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五百弐拾  省エネ狂騒曲(2011/7/17)
五百拾九  日本人王者、二度目のアメリカ防衛戦(2011/7/10)
五百拾八  8年ぶりのヘビー級ビッグマッチ(2011/7/3)
五百拾七  蘇る「ウルトラQ」(2011/6/26)
五百拾六  “普天間問題”絶望的な日本の対応(2011/6/19)
五百拾五  大前研一氏って微妙(2011/6/11)
五百拾四  新しいエネルギー政策(2011/6/5)
五百拾参  福島終息の途見えず(2011/5/28)
五百拾弐  音楽映画の最高峰「オーケストラ」(2011/5/21)
五百拾壱  針圧計購入(2011/5/14)
五百拾   嘉手納統合への端緒(2011/5/13)
五百九   在日米軍と原発の共通点(2011/5/7)
五百八   I Will Always Love You 三題(2011/4/30)
五百七   原発コストは電気料金で(2011/4/23)
五百六   スター誕生と凋落(2011/4/16)
五百五   「海角七號」(2011/4/9)
五百四   廃炉決定(2011/4/2)
五百参   原発と電力危機(2011/3/26)
五百弐   東日本大震災と原発危機(2011/3/19)
五百壱   東北地方太平洋沖地震(2011/3/12)




五百弐拾   省エネ狂騒曲(2011/7/17)
 原発事故を受け、節電要請が高まったことから、節電やら省エネやらグリーンディールやらの気運がブームになっています。省エネや節電への取り組みはいいことだと思います。ただし、省エネにも節度が必要でしょう。

 家電や車に対するエコポイントは、明確な資源浪費政策でした。日本中の誰であっても、省エネになるなんて信じていないでしょう。家電製品や車の買い替えによって、中古品が廃物として溢れかえっています。しかも、製品製造には部品加工や組立工程において材料とエネルギーが消費されることになります。まさに資源の浪費です。
 エコポイント制度の肝は景気対策以外の何ものでもありません。いえ、それは結構なことですよ。言いたいのは、省エネだとか節電だとかの嘘をつくなということです。

 国や地方公共団体、企業においても省エネのためにLED照明や新しい空調設備の導入が促進されています。どうみても勿体ない話です。
 オフィスの照明なんて、ここ数年でPC向けに防眩仕様にリプレースしてきたところでしょう。それを間をおかずにやり替えです。税金、あるいは企業の場合だと設備投資の無駄遣いです。本当に省エネに取り組むなら、適当な耐用年数経過後に順次リプレースしてゆくべきです。

 車の場合はもっと深刻です。一台の車を製造するのに必要な電気や材料を上げていくと、燃費の向上なんぞでは追いつくはずもありません。

 私ゃ、無駄な買い物は一切しません。単に貧乏性なだけですけどね。現行の機器が使えなくなったら、そのときはしっかり省エネ商品に買い換えますよ。それが王道というものです。

 一方で、クルービズとか簾とかの只でできる対策には大賛成です。夏場の糞暑い時期、スーツにネクタイを着込んでいる営業マンを見ると気の毒になります。きっとその企業なりの企業風土なのでしょう。一番効果があるのは、そのような意識の改革です。

 営業関係の上司たちが癌なのでしょう。「俺たちの若い頃は」とか「客を訪問する際の基本的なルールだ」とかの硬直的な権威を振りかざすのを生き甲斐にしている方々がいるでしょう。えてしてそういう職場は冷房をガンガン効かせ、OLさんたちは膝かけとカーデガンで寒さを凌ぐという本末転倒な状況を招いています。
 OLさんたちが文句をいうと、「俺たち営業がこんな暑い思いをしているのに、楽してるお前たちがなに贅沢を言ってんだ」とかね。
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五百拾九   日本人王者、二度目のアメリカ防衛戦(2011/7/10)
 本日、アメリカのニュージャージー州でWBAのS.バンタム級タイトルマッチが行われます。王者の下田昭文に同級1位のリコ・ラモスが挑む指名挑戦試合です。

 日本人王者が海外で防衛戦を行うのは、極めて稀です。特に、本場アメリカでの防衛戦ともなると、40年近く前に柴田国明氏がハワイで戦って以来です。ハワイは日系人が多いとあっての興行だったのでしょう。アメリカ以外であれば、2年前に西岡利晃選手がメキシコで成功しています。

 今回の試合はニュージャージー州ですから、おそらくアトランティックシティなのでしょう。本場も本場、ラスベガスに並ぶボクシングのメッカです。

 下田選手は昨年タイトルを取ったサウスポーです。テクニックはシンプルで、間口の狭いボクシングです。ただ、スピードがあるのでサウスポーを生かした突進力で勝負できます。
 対戦相手を知らないので、どのような展開になるかは見当がつきません。午前11時過ぎから試合が開始される予定です。試合後に結果を踏まえて再度書き込みたいと思います。


13:00 追加
 7R、ラモス選手の見事な逆転KOでした。下田選手にとって、言いわけのしようもない敗北でした。

 下田選手は序盤からスピードを生かしたワンツー攻撃でポイントを重ね、有利に進めていました。ただ、単調な攻撃の連続であったため、ラモス選手も慣れてきました。タイミングを読んでうまく外し、下田選手に空回りさせ続けました。
 うまく当てることができなくなった下田選手はボディへ照準を変え、有効なショットを連発しました。再び優勢に立っていたのが、7Rに入って疲れからか途端に動きが鈍くなりました。足が止まり、ガードが下がったところに、鮮やかな左フックがヒットしました。下図のとおり、きれいに打ち抜いています。
(C)WOWOW


 わずかなチャンスを見逃さなかったラモスは流石です。でも、あんまり期待できる新王者じゃないですね。この程度のボクシングでは、すぐに陥落しそうです。

 下田選手も再起を期すなら、もっと多彩な攻撃パターンが必要です。ワンツーだけで通用するほど世界は甘くありません。でも、期待できないでしょう。それが可能なら、とっくに取り組んでいるでしょうから。
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五百拾八   8年ぶりのヘビー級ビッグマッチ(2011/7/3)
 久しぶりのビッグマッチとあり、早朝から眠い目をこすりながらWOWOWにチャンネルを合わせました。
 WBO/IBFヘビー級王者のウラジミール・クリチコとWBA王者のデビッド・ヘイが激突する注目の大一番がドイツのハンブルクで開催されました。

 このカードは2年前に決定しながら、ヘイの負傷によってキャンセルされました。当時のヘイはクルーザー級統一王者であり、期待の一戦ではありましたが、勝ち目は見えないカードでした。その後、ウラディミールの兄でWBC王者のビタリ・クリチコとの対戦を希望したものの、交渉は不調に終わりました。そして、2009年11月、WBA王者ニコライ・ワルーエフに挑戦し、2階級制覇を達成しました。

 レノックス・ルイス引退後のヘビー級戦線は、クリチコ兄弟が君臨する無風状態でした。王座を脅かす相手が現れなかったため、退屈な時代が続きました。それが今回久しぶりに興奮するカードが実現したのです。WOWOWが欧州の試合を生中継するのは初めてのことで、前代未聞の午前5時放映となったのです。

 緊迫感一杯の試合でした。体格差は歴然としていました。ワルーエフほどの差ではないにしろ、下図のように、身長、リーチともに大差です。しかもクリチコは真っ直ぐジャブを突くため、どうしても距離が遠目になります。

(C)WOWOW


 体重差も大きいだけに、ヘイは絶対にパンチを貰うわけにはいきません。クリチコのコンビネーションを紙一重で躱します。まず、ジャブをスエーで軽く。


ワンツーの右クロスをダッキングで。


 左フックをスリッピングで。


 ヘイは速い踏み込みでアタックし、クリチコはバックステップとスエーで外します。ここでは軽く顔面を捉えました。


 クリチコの強打をほとんど躱し続けたものの、最終ラウンドは攻勢を強めたため、ショートの右を食らいました。


 クリチコは試合全般をジャブで支配し、大差の判定勝利となりました。大型のボクサーに強いジャブを連打されたら、対戦相手はどうしようもないです。それでも、さすがヘイです。クリチコのパンチをほとんど外し、時おり鋭い踏み込みを見せました。
 敗れたりとはいえ、ヘイのボクシングは超一級品でした。そのヘイを以ってしても、今のクリチコには届かないのです。残念ですが、クリチコ兄弟を脅かすボクサーは存在しません。期待できるのはワルーエフだけですが、半引退状態みたいなので実現しそうもありません。

 クリチコ兄弟を脅かす新しいスターが誕生しないことにはどうにもなりません。そのハードルが高すぎるため、ボクシング・ファンは暗い気持ちにならざるを得ません。
 当分、ヘビー級は無風地帯でしょう。そのかわり軽量級や中量級がエキサイティングなので、その分期待しましょう。
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五百拾七   蘇る「ウルトラQ」(20111/6/26)
 本日の午前中、WOWOWを点けたら驚きの映像が流れていました。画面には、あの伝説の「ウルトラQ」のオープニングタイトルが映っていたのです。吃驚して、すかさず録画ボタンを押しました。あの懐かしくも有名なマーブリング・タイトルがこれです。
(C)円谷プロ


 WOWOWの特別企画として、「ウルトラQ」全28話が明日から放映されます。本日は予告編として、第1話「ゴメスを倒せ」と第2話「五郎とゴロー」が別途放映されたわけです。

 これはもう永久保存版です。私は明日から、すべて録画しようと思っています。また、画質が素晴らしいのです。昭和41年のTV放映時は、当然のこと低画質です。それをHDにリマスターしているのです。
 いくらHDリマスターといっても、通常は高画質になりえません。「ウルトラQ」が高画質化に成功しているのは、もともとのフィルムが35mmだったからです。特撮でフィルムの合成を行うには、劣化を考慮して35mmフィルムが必須だったのです。当時のTV番組は16mmで制作されていました。35mmは劇場映画用に用いられていたもので、円谷プロならではの快挙だったわけです。おかげで素晴らしいHD映像を堪能できました。

 本日、私が見たのは「五郎とゴロー」です。残念ながら「ゴメスを倒せ」は見逃してしまいました。明日からの録画チェックは忘れないように気をつけなくては。

 冒頭、ゴローがいきなり登場します。


 そしてオープニング画面と、あの不気味でありながら小気味いいBGMが流れます。


 30分番組には勿体無いクオリティです。


 ラストは五郎の悲しげな叫びです。


 エンドシーンは、まるで映画のような“終”のクレジットです。


 「ウルトラQ」はあらゆる点で画期的な企画でした。もともとは、アメリカの「アウターリミッツ」を真似たSFドラマを目指したものでしょう。円谷プロが購入する高額な高性能カメラをTBSが負担するバーターとして、円谷プロは映画スタッフをTVに投入しました。

 まさに日本のTV番組づくりを根本的に変革した番組でした。子供だけでなく大人までもが夢中になり、視聴率30数%を記録しました。
 内容も怪獣だけでなく、ミステリータッチ、文明への警鐘、人間の欲望や哀歓もテーマにしました。おかげで、こどもには難しい話もありました。

 今回、全話が放映されるとあって、私が一番楽しみにしているのは「東京氷河期」です。冷凍怪獣ペギラの逆襲編で、東京が凍りに覆われる話です。まさか、この話を再び見ることができるとは夢にも思いませんでした。しかも、HD映像ですから堪えられません。
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五百拾六   “普天間問題”絶望的な日本の対応(2011/6/19)
 1か月前、上院軍事委員会のレビン委員長とマケイン筆頭理事とウェッブ委員が、国防総省に対して「普天間基地の嘉手納統合」提言を行いました。この提案は、日本側にとって極めて有効かつ現実的なものでした。

 辺野古移転が実現不可能な状況にあるのは周知のことです。であるなら、普天間基地の危険性を除去するには、嘉手納統合案しかないのです。仲井真知事は無論のこと、政府は真摯に反応すべきなのです。ところが、防衛省にしろ外務省にしろ、不誠実極まりない態度を見せています。

 米議会からの提案時、柔軟な検討姿勢を表明していた北澤防衛相も、いつのまにか辺野古V字案に固執しています。多分、防衛官僚や外務省からの圧力に屈したのでしょう。
 防衛省にしろ外務省にしろ、事態をどう終息するつもりなのでしょうか。辺野古移転が不可能な以上、普天間基地を固定化したいのでしょうか。

 朝日新聞(6/18)
 米上院軍事委員会は17日、2012会計年度(11年10月〜12年9月)の国防権限法案で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、米軍嘉手納基地への統合の実現可能性などを調査しない限り、在沖縄海兵隊のグアム移転費として、政府が要求したほぼ全額の約1億5千万ドル(約120億円)を削減する方針を発表した。


 議会は、政府が嘉手納統合を真剣に検討するよう、予算を人質に取ってまで促しました。これで否応もなく国防省も検討せざるを得ません。
 グアム整備は、将来の国防政策にとって重要な位置づけとなる可能性があります。もちろん、本格的な海兵隊基地建設は無理でしょう。あんな狭い島に、沖縄と同じ機能を持たせるのは無理です。しかも、海兵隊の縮小はもはや規定路線でしょうから。
 しかし、前方展開基地機能について、グアムに沖縄の代替を検討しているのも事実でしょう。米軍の将来計画について、次期トップ人事からある程度読み取ることができます。

 ・ 国防長官:ロバート・ゲーツ→レオン・パネッタ(CIA長官)
 ・ 統合参謀本部議長:マイク・マレン(海軍大将)→マーティン・デンプシー陸軍総参謀長(陸軍大将)
 ・ 副議長:ジェームス・カートライト(海兵隊大将)→ジェームズ・ウィネフェルド海軍北方軍司令官(大将)

 上のように交代すると予想されています。
 まず言えることは、新国防長官は国防費削減を優先することです。議会の予算指針にも合致する方策ですし、コストカッターとしての手腕を期待されていることでしょう。特に海兵隊がらみでは、縮小方向間違いないです。
 また、新副議長は東南アジアからインド洋を重視する考えに傾倒しているそうです。すると、グアムがより適した拠点として、地政学的にクローズアップされるのではないでしょうか。
 海兵隊の縮小、グアム整備などが俎上に上がっている以上、辺野古に新空港を建設するなんて無意味です。嘉手納統合こそが合理的な選択なのに、政府は辺野古に固執しています。沖縄の合意が得られないのを承知の上でです。もう、まったく理解できません。誰か教えてください。
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五百拾五   大前研一氏って微妙(2011/6/11)
 大前研一氏は雄弁な論客として知られています。日米貿易摩擦たけなわの頃、マッキンゼー日本支社長の肩書きとともに評論家デビューしました。豊富なデータを論拠として、明快な切り口で高い世評を得ました。
 後に“平成維新の会”を組織して、政治の世界を目指した頃から評判を落としました。政治活動のためのカンパを集めながら、会計報告を見た記憶がありません。

 最近、週刊ポストで「日本では住宅を買ってはいけない」との記事を書いています。読んでいろいろ疑問を感じました。

 そもそも私が日本人の“持ち家信仰”に警鐘を鳴らしてきたのは、日本ほど「買った瞬間に住宅の価格が下がる」国は世界にないからだ。買った時が一番高く、その後はどんどん値下がりして、一戸建ては10年後には銀行の査定だと土地の値段だけになってしまう。

 欧米は日本と逆に買った時が一番安く、徐々に価値が上がって将来の資産になる。しかも、たいがい値上がり率は銀行預金や株式よりも高くなる。

 日本で住宅の価格が下がる理由は二つある。一つは「街並み」の問題だ。アメリカの場合、住宅街は時と共に磨かれ、充実していく。最初は殺風景な新興住宅街でも、だんだん樹木が大きくなって街並みが整備されていくと街そのものに落ち着きが出てきて、10〜20年後には高級住宅街になる。つまり、街並みにはワインと同じようにビンテージがあり、時間が経てば経つほど熟成されていくのである。


 日本でも、安い山林や田畑が新興住宅地として価値を高めるケースは同じでしょう。やがて商業施設も充実して、高額な住宅街に変貌するケースは珍しくもありません。逆にアメリカでも、端正な郊外住宅街がスラム化し、価値が暴落することもよくあるケースです。
 氏の主張は、自分の意見を補強するために、ものごとを一面的に切り取る手法ですね。

 “街並みづくり”の話は、昔から“選択の問題”として語られてきたことです。大前氏が書いているような話とは、少し違うんじゃないかと思います。
 美しい景観を維持するのは結構なことですが、これは「個人の自由」や「個人の権利」を大きく制限することと対になっています。日本でも観光地なんかでは、条例で厳しい規制があります。ああいった規制を一般住宅地にも適用する話ですから。
 イギリスでは、街の景観を維持するために厳しい規制がたくさんあります。家屋の高さ、塀の高さ、塀から家屋までの空間距離、庭の植樹の高さ、家屋の色彩、増築の禁止などについて、細かく規制しているケースがあります。住民にとっては、不自由や我慢を強いられる話です。でも、住民たちは不自由な面があるにしろ、「景観を維持することによるアメニティの優先」を選択をしているわけです。あくまで、選択の問題だと思います。


 などと、大前氏にケチをつけたのは、原発がらみでの氏の発言に違和感を持ったためです。氏は講演会などで精力的に発言しました。そのスタイルは、えらいこと高みからものを言うものでした。ですから、ついつい反感を持ってしまうのです。

 3月における氏の発言は、次のようなものでした。

 「燃料を安定させ、クレーンも修理して燃料を取り出すべし」
 「次に、5年後くらいに炉の洗浄
(除染のことと思われ)をすべし」

 5年くらいで作業できるほど放射能が減衰するものでしょうか。私がこれまで聞いていた話では、数十年〜300年くらいでした。ですから、その間炉が腐食しないように水を循環させ続けなければならないというものでした。大前氏が言うように、5年で炉の処理にかかれるものなら、負担も小さくてすむでしょう。しかし、5年程度じゃ除染は無理でしょう。
 もっとも3月時点での発言ですから、燃料棒が完全に溶融したことが分かっている現在では、違う方向に向かっていますけど。

 また、次の発言には皆さん疑問を持ったことでしょう。

 「テントで建屋を覆うべし」

 テントで覆っちゃあ、テント内の放射線濃度が高くなって、作業が進捗しないでしょう。

 いえ、アイデアを表明するのはいいことだと思います。ただ、大前氏の発言には香具師の香りがプンプン漂っているのです。
 私の中では、大前氏は長谷川慶太郎氏と同じ引き出しに入っています。
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五百拾四   新しいエネルギー政策(2011/6/5)
 管首相がG8で太陽光発電を1,000万戸に導入するとかほざきました。鳩山さんのCO2を25%削減するとかの放言と同じ轍を踏んでくれました。なんで大事な国際舞台で、政策決定も為されていない思いつきを口にするのか。まったく愚かな政治家たちです。

 福島の悲惨な状況に対する反省から、新たなエネルギー政策を策定するのは結構なことです。是非ともやってください。でもそれは、有識者による審議会とかを開催して、国民の前で議論を重ねた結果を基にしてほしいです。
 エネルギー政策は経産省の所管でしょう。でも、従来のような原発ありきの議論は勘弁してほしいです。油断すると、原発推進関係者ばかり集めて、原発の安全強化を謳った答申を出しかねないですから。

 幸いなことに今の民主党主導であれば、経産省や電力会社の都合に合わせた出来レースは許さないでしょう。これが自民党であれば、原発利権にどっぷりですから信用できません。脱原発の方向性は、利権に係わる人間を別にして、ほとんどの国民の希望でしょう。

 稼働中の原発は取りあえず稼動させるにしても、浜岡のように無防備な原発は廃炉するしかないでしょう。その他、断層の上に建てられた原発とか、初期設定を超えた古い原発とかは順次停止させていきましょう。

 そして、原発廃止と平行して、火力発電を中心にしたリプレースを進めるべきです。火力発電といっても、石油だけでなく、石炭や天然ガスも積極活用すべきです。世界のエネルギー源としての化石燃料の内訳は、石炭微増、石油大幅減、天然ガス大幅増の傾向です。石油に比べ、石炭や天然ガスはコスト安なのです。ちなみに原子力は横ばいです。

 期待の自然(再生可能)エネルギーについては、全供給量のうち無視できる程度の微量です。とても原子力や水力、火力の代替にはなりえません。管首相の思いつきにも困ったものです。
 家庭用の太陽光発電システムの導入コストは、二百数十万円といったところでしょう。さらに導入促進のために売電を行うとなれば、受給のための装置に数十万円かかります。粗計算で300万円として、1,000万戸への導入コストは30兆円にもなります。これに一体どんなメリットがあるというのか。子供でも分かりますね。

 環境運動家の言い分はこうです。「金額じゃない。たとえコストがかかっても、太陽エネルギーを利用することにより、CO2が発生しないので環境負荷が小さくなる」と主張します。
 コストを無視しちゃ駄目でしょう。それと、太陽光発電の環境負荷は結構なものです。発電パネルのシリコン製造は電力食いなのです。しかも、家庭用とはいえ、一応発電プラントですから、各種のメンテナンスが必要です。
 太陽光発電の発電コストは、各種発電方式のなかでも最悪です。特に湿気が多く、太陽熱サンベルトから外れている日本は不向きなのです。
 旧通産省の外郭団体であるNEDO(新エネルギー総合開発機構)が、かつて“サンシャイン計画”と銘打った太陽光発電プラントを実施しました。このテストプラントは当地で行われたのでよく知っています。結果は最悪で、今となってはNEDOも資料類を公開していません。当時こっそり発表された内容は次のようなものです。

●出力1,000kwのタワー集光方式
発電期間=31か月
総発電電力量=873,144kw
稼働率=3.9%
時間に置き換えると、年間14日分

●出力1,000kwの曲面集光方式
発電期間=30か月
総発電電力量=361,819kw
稼働率=1.7%
時間に置き換えると、年間6日分

 まあ、こんなものです。通常、太陽光発電の発電効率は10%程度とされています。さらに一日6時間発電できるとして、効率は1/4に低下します。さらに雨天や曇天では発電できません。上の実験結果は、理論上の効率と見事に合致しているでしょう。

 仮に発電効率が悪くても、発電コストが安ければ意味はあるでしょう。でも現実には、最悪の発電コストなのですから、やる意味がまったく理解できません。


 日本の火力発電は、石油にしろ、LNG(液化ガス)にしろ高効率でクリーンです。世界最高レベルの技術を誇っており、原発のリプレースはこれしかありません。特にガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせたコンバインドサイクル発電は各種発電方式のなかで、水力に次ぐ最高の発電効率です。ガスタービンから排出された高温の排ガスを再利用して蒸気を作り、蒸気タービンとガスタービンで発電するものです。こんな素晴らしい技術を持っているのに活用しない手はありません。

 また、世界の自然エネルギー分野で太陽光以上に普及しているのは風力です。しかし、風力も日本向きではありません。一定以上の風速が得られる地域が限られているからです。

 むしろ、日本向きなのは地熱発電です。日本は火山大国ですから、全国的に建設できます。国立公園内に火山が多いことから、促進するには法改正が必要でしょう。ニュージーランドも地熱発電を主としています。そのニュージーランドの地熱発電プラントは、すべてが日本の技術に拠っているのです。つまり、資源と技術の両方を所有しているのです。

 現在のところ、国内の全発電量は原発1基分に留まっています。管首相も、ろくでもない太陽光なんぞに無駄金を使わず、もっと地熱を活用しましょうぜ。

 最後にもう一点。CO2削減は地球温暖化を抑制するための方策のはずです。原発はCO2を出さないにしろ、地球温暖化には確実に手を貸しています。原発の反応熱のうち、2/3は冷却分として海に捨てられています。しっかり温暖化に貢献していますね。
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五百拾参   福島終息の途見えず(2011/5/28)
 東電は事故発生の翌日に燃料棒が溶融していたと発表しました。メルトダウンですね。結局、3月頃発表していた水位の数字は嘘だったことになります。
 制御室が使用不能だったために推測するしかなかったので、難しい判断であったとは思います。しかし、東電は想定される状況について、希望的面をのみ発表していたことになります。いえ、東電ではなく政府側の指示だったのかもしれませんけど。

 保安院の最初の会見で、しどろもどろの受け答えをした担当者は正しい状況把握をしていたのですね。つまり、当初から溶融が推定されていたわけです。でありながら、「燃料棒が一部損傷している可能性がある」と恣意的な情報操作をしていたのです。

 そのような態度が明らかになった以上、以後の発表内容も信用できません。各地の放射線量といい、海産物の汚染度合いといい、信頼性が揺らいでしまいます。風評被害を問題視する方がいますけど、情報の信頼性が低い場合にこそ、風評被害が起こるものです。
 静岡県知事が生茶葉の検査を拒否しましたが、そのような手法はむしろ自殺行為です。いらぬ風評を、自ら招く愚かな行為だと思います。


 炉の状況が明らかになるにつれ、絶望的な実態があからさまになりました。燃料が格納容器に出ているとされましたし、水漏れ箇所の特定もできていません。高濃度汚染水で濡れた付近は、人間が近づくこともできませんから、調査や修理も無理です。
 冷却継続のためには、同時に汚染水も垂れ流し続けなければなりません。海洋汚染と地下水脈汚染は覚悟しなけりゃならんでしょう。もはやチェルノブイリをはるかに超えた放射性物質の拡散です。
 チェルノブイリは大気中に撒き散らしたために大騒ぎになりました。日本は海洋と地下水脈への撒き散らしです。目立たないだけで、チェルノブイリをすでに上回っているでしょう。核燃料の量は、福島の方が10数倍も多いのですから。

 事態を終息させるためには、漏れを塞いで、冷却水を再循環させるシステムが必要です。現状で手立てはありませんが、いずれやらざるを得ません。できるだけ放射能被害を緩和する防護服を準備し、かつ健康被害を覚悟した志願作業員による調査と修理、再循環系配管敷設が必要です。

 この作業について、検査は保安院職員が責任を以って当るべきです。下請けにやらせて、自分たちは判子を押すだけなんてのを許してはいけません。また、敷設作業については、東電の役員や審議会委員たちに現地確認をやらせましょう。そしてまた、原発を推進してきた国会議員たちには、建屋内の状況について、現地での議員監査をやらせましょう。

 それが原発を推進してきた者どもが果たすべき仁義というものです。
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五百拾弐   音楽映画の最高峰「オーケストラ」(2011/5/21)
 先週のこと、WOWOWで期待の映画「オーケストラ」が放映されました。噂に違わぬ傑作でした。

 音楽をテーマにした映画はたくさんあります。ロック、バイオリン、コーラスなどなど、素人集団が練習を積んで、エンディングで観客総立ちの喝采を浴びるパターンです。この「オーケストラ」は、間違いなく決定版といえます。
 この映画が他と違っているのは、背景の深刻さです。タイトルは忘れましたが、アメリカのスラムの小学生たちがバイオリンで高みに至る映画がありました。結構な感動を与えてくれました。しかし、「オーケストラ」は次元の違う事情を背景に敷いています。

 旧ソ連のブレジネフ時代、ボリショイ交響楽団の天才指揮者アンドレイ・フィリポフは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を追求していました。彼がヴァイオリン・ソリストとして選んだのはユダヤ人のレア・ストラムでした。レアもまたチャイコフスキーにのめり込んでいきました。
 そんななか反ユダヤ政策によって、楽団からユダヤ人が追放されることとなり、焦ったフィリポフは急遽演奏会を開催します。急なこととて完璧を期すのは難しいところですが、レアの天才的なヴァイオリンによって、楽団は見事なハーモニーに没入していきます。しかし、反政府的な行動に対して、ボリショイの支配人は敢えて演奏半ばで中止を命じました。
 フィリポフを始めとした楽団員たちは解雇され、それぞれ生活のために別の仕事に就きました。レアと夫は、あるインタビューで政府批判を行ったため、シベリア送りとなり、翌年死亡しました。夫婦には乳幼児があり、フィリポフらによってフランスに逃されました。
 フィリポフはボリショイで清掃員を務め、30年の歳月が過ぎました。


 フランスのシャトレ劇場からボリショイへの演奏依頼を偶然眼にしたフィリポフは、成りすましを図ります。かつての楽団員、支配人たちとともにメンバーを揃え、ビザを偽造してフランス入りを実現します。
 このあたりは完全に喜劇です。ありえない手段とありえない展開の連続です。資金獲得のために大物実業家を詐欺まがいの勧誘で巻き込みますし。この実業家もまた、演奏の放映権を強引にシャトレ劇場側に認めさせたりで、なんでもありのドタバタが繰り広げられます。

(C) LES PRODUCTIONS DU TRESOR
 元楽団員で楽器を手放した者も


 空港でビザを偽造して配布


 楽器の手配ができたのは演奏会前日


 演目の中心はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第一楽章です。この曲にはヴァイオリン・ソリストが必要であり、フィリポフはフランスのスター、アンヌ=マリー・ジャケを指名しました。ジャケを亡命させ、守り育ててきたイレーナは、ボリショイとの接触を拒もうとします。

 パリに来た楽団一行は勝手な行動を始め、演奏会前日のリハーサルもすっぽかしました。ジャケは不審に思いながらも、天才を謳われたフィリポフとの邂逅を意義あるものとしていました。しかし、会食のなかで、悲運のヴァイオリニストであるレアへの思い出を語るフィリポフに不信感を募らせました。

 演奏会の失敗を確信したジャケは辞退を申し出るものの、楽団員のサーシャの説得に心を動かされました。
 『演奏の最後に両親のことが分かるかもしれない』
 イレーナも諦め、レアの注釈つき楽譜をジャケに残して消えます。ここでジャケは自分の生い立ちに気づいたと思われます。

 シベリア送りになるレアがフィリポフに残した楽譜


 こうしてジャケとボリショイとの競演が始まりました。楽団員は30年間演奏活動から離れていたうえ、リハーサルさえ一度もやっていません。バラバラの不協和音が奏でられるなか、ジャケのヴァイオリンが楽団の音楽をひとつに染め上げていきます。ジャケの演奏は、レアのヴァイオリンそのものだったのです。
 楽団のひどい音に訝しげだったジャケも、途中から自分のヴァイオリンとひとつになったシンフォニーに眼を瞠ります。まるで本来の自分の居場所を見つけたような趣です。

 あまりにひどい演奏に怪訝な表情


 フィリポフの記憶のなかのレア


 レアが乗り移ったかのようなジャケの演奏


 最後は全席スタンディング・オベーションでの喝采


 第一楽章12分間すべてが演じられました。演奏の素晴らしさはかなりのものです。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、ソリストに超絶技巧を求めます。著名なヴァイオリニストは、えてして技巧を駆使し、迫力ある演奏することが多いでしょう。本作のヴァイオリンは、どちらかというと優しく包み込むような演奏です。私はヴァイオリンのことは分かりませんけど、結構感動させられました。おかげで、ラストの第一楽章を毎日聴いています。

 残念なのは嘘くささがあからさまなことです。いくらなんでも30年間も演奏から離れていた楽団が、練習はもちろんのこと通しのリハーサルもなしで、チャイコフスキーを演じきることは不可能でしょう。せめてパリへ飛ぶ前に、短期間でもいいから厳しい練習場面を入れてほしかったです。

 この映画は音楽映画のマイベストに挙げます。仏露共作といっていいフランス映画の傑作です。
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五百拾壱   針圧計購入(2011/5/14)
 GT-2000のオプションアームYSA-1は極めて高品質なプロダクトです。音質はもちろんのこと、デザイン、仕上げ、タッチまでが一流です。クォリティが高いだけに、針圧やインサイドフォース・キャンセラーの数値も信頼がおけます。

 ただ、レコードをかけた際、音溝に当るようなノイズが気になることがあります。おそらく使い古したレコードであることから、レコードそのものの傷みだと思います。そうは思うものの、以前から気になって仕方ありませんでした。インサイドフォース・キャンセラーの荷重が不適切なのではとか、針圧が表示どおりでないのではとか、ついつい妄念に囚われてしまうのです。
 インサイドフォース・キャンセラーの荷重は問題ないと診ています。内外方向の動きを見ると、こんなものだろうと思われます。昔から、指定値より僅かに少な目に設定しています。指定値だと、外側へ引っ張られる力が強く感じられるのです。

 問題は針圧です。こればっかりは、針圧計を使用しない限り本当の荷重が分かりません。以前から何度も購入を検討してきたものの、適当な製品が見つかりませんでした。
 Web情報によると、シュアーSFG-2は安いものの、使い勝手が悪いと専らの評判でした。評価の高いテクニクスSH-50P1(頁最下段)は安いものの、はるか昔に製造中止になっています。


 で、いつものU-Station21にオルトフォンのDS-1が掲載されていました。針圧計は間違いなくアナログよりデジタルが精確でしょう。この商品はいかにもクオリティが高そうで、新品に比べて若干安いとあってすぐに購入しました。



 ご覧のように、1.6gに設定しました。シェルター501Uの適正針圧は1.4g〜1.8gで、以前はアームの設定数値が正しいかどうか不安だったので、安全を期して1.5gにしていました。今回は精確な針圧が得られるので、安心して重めにしました。

 ところで、YSA-1による指定針圧は精確でした。デジタル針圧計が示す数値と完全に一致しています。これで安心してアームの数値に頼れます。
 というわけで、針圧計の出番は不要となりました。最近はアナログ党が周辺にいないので、転売することができません。オークションを利用するのも鬱陶しいし、取りあえず手元に置いておきます。
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五百拾    嘉手納統合への端緒(2011/5/13)
 上院軍事委員会のレビン委員長とマケイン筆頭理事とウェッブ委員は、国防総省に対して「米軍再編計画の見直し」の提言を行いました。この声明によって、普天間基地問題に対する議会の方向性が決定的になりました。

 しかも、声明には前向きな提案も含まれています。嘉手納基地の航空部隊の一部をグアムや日本国内の別の米軍基地に移設し、地元の負担軽減を図り、嘉手納弾薬庫地区の倉庫の縮小も求めています。

 これに反対する在日米軍のライス司令官が、まるで国鉄民営化に抵抗した国労委員長に見えました。
 「キャンプシュワブ沿岸部への移設案が唯一実行可能な案である」
 なんかもうね、現実がまったく認識できていない方ですね。いえ、認識しているからこそ、有無を言わせぬ拒否の姿勢を演出しているのでしょう。
 ゲーツ国防長官は、今回の声明を出した相手が相手だけに、さすがにだんまりを決めているやに見受けられます。

 前国家安全保障担当補佐官を務めていたジェームズ・ジョーンズ氏の意見を先週紹介しました。まったく同じことを述べていますね。本当は、みんな分かっているんですよ。

 むしろ、問題は日本側です。土木利権を狙う業者と政治家、普天間基地が存在することで地代を懐にできる人間、事態が長引くことで交付金を引き出し続けようとする地元関係者などがガンでしょう。
 
 まさに政府関係者の頑張りどころだというのに、枝野幹事長の発言は万死に値します。せっかくアメリカ議会サイドが次善の方策を提示してくれているというのに、聞かなかったことにしようとしています。枝野さんは基地問題を理解していませんね。あるいは、外務省−いえ、害務省のつまらん入れ知恵かもしれません。アメリカ議会は、アメリカにとっても日本にとってもベターな、そして将来を真剣に見据えた提言をしてくれているのです。それを無視する日本政府には怒りを覚えます。

 また、仲井真知事も反対意見ばかりでなく、普天間の危険性除去を望むなら、現実的な嘉手納統合に踏み出すべきです。嘉手納の騒音問題も軽減縮小の方向で提案されていることだし、この機会を捉えて普天間の危険性と正面から向き合っていただきたいです。

 嘉手納統合の提言が為された直後は、反対反対を唱えた知事も、今日になって前向きな発言をしています。
 「騒音などの負担が減るのであれば(議論の)入り口になるかもしれない」
 結構なことです。日本政府が無能無策であるなら、沖縄サイドから政府に働きかけましょう。後世の史家は、菅政権の無能ぶりを青史に刻むかもしれません。
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五百九    在日米軍と原発の共通点(2011/5/7)
 原発について、政府や電力会社が唱えてきた安全神話が、詐欺まがいの神話であったことが明らかになりました。福島で進行している事態は想定外のことでなく、昔から指摘されてきたことです。たとえ明確な嘘であっても、政官学のお墨付きを得ると、神話として成立してしまいます。

 同じことが在日米軍にも言えます。在日米軍が日本を守るための存在でないのは昔から明白です。本来は日本軍解体に伴う占領軍です。やがて自衛隊が世界でも有数の戦力を備えた時期から、日米安保の内容も変質しました。アメリカの世界戦略における兵站を担う海外拠点としての位置づけになっています。そして日本は安保の取り決めによって、基地等の便宜を供する役割を担っています。

 一昨年から喧しい普天間移設問題に関して、政府関係者の口から上に書いたような内容が語られることはありませんでした。在沖海兵隊の存在意義が問われるや、米側関係者のみならず日本政府関係者からも、中台有事だの、中国の脅威だの、島嶼防衛だの、北の崩壊時の核制圧だのがPRされましたね。

 鳩山前総理の口からは、「在沖海兵隊の抑止力について、認識を新たにした」との痴呆じみた放言さえ聞けました。あげくに、「中国による尖閣諸島侵攻に対する抑止力として、海兵隊はなくてはならないものだ」などといった戯言を口にする専門家さえ登場しました。

 いうまでもなく、海兵隊の役割は先遣隊的な機動部隊です。先の大戦時のような敵前上陸任務は求められていません。紛争地への強襲を担い、米国人救出や拠点確保を図ります。決して正規軍相手に戦う部隊ではありません。
 在日米軍を語る際にも、原発と同様の神話が罷り通っているように感じられます。


 さて、原発の安全神話はすでに崩壊しました。菅総理は中部電力に対して、浜岡原発の停止を要請しました。津波対策が完了するまでの措置だそうです。物足りない要請ですが、これまでの原発政策からは想像もできない厳しい判断です。

