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千      せっかくのキリに日本国の劣化を見せつけられる(2021/3/9)
九百九拾九  大作延期中は韓国映画で(2021/2/27)
九百九拾八  関係各界の信じられない劣化ぶり(2021/2/20)
九百九拾七  地方のアートシーン(2021/2/13)
九百九拾六  最近の世相(2021/2/6)
九百九拾五  人種差別にもカーストがある(2021/1/31)
九百九拾四  習指導部は始皇帝に学んでいるのか(2021/1/24)
九百九拾参  『石ノ森章太郎コレクション』刊行(2021/1/17)
九百九拾弐  五輪の行方(2021/1/10)
九百九拾壱  今年最大の課題は言わずと(2021/1/2)
九百九拾   電気ポットの寿命は(2020/12/26)
九百八拾九  二人の中谷選手が快挙(2020/12/20)
九百八拾八  劇場版『鬼滅の刃』見ました(2020/12/12)
九百八拾七  柄糸の巻き直し再度(2020/12/5)
九百八拾六  対コロナの進歩(2020/11/28)
九百八拾五  コア復活(2020/11/21)
九百八拾四  PFPトップはテレンス・クロフォードで決まり(2020/11/15)
九百八拾参  Go Toで「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020/11/7)
九百八拾弐  井上選手ラスベガス初登場(2020/11/1)
九百八拾壱  コアが認識されない(2020/10/24)


千      せっかくのキリに日本国の劣化を見せつけられる(2021/3/9)
 サイトを作ってはや20年目に突入しています。毎週のコラムとあって、千回目にも届きました。次回からは、新たに第一回目として整理することにします。
 個人的にめでたいタイミングなんですが、政府の中からは腹立たしいことばかり聞こえてきます。先々週にもキャンプに係る信じ難い話を書いたばかりです。キャンパーの件は低級な話で終わることながら、政府と政策に係ることとなると簡単に済ませられません。

 まず、総務省幹部たちの収賄が常態化していた問題です。東北新社の衛星チャンネル権とか持株比率の違法な取扱いとか、もろに職務権限に関係しているんですね。高額接待を受けるのは、刑事犯罪との認識がないというどうしようもなさ。

 山田真貴子内閣広報官は、「飲み会も断らない。断る人は2度と誘われません。私自身、飲み会を絶対に断らない女としてやってきました」との考えを開陳していましたが、基本的な公務員規範から逸脱しています。仕事の幅を広げるためにつき合いを広げるのは結構なことです。しかし、肝心な点が抜け落ちているんです。職務に係る関係者との会食を断つことと、飲み食いは自腹であることです。この二点をないがしろにして、なにを意気っているんだと全国の公務員が突っ込んだことでしょう。

 そのような空気を醸成した第一戦犯、これは言うまでもなく菅首相です。官僚たちを人事権で縛り、恣意的な政策を強行するスタイルこそが問題です。これは逆説的に言うと、首相の意向に沿う方向であれば、自分たちは安泰だと勘違いを深めてしまいます。もちろん、そんなの許される話じゃありません。
 まして、その東北新社の担当が菅首相の息子ってんですから空いた口が塞がりません。息子は別人格とか言い訳する前に、まずは遠ざけよです。韓国の政権幹部たちの係累が利権に群がる構図を嘲笑えませんよ。

 加えて、東北新社以外からの違法接待はなかったと答えていた谷脇康彦総務審議官らが、NTTからも高額接待を受けていたのが明るみになりました。もう、なにをかいわんやです。こういう屑は成仏させなきゃ駄目ですよ。

 高級官僚たちのモラルハザードがあからさまになり、日本国民全般が政府の劣化ぶりを怒りとともに哀しく見つめています。それと時期を同じくして、自民党有力者たちもまたとんでもない劣化を見せつけてくれました。

 中国が武器使用の権限を定めた海警法を施行したことを受け、自民党の先生たちが低脳ともいうべき発言で日本の国益を損ねてくれました。
 先月25日の日本經濟新聞から引用します。

