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四百六拾   奇書「高慢と偏見とゾンビ」(2010/5/30)
四百五拾九  ホームページの退潮と総括(2010/5/22)
四百五拾八  今春のミステリ(2010/5/15)
四百五拾七  長谷川等伯の美(2010/5/8)
四百五拾六  無念!長谷川穂積(2010/5/1)
四百五拾五  歴史に残る傑作「アバター」(2010/4/24)
四百五拾四  微妙な「きみがぼくを見つけた日」(2010/4/17)
四百五拾参  カティンの森の呪い(2010/4/10)
四百五拾弐  首相の腹案は屑(2010/4/4)
四百五拾壱  亀田興毅陥落(2010/3/28)
四百五拾   凄いぞMS、「Fix it」の威力(2010/3/21)
四百四拾九  「2012」ねえ(2010/3/20)
四百四拾八  パッキャオ・オン・ステージ(2010/3/14)
四百四拾七  学習院初等科の学級崩壊(2010/3/7)
四百四拾六  真央ちゃん残念でした(2010/2/28)
四百四拾五  ぼちぼち再開(2010/2/21)
四百四拾四  親はどこにいる(2010/2/13)
四百四拾参  バイクの思い出(2010/2/7)
四百四拾弐  次期FX選定の提案(2010/1/31)
四百四拾壱  名護市長選の行方(2010/1/24)




四百六拾   奇書「高慢と偏見とゾンビ」(2010/5/30)
 今年の2月頃、二見文庫から「高慢と偏見とゾンビ」(セス・グレアム=スミス)が出版されました。知ってはいましたが、あまりのゲテモノぶりにスルーしていました。一昨日、暇に飽かせて興味本位から購入しました。

 本作は、イギリスの名作「高慢と偏見」のパロディです。原作の作者はジェイン・オースティン(1775〜1817)で、著作権が切れているからこそ許されるパロディです。
 原作は、18世紀から19世紀の田舎の中流社会を舞台にした未婚娘の恋愛話です。これまで何度も映画化やドラマ化された人気作品です。私もイギリスTV局が制作したドラマを観ました。当時の中流社会の気風というか、結婚観が新鮮で興味深く観劇しました。主人公の娘と相手の貴族双方の心理の綾が奥深く、イライラさせられたり、感心させられたりで堪能しました。


 原作の「高慢と偏見」をゾンビと組み合わせるなんて無茶な試みです。決して成功しているとは言い難いのですが、本家アメリカでは100万部も売れたそうです。
 原作はイギリス社会を丹念に描いているのに、本作は無知な東洋趣味がちりばめられています。社会背景は、ゾンビが蔓延して、人々が脅威に晒されている状況です。そんななか、主人公たち5人姉妹は、少林寺の達人に武術を仕込まれたマスターです。ゾンビ退治で高名を馳せたレディ・キャサリンは、日本武術を極め、ニンジャを護衛にしています。なんかもう無茶苦茶でしょう。挿絵がまた下手糞。18世紀の銅版画を模したペン画なのですが、時代考証が目茶苦茶です。レディ・キャサリンは着物を着ているし、道場を模した“ドウジョー”には、読めない漢字が掲げられています。

 唯一、原作に比して気持ちがいいのは、ダメンズ男のジョージ・ウィカムが半身不随になる点です。原作をご存知の方は、例外なくこの男に殺意を覚えたことでしょう。本作ではダーシーによって、リディアと結婚する代わりに半殺しにされます。笑っちゃうというか、あり得ない展開に溜飲が下がりますよ。

 一種のトンデモ本ですが、読んで損はないです。ただし、原作を読んでからでないと、価値は分からないでしょう。古典ラブ・ストーリーの傑作「高慢と偏見」、まずは、先にご一読を。
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四百五拾九  ホームページの退潮と総括(2010/5/22)
 ブログと Twitter の隆盛によって、個人サイトは退潮の傾向だそうです。そんな個人ホームページについて、ガジェット通信がアンケートを取っていました。調査内容は、「昔の個人ホームページにありがちなこと」だそうです。

 調査結果を引用します。

1位 MIDIが流れる 202 (13.5%)
2位 工事中 199 (13.3%)
3位 キリバン報告ゲストブック 147 (9.8%)
4位 カーソルに変な物がついてくる 137 (9.1%)
5位 全然回ってないカウンター 111 (7.4%)
6位 左右に動く文字(マーキータグ) 102 (6.8%)
7位 無断リンク禁止 89 (5.9%)
8位 フレームだらけ 88 (5.9%)
9位 相互リンク募集中 72 (4.8%)
10位 ページ切り替わる毎に変なJAVA処理 61 (4.1%)


 いずれもどこかで見かけたことのある表現ですね。個人に限らず、企業サイトでもたまに見かけます。ガジェット通信が例示している「愛生会病院」のトップ頁は、色○チ○イか精神を病んでいるかのような凄まじさです。
 これはプロが制作したものでなく、病院職員が手がけたものです。素人がやれることをすべてやった結果こうなりました、の見本でしょう。ご丁寧に、「当院産婦人科佐藤光史先生の個人的ホームページ」とまで記載しています。結構、有名なサイトだそうです。悪い例としてですが。

 私はこのサイトを表示した瞬間、グロいものを見せられた気分になって閉じました。上のアンケートで記載された項目を網羅しているんじゃないかな。詳しく観察していませんけど。


 幸いにも、私のサイトに該当項目はありません。私は最初からテキスト主体のサイトを考えていましたから、余計なことは一切していません。おかげで、教え子のデザイナーには味気ないと指摘されました。

 サイトを始めてから、はや9年近く経ちました。いいかげんリニューアルしなきゃと考えながらも手が出せません。分量が多いので、再構成にかかる手間を考えるとぞっとしてしまいます。面倒くさいので、惰性ながらこのまま続けます。
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四百五拾八  今春のミステリ(2010/5/15)
 春の連休に向けて、各出版社は新刊を出します。えてして人気シリーズの出版を連休に合わせるみたいです。
 今春の目玉は、ディック・フランシスの「祝宴」とマイクル・コナリーの「エコー・パーク」です。他にもありましょうが、私にはこの2作です。

 祝宴(早川文庫)
 今年に入って、ディック・フランシスが89歳で亡くなりました。老境であったことから、執筆には妻や息子の手助けを要していたそうです。本作も息子のフェリックス・フランシスとの共著となっています。

