうですねっ」
リ「じゃあ仕方ないから教えてあげるね」
ひぃえ〜っ!
ここでやっとエルクはポコが逃げたのだと気付いた。
エ「悪いっリーザ!」
持ち前の脚力をいかして、エルクはリーザを押しのけて脱兎のごとく駆け出した。
リ「ちょ、待ちなさい!エルク」
押されたひょうしに軽く尻餅をついてしまったリーザは大急ぎで立ち上がると、エルクの後を追いかけていった。
エ「はぁ…っ…なんとか振り切った…」
ポ「あ、エルク!大丈夫?」
エ「ポコ!てめー、オレを置いて先に逃げやがって!」
ポ「う、だって仕方ないでしょ?ほら、自分の身は自分で守らなくちゃ…ね?」
エ「そりゃあそうだけど、酷いぞ…」
ポ「わわ、ごめんっ!」
エ「…もういい。んで、次はコレか」
ポ「え゛、まだやるの?」
エ「ったりめーだろ?ここまできたら引きかえせねぇよ」
ポ「いや引きかえせれるよ、うん。って、エルク!」
がちゃ
今度の鞄の中に入っていたものは、アルバムと、斧だった。
なんともまあ対照的なものが入っているので、誰の荷物かすぐに分かってしまった。
エ「あー、グルガのか」
ポ「そだね、きっとアルバムの中は…」
エ「エレナの写真ばっかだな」
ポ「うん」
そう苦笑しながらポコはアルバムをめくった。
予想したとおり、持ち主の愛娘がこちらに笑いかけている写真ばかりで埋め尽くされていた。
ポ「やー、エレナちゃんも幸せ者だよねぇ」
エ「そうかもな。でも、ここまでやられちゃー、うざくねぇ?」
その言葉にどこかの誰かが傷ついたのは言うまでもない。
ポ「まあ自分だったらねぇ」
グルガ「おお、エルクにポコではないか」
エ「あ、グルガ」
グ「ん?ポコ、君が持っているのはもしや…私のアルバムでは!?」
ポ「え?あ、ごめん!」
グ「いいのだ。そうか、君はエレナに興味があったのか」
ポ「え」
グ「ふむふむ、だがエレナはやらんぞ?例え君でもな。それにしてもさすがというか、エレナの良さを分かるとはなあ、うんうん。君はいい目をもっている。どうだ?やはり可愛いだろう。いや、恥ずかしがらなくても良い。お義父さん?それは言っては駄目だ。なに、エレナの小さい頃のことを話してやろう」
親ばか炸裂。時折頷きながらグルガはああでもないこうでもないと、愛娘について語る。
呆気にとられたエルクとポコは、エレナと暮らし初めて1年の話になる頃になって、やっと正気に戻った。
こっそりとお互いに耳打ちする。
エ「ポコ、逃げるぞ」
ポ「もちろんだよ」
そそくさと2人は立ち去った。
グ「あのころのエレナは可愛くてな〜、いや今も十分に可愛いのだがな!」
残されたグルガは通りかかったアークが声をかけるまで、昔話を続けていた。
エ「なぁポコ。気がつけばオレ達4人を倒してきたな」
ポ「う〜ん、むしろ倒されてきたよね」
エ「う…」
ポ「さ、どうするの、エルク。やめる?」
エ「だ・れ・が」
ポ「やっぱり?」
エ「もちろん。オレがやめるわけねぇだろ?」
ポ「だよね。ボクもここまできたから最後まで付き合うよ」
エ「サンキュ。…開けるぞ」
ポ「うん」
その扉(肥大化しすぎ)の向こうは真っ赤でした。
エ「…ごくっ…なんだ、これは…」
ポ「真っ赤…。あ、エルク分かった」
エ「へ?」
ポ「ほら、これリボンだよリボン。てかむしろ紐?」
中にポコは手を突っ込むとしゅるると赤い紐を出していった。どこまで出してみても、切れ目はない。
エ「え〜〜っと…アークの、だよな?」
ポ「多分。アークっていろんなところに巻き付けてるもんねぇ」
エ「ああ、気になってたんだよなー。ほら戦闘中とか絶対汚れてるだろ?こうやって大量に隠し持ってたんだな」
ポ「うん、じゃあほぼ毎日新品に変えてたんだね」
エ「だな。でも毎日いそいそこの紐引っ張り出してきて、ハサミ片手に準備してると思うと…」
今にも吹き出しそうな顔をお互い見合わせると、口元に手をあてて、
ポ/エ「笑えるよねぇ/笑えるよなぁ」
吹き出した。
アーク「楽しそうだね。俺の荷物はそんなに面白いもの入ってたかな?」
エルクとポコは石化した。防御力が上がった。
ポ「…ア、アーク、いつから…そこに」
ア「あれ?君たち気付かなかった?はは、俺もレベルが上がったな」
嫌みにしか聞こえません、アークさん。
ア「さっきグルガが泣いてたよ?謝っておいで」
極上の笑みってこれほど恐ろしいものなのか。またひとつ勉強になった2人である。
ア「ほら、早く」
エ「う…うん。行くぞ、ポコ!」
ポ「うん!」
泣きそうになりながらエルクとポコは駆けていった。
いってらっしゃいと手を振って見送ったアークは、急いで自分の荷物に駆け寄ると、中身をぽいぽいと投げ捨てる。
にやっと笑ったアークが、奥から取り出してきた封筒の中には…
ア「まだまだ、甘いな。お2人さん♪」
結構な額のへそくりが入っていた。
エ「今更だけどさ、なんでこんなにもばれるの早いんだ?」
ポ「う〜ん、ここまでやってたら仕方ないんじゃない?」
エ「けどさあ、こんなにばれるとやりがいなくすっつーの」
ポ「それでもやるくせに…」
エ「?なんか言ったか?」
ポ「なにも〜」
エ「あ、そう。って、ぐわっ!!」
バックを開けた瞬間、エルクは鼻を押さえて瞬時にバックから距離をおいた。
ポ「どうしたの!?」
エ「…っ…す、」
ポ「す?」
エ「すっげー臭い!ごほっ」
ポ「どれどれ…うわっ!」
同じようにいつもでは考えられない程俊敏に、ポコはバックから離れ、エルクを盾にした。
エ「な、言ったとおりだろ?」
ポ「そ、壮絶な臭いだったよ」
エ「ああ、どんなヤツよりも強いぜ、きっと」
ポ「うん。…誰のだろう?」
エ「敵のか?」
ポ「まさか」
エ「いや絶対そうだって。事実オレら当分鼻使えねぇし」
ポ「鼻の組織を壊すことが目的なんだね…」
いやいや違うだろうとポコは思ったが経験上相づちを打っておく。
エ「絶対そうだ。間違いねぇ」
シャンテ「な〜に?私にも教えてくれる?」
ポ「こ、このタイミングは!まさか、そのバックってシャンテの?」
シ「ええ、そうだけど?あ、あんた達ついに私のに手を出したの?」
エ「シャンテ、あんた何入れてんだよ!」
シ「あらエルク。私の荷物の中見ちゃったの?」
そう言いながらくすくす笑ってシャンテはエルクに媚びるように近づく。
大人のお姉さんです、シャンテさん。
エ「うわっ…」
シ「ふふ、教えてあげよっか?」
エ「い、いい!」
エルクは顔を真っ赤にして、ぶんぶん頭を振った。シャンテは可愛いとまたくすくす笑う。
何か言い返したいけど、どうせ口では勝てないのは分かっているから、エルクは口をつぐんだ。
ポ「ボクは知りたいな〜と思うんだけど…」
おそるおそるポコが手を挙げて主張する。
シ「いいわ、こっそり教えてあげる。…あれは香水よ。こないだこっそり買っちゃったの。アークには内緒よ?」
耳打ちされたポコは、うんうんと首を縦に振った。
1人取り残されたエルクはいいと言った手前聞くことも出来ずに、黙って様子を見ているしかなくて。
エ「めちゃくちゃ、気になる…」
そうぼやいた。
エ「は〜あ、オレも聞きたかった…」
ポ「自業自得じゃない?」
エ「不可抗力だ。あんなの卑怯だって」
ポ「えらい照れてたもんねぇ」
エ「…さ!次は誰にするよ?」
ポ「う〜ん…あ、ヂーク!」
エ「お。よし、あいつにすっか」
ポ「うん、何も持ってなさそうだけどね」
頷きあって、廊下を独特の足音をさせながら歩いていたヂークベックを捕獲する。
ヂ「な、なんジャ!?」
エ「よお、ヂーク」
ポ「頭失礼するねー」
問答無用。手慣れた手つきでポコはヂークの頭のとんがった部分を外した。
ヂ「お、おヌシらっ」
エ「よいしょっと」
ヂ「やめんかエルク!ワシの頭に手ヲ突っ込むのでハない!ギャーっ!」
エ「?なんだ、これ」
ごぞっとエルクが取り出したのは、台所で見かけたことのある黄色のボトル(1300グラム)。
返せと必死でヂークが奪い返そうと手を伸ばしてくるのを片手で押さえつけて、エルクは呟いた。
エ「…サラダ油…?」
ポ「だね…」
示し合わせたように同時にヂークを見る。
ヂ「な、なんジャその顔は!何か文句でもアルのカ!」
ポ「こんなの持ち歩いてどーするの?まさかあの最強と呼ばれた機神ヂークベックがサラダ油で動いているなんて言わないよね?」
エ「まじかよ、ヂーク。お前ってすっげー…しょぼいんだなぁ」
しょぼいと言う前の間はエルクなりの優しさか。
ヂ「ち、違ウ!それはボディの手入れ用ジャあ!」
エ「分かった分かった、内緒にしといてやるから」
ヂ「違う!ワシは最高級オイルで動いテイるんジャっ!!」
ポ「うんうん、どこから入れるのかな?」
ヂ「ここからジャ。こう蓋を押しツケて―って違ウゥゥ!」
エ「よーしよーし、そんじゃ今度買ってきてやるからな」
ポ「いいね、安上がり」
ヂ「だから、違うんジャーっ!」
ダッとヂークは逃げ出した。サラダ油をおいて。
エ「…どうする、これ」
ポ「あ、まだ開封してないんだね。じゃあ今日は天ぷら料理にしようか」
エ「…おまえ黒くなってね?」
おずおずとエルクが聞くと、ポコはそれはそれは天使の笑顔を浮かべて。
ポ「いまさらでしょ」
エ「で、結局これどうする?」
ポ「とりあえず台所に置いておこうよ」
エ「ああ。とりにくるだろーしな」
ポ「…そういえば前、シャンテが『サラダ油がない!』って言ってたよねー」
エ「…犯人はヤツだったのか」
ポ「こんなところで犯罪が暴かれるとは…」
イーガ「おお、悪戯っ子2人組ではないか」
ポ「イーガ。もうさすがに知れ渡ってるんだね」
イ「うむ。ついに私の所にきたのか?」
エ「あー、じゃあそういうことで」
イ「…エルク、その言い方はあんまりでは?」
哀愁を漂わせながら、イーガは言った。ふっと息をつく横顔に、エルクは罪悪感をおぼえた。
エ「わりぃ…あ、あんたの荷物が見たいなーって楽しみに来たんだよ」
ポ「う、うん。見せてくれると嬉しいなー」
イ「そうか。なら見ていくいい」
背中にしょっていた布袋をおろして、さあどうぞとイーガは促す。
エ「ポコ、主旨変わってね?これってこっそり見る企画じゃあ…」
ポ「エルク、人間には順応能力が必要なんだって」
こそこそ互いに耳打ちして、ポコは布袋に手をかけた。
案の定中から出てきたのは、鉄アレイ。
しかも重量がおかしい。なんですか、1tって。
あきらかにこのよろよろの布袋の中から出てきていい品物じゃないんじゃあ…。
てかよく背負えましたね、イーガさん。
エ「…っ…く」
ポ「エルク、無理して持ち上げちゃ…だ、大丈夫?」
エ「ハァハァッ……っ…む、無理」
イ「ふふふ、まだまだ修行がたりんな」
ひょいっといともたやすく持ち上げて、そう言ったイーガにエルクとポコは何か悔しかった。
エ「ほかに持ってねぇのかよ、荷物!」
ポ「そうそう!こう意外性たっぷりの!って…あれ?」
紙袋の中に何やら茶色のノートのようなものが見て取れた。
ハッとしてイーガは急に慌てて。
イ「ぽ、ポコ!それは駄目だ!」
ポコはイーガよりも素早くノートを手に取った。イーガは奪い返そうとするが、器用にポコはかわす。
ポ「ふ〜ん、エルク!」
エ「え、うわっ!」
急に呼ばれたと同時に、ノートはキラーパス並の鋭さで投げられて、エルクはびっくりしながらもキャッチする。
危ねぇと顔を上げると、イーガが狙いの矛先をエルクへとむけてダッシュしてきているのが見えた。
エ「げっ」
イ「エルク、それを返しなさい!」
ポ「エルク、逃げて〜〜〜っ!」
なんだこの漫画とかそのへんのワンシーンっぽいのは。
ポコがヒロインでイーガが悪役に見える!
とにかく、駆けてくるイーガの表情が怖かったもんだから、エルクは本能的に逃げ出した。
イ「なっ、エルク、待ちたまえ!」
エ「あんたが追ってこなかったら止まるよ!!」
イ「本当かっ!?なら止まる」
エ「え?」
思わず振り向いたエルクより距離をあけて、ぴたりとイーガは静止していた。
その堂々たる姿に驚きつつも、自分が言ったことは責任をとらねばとエルクも止まって、イーガの元へと歩き出す。
ちょうど後ろから追ってきたポコはエルクの元へ駆け寄って、同じようにイーガの元へ。
ポ「ね、イーガ。これ中身何なの?」
イ「中身…そ、それは」
はいとエルクが差し出したノートを握りしめて、イーガは珍しく口ごもった。
イ「…ムなのだ」
エ「はい?」
イ「だから、これには、ぽ、ポエムを書いてあるのだ!」
恥ずかしそうに言ったイーガに、ポコとエルクはぽかんと口を開けて固まった。
だから言いたくなかったのだとイーガは顔を押さえる。
エ「…みてぇ…イーガ、それ見せてくれ!」
ポ「激しく同意!」
きらきら瞳を輝かせて自分を見るエルクとポコに、こほんと咳払いをひとつして、イーガは開けて見せた。
その内容は…2人のみぞ知る。
悪戯っ子2人組は駆けていた。
先頭を行くのはメンバーの中でも1,2を争う敏捷性をもつエルクである。
足の遅いポコと差を引き離しすぎないようにしながら、慌てて手近な部屋へと飛び込んだ。
エ「…ぜぇぜぇ…だ、大丈夫か、ポコ」
ポ「全…っ然大丈夫じゃないよ、ぷ、あはははっ!!」
エ「ぶ、おま、笑ったら、失礼くくくっ」
ポ「え、エルクだって、ぷぷ、笑ってるじゃんかっ」
エ「しゃ、しゃーねーだろ、イーガがあんなの書いてるとかっ」
ポ「しーっ、内緒だよ、これ」
笑い出しそうな口元を押さえて、エルクはこくこく頷いた。
サニア「あんたたち…」
突然わいてでた声に、エルクとポコは同時にふりむく。
エ「さ、サニア!?なんでこんなところに」
サ「何言ってんの。ここはあたしの部屋よ」
エ「え。あ、わ、わりい」
ポ「ごめんね、サニア」
サ「はいはい、謝ってる暇があったら出て行きなさい。私も忙しいの」
エ「?なにやってんだ?」
サ「ききたい?」
エ「すいません、遠慮します」
ポ「ね、サニア。君の荷物も見てみたいなー」
サ「私の荷物?…ふふ、いいわよ?」
エ「え、いいのか!?」
サ「失礼ね、少しぐらい協力ぐらいしてあげるわよ」
なんでしょう協力とはと疑問に思ったが、まあ機嫌を損ねるのもなんなのでツッコミをやめておく2人である。
ポ「どれどれ…!」
鞄のジッパーを開けて中を覗き込んだポコがばっと鞄から距離をとった。
その顔は蒼白で。
ポ「サ、ニア!ななななんか目があったんだけど!」
サ「なんのことかしら?」
ポ「や、やだよ!呪いの人形と目があったとか!」
サ「ふふ、どうかしらねー?」
ポ「ちょ、冗談よそうよ、ねぇ!」
ふふふと魔女さながらなサニアに、ポコはがくりと膝をおった。
エ「大丈夫か、ポコ!」
ポ「エルク…ごめんねボク呪われた…。これから先は、キミ1人で…頑張るんだ…」
エ「つっ…ポコ…分かった。お前のことは忘れねぇ」
ポ「うん…」
サ「ちょっと待ちなさいよ。何なのよ、そのノリは!この子と目があったぐらいで大袈裟すぎんじゃないの!?」
何故か別れの場面になってきたものだから、慌ててサニアは自分の鞄に手を突っ込んで取り出した。
いわゆる、ワラ人形というヤツを。
ポ「やっぱボクは助からないんだーっ!!!」
エ「ポコ、気をしっかり持つんだ!」
サ「だから何なのよ、あんた達は!」
ポ「さてと、ちょっと余裕出てきたねー」
エ「…サニアにカード投げられてよく言うよ、お前も」
ポ「うーん、あれは悪ふざけ過ぎたかな」
エ「絶対な。んで次は誰にする?」
ポ「あと誰が残っているんだろうね。あ」
エ「ん?」
ポコが指さした先には薄汚れた本がある。
ただおかしなことに、宙に浮いた状態で。
ポ「…ゴーゲンのかな?」
エ「あのじいさんしかないだろ。…罠か?」
ポ「いや、裏をかいてなにもないとか」
エ「その裏をかいて、あるかもよ」
ポ「そんなこと言ってるとキリないって。いいよ、罠でも恨みっこなし」
言うやいなや、エルクの止める間もなくポコは本に手を伸ばし、触れた。
だが、変化なし。
エ「ち、なんか起これよ」
ポ「あのねぇ、エルク。…まあいいや」
苦笑したポコが本の表紙を見て、固まった。
むちむちプリン・2000年の歴史
エ「むちむちプリン?」
不思議そうに首を捻るエルクの声に、ポコははっと我に返ると、大急ぎでエルクから隠す。
それに驚いたのは言うまでもなくエルクで。
エ「ちょっ、なんで隠すんだよ!」
ポ「え、何のこと?ボク分かんないなー。あ、ゴーゲン捜さなくちゃ」
エ「おいこら!なんだよ、むちむちプリンって!」
ポ「あはは、エルク何言ってるのかなー?」
どう考えてもおかしいポコからエルクは本を奪うべく手を伸ばすが、なかなか上手いポコである。見事に守り通す。
ゴーゲン「ポコ、主が持っているのはワシのではないか?ん?」
ポ「ゴーゲン!うん、今届けに行こうと思っていたんだよー」
ゴ「おおそうかい。ワシの魔力が影響しているせいか、その本は勝手に動くようになってしまってな。いや迷惑をかけたのお」
ポ「うん、すごく。ほら早く持っていって」
押しつける勢いでエルクを押さえつつゴーゲンに本は渡る。
エ「あ、ゴーゲン!オレに見せてくれって!」
ゴ「ふぉふぉふぉ、主にも早いわい」
アディオスと手を振って、ゴーゲンは消えた。
エ「あぁぁ。何でだよ、ポコ!」
ポ「ほら、次行こう、次ね」
ポ「ごめんってば、エルク。ね?」
エ「…はー、もういい」
ポ「ほんと?ごめんね」
エ「だからいいって。で、次は…あいつか」
ちょうど視界を横切ったのは自称船長・チョンガラである。急いで後を尾ける。
エ「あれ?」
てっきり自分の部屋に戻るのかと思ったら、どんどん階段をおりていくではないか。
ポ「どこいくんだろう?」
エ「食料庫に盗み食いでもするつもりか、あのおっさん。いや、お前じゃあるまいし」
ポ「む、失礼な。ボクは冷蔵庫から取り出すよ」
エ「へぇ…」
ポ「あ、しないからねっ!」
そうこうしているうちに、チョンガラはある扉の前で足を止めた。躊躇することなく開けると中へと進む。
それを見届けてから、2人は顔を見合わせた。
エ「この部屋って」
ポ「ヒエンが置いてある、船舶室だよね」
エ「まさか、あのおっさんオレのヒエンに!?」
ポ「あ、エルク!」
制止の声は間に合わず、エルクは船舶室へと駆け込んだ。と同時にうわーっ!と悲鳴が聞こえる。
ポ「え、エルクっ!?」
慌てて中へと入ったポコの目に飛び込んできたものは