 自民党国防部会・安全保障調査会の合同会議で、外国公船が沖縄県・尖閣諸島への上陸を強行すれば、凶悪犯罪と認定して武器使用により相手の抵抗を抑える「危害射撃」が可能になる場合があるとの見解を示した。警察官職務執行法に基づく警察権の行使と位置付けた。中国海警局による領海侵入を念頭に、抑止力強化を狙ったとみられるが、尖閣を巡る日中対立がエスカレートする懸念も強まりそうだ。
 出席議員によると、外国公船の上陸強行を阻止するための危害射撃に政府が言及するのは極めて異例という。


 これは、あくまで内部検討なのです。検討段階ではあらゆる想定事項について検討するでしょう。中には適切でない内容であっても、念を入れて確認しもするでしょう。それを一緒くたにして、外で喋ったのが今回の議員さんたちです。愚かとしか言いようがありません。受けのよさそうなことを世間に向かってアピールし、自身のイメージアップを狙ったものでしょう。

 国防外交に係ることは、内部検討事項を外に知られてはいけないのです。中国が海警法を制定するに当たって、内部検討事項を発信しましたか。日本を相手取る際、あらゆる事態への対応を想定しているはずです。そのときどきでの打つ手をベラベラ喋ってくれますか。そういうのは極秘事項ですから。

 上のような国会議員の存在は百害あって一利なしです。警察権の範囲と対応は、国際法上の法規と前例に則らなければいけません。景気のいい「危害射撃」をアピールする話ではありません。むしろ、中国を利する結果になりかねません。
 まずは、内部検討段階のあれこれを外部に漏らすことなきよう身を処していただきたいです。それができず、堂々とSNSで発信する馬鹿がいるんです。日本国の劣化極まれりです。
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九百九拾九  大作延期中は韓国映画で(2021/2/27)
 ハリウッドがコロナ禍で青息吐息の模様です。感染対策として、制作現場に厳しいガイドラインが課されているそうです。
 よくあるゾーニング対策や衛生用品の導入だけでなく、衛生管理部門を設置し、ライセンスを持った衛生部員を雇わなければならないそうです。また、アメリカらしいのは、感染が生じた際の補償に備えての保険契約が必須なことです。当然のこと、それらはすべて制作費に食い込むこととなり、特にインディーズのプロダクションを苦しめることとなっています。制作を諦めたケースも多いそうです。

 同時に、映画館が閉鎖されているため、巨額のチケット料金回収を要する大作は、公開が延期されたままになっています。日本でメガヒットとなっている『鬼滅の刃 無限列車編』も公開できない状態ですね。

 世界中でロックダウンが実施され、オンライン講義やリモートワークが行われていることから、Netflix や U-NEXTなどの配信が隆盛となっています。私もU-NEXTに体験入会し、無料のうちに観たい映画を観てすぐに退会しました。

 私のメインはWOWOWです。放映後にネットで長期配信してくれるので、もっぱらそちらを利用しています。昨年から韓国映画がたくさん放映され、それらを暇なときに鑑賞しています。
 韓国映画の隆盛ぶりは本物です。かつて50年代から70年代にかけて、日本映画も世界レベルで評価されました。それが今や哀しいまでの凋落ぶりです。全盛期においては、各映画会社それぞれにチームがあって、年間を通じて制作スケジュールがびっしり詰まっていました。俳優陣にしろ制作スタッフにしろ、ハイレベルな職人がずらりと揃っていました。絶え間ない仕事あってこそ、彼らのスキルも維持されていたわけで、その体制もはるか過去に失われました。一方で、今の日本にはアニメ制作というハイレベルな世界が存在しています。

 そのような映画づくりの体制が、今の韓国には存在しています。俳優も優れていますし、スタッフの映像スキルも一流です。もはや日本は追いつけませんよ。

 昨年は、『新感染 ファイナル・エクスプレス』『王宮の夜鬼』『神と共に 第一章:罪と罰』『神と共に 第二章:因と縁』などで楽しませていただきました。『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観たとき、ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』より、完全に勝ってるなとか思いました。

 今年に入って、『殺人の追憶』『エクストリーム・ジョブ』『完璧な他人』『無垢なる証人』などを堪能したところです。

 『殺人の追憶』はヘビーな展開と映像で、演技も文句なしの秀逸さで、これに対抗できる日本映画となると、黒澤を引っ張り出さないと敵わないでしょう。

 『エクストリーム・ジョブ』は、香港の周星馳を髣髴させてくれました。展開とか演出が、周星馳テイストなんですね。私、周星馳ファンなんです。

 『完璧な他人』はイタリア映画のリメイクながら、日本人にとってはこちらの方が迫るものがあるでしょう。仕事、生活や家庭のスタイルが近いだけに、身近なものに感じられるんです。密室劇みたく、ほぼ新築家庭のリビングだけを舞台にして進行します。スマホをその場で完全オープンにすると、なにが起きるかという状況ドラマです。

 『無垢なる証人』は、法廷劇に自閉症の証人を持ち込むというアイデアです。15歳の自閉症少女を演じた方、素晴らしい演技でした。殺人事件の弁護に挑む弁護士が主人公ながら、この少女がスクリーンを圧していました。

 次は『幼い依頼人』を観る予定です。実際にあった凄惨な児童虐待死亡事件を元にしているそうで、今から楽しみです。
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九百九拾八  関係各界の信じられない劣化ぶり(2021/2/20)
 You Tuber の馬鹿さ加減は今さらなんですけど、それぞれの分野で活躍し、メディアで名を売ってる人間までもが、素人 You Tuber のお馬鹿発信に手を貸してしまいました。

 日産のキャンプ女子コラボ企画が「絶対NGな焚き火」方法をPRしてしまう

 日産キャンプ記事に「危険」「山火事になる」 落ち葉の上でたき火...掲載サイト「安全配慮が不足」と謝罪

 下段のJcast ニュースの方を引用します。

 記事は1月28日、「新型キックスとキャンプ女子のマイキャンさんと、初めての"冬キャン"にチャレンジしてみた」とのタイトルで公開された。
 日産の小型スポーツ用多目的車(SUV)「キックス」の宣伝の一環で、ユーチューバーのマイキャンさん、自動車評論家のまるも亜希子さん、カービューのスタッフの3人が、冬のキャンプを楽しむという内容だ。
 企画は、キャンプ場内の落ち葉が大量に積もった一角で行われた。"キャンプ女子"を名乗るマイキャンさんの指導のもと、薪割り、火起こし、アヒージョの調理に挑戦し、キャンプの模様を文章と動画で紹介した。


 記事が掲載されてすぐに批判が集中し、元記事が削除されました。このタイアップ記事が炎上するのも当然です。まるで山火事を推奨するかのような“現場猫”案件です。さすがにこれは、いくら批判されてもし足りないでしょう。
 時節柄乾燥して積もった落葉の上で焚火をするという、ほぼ放火に近い案件です。山遊びであろうが山仕事であろうが、山で火を扱う危険性を無視した暴挙を前に、誰もが黙っていられないでしょう。煙草の吸殻で山火事が起こるなんて世界の常識ですしね。

 こういう間違いを起こすのは、共感性不足のパーソナリティ由来でしょう。落葉と火の粉が頭の中で結びつかない鈍感さがそれです。普通の人間には理解できない話なんですけど、当人たちにとっては「なんで?」なのでしょう。

 しかし、私が不思議なのは日産側担当者の無知ぶりです。エクゾースト周り―特に触媒周辺への可燃物接近がいかに危険かは、車に係っている人間なら常識です。メーカーは昔から、枯草など可燃物の上に駐車しないよう注意喚起しています。ところが、うず高く積もった落葉の上に駐車してるんですね。今頃、日産内部でも問題になっているんじゃないでしