文章修行家さんに40の短文描写お題 提供:短文描写お題
depiction 40 theme
00.お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。
01.告白│02.嘘│03.卒業│04.旅│05.学ぶ
06.電車│07.ペット│08.癖│09.おとな│10.食事
11.本│12.夢│13.女と女│14.手紙│15.信仰
16.遊び│17.初体験│18.仕事│19.化粧│20.怒り
21.神秘│22.噂│23.彼と彼女│24.悲しみ│25.生
26.死│27.芝居│28.体│29.感謝│30.イベント
31.やわらかさ│32.痛み│33.好き│34.今昔(いまむかし)│35.渇き
36.浪漫│37.季節│38.別れ│39.欲│40.贈り物
「文章修行家さんに40の短文描写お題」
お題に沿って、65文字以内 で場面を描写
。
ただし、
「モノローグ(内面描写/心の声)」・「抽象性」・「理論理屈の語り」
を除いて。
start:061209
made by:短文描写お題
00.お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。
ソウ。Fiori di
colza管理人。頑張ってみます。
01.告白
扉を前に唾を飲み込む。
大丈夫、彼は優しい人。自分が一番よく理解しているから。
腕の中の小さな命をぎゅっと抱きしめて、ノブに手をかけた。
02.嘘
すっと目を逸らすのは踏み込められる合図。君は、本気で隠す気なら絶対に悟らせないだろうから。
君は目を逸らす。そのたびに僕は安堵する。
03.卒業
何も言わない師から差し出された槍は卒業の証。
それをいつか、貴方が教えてくれた技と共に、俺は赤へと染める。
じっと見据えて受け取った。
04.旅
壁に掛かった見知らぬ風景の絵手紙。
曇ったガラスに眉をひそめて薪を足す。
いつもより多めのお湯が沸けた音。
そう、今日は貴方の帰る日。
05.学ぶ
カシャンと硬い音を響かせ、口を覆う。
訝しそうに見てくる視線に、精神力総動員でなんとか笑みを返し、手料理という名の強敵を見下ろした。
06.電車
気の抜けた音と共に開ける新世界の眩しさに、思わず目を細める。
無音だった箱を迎えた様々な声と拍手が、この発明を歓迎してくれた。
07.ペット
胸元の、記号が書かれた板を握り締め、四角い空を見上げる。
空気を掴む手で、まとわりつく透明な鎖を持ち上げても、世界は変わっちゃくれない。
08.癖
あ、またしたと嬉しそうな貴方。
首を傾げれば、細まる大好きな瞳、あがる口元。
促されてようやく失態に気付き、私は慌てて姿勢を正した。
09.おとな
他国の文化を知って、目を輝かす彼。
王族の血が騒ぐのか、熱心に耳を傾けるその姿。
それは、彼が同年代だったのだと思い知らされる瞬間。
10.食事
止まることを知らない会話、スプーン、笑顔。
食卓と漠然と名がついた机を囲う、栄養素を摂取するためだけの行為は過去のものへと流れた。
11.本
手元の照明の元、紙が空気を裂く音は極力小さく。厚みは減り、語彙は増える。
それでも。
気付けば掛けられた上着を、ずっと言い表せずにいる。
12.夢
冗談のようにからかいあって並べた事柄。
目の前に積み上げられたケーキはあいつのあの日の夢。
勘弁してくれと笑える今を、手に入れた幸福。
13.女と女
笑い声に踏み込めば、グラスを傾ける華やかな姿と目が合った。
1人で最強、2人で最凶の笑顔を向けられて、逃げ道がないことを悟る。
14.手紙
丁寧な三つ折りの紙に、右上がりの茶色のインク。
どちらも、あまりにも彼女らしくて。
頬をつつかれ、驚きそちらを向けば、笑顔と出会った。
15.信仰
蝋燭に火を落とし、指でもみ消す。
消えた光と熱の残骸に合掌し、瞼を閉じた。
理由を知る術がなくなった、一番古い記憶。
ただ、繰り返すだけ。
16.遊び
王手。貴方は囁いた。
板上の駒は完全に詰まされた。
見事な手際に、今だけは感謝できないと睨みつければ、困ったような笑顔が返ってくる。
17.初体験
止まらない息切れ、うるさい心臓の音、狭い視界。
聞きたくなくて思い出したくなくて、耳を塞いでしゃがみこむ。
今日から私は被害者で加害者だ。
18.仕事
泥と汗と血の匂い。濃い闇を纏って、ぼんやり灯る扉に手をかける。
我知らずこぼれる溜息と共に引けば、光の側から小さく押される感覚があった。
19.化粧
充血した目を隠すため、出来てしまった隈を隠すため。
いつもより丁寧に仕上げれば、貴方は沈黙を守ったまま、器用に片眉を上げてみせた。
20.怒り
聞いていたのとは違う衝動。
頭に上るんじゃなくて、急激に下がるそれ。
蓋である口を強引に開いて姿を現したのは、本当に自分の声だったのか。
21.神秘
何もかもを隠すように敷き詰められたアスファルトを、人間のエゴを、突き破った木の根。
この大地はまだ、生きているのだと教えるように。
22.噂
指名手配の張り紙を指差して、子どもに学ばせる母親。
情報で、正義は容易に踏みにじられる。
破り捨てたところで染み込んだものは消せない。
24.悲しみ
乾いた笑みがこぼれる。
唐突に感じた頬を伝うものに、小刻みに震える指を当ててみた。
漸く理解する。
これが、悲しいと思う心なのだと。
25.生
勇者を守るため作られた自分には、死ではなく故障という言葉を使われる。
だからこそ、痛いと思う必要のない気持ちを、私は持たされたのだ。
26.死
胸を締めつける痛みでも、止まらない涙でもないアイツが残したもの。
それは、ふと隣を見てしまった時の焦燥感と喪失感。
そして、
違和感だった。
27.芝居
話に相づちを打っていれば、横から伸ばされた手。
逃れずに額へと進入を許し、痛そうな顔に覗き込まれる。
労る手は冷たかったけれど安心した。
28.体
鏡越しに見る、大きく傷の残った自分の背中。そっと手を這わせても、あの時の痛みはもうない。
この傷は烙印だ。何度でも思い知らされる。
29.感謝
彼の右手を持ち上げ、唇を寄せる。
この手が世界を救い、私を救った。そしてこれからも全てを守る。
上から降りてきた笑みに、そっと瞼を閉じた。
30.イベント
銀の飛行船が灰色の空で唄う。
誹謗の抽象とされた船の中、いつか手に入れる平和を誓って、トクベツじゃない日に酒づけを交わしあう。
32.痛み
真っ赤に染まる服と、苦痛に歪んでも笑顔を向け合う2人の姿。
物理的な傷と精神的な傷を共用する。
血を流したのはどちらなのか、分からないほどに。
33.好き
言い難そうに目をそらして、頬を染めて。
辛抱強く待てば、キツく瞼を閉じ、決意を込めて見上げてくる瞳。
唇が小さく震えて、紡がれた言葉は。
34.今昔(いまむかし)
暗い闇からの目覚め。
夜空を詰めた瞳を持つ少年の姿。
少し低くなった声に紡がれた懐かしい自分の名に頷けば、いつか見た笑顔が目の前にあった。
35.渇き
恐怖か安堵か満足か空虚か。
小刻みに震える腕を、そっと華奢な体へ回す。
小さく笑って伸ばされた優しい手に触れられて、ようやく息をつけた。
37.季節
窓の外はいつも違う色。
赤橙黄緑青藍紫黒白、カラフルな世界に近づけば遠ざかる家。
だからこそ。
今日は何月何日?
日常に帰るための問いかけ。
38.別れ
顔を見合わせて不敵に笑った彼等。
互いの横をすり抜けて歩き出す。
交差する瞬間に軽快な響き。
叱咤も約束もせず、ずっと前だけを見てる。
39.欲
急に動きを止めて、瞳を輝かせる。
自分の存在を忘れたように魅入るその姿。
華奢な手を掴み、小さく引いた。
慌てて振り向く双貌が恨めしくもある。