 常連訳者の菊池光氏も昨年亡くなっていて、今回は北野寿美枝氏が担当しています。いい翻訳です。基本的には直訳だと思われますが、あくまで自然な日本語に置き換えているので違和感がありません。若干、菊池風味を残そうとしたためか、変な部分もありますが、菊池訳に比べればまともです。
 不満だったのは、主人公の口調です。菊池風味であるところの「○○なのだ」を、ありえない場面で使うことです。見知らぬ他人にものを尋ねるとき、「○○なのか」はないでしょう。もし、初対面の人間に仕事以外でこんな口を利かれたら、私なら無視します。訳者の北野氏は違和感を感じないのでしょうか。菊池節の悪い部分は、改めて欲しかったです。

 ストーリーはいつもどおりのフランシス路線です。ミステリーとしては3級品というか、実にチャチなプロットです。警察がまともに機能していないのも従来どおりでした。まして警察以外の公的部門−今回は環境衛生監視官−の業務なんかおざなりな記述です。集団食中毒が起き、重態の被害者まで出ているのに、原因究明が為されないのです。そして、食中毒事故を起こしたであろうシェフの主人公が原因究明に当たるという不可思議な展開です。
 また、主人公の自宅が放火されても、消防署は原因究明をしません。放火ともなれば重大犯罪ですから、警察が介入して捜査が開始されるはずなんですがね。まあ、こういったところは、デビュー作以来の競馬シリーズの特徴ですけど。


 エコー・パーク(講談社文庫)
 「コナリーの作品は全作おもしろい」の定説は、今回も健在でした。本作のプロットも凝っています。ボッシュが探り続ける過去の未解決事件の容疑者は間違っていたのか。女性二人のバラバラ死体を車に隠していた男が逮捕され、過去9件の殺人を自供するかわりに、死刑回避を求める司法取引を提示しました。この過去の犯罪にボッシュが追う事件が含まれていたことから、未解決事件の捜査ミスが浮上します。さて、真実はどこにあるのか。

 まあ、フランシスの小説とは次元が違っています。マイクル・コナリーが健在である限り、大きな楽しみを与えてくれます。次回作も本国アメリカで評価が高いそうなので期待しています。


 遠い面影(講談社文庫)
 ロバート・ゴダードの新作ですが、出版は昨年の10月だったそうです。知っていれば、すぐに読んだのですが、連休前まで気づきませんでした。

 ゴダードの作品はここのところ低調です。創元推理文庫や文春文庫のラインアップには傑作が含まれているのに、講談社文庫本は不作です。「秘められた伝言」「悠久の窓」「最期の喝采」「幻惑されて」「還らざる日々」、そして本作です。どれも、いまいちなんだなあ。
 どれだけ裏切られても、「千尋の闇」「闇に浮かぶ絵」「リオノーラの肖像」の素晴らしさを味わったものだから、諦めきれないのです。ひょっとして、次こそは傑作でないか、と淡い期待を抱いてしまいます。

 本作も惜しいところです。18世紀の英国軍艦座礁事件を元にした歴史ミステリーを下敷きにして、現代の事件に肉付けをしています。ゴダードは歴史を語ると俄然輝きます。今回も、はるか過去の事件が導入部で語られ、ゾクゾクさせられますが、現代の話に移ってトーンダウンしちゃいました。もう、ゴダードには期待できないのかなあ。
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四百五拾七  長谷川等伯の美(2010/5/8)
 京都国立博物館で、4月10日から5月9日の間「没後400年 特別展覧会 長谷川等伯」が開催されています。2月に東京国立博物館で開催されたときは、さすがに遠くて行けませんでした。京都までなら2時間ほどなので苦になりません。

 昨日、仕事を休んで行ってきました。連休に行けばいいじゃないかとの突っ込みはむごい。
 京都国立博物館の混雑状況をサイトから引用します。下表では抜けていますが、4月28日には180分とかの行列待ちでした。これを見て諦めたのです。
 夕刻以降は空きますが、連休中はそもそも電車の混雑がとんでもないですから。また、最終土日は、駆け込み観覧が予想されます。で、昨日訪ねた次第です。
4/29 4/30 5/1 5/2 5/3 5/4 5/5 5/6 5/7
10:00 100分 110分 50分 60分 70分 70分 50分 80分
11:00 100分 130分 40分 60分 60分 60分 40分 110分
12:00 80分 110分 20分 30分 50分 60分 20分 110分
13:00 50分 80分 10分 10分 40分 30分 10分 90分
14:00 40分 60分 0分 10分 30分 30分 10分 90分
15:00 30分 50分 0分 10分 30分 30分 20分 70分 15:30〜18:30の間
休憩所で時間をつぶしました
16:00 10分 30分 0分 0分 30分 40分 10分 70分
17:00 0分 30分 0分 0分 10分 0分 0分 50分
18:00 0分 20分 0分 0分 0分 0分 0分 20分
19:00 閉館 0分 閉館 閉館 閉館 閉館 閉館 閉館

 私が到着したのが、15時30分頃でした。とんでもない行列を見てげんなりしました。そこで、庭先の休憩所で煙草をふかしながら行列を眺め、18時30分頃入館しました。館内は身動きにも不自由するほどの混雑で、まともに鑑賞できる状況ではありませんでした。それが、19時30分(金曜日は20時まで)で入館が締め切られると、館内は次第に空いてゆき、じっくり鑑賞できました。最後に入ったのは大正解でした。

 長谷川等伯の作品には国宝や重要文化財の指定が目白押しで、いい死に土産ができました。一番見たかったのは、国宝の「松林図屏風」です。



 痺れる水墨画です。説明はなにも必要ないでしょう。この六曲一双の大作を前にして、どれほどの感動に捉われたか、想像がつくかと思います。他にも無指定の「松林図屏風」、重文指定の「月夜松林図屏風」、「烏鷺図屏風」などの“松林図”がこれでもかと迫ってきました。

 水墨画は他にもたくさん陳列されていました。私が見たかった“猿猴図”も当然ありました。「枯木猿猴図」「竹林猿猴図屏風」とそろい踏みです。下図は、ニ幅の「枯木猿猴図」です。

 

 そして桃山文化の華を代表する「楓図壁貼付」です。もう何も言うことはありませんぜ。



 その他にも仏画や肖像画も満載です。肖像画といえば、あの有名な「千利休像」や「達磨図」、「武田信玄像」もそろい踏みでした。
 長谷川等伯の画業は実に多彩です。仏画に始まり、室町の山水図をものし、狩野永徳と桃山の華美を競うなど、あらゆる流派や先人を研究しました。最終的に到達したのは、山水のなかに大和絵を融合させる手法でした。その極みが「松林図」でしょう。