 もう一方の在日米軍についても、ドラステックな展開が期待できそうです。NHKニュースから転載します。

 米元高官“嘉手納統合案検討を” 5月7日 14時17分
 沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題で、日米両国が目指す名護市辺野古への移転の見通しが立たないなか、オバマ政権の元高官は、基地機能を嘉手納基地に統合する案を改めて検討し、こう着状態を打開すべきだという考えを示しました。

 これは、去年秋まで国家安全保障担当補佐官を務めていたジェームズ・ジョーンズ氏が、5日、ワシントンを訪れている国民新党の下地幹事長ら与野党の議員3人との会談の中で述べたもので、下地幹事長らが記者会見で明らかにしました。
 それによりますと、ジョーンズ氏は会談の中で、普天間基地の移設問題について、「日米両政府が普天間基地を名護市辺野古に移設することに合意した時から計画が実現するとは思えなかった。私のもともとの考えは嘉手納基地に基地機能を統合する案だ」と述べました。そのうえで、ジョーンズ氏は、日米両国が目指す名護市辺野古への移転の見通しが立たないなか、この方針を推進してきたゲーツ国防長官が、この夏に退任するのを機に基地機能を嘉手納基地に統合する案を改めて検討し、こう着状態を打開すべきだという考えを示しました。


 ジョーンズ氏の提言は、現実的というか、これしかないだろう思われる内容です。仲井真知事は、辺野古移転忌避の公約で当選しましたから、埋め立てを許可することはあり得ません。また、グアムへの海兵隊基地建設もあり得ないでしょう。そもそも狭いグアムに展開するのは最初から無理だったのです。
 沖縄からの撤退を望むあまり、グアム住民に沖縄以上の苦痛を押しつける話でしたから、個人的にはグアム移転は反対でした。日本側が移転費を負担することも不愉快でしたし。

 嘉手納統合については、以前から何度も説明してきました。これが最も現実的な解であり、日本側関係者も本当は理解していることです。それがなぜ回り道をするのか。
 政治家連中の利権漁りが原因です。嘉手納統合だと、なんの旨みもありません。ところが、辺野古埋め立てだと、巨額の土木利権が生まれます。辺野古移転を最初に舵取りしたのは、故橋本元総理です。いかにも利権好きの趣きですね。

 原発といい、普天間問題といい、神話が通用しなくなったのは目出度いことです。今後は日本人一人ひとりが自分の責任で以って、ものごとを考えるようになればと希望します。
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五百八    I Will Always Love You 三題(2011/4/30)
 You Tube に登録されている音楽を聴いているうちに、“I Will Always Love You”を思い出しました。この曲の作者でもあるドリー・バートンのバージョンが当然アップされているであろうと検索したところ、ざくざく出てきました。

 まずはオリジナル・レコードをお聴きください。ぐっときちゃいますね。ホイットニー・ヒューストンの絶唱型と違い、実に切々とした歌に仕上げています。
 バート・レイノルズと共演した「テキサス一の赤いバラ」で、作中歌として使われており、映像と合わせて聴くと、この歌本来のイメージがよく理解できます。
 「別れゆくあなたに、すべての幸あらんことを」ってな意味でしょう。映画のシーンでは、哀切極まりない想いを訴えていますね。ヒューストンの絶唱は、ちょっと違うんじゃないかと思います。いえ、もちろんヒューストンのバージョンも好きですよ。

 もともとがカントリー・ミュージックなのですから、素朴な味わいが一番似合います。ですから個人的には、リンダ・ロンシュタットの淡々としたバージョンも好きです。リンダは後にロック色を強めますが、カントリー・シンガーとして出発しています。それだけに、ドリーのカバーはよくマッチしています。

 ドリー・バートンは1946年生まれだそうですから、すでに64歳のお婆ちゃんです。とても老人に見えません。未だにセクシーな女の趣があります。豊胸手術を行っているとかで、見事なバストです。唇にも手を入れているみたいです。ここまでの土木工事は、とても日本人には真似ができないでしょう。
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五百七    原発コストは電気料金で(2011/4/23)
 毎日jPに記者の目:「原子力ムラ」の閉鎖的体質のコラムが載っていました。記者の日野行介氏による署名記事です。記事がネットに掲載されているうちに、是非とも全文を読んでください。

 日野氏は東電や政府による責任回避の姿勢を指摘しています。

 東電や経済産業省原子力安全・保安院、内閣府原子力安全委員会の記者会見に何度も出席した。そこで強く疑問に感じたのは、「想定外の事態」や「未曽有の天災」という決まり文句を盾に、決して非を認めようとしない専門家たちの無反省ぶりだ。

 千年前の貞観津波を持ち出すまでもなく、宮城県や岩手県では明治と昭和にそれぞれ「三陸大津波」を経験しています。今回の平成大津波に匹敵する海抜38mの遡及高も記録されています。でありながら、福島原発の防波堤は5m級までの対応でした。これで“未曾有”なんてよく言えますね。

 ある地方テレビ局が数年前、原子力に批判的な研究者をドキュメンタリー番組で取り上げたところ、地元電力会社が「原子力を理解していない」と猛烈に抗議した。

 詳細をぼかしていますが、この件は有名です。関西電力が関西TVに対して行った、宣伝引き上げの示威行為のことです。京都大学の小出裕章氏は、以前から原発の問題点を指摘していました。その小出氏を対象にしたドキュメンタリを制作したのです。関西TVは宣伝費を失いながらも、関西電力の要求を拒否しました。

 記事の末尾は以下の文章で締められています。

 だが今回の事故で、放射能への不安から電力不足問題に至るまで、原子力が一人一人の生活に密接にかかわることが明白になった。もう無関心は許されない。

 ありきたりの文章ではありますが、大切なことだと思います。この文言を上っ面だけに止めないためには、国民一人一人がエネルギー政策に深い関心を寄せるべきです。

 そのために、電力料金を完全な受益者負担とすればいい。そうすれば、原発を拡大推進する、維持継続する、縮小のうえ火力に転換する、自然エネルギーに転換するなどの選択を消費者自身が他人ごとでなく、真剣に考察するようになるでしょう。少なくとも、電力会社が原発コストの積算根拠を非公開のまま、廉価であるとほざくような詐欺を許さなくなるでしょう。

 福島原発の廃炉処理は、5〜6号機まで含めたら、1兆円を超えるのではないでしょうか。しかも放射能汚染廃棄物の保管場所の目処さえ立っていません。また、使用済み燃料についても、六ヶ所村が稼動し始めたところで、処理量は発生量に追いつきません。ちなみに、六ヶ所村の処理施設建設には、すでに2兆円を超える資金が投入されています。それでも、本稼動にはいまだしです。

 災害補償は別にしても、今後発生するすべての原発関連費用は、電気料金に転嫁すべきです。原発を選択し、許容した以上、我々自身が贖わなければならないことです。
 現在稼働中の原発もまた、近い将来に同じく負担としてのしかかかってきます。馬鹿な選択をしたものですが、今さら愚痴っても仕方ありません。電力料金という負担を突きつけられない限り、我々の目も醒めないでしょう。
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百六     スター誕生と凋落(2011/4/15)
 先週のこと、WBCバンタム級暫定王者の長谷川穂積選手がメキシコのジョニー・ゴンザレス選手に敗れました。残念な気分も起こりません。負けるべくして負けた試合です。

 ジョニー・ゴンザレス選手は文句なしの強豪です。リーチが長い上、パンチもあります。そんな相手に今までどおりのスタイルで挑むなんて、ボクシングを舐めています。前回の試合でも気になったガードの甘さが致命傷となりました。この敗戦は仕方ないでしょう。