エ「たははっ、お前こんなとこで何やってんだよ、くすぐったいって。あ、ポコ」
地べたに腰を下ろしたエルクと、その頬を舐めているパンディットだった。
ポ「パン…ちゃん?何でここに?」
チョンガラ「ぬおー、おぬしらなんでこんなところに!」
どすどす駆けてきたのは、言うまでもなくチョンガラ。
その手には、所謂パンツというのを持っている。
が、ウエストがありえないくらいでかい。そうちょこなんざ2人入れるぐらいのでかさだ。
エ「チョンガラ、あんたこそなにやってんだよ!」
チ「ふぬぬ、ばれては仕方があるまい。わしは干していた服を回収しただけじゃ。その、大きすぎて誰にも見せられなかったのじゃ」
ポ「あー、そのサイズじゃあね…」
エ「パンは?」
チ「パンディットか?こいつはずっとここにいるぞ?壺の中に入るのを嫌がっての。仕方なく一番広いここで生活しているのじゃ」
エ「そっか…じゃあ時々遊びに来てやんねぇとな。な、ポコ」
ポ「うん、今回はいい収穫ありだったね」
にっこり笑い合う2人に、チョンガラは首を傾げた。
エ「んー?これで全員か?」
ポ「ううん、あの子がいるよ」
エ「あの子?」
パンディットとチョンガラに別れを告げ、階段を上っていると
ちょこ「ちょこの存在忘れているのーっ!!」
階段のちょうど上から、ピンクの髪の持ち主が降ってきた。
エ「どわっ!…っつつ、突然降ってくんな!」
本日2度目ののしかかりをくらったエルクはたまったもんではない。
ち「ちょこのこと忘れてたエルクが悪いんだもーん」
ポ「ご、ごめんね、ちょこ」
ち「なんでポコが謝るのー?ポコはちょこのこと覚えててくれたもん。エルクが謝るのー」
ポ「うん、それもそうだねー」
のほほんと和んでいると、ちょこの下から非難の声がした。
エ「いいから、下りろ、ちょこ!」
ち「いやーなの。謝ったら下りてあげる」
エ「あのな、結構お前重い…いったー!!」
ち「ちょこは重くないもん!」
ポ「やっぱりごめんね、ちょこ。後でボクがよーく言い聞かせておくから下りてあげてくれない?」
ち「いいよー」
あっさりとエルクから下り、ちょこは嬉しそうにポコを見る。解放されたエルクは先程つねられた右腕をさすって、ちょこを軽く睨む。そんな視線をものともせず、ちょこはその不思議な服からなにやらごそごそ取り出した。
ち「あのね、ポコとエルクは持ち物見て回っているんだよね?はい、ちょこのはこれなの!見て見てっ」
ポ「うわー…ありがとう」
ちょこが取り出したのは、一口サイズの小さな袋。中にはどうやら元々はチョコレートだったと思われる茶色の液体が入っている。溶けてこうなったというのは一目瞭然というヤツだ。
唖然としたポコに、ちょこはにこにこと説明する。
ち「それね、アークがね、いい子だねーってくれたのー」
ポ「へぇー。いつくれたの?」
ち「んっとね、一月前ぐらいかなあ」
ポ「あ、あはは、そうなんだー。ちょこは食べないの?」
ち「うん、宝物なの」
それはもう満面の笑みだった。
こっそりとエルクがポコに耳打ちする。
エ「アークに新しいのやれって言うか」
ポ「早く食べなよって言うのも忘れないようにしなくちゃ」
なにやらこそこそと話す2人に、ちょこはえへへと笑いをこぼす。
ち「羨ましいでしょー」
いやあもう全然とは言えなかった。
アークに会い、チョコレートの話をしてから、2人は部屋に戻った。