 いい目の保養になりました。国立博物館の吹きさらしの休憩所で3時間も待った甲斐がありました。
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四百五拾六  無念!長谷川穂積(2010/5/1)
 WBCバンタム級王者長谷川穂積と同級WBO王者フェルナンド・モンティエルとの試合は、超ハイレベルな内容でした。結果は残念なTKO負けでしたが、仕方がないというか、諦めのつくものでした。

 両者ともにスピード、パンチ力、テクニック、駆け引きすべてが一級品でした。長谷川が負けたのは、モンティエルの作戦がより優れていたためでしょう。見事なサウスポー対策でした。
 モンティエルは何度もサウスポー殺しを仕掛けていたのに、長谷川サイドは順調に進んでいると楽観していました。もっと危機感を持つべきでした。
 モンティエルは左に出て(長谷川の右手側)、右ストレートを打っていました。その際に強力な左フックをコンビネーションに混ぜ、ハラハラするシーンが何度もありました。

 例えば、下図のような具合です。

長谷川(右)はサウスポーで、モンティエル(左)はオーソドックスです。


モンティエルは左前に踏み出し、左フックを振ります。


次いで右ストレートを打とうとしました。長谷川がバック・ステップしたので、ここでは何事も起こりませんでした。
でも、危険な位置関係でしょう。これがサウスポー殺しです。


同じパンチを狙います。この位置関係から


やはり左前に踏み出しながら、左フックを打ち


右ストレートを真っ直ぐ打ちます。長谷川の顔面がちょうど正面にあります。


フィニッシュの仕掛けは、左右逆パターンです。
まず、いきなりの右ストレートでガードを正面に向けさせ


本命の左フックを繋ぎます。


長谷川も左フックを返しますが、受体勢とあって攻めのモンティエルとは威力が違います。


再度、上体を捻りこんでの左フックは顎を打ち抜きました。


 ご覧のように、モンティエルのボクシングは完全に長谷川の上をいっていました。本来、長谷川もモンティエルと同じ戦法を取るべきでした。右前に踏み込んでストレートを打ち、モンティエルのフックは屈んで躱すやり方です。どうも最近の長谷川はフック系のボクシングを主にしていたこともあって、モンティエルの作戦にはまった格好です。

 ダウンを避けようと踏みとどまったのが仇となってストップを招きました。あの一発でのダウンであれば、ゴングに救われて仕切り直すこととも十分可能であっただけに残念です。

 長谷川選手には一から出直してください。今後はフェザー級でやるべきです。30歳以降は無理な減量をすべきではありません。しっかりパワーをつければやっていけると思います。これからも応援しますよ。


 この試合の価値は高く、日本のボクシング史上でも最高のステータスを感じさせるものでした。その演出に一役買ったのがジミー・レノン・Jr さんです。氏のリング・コールは極上です。“It's showtime !! ”には毎度痺れます。

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四百五拾五  歴史に残る傑作「アバター」(2010/4/24)
 昨日、「アバター」のレンタルが開始されたので、さっそく借りてきました。期待をはるかに超えた傑作でした。なんていうか、観る者の琴線に触れるつぼを見事に押さえています。

 物語の基本形は「ダンス・ウィズ・ウルブズ」です。異文化との接触と受容、かつての味方を敵として戦う哀愁など、同じスタイルを踏襲しています。西部開拓における白人の独善性を批判する内容と、本作の資源簒奪のためには手段を選ばない人類とを等位に置いています。また、ここでいう人類とは、アメリカを投影しているとも考えられます。力ですべてを解決しようとする過程は、かなり露骨にアメリカを表現しています。「アバター」がアカデミー賞を逃したのもそのせいでしょう。

 その他にも、舞台装置や小道具、演出について、どこかで見たようなシーンが満載です。「ラピュタ」風の浮遊する岩場なんかまんまですね。

森の精霊とかは、「もののけ」の木霊を模しています。


地球と異質な森林相は「ナウシカ」かな


パワースーツ降下シーンは、まんま「ガンダム」のジャブロー編です。


“エイワ”の祭祀のシーンは、映像といいBGMといい「海底軍艦」のムーです。


「海底軍艦」といえば、伊福部昭さんです。このあたりのシーンでは、脳内で伊福部マーチが鳴り響きました。もし、この映画の音楽を伊福部さんが担当したら、きっとすげえ作品に仕上がったことでしょう。


で、話題の3Dです。このように遠近にオブジェクトを配して3D効果を狙っています。

(C) 20th Century Fox

 ひさびさに感動を味わいました。ジェームス・キャメロン監督は凝り性ですから、CG映像に手抜きがありません。ナヴィやアバターは、モーション・キャプチャでCG化しています。つまり、俳優がすべて基本動作を行い、これをもとにCG化しているのです。気の遠くなるような作業ですが、それあって「アバター」が傑作となったのです。

 私はBDを持っていないので、高画質版はWOWOWでの放映を待ちます。多分、今夏の目玉としてラインアップされるでしょう。楽しみだなあ。
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四百五拾四  微妙な「きみがぼくを見つけた日」(2010/4/17)
 なんかベストセラーを映画化したものだそうです。私はタイム・トラベルものが大好きなので、ついついレンタルDVDを借りてきました。

 タイム・トラベルものの金字塔といえば、ロバート・ハインラインの「夏への扉」ですね。これを読んだ方は、皆ノックアウトされたことでしょう。誠実で暖かい心を持った技術者が主人公とあって、誰でも感情移入させられます。最後はきれいなハッピーエンドですから、読後感も最上です。

 あと、トニー・ケンリックの「リプレイ」も傑作ですね。プロットの斬新さといい、これでもかの細部への拘りが長丁場をまったく飽きさせません。「リプレイ」は映像関係者にも多大な影響を与えていて、本作を始め、「リプレイ」、「バタフライ・イフェクト」、「シャッフル」「デジャブ」なんかもオマージュ的作品です。
 ちなみにタイム・トラベル映画の最高傑作は言わずと知れた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でしょう。さすが、スピルバーグといったところですね。

 で、この「きみがぼくを見つけた日」は、甘酸っぱいラブ・ロマンスものです。ですから、タイム・トラベルに付随するであろう困難な点は軽く流しています。移動先の場所や日時を特定できないのに、なんであの原っぱばかりに現れるのか。なんで時間軸が狭い範囲なのか。頻繁に消えたり現れたりしているのに、なぜ世間に知られていないのかとか。

 そんな天邪鬼な突っ込みはさておきましょう。そもそも過去へ遡ることが理論的に不可能というのは、完璧に証明されていますから野暮というものですし。

 内容は書きません。興味のある方はご覧になってください。私の感想は可もなし不可もなしです。原題は「Time Traveler's Wife」で、時間旅行をする主人公を待ち続ける女性の哀しみを描いています。
 妻の前から消え行く映像は下図のようなものです。