 ゴンザレスの長いストレートです。ご覧のように、ガードがまったく身についていません。きっと練習してさえいないのでしょう。

(C)日本TV


 フィニッシュは4R、身体を沈めて防御態勢を取りますが、右フックが顎を抉っています。グローブの位置を見てください。こんな大甘ガードでゴンザレスに勝つつもりでいたとは、勘違いもいいとこです。長谷川選手は根本的にスタイルを変えない限り、今後の見込みはありませんね。



 その一方で、日本人選手が快挙を為し遂げました。ジェームス・カークランド選手(WBOミドル級4位)の対戦相手に、WBAスーパー・ウェルター級4位の石田順裕選手が選ばれたのです。カークランド選手は、オスカー・デ・ラ・ホーヤ氏が経営するプロモーション期待のホープです。27戦全勝24KOという倒し屋です。

 石田選手にオファーがあったのは、わずか2週間前だったそうです。しかも下の階級ですから、あからさまな噛ませ犬として声がかかったわけです。
 しかし、舞台はラスベガスMGMホテル、HBOがPPV中継するという大舞台です。噛ませとはいえ、かつて日本人がこのような大舞台に立ったことがあるでしょうか。

 で、試合の方は、まさかの1RTKO勝利だったのです。
 相性が良かったですね。カークランド選手はラフというか、ガードを下げたままで左右のフックを振り回してきました。長身の石田選手は、ストレート系を内側から真っ直ぐ延ばすだけでクリーンヒットとなりました。

 最初のダウンシーンです。右左のコンビで、左ショート・ストレートをきれいに打ち抜いています。



 3度目のダウンでジョー・コルテスさんがストップしました。
 左フック、右ストレートのコンビで、顎を打ち抜いています。



 満面の笑みの勝利者インタビューです。インタビュアーはずい分失礼な質問をしています。それだけ衝撃的なTKOであり、意外な結果だったのです。
 「あなたはパンチがないのに、なんで3度もダウンを取れたのですか」



 リングサイドで、なぜかフィリピンのノニト・ドネアがカメラマン役を努めていました。石田選手とは知り合いみたいでした。



 試合前の選手紹介ではまったく無反応だった観客たちも、勝利者コールに熱狂的に応えてくれました。もはや石田順裕の名前は、アメリカで最も有名な日本人ボクサーとなりました。

 おかげで、あのセルヒオ・マルチネス選手から次戦の対戦相手としてオファーがきているそうです。さすがにマルチネス選手には歯が立ちませんが、けっこういいギャラを貰えることと思います。それほどアメリカのファンに印象づけたのです。石田選手のチャレンジ精神に栄光あれ。
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五百五    「海角七號」(2011/4/9)
 遅ればせながら、台湾映画「海角七號 君想う、国境の南」を観ました。これは傑作です。台湾映画史上で最高の興行収入を挙げたそうです。さすがにタイタニックには負けたみたいですけど。

 私自身、この1年間に観た映画のベスト3に挙げます。「アバター」「第9地区」に並ぶものです。ストーリーはアメリカ映画によくあるスタイルです。素人というか稚拙な人間たちが努力の甲斐あって、観衆(聴衆)に感動を与えるというものです。音楽やスポーツを舞台にたくさんありますね。

 「海角七號」が先達と違っているのは、サブタイトルにあるように、63年前の別離を現代に甦らせていることです。これがあるために、物語は重厚さと哀惜を帯び、観るものを惹きつけるのでしょう。

 光復後の台湾は、日本から国民党(外省人)に引き渡され、在留していた日本人は内地へと引き上げました。映画の冒頭シーンが下図です。青年教師が帰国の船で、残してきた教え子の娘に7通の手紙を書きます。しかし、青年は手紙を投函できず、死後に娘が台湾の「海角七號」の住所宛、手紙を書き送ります。この手紙は宛先不明のまま、郵便局に留め置かれていました。

 (C) ARS Film


 若者たちが台北へ出ていくため、寂れてしまった海辺の観光地が舞台です。主人公もまた、バンド活動の夢破れ、地元に帰ってきました。コネで郵便配達夫を始めた主人公の阿嘉は、宛先不明の手紙と出会いました。

 そのころ、ビーチのホテルが集客イベントとして日本人アーチスト(中孝介)を招き、コンサートの前座として、主人公たちに白羽の矢が立ちました。集められたメンバーは、主人公以外は素人ばかりです。



 寄せ集めの半素人達がドタバタを演じながらも、それぞれの人生と生活が語られながら、次第に結束を固めてゆきます。
 彼らをプロデュースするのは、売れない日本人モデルの女性で、もう一人の主人公である友子です。友子と阿嘉は喧嘩しながらもやがて距離を縮めてゆき、主人公が手元に置いていた宛先不明の手紙を読みました。阿嘉は日本語が読めなかったのですが、友子によって手紙の重要性が初めて理解されます。

 日本人アーチストを迎えてのコンサート当日、手紙は老婆の元に届けられました。

 そしてコンサートが開始されました。
 演奏中に阿嘉は、翌日帰国するという友子に求愛します。



 前座バンドは熱狂的に受け入れられ、アンコールに「野ばら」を歌います。メインの中孝介も飛び入りで一緒に歌います。「野ばら」を歌うというのも象徴的ですね。この曲は戦後の台湾で、日本統治時代の唱歌が禁止されたなか、シューベルトの曲であることから、唯一公式に認可されていたのです。映画館で観劇中のお年寄りたちは皆、このシーンで一緒に口ずさんでいたそうです。



 届けられた手紙を披く80歳の友子(主人公と同じ名前)。



 帰国する恋人を見送る63年前の友子。



 友子を見捨てる格好となった青年教師は、船べりから顔を僅かに覗かせ、恐るおそる友子を見つめます。
 ラストの「野ばら」をバックに、二人の過去が再現されます。



 見事な演出と展開です。アメリカ映画みたいにドラマティックな場面をつくらないし、日本映画みたいに湿った台詞回しもありません。教師と友子の過去の映像を、ほんの僅か淡々と流すだけです。それだけに胸に迫ります。
 久しぶりにいいものを見せていただきました。
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五百四    廃炉決定(2011/4/2)
 先週、東電の会長が1から4号機の廃炉に言及しました。また、明言を避けているものの、5、6号機の廃炉も決定的でしょう。

 原発の惨状が明らかになった時点で廃炉は避けられない状況でしたが、東電はなんとかならないかと足掻き続けてきました。電力会社にとって廃炉は予定外というか、あってはならなことだったのです。
 福島原発の1号機はGE製の炉で、当初の運転期間は10年ほどだったはずです。しかし、廃炉を嫌って30年ほど延長するためのやり替えを行いました。その際に配管など、炉に接する部分の工事が必要となります。被曝を恐れた日本側は、GEの技術者に無茶な作業をやらせたそうです。

 延命処置を行った1号機も寿命が近づきましたが、さらなる延長稼動を予定したことと思います。廃炉は電力会社にとってタブーだったのです。廃炉が決まれば解体しなければいけません。電力会社は解体について、これまでに内部検討を行っています。その結論が、不可だったのです。
 解体コストは建設コストの数倍かかると予想されました。また、放射線量の減衰には相当な長期間をかけないと、解体作業の際に作業員の安全が確保できないのです。

 解体しない、あるいはできない場合はといえば、石棺作業が必要になります。石棺といっても、石でなくコンクリートです。鉄板で原子炉建屋を覆い、内部をコンクリートで充填します。

 解体するのは、正式な廃炉手順を踏める場合です。格納容器が健在で冷却系が機能する場合、炉の放射線量が低下するまで、ひたすら炉に水を循環し続けます。燃料棒を安定させた上で取り出し、解体作業が可能なまで放射線量の減衰を待ちます。

 石棺作業は、炉の冷却機能が失われている際の最後の手段です。福島のケースでは破損した炉があり、高濃度の放射能汚染があるため、配管の修理が難しそうです。冷却機能を復帰できないと、石棺作業も止むなしです。
 どちらを選択するかは、今後の経過を見守らないと分かりません。どちらにしても、大変なコストがかかる話です。原発による電力コストが安いという大嘘が明らかにされます。これまで電力会社は、廃炉のコストを無視していました。原発反対の声が大きいことから、原発促進のため、ネガティブな面を隠してきたのです。それにしても、廃炉に触れずによくもまあ原発電力は安いなどと言えたものです。

 現在稼動している50いくつかの炉は、いずれすべて廃炉の時期がきます。そのすべてについて、運転停止後も数十年間にわたって維持管理コストを払い続けなければならないのです。
 この嘘については、原子力委員会トップ、保安院トップ、電力会社トップは全員なんらかの責任を取るべきです。個人的には、刑務所に入れてもいいんじゃないかと思っています。
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五百参    原発と電力危機(2011/3/26)
 ついに死者・行方不明者数が2万7千名を超えました。それ以外の被災者数も巨大で、被災者支援を行う傍ら、復旧活動も急ピッチです。幹線道路の通行確保・破損修理も順調です。被災地の倒壊家屋、土砂除去も少しずつ進捗しています。

 現在進行中の災害といえば福島原発です。通電はすでに確保でき、計器類や制御機器類のチェックや修理が行われているのでしょう。また、冷却系の機器修理と電気回路、あるいは配管関係の循環チェックも実施中でしょう。なにぶん放射能線量が高いとあって、腰を据えた対応は無理でしょうから、時間がかかることと思います。

 冷却系の機能復帰は必須です。これが動作しないと、いつまで経っても事態は好転しません。この件に関する見通しはあまり明るくありません。昨日から放水を海水から真水に切り替え、米軍も協力しています。しかし、大量に必要なことから、十分に供給できるか難しいでしょうね。
 すでに大量の海水を高温下に使用しているので、塩が各所で固化していると考えられます。強固に固まった塩を除去するには、鋭利な刃物で個別に作業しなければならず、放射能被害を避けながらの作業では効率も悪いでしょう。この点もまた復旧を妨げる要因であり、時間がかかることと思われます。


 東電管内の発電量が縮小していることから、節電を呼びかけたり、停電での対応を行っていますね。東電は休眠中の火力発電所を再開させ、発電量を引き上げる予定です。
 いいんじゃないでしょうか。日本は原発に頼りすぎです。狭い国土に稠密な居住環境で、原発50以上とかは自殺行為です。特に北陸方面の原発数16基とかは異常です。原発が近接しているため、一基でも放射能漏れが起きて拡散すれば、すべてから保守要員が退避しなければいけません。怖い話です。

 火力発電の欠点は大気汚染ですが、コストをかければ緩和できます。当地には火力発電所があり、長いつき合いです。昭和47年頃からだったか、光化学スモッグが問題視され、NOx低減のために燃焼温度を下げるようになりました。つまり燃えにくくするわけです。おかげでCO、HC、煤煙が増えました。発電所に近づくと煤の臭いが鼻をつきました。でも今はほとんど臭いません。多分、アンモニア投与による脱硝処理、煤煙集塵機、脱硫処理などの環境対策が進んだためだと思われます。

 また、東西での周波数変換による電力融通も拡大するみたいですね。それでも今年の夏の電力ピークを賄うには足らず、東電管内で生活していう方々には厳しい夏となりそうです。天に心があるなら、どうか冷夏を招いてください。
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五百弐    東日本大震災と原発危機(2011/3/19)
 今回の地震と津波被害による死者は7千名を超え、行方不明者を含めると2万人にも及びそうです。阪神淡路大震災をはるかに超える人災となりました。先週時点での情報からは、まさかここまで罹災しているとは思いませんでした。

 交通が寸断され、送電が各所で絶たれ、燃料が尽きた状況の中、福島原発が危機的状況にあります。制御棒が挿入されているので臨界暴走はないものの、冷却系がすべて動作しないため、燃料への放水が必要な状況となっています。

 東電は通電作業を実施中ですが、通電しても冷却系統が動作するかは疑問です。爆発で配管が破損している可能性が高いし、海水の放水によって各所で塩が固化して送水の妨げになりそうです。
 冷却系統が動作しないようであれば、ひたすら放水を継続しなきゃならないでしょう。現地は被曝レベルが高いので、冷却系統の修理もままならないでしょうし、新たな送水管敷設作業も難しいでしょう。


 いずれにしても福島原発の放棄は確定です。問題はどんな廃棄手法を採るかです。
 冷却系が復帰すれば、燃料棒を何年もかけて安定させ、取り出したうえで廃炉にできます。廃炉といっても直ちに放棄できるものではありません。炉は高濃度に汚染されていますから、安全なレベルまで減衰するまでひたすら運転を続けなければいけません。発電時と同じように定期点検も必要でしょうし、劣化部品の交換も必要でしょう。廃炉としての稼動要求期間を300年とする説もあります。
 もちろん、国にしろ電力会社にしろ、廃炉の手法について公式に説明したことなどありません。原発の発電コストが化石燃料に比べて安いと主張するため、廃炉に触れるのはタブーだったのです。でも、もう嘘は通用しません。福島原発の廃棄は避けられませんから。

 あるいは、炉を解体するすることは可能なのでしょうか。電力会社は解体について、何度も検討しています。結論は不可能というものです。建設コスト以上どころか、数倍のコストがかかると予想しています。しかも、解体作業には現場作業員の深刻な放射能汚染が伴います。
 イギリスやロシアでも、廃炉のメンテを長く続け、未だに管理運転の終了が見込めていません。

 また、冷却機能を回復できない場合はどうすればいいのでしょうか。私も見当がつきません。多分、鉄棺で施設を覆い、コンクリートを充填し、周辺地域を広く立ち入り禁止にするかと想像します。


 原発に関して、今まで国や電力会社が説明してきた内容は欺瞞に満ちています。それも昨日までです。今後の展開を厳しく注視すべきです。そして、嘘で固めた原子力政策には、はっきりNOを突きつけましょう。
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五百壱    東北地方太平洋沖地震と原発危機(2011/3/12)
 お亡くなりになった方々、被災した方々、救援・復旧に尽力なされている方々、すべての方々に弔意と敬意を表します。

 阪神淡路に比べると、人的損害は少ないものの、物的損害は比較にならないくらい巨大です。起こってしまったことは悔やまれるにしろ、もはや取り返しがつきません。これ以上は被害が拡大しないことを願っています。


 問題は福島原発の炉心溶解です。どうやら、水素爆発が起こって外壁が吹っ飛んだみたいですね。放射能拡散の事態が迫ってきたのではないでしょうか。

 まさかチェルノブイリの二の舞はないでしょうが、スリーマイル程度の事態が進行している懸念はあります。なにせ、原子力保安院の説明なんか信用できません。原発に対する反発を大きくしないよう、情報操作くらい平気でやりますよ。セシウムが漏れているのに、格納容器に問題はないなんて誰が信じますかってんだ。


 原子力発電推進者が常々口にしていた安全性に対する配慮、つまり多重フューエルセーフというかフォールトトレラントがいいかげんであったと証明されたわけです。それも、津波による激甚災害に加えての実地証明です。もう、電力会社の言うことなんか信じないようにしましょう。

 昨夜は午前様でTVを見続け、今日もずっとTVをつけっぱなしにしていました。明日も救援や復旧作業を見守り続ける予定です。なんか、知らん顔をするのが心苦しいのです。
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