エ「あー、疲れた」
ポ「うん、でも楽しかったよね」
エ「まあそうだけど、追いかけられるわ、のしかかられるわ…散々でもあったぜ」
ポ「うーん、それはエルクだからねぇ」
エ「どういう意味だよ」
ポ「そのままの意味だけど?」
エ「…あ、そう。オレもう寝るな。夕飯出来たら起こしてくれ」
ポ「え?まだ終わってないよ?」
エ「へ?全員回っただろ?」
するとポコはにこっと笑ってエルクを指さした。
ポ「言い出しっぺがまだ見せてないでしょ?」
エ「オレかよ!…つっても何も持ってないぜ?」
ポ「えぇぇ!…でもまあそれはボクが決めるから、有り金じゃなくて有り物?全部だして」
エ「いやほんと持ってないって。今着てる服に、替えの服に、ハンターの証に、あ!こ、これは駄目だ!」
そう言ったところで、ポコは見逃すはずが無く。
さっと奪いとって、思わず目を見張る。
ポ「うっわー、なんて派手なバンダナ」
エ「う…」
ポ「さ、これなあに?」
エ「そいつは…疾風のバンダナ。オレが軽くガラスで怪我したときに、巻いてくれて…そのまま貰ったんだ。で、オレその時敵に集中してて、柄とか 見てなくて、気付いたときには結構長いこと巻いてたままだったって言う…ほんと悪いんだけど、無茶苦茶恥ずい話っ」
ポ「ふーん、女の人に貰ったんだ」
エ「へ?な、何で分かるんだ!?」
ポ「え?そりゃあこうして持ってるから」
エ「い、いや、オレはただ、このバンダナ特殊な繊維で出来てるとか聞いて!」
ポ「ふふふ、大丈夫内緒にしておくって」
エ「え、あ、うん。じゃなくて!」
ポ「そっかー、美人さんだった?」
エ「え、ああ。って関係ないじゃねーか!」
ポ「はいはい、ごめんごめん。もう寝ていいよー」
エ「っ、くっそー」
言うことをきいたわけではないが、本当に寝てしまっていたらしい。
目覚めるとポコの姿はなかった。
エ「本当に寝てたのかよ、オレ」
呟いて、頭をかく。と同時に、頭が覚醒してきた。
今ってチャンスじゃんか!
そっとポコの私物に手をかける。
つまりはおかえし。
ごぞごぞと探り、なにやら初めてな感触にエルクはそれを取り出した。
それは青い蓋をもつ、哺乳瓶を手のひらサイズにしたような容器。中には透明な液体。
エ「何だ、これ?」
ポ「みーちゃったー!」
エ「!!ぽ、ポコ!」
ポ「えへへ、エルクのやりそうなことぐらい百も承知だよー」
罠だったのかとエルクは唖然としたが、ポコは気にすることなくエルクのもつ物をかすめ取る。
ポ「これはね、油だよ」
エ「あ、油?」
ポ「うん、楽器にさすのー。じゃないとトランペットのこの指で押す部分、上がらなくなるんだよ」
エ「ふーん、手入れしてんだ」
するとポコはどこかのおばさん風に手を一回振り下ろしてにっこり言ってのけた。
ポ「なーに言ってんの、エルク。これはボクの武器だよ?手入れしちゃうと錆びちゃうよ」
そのときエルクは、ポコが怖いと思った。
気にもとめず、ポコはシンバルを取り出すと、布で丁寧に磨き始まる。
そうだよな、武器だもんな。エルクは遠くを見た。
エ「なあ、ポコ」
ポ「なーに?」
エ「何で楽器を武器にしてんだ?」
ポ「それはね、アークが楽器で戦えって言ったからだよー」
元凶はヤツか。エルクは呟いた。
聞き取れなかったポコは首を傾げて、いつものようにあは〜っと笑った。
長い長い一日が終わる。