(C)Warner Bros.
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四百五拾参  カティンの森の呪い(2010/4/10)
 共同通信によると

 ポーランドのカチンスキ大統領と妻が乗ったワルシャワ発のツポレフ154が10日、ロシア西部スモレンスクの空港に向け着陸体勢に入ったところ墜落した。スモレンスク州の内務省当局者は、カチンスキ大統領を含む乗客乗員全員が死亡したと述べた。

 ロシア非常事態省は同機に96人が搭乗、うち88人が公式訪問団だったと説明した。同州の知事は着陸前に機体が樹木と接触したのが原因と述べた。テロなどの情報は今のところない。

 大統領は、第2次大戦中にポーランド軍将校ら2万人以上が旧ソ連に虐殺された「カチンの森」事件から70年を迎えるのに合わせ、ポーランド側主催の追悼式に出席する予定だった。


 「カティンの森虐殺事件」は、大戦初期に起こったソ連による凄まじいジェノサイドです。ポーランド軍の捕虜のうち、将官や将校を中心に5,000名近い人間を銃殺し、密かに埋めたというものです。ソ連はポーランドからの捕虜返還要求に応じたものの、軍の中枢を為す将校多数を還さなかったのです。

 これを発見したのはドイツ軍で、調査にはポーランド赤十字も協力し、ほぼソ連による虐殺の実態が証明されました。しかし、連合国はドイツの反ソ宣伝に利用されることを嫌って無視しました。戦後は冷戦構造の中、ソ連を刺激しないよう追求を避けてきました。
 ニュールンベルグ裁判で、ソ連はドイツの犯罪だと告発しましたが、実態を知っていた英米はさすが拒否しています。

 ポーランドの共産主義政権が崩壊し、新政権がこの事件を蒸し返すと、さすがにソ連も抗えませんでした。ゴルバチョフは秘密文書も公開し、ほぼ全容が明らかになりました。
 昨年、プーチン首相がポーランドを訪問した際、犯罪行為であったと公式に認めたことから、上のポーランド大統領の訪問となったわけです。


 墜落のニュースを聞いたとき、やはり「カティン」は呪われているなあと思ってしまいました。虐殺からすでに70年が経過し、国家元首による慰霊がやっと為されるかというタイミングでの事故でした。ロシアによる追悼式も中止だそうです。
 ポーランドの新大統領になる方には、カティンの慰霊を最初の仕事としていただきたいです。このような歴史の悲劇は、早く片をつけるにこしたことがありません。
 日本もいかげんに片をつけたいものですが、なにぶん周辺国の性質があれですから。
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四百五拾弐  首相の腹案は屑(2010/4/4)
 アメリカ海兵隊の普天間基地移設について、鳩山首相の腹案は駄目出し確実なものです。

 朝日新聞の記事によると
 ヘリ部隊の大部分を鹿児島県の徳之島に移すことを目指し、地元や米国と調整するよう指示したことがわかった。 (中略) 将来的には、勝連半島の沖合に人工島を造成し、3千メートルを超える滑走路を建設することも検討。


 貧すれば鈍すというか、この腹案からは基地問題の再構築にかける意欲が感じられません。ヘリ部隊だけ移設しても、海兵隊の運用基地たり得ません。訓練のベースは沖縄にあることから、ヘリ部隊だけ移設するのは合理性に欠けます。また、3,000m級滑走路を海上に建設するなど、土木利権に歪められた馬鹿なアイデアです。

 鳩山首相というか、民主党には基地問題そのものを議論して欲しいのです。この点は、自民党政権には絶対望めないことです。石破元防衛大臣など、馬鹿の一つ覚えのように「日米合意を破るな。辺野古沖埋め立て案を履行しろ」ですもん。こんな奴隷根性の政治家に大きな顔をさせるなって。


 そもそも海兵隊が日本に駐留しなければならない理由がありません。中台有事を理由に挙げる方がいますが、まったく説得力がありません。中国が台湾に侵攻するシナリオというのは、全面戦争状況しかありません。台湾はそれなりに強力な3軍を擁しており、最前線の金門島攻略だけでも大軍が必要でしょう。
 そんな状況にあって、数千名の在沖海兵隊がなんの役に立つというのか。台湾有事を理由にすると、かえって不必要であることが明確になります。

 最近、米太平洋海兵隊(司令部ハワイ)のキース・スタルダー司令官が在沖海兵隊の存在理由を日本側に説明しました。北朝鮮崩壊に際して、核の確保を任務にしているとの内容で、苦し紛れもいいところです。

 笑っちゃうでしょう。そんな理由なら、グアムにいればいいじゃない。事態が逼迫したところで、嘉手納へ集結すればいいだけです。防衛省及び政治家には、この点を追及していただきたいですね。たっぷり米軍側を問い詰めて、彼らをもっと謙虚にさせましょう。
 普天間移設のごたごたに対して、高圧的な言動に終始するアメリカ関係者には怒りを覚えます。なんでアメリカの勝手な都合に日本人が苦しまなければならないのかと。沖縄県民の怒りは尤もです。その怒りを人ごとみたいな顔をして受け止めている厚顔無恥さに唾棄したい気分です。ここまで彼らをつけ上がらせたのは自民党政権です。

 鳩山政権には、自民党時代とまったく違ったアプローチを期待していました。でも、冒頭に書いた鳩山総理の腹案とやらには失望しました。本来、以下の段階でアプローチすべきでした。

 1 在沖海兵隊の撤退要望
   グアム移転には協力する。移転を渋るなら、この機会以外では移転費を一切出さない

 2 グアム移転以外にも部分的に沖縄に駐留する場合
   嘉手納基地を空軍と共有する

 上の両案以外は飲まない。もし、飲めないのであれば、駐留米軍の規模、内容、基地負担のあり方までゼロベースで策定し直す。
 これくらいのスタンスで望んで欲しかったなあ。小沢さんなんか、在日米軍は第7艦隊以外は必要ないと公言していたくらいなんですがねえ。
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四百五拾壱  亀田興毅陥落(2010/3/28)
 WBC世界フライ級タイトルマッチ、亀田興毅(王者)vsポンサクレック・ウォンジョンカム(暫定王者)が行われました。

 両者の力の差が明確だったため、すっきりした王者交代劇となりました。過去の亀田戦には、なにかと曖昧なジャッジが存在したため、今回も危惧していたのです。
 それでも、ジャッジの一人はドローとしていましたけどね。ドローということは、ポンサクレックへの減点が無ければ、1ポイントだけリードしていたことになります。想像ですが、このジャッジは亀田を勝たせようと心がけていたのでしょう。興行主に気に入られ、今後も試合に呼んでもらおうと算段してたんじゃないかな。


 亀田は前の内藤戦と同じプランで闘いました。相手に先に打たせてカウンターを狙うやり方です。この戦法は諸刃の剣です。もし、カウンターを取れなかったら、相手に攻勢点が付されるため、ジャッジで不利となります。

 ポンサクレックはさすがです。亀田のカウンターを外し、さらにカウンターを当てていました。1R早々、見事なカウンターを披露したため、亀田は余計に自分から出て行けなくなったのでしょう。

 ポンサクレックが1Rに見せた美技を連続写真でどうぞ。
 亀田の左クロス


 軽いスェーで躱し


 テンプルに右フック



 上の直後、亀田の右フックを同じく軽いスェーで躱し


 顔面に右フック


 ご覧のように、亀田選手が打っていくと鮮やかなカウンターの餌食になりました。かといって、待っているといきなりの左ストレートが襲ってきます。なんか、戸惑いながらボクシングをやっていましたね。
 この1Rの内容でも、亀田に振ったジャッジがいるのですから驚きです。

 実況からはポンサクレックの凄さが伝わってきません。アナウンサーは当ろうが当るまいが亀田のパンチの実況ばかりでした。上のカウンターのシーンでも、亀田のパンチのみ紹介していましたから。
 うるさくて試合に集中できないので、途中からは音量を下げて観ました。


 こんなんで亀田の勝ちにしたら日本の恥です。二人のジャッジは、ちゃんとポンサクレックの勝ちにしたので安心しました。
 亀田選手はいい素質を持っていると思います。もっと強豪と連戦して、実力を身につけましょう。まだ若いのですから時間はあります。TV局のプランなんぞに乗るばかりでなく、力をつけるのが王道というものです。
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四百五拾   凄いぞMS、「Fix it」の威力(2010/3/21)
 今回のDVD視聴には、旧マシンを使用しました。常用マシンのDVDドライブが認識できなかったためです。

 3年間の使用で、機器が不調になったと思われます。旧マシンのDVDドライブも4年で交換しました。不調になった後、読み取り部分の清掃で一時的に持ち直しましたが、短期間で駄目になりました。ですから、今回も機器の故障と決め付けたのです。

 先ほど、I-OデータのDVDマルチ機を買ってきました。生産終了品とかで安かったです。以前のドライブはATAPIでしたが、今回は当然シリアルATAです。おかげで、パソコン内部がすっきりしました。

 さっそく組み込んだものの、相変わらずドライブを認識してくれません。「デバイス・マネージャー」は機器を認識しているし、BIOSも同様です。「デバイス・マネージャー」を覗くと、エラーコードが記され、ドライバが読み込めないとか書かれていました。きっと、レジストリの破損だろうと見当をつけたものの、どう対処すべきか分かりません。

 I-OデータのFAQを調べると、マイクロソフト提供の「Fix it」で直る可能性が記述されていました。で、その補修ツールを実行させて感心しました。チェック対象の機器を指定すると、自動でテストした上、関連ドライバを修正してくれました。ログを読むと、問題点を完璧に解決していました。

 こんな便利なツールがあるとは知りませんでした。皆さんも活用してください。マイクロソフトも、やるときはやるもんだなあ。

 そこではたと気づきました。じゃあ、交換前のDVDドライブも故障じゃなかったんだ。無駄な買い物をしてしまったのか。いえ、いいんです。DVDソフトを視聴したところ、明らかに表示品質が向上していましたから。
 私が購入したDVDドライブは、今回のもので4機種目です。やはり新しいものほど進化しています。それと、今までは「PowerDVD」ばかり使ってきましたが、I-Oデータが「WinDVD」を添付していたので、試しにこちらを使ってみました。画質が鮮明で、色合いも自然です。
 やはり、視聴ソフトも新しいバージョンの方ができがいいですね。当たり前ですけど。

 機器とソフト両方を新調したとあって、AVライフがさらに充実しました。以前のドライブは誰かにあげましょう。3年前の機種ですから、重宝してくれる方もいそうですし。
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四百四拾九  「2012」ねえ(2010/3/20)
 連休とあってレンタルDVDを堪能しました。「2012」「ウルヴァリン」「ファイナル デッドサーキット」の3作です。
 
「ウルヴァリン」はX-MENシリーズの起源を辿るものです。テンポがいいというか、端折りすぎです。ここ20年間のアメリカ映画はどれもこれも展開に無理が出ていると思います。映画館の観客入れ替え要求からだと思われますが、質そのものを落とすことは自分たちの頚を絞める行為でしょう。


 「ファイナル デッドサーキット」は“ファイナル デスティネーション・シリーズ”の第4弾です。私、このシリーズのファンなのです。第1作のプロットには感心させられました。
 死への避けられない定めと、自身の力で逃れようとする人間の闘いが基本プロットです。実に斬新なアイデアで、最初に観たときはゾクゾクさせられました。個人的には第2作が一番好きです。第1作で生き延びた女性が延命指導者として活躍するし、救いのあるラストも映画の質を高めています。

 今回の登場人物は無神経な馬鹿ばかりで感情移入できませんでした。恐ろしい事態が進行している状況を認識しながら、無自覚な行動を取る被害者たちには、ただ呆れるばかりです。勝手に死ねよ、ってなもんです。


 楽しみにしていたのは「2012」です。注目はCGのみです。CG以外に期待するものは何もありません。で、見事に予想どおりの内容でした。

 CG以外はクソ。人間模様もなんだかなあ、ひたすら安っぽいだけです。津波が箱舟に衝突する直前、唐突に展開されるヒューマニズム・ドラマの嘘くさいこと。アメリカ人はこんなシナリオを恥ずかしげもなく、よくも映像化できるものです。
 故障した船に乗れなかった人間への対処は、当然、故障時点で検討にかかるはずです。もし、放置の決定をするとしたら、そこにはゆるがせにできない重みがあるはずです。
 補佐官だったかを悪役にしたのは不愉快です。本来であれば、重大な責任を背負い、果断に役割を果たす彼こそがヒーローであるべきです。

 エベレスト北壁激突直前の分秒を争う事態に際して、ベタベタした愛情表現で時間を浪費するなんてありえねえ。私には制作者たちが阿呆にしか見えませんぜ。

 今回借りた3作は、いずれも期待値が高かっただけにがっかりです。やっぱ、名作を追えばよかったなあ。
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四百四拾八  パッキャオ・オン・ステージ(2010/3/14)
 アジア最高のアスリートは、誰もが認めるフィリピンのマニー・パッキャオです。今までパッキャオについては、散々その偉業を讃えてきたので、改めて書くことはしません。

 本日、テキサスのドーム球場でWBO世界ウェルター級タイトルマッチが行われました。チャンピォンのマニー・パッキャオにジョシア・クロッティが挑んだ一戦です。会場は球場であり、観客は5万人超えと伝えられました。



 中継を行ったHBOTVは、パッキャを迎えるのに最大限の敬意を払っています。実に華やかな演出でした。こんな凄い会場を設えたのも、パッキャオのスケールに合わせてなのです。アジア人がここまでアメリカで歓迎されるなんてかつてなかったことです。パッキャオに比べたら、イチローでさえも前座レベルというものです。



 試合はフルマークの完勝でした。固いガードで距離を詰めるクロッティに対し、速い強打を浴びせ続け、クロッティを失速させました。パッキャオの打ち疲れを待っていたクロッティは、その前に自滅してしまいました。無理もありません。パッキャオの強打をこれだけ貰ったら、只で済むはずがありませんから。



 顔面のガードが固いので、ボディ攻撃を多用しました。上の図では、鳩尾にぐさりとめり込んでいます。こんなのを数え切れないくらい貰っちゃあ、タフなクロッティが鈍るのも当然です。最後までよくぞ倒れなかったものです。

 ウェルター級でコットとクロッティを下したのですから、ウェルター最強を名乗っても文句を言う人間はいません。ここまでくると、残るは半引退状態のメイウェザーだけです。


 5月2日にシェーン・モズリーとフロイド・メイウェザーの対戦が決まったそうです。で、この勝者とパッキャオが闘うことになると考えられます。
 これぞメガファイト、いえギガファイト間違いなし。世界中のボクシング・ファンが待ちわびたビッグ・マッチがついに実現するのです。とりあえず、その予選ではありますが、今春の連休最大のイベントです。連休よ、早く来い。
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四百四拾七  学習院初等科の学級崩壊(2010/3/7)
 宮内庁東宮職の会見には驚かされました。なんで、こんな問題を公にしなきゃならんのか。
 言っては悪いが、この程度のこと、子供の世界では当たり前にあることです。仮に問題視するにしても、内々で学習院側に愛子さんの事情を伝えて善処を求めればよいだけのことです。

 この東宮職は何故このような会見を行ったのか。想像ですが、ことが公になった場合に備え、自分の責任が追求されるのを恐れて先手を打ったのでしょう。あまりに浮世離れした話です。子供の世界に宮内庁の権力を持ち込むという、教育界を見渡しても異様ともいえる眺めです。

 大声を上げる、走りまわるなどの行動は珍しくないというか、むしろ見慣れた光景です。対処は簡単でないにしろ、地道に取り組まなければなりません。
 騒ぐ小学生を黙らせるの簡単です。大人が本気で怒れば大人しくなります。ただし、これをやると最近の子供はショックを受けて登校できなくなる可能性があります。きっと、親は先生の責任を厳しく問うでしょう。ここが難しいのです。そのため、先生は注意を与えながら、気長に対応していく必要があります。同時に愛子さんの親−皇太子ご夫妻もまた愛子さんを気長にフォローしなければならないでしょう。

 東宮職のしたことは、それらの取り組みすべてをぶち壊しにするものです。今回の件で問題がこじれたなら、その責任は東宮職にあります。
 昨年12月にも、天皇と中国副主席との会見問題で、宮内庁の羽毛田長官が不適切ともいえる抗議表明を行いましたね。あの件も理解に苦しむものでした。宮内庁サイドが会見ルールを守りたいのであれば、全力で徹底遵守すればよかったのです。それを日和ったうえ、わざわざ公表して政治問題化するという卑怯な振る舞いに及んだわけです。

 宮内庁さん、なんか最近おかしくはないですか。藩屏としての責務より、わが身大切さが匂って仕方ありませんぜ。
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四百四拾六  真央ちゃん残念でした(2010/2/28)
 冬季五輪フィギュアの日本勢は大活躍でしたね。興味の中心は、やはり浅田真央嬢です。結果は残念な2位でしたが、彼女の健闘と精進に拍手を送ります。

 史上最高得点を叩き出したキム・ヨナ選手はさすがでした。素人目でさえ、かつて見たことのない超ハイレベルなスケーティングだったと思います。かつて、モントリオール・オリンピックにおいて、ルーマニアのコマネチがひとり無人の野を行く10点満点を連発しましたが、あのコマネチにも通じる完全無欠さでした。

 メディアでは、キム選手の高得点を高すぎると批判的、あるいは懐疑的な論調が目立ちましたが、冷静さを欠いていると思います。キムのスケーティングは高得点を得るべくして構成されたものであり、見事にそのプログラムを演じきった結果でしょう。
 対して、真央ちゃんのスケーティングはかなり届かない内容だったと思います。過去より苦手としていたルッツを克服できず、結局3回転ルッツを省略したのは致命的でしょう。また、2度のミスだけでなく、キム選手の優雅さやメリハリのある表現力にも差が感じられました。

 肝心のジャンプにしても、キム選手のジャンプは高いため、着地の姿勢がとても綺麗です。回転の速さも最後まで衰えず、3回転3回転の連続ジャンプの見事さは男性にさえ肩を並べているのではないか。


 真央ちゃんの涙は綺麗な涙でしたが、ミスを悔やんでも仕方ないというか、完璧に演じたところでキム選手との差はやはり大きかったでしょう。
 希望を言えば、キム選手の演技の見事さを讃えて欲しかったです。酷なようですが、そこまで演じてこそ本当のスーパースターです。演技終了後の涙については、同じ日本人としてシンパシーを感じるにしろ、一言勝者を讃えるコメントが欲しかったです。
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四百四拾五  ぼちぼち再開(2010/2/21)
 一昨年度から2年間、ほとんどステレオを鳴らしていませんでした。オーディオというものは、鳴らさないと音が悪くなります。レンジが狭い、埃っぽい、透明感がない、解像度がいまいちなどの症状が明らかでした。
 仕事のストレスが大きく、とてもオーディオを聴く気になれなかったのです。ストレス発散によかれと思って聴き始めても、鬱々とした気分は晴れず、とても楽しめませんでした。そのうえ音が悪いものですから、なおさらです。

 昨年4月から仕事が代わり、解放されるとともに、最近やっと病んだ心のケアが終わったみたいです。再びオーディオ熱が燃え始めまして、暇さえあれば音楽を聴いていています。
 埃っぽく、詰まったような鳴り方をしていたスピーカーもかなりましになってきました。元々高剛性のユニットだけに音がほぐれるのに手間がかかります。あと、もう一息です。



 このテラーク・レーベルのレコードは、ワンポイント・マイクによる超絶録音であまりに有名です。機器のチェックに最適であることから、視聴してみました。

 未だ、本調子に程遠いコンディションでした。やはりレンジが広がりません。Fレンジ、Dレンジともに八分程度の仕上がりかな。ストレートアーム仕様のGT-2000に、シェルターのカートリッジとくれば、眼の醒めるような音を期待してしまいます。しかし、20年前の旧いシステムで味わった感動が再現されません。記憶の中の音が美化されているという面もあるにしろ、かつての迫力が得られないのです。
 故長岡鉄男氏が「グランカッサがマッハで飛んでくる」と評した低音のことです。かつてのシステムでは、低音打楽器が部屋の床を走ってくるように吹きつけてきたものです。これがないと「春の祭典」じゃねえ、てなもんです。

 もう少し辛抱してエージングに時間を割きます。今のシステムなら、ぜったい旧システムを上回る迫力が得られるはずです。楽しみにしていますが、再現できなかったら、きっとショックだろうなあ。
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四百四拾四  親はどこにいる(2010/2/13)
 宮城県の未成年者拐取事件の報道にはやりきれなさを覚えます。18歳の少年が3人の人間を刺し、うち2人が死んでしまったことといい、DV被害といい、誘拐といい、その無軌道さに慄然とします。

 よく分からないのは、18歳の女性と20歳の男性が泊まっていたことです。自宅で飲み会をやって深酒が過ぎたわけでもなさそうです。また、徹夜マージャンで泊まったのでもないし、DV少年を排除するための用心棒でもなさそうです。一体これはなんなのでしょうか。親たちは特段の理由もないのに外泊を許していたのでしょうか。

 子供を自由にさせていたとすれば、それは無責任な態度です。上に書いたような理由があれば、友人宅での外泊を許すことはあるでしょう。しかし、特に理由がないなら帰宅させるべきです。
 「遅くなってもいいから、ちゃんと帰りなさい」
 「他人宅に迷惑をかけるな」
 最近はこのような躾をしないのでしょうかねえ。田舎住まいの私には理解できません。

 もっと理解に苦しむのは、加害者の少年です。彼は18歳ですから、親には監督責任があります。DVだとか、つきまといだとかの事案については、親にも責任が問われているはずです。それなのに親が一切出てこないのです。

 私の疑問にどこの報道も応えてくれません。皆さんも、同じ疑問を持っているのではないでしょうか。
 「親は一体なにをやっているんだ」

 想像ですが、無軌道な子供を前に、親は何も言えなくなっているのでしょう。この点には思い当たる節があります。私は若年者を指導する仕事をしているので、子供の不行跡について親と話し合うことが多々ありました。中には、子供の暴力にびびって何も言えない親がいました。この点について、頼りないとか責める気はありません。世間体もくそもなく、感情と行動をむき出しにするDQNに話は通じません。体力に自信のない親は俯くしかありません。

 しかし、今回のような、他者に迷惑をかけているケースは別です。自分の身大切さより、他者に迷惑をかけないことを優先するのは義務です。結局、この親たちは義務から逃げているのです。
 どのような親なのかは知りません。ひそかに心を痛めていたこととは思います。でも、最後のところで逃げたのです。自分の子供が無辜の他人を死に至らしめたことについて、どう考えているのか訊きたいものです。
 息子の行動を止める為、仮令命を落としたとしても、他人を殺した責めを負うより楽だと思うのですがねえ。この親を晒す必要はないにしろ、親の側が自発的に行動を取るべきです。謝罪や賠償など、まさかしらを切るとも思えませんが、管理責任を自覚し、務めを果たすべきです。

 子供がすでに成人であれば別ですが、未成年者なのですから親は同罪です。少なくとも親本人には自覚を期待します。
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四百四拾参  バイクの思い出(2010/2/7)
 私の知人が自身のサイトにバイク歴の頁を設けていました。読みながら、そういや自分も若い頃バイクに凝っていたなあと懐かしくなりました。

 高校1年のとき、友人のバイクに試乗したのがすべての始まりでした。自転車とは次元の違うスピード、加速、機械を操る楽しさなど、もう完全に脳みそがいかれました。

 さっそく免許を取得し、バイクも手に入れました。親戚の従兄弟がポンコツバイクをプレゼントしてくれまして、晴れて自分の脚となりました。
 HONDAのCL90とかいう、トレールもどきです。エンジンは4サイクルだし、マフラー位置が高いだけのできそこないです。こんな中途半端なバイクでも、自転車時代と次元の違う行動範囲が得られ、社会性に目覚めたような記憶があります。いわゆる、大人の階段を一歩上ったというやつです。


 友人たちが本格的なバイクに乗り始めると、当然のこと物足りなくなります。友人が乗り換えるとき、旧車を安く譲ってもらいました。YAMAHAの人気トレールAT1です。友人による軽い改造を受けていて、オフロード入門としてテクニックを磨くのに役立ちました。
 また、トレールに乗っていた友人が多かったことから、休日には打ち揃って河川や山への悪路走破に挑んでいました。

 そんな友人たちも高校3年で18歳になるや、自動車免許を取って車へ乗り換えていきました。ツーリングやトライアルの連れがいなくなり、つまらなくなってバイクを手放しました。
 やがて大学に入るや、やはり脚が必要になって再びバイクを物色しました。金のない私は、車に乗り換えた友人のお古を尋ね、YAMAHAのDT1を入手しました。DT1はAT1の兄貴分で、通産省グッドデザインを受賞したトレール史に残る名車です。

 このDT1は友人3代に乗り継がれて私の下に来たわけで、各所にガタが来ていました。中身だけでなく、外装もひどくくたびれていましたが、素寒貧の私は我慢して1年間活用しました。

 くたびれ加減に嫌気が差した私は、バイトで金を溜めてKAWASAKIの250TR(頁下から4枚目の写真、右向きの車種)を購入しました。走行3,000kmで慣らし運転が終わった程度のほぼ新古車でした。これはよくできたバイクで、中速トルクが大きいので乗りやすかったです。サスストロークも大きく、衝撃吸収も優秀でした。

 名神高速も快適に走破し、大学時代の思い出づくりに貢献してくれました。とても気に入っていたものの、自動車免許を取って手放しました。車から得られる刺激というか、利便性や快適性はバイクと一線を画すものです。それまで夢中だったバイクのことは、きれいさっぱり忘れてしまいました。
 でも、こうやって久々にバイクの写真を眺めていると懐かしさがこみ上げてきます。大きな声では言えませんが、友人たちと暴走まがいに走り回った思い出は、今となってはかけがえのないものです。
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四百四拾弐  次期FX選定の提案(2010/1/31)
 ロシアが第5世代戦闘機の初飛行に漕ぎつけました。毎日jpの記事によると、

【モスクワ大木俊治】ロシアの飛行機メーカー「スホイ」は29日、同社が開発・製造した「第5世代」と呼ばれる新型ジェット戦闘機の初めての試験飛行を行い、成功したと発表した。ロシア国営テレビなどが報じた。レーダーでとらえにくいステルス性を備えた第5世代戦闘機のうち、実戦配備されているのは現在、米空軍のF22だけで、ロシア軍は、15年の実戦配備を目指す。

 ロシアは米国との核戦力均衡を追求する一方で、ソ連崩壊後の経済混乱で米国に大きく立ち遅れた通常兵器の近代化に力を入れている。今回試験飛行に成功した第5世代戦闘機はその一つで、ステルス性のほか長距離の超音速飛行が可能という。インタファクス通信によると、試験機はロシア極東コムソモリスクナアムーレの空軍基地から発進し、47分間にわたって試験飛行を実施した。

 こういう記事を読むと、隔世の感を覚えます。かつての共産ソ連時代であれば、新型兵器に関することは完全な秘密のベールに包まれ、実戦投入されるまで想像するしかありませんでした。
 ソ連崩壊後、間を措かずにウラジオストックへカメラが入り、朽ち果てたソ連太平洋艦隊の実態が晒されました。また、建造途中で捨て置かれていた空母のクズネツォフが取材を受け入れたり、あげくには戦略原潜のタイフーン級にカメラが入ったのには驚きました。アメリカでさえ、オハイオ級の取材は許さないでしょう。さらに10年ほど前、NHKが報道した戦略ミサイルの地下サイロ映像は信じ難いものでした。

 いずれにしても、新型機の初飛行映像がその日のうちに公開される状況は、アメリカや日本以上のオープンさです。


 PAK FA と称される第5世代戦闘機の情報は断片的に流れていました。Su-27搭載の強力なエンジンをさらに高出力化したものを載せるようです。当然、スーパークルーズは楽勝でしょうし、兵装搭載量も大きなものになるでしょう。ただ、ステルス性能はそう高くないように見受けられます。というか、アメリカのF-22が完璧すぎる出来栄えなのですが。


 さてさて、日本はどう対応するのでしょうか。ロシアは新型機の開発が順調に進捗したとして、2015年に空軍への採用を決めるそうです。多分、開発は大幅に遅れ、2020年あたりで量産化へのゴーサインが出るんじゃないかな。中国がライセンス生産を開始するのは2020年以降のことでしょう。
 日本もいいかげんに対応方針を決めなければいけません。このままいけば、F-35しか選択肢が残されないでしょう。しかし、F-35を採用すれば、日本の戦闘機開発基盤は完全に止めを刺されます。そのような事態は絶対に避けるべきです。

 で、国産FXとして、少し考えてみました。下図のようなオリジナル機はいかがですか、防衛省殿。



 デルタ翼に近い形状で、ステルス性を高めています。水平尾翼は主翼と一体とし、タイフーンのような先尾翼は無くしています。おかげで、レーダー波の反射方向が見事に揃っているでしょう。さすがにフラップや補助翼の確保が難しくなりますが、専門家の方々なんとか克服してください。昇降舵の利きについては、推力偏向エンジンでカバーできるでしょう。揚力の発生に問題があるだろうという突っ込みはなしでね。

 胴体下面はフラットにし、AAM4(空対空ミサイル)の改造型を下図のように5基格納します。



 F-22は下面にAMRAAMを6基、側面にサイドワインダーを2基格納できます。国産ミサイルのAAM4は、若干大型であり、射程を延伸する予定の改造型はさらに大きくなると考えられます。搭載量を減らして格納し、F-22より一回り小型化を図るべきです。これによって、より軽量とし、エンジンの負担を少なくできます。

 さて、エンジンが問題です。大推力のエンジンを国産開発するのは無理でしょう。もう、ロシアの次世代エンジンのライセンスを取得しましょう。外貨が欲しいロシアは喜んで協力するでしょう。一方でアメリカは怒り狂うだろうなあ。


 お馬鹿な妄想ですが、こんな妄想に駆られるのも心配からなのです。このまま次期FXの方針未決定のまま推移すれば、取り返しのつかない事態を招いてしまいます。
 普天間移設問題でアップアップの鳩山首相には期待できないでしょう。かといって自民党の国防族どもが口出しすれば、必ずやアメリカ航空機メーカーや代理店商社から金を毟り取ろうと、鵜の目鷹の目の利権漁りが横行するでしょう。
 防衛省様、しっかりしてください。
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四百四拾壱  名護市長選の行方(2010/1/24)
 普天間基地移設問題を争点にした市長選の結果は今夜判明するそうです。反対派の新人が勝つか、容認派の現職が勝つか、予断を許しません。
 市民の大勢は、前回選挙ですでに容認を支持したわけで、マスコミが煽るほどの対立点となっているかは疑問です。市民が容認している理由は、土木利権と交付金、基地関係者が落とす現金目当てでしょう。

 個人的には、反対派に勝っていただき、辺野古沖埋め立て案の撤回を希望しています。米軍の基地使用に対する根本的な議論を期待しているからです。
  • 石破元防衛大臣が民主党批判でよく口にする、日米間の合意を破るのは許されない、の論は根拠がない。国家間の合意は、時代の趨勢によって当然のこと変更される。
  • 辺野古沖を埋め立てて滑走路を建設するのは無駄な支出である。利用状況が芳しくない空港はたくさんある。
  • 沖縄に駐留米軍を集中させるのは、沖縄にとって負担が大き過ぎる。
  • 海兵隊を沖縄に駐留させるにしても、嘉手納でこと足りる。反対している理由は、単に米空軍と海兵隊の我ままであり、日本側の理由としては土木利権を確保したいからである。
  • 今後の在日米軍のあり方そのものを俎上に載せるべき。基本的には漸減の方向とし、アメリカが駐留を希望するなら、アメリカ自身が基地使用料や周辺保証を担保すべきである。
 議論すべきことはたくさんあるのです。自民党政権は橋本時代において沖縄利権確保に動き、小泉時代に現計画策定を為しました。その間、安全保障や駐留米軍のあり方の検討は為されませんでした。あくまで利権ありきでした。

 鳩山総理は頼りないですが、こと普天間基地問題に関しては頼みの綱となっています。駐留米軍問題についてはエールを送ります。しかし、今夜判明する選挙結果次第では、辺野古埋め立ての方向に舵が切られるかもしれません。そうなったら憂鬱だなあ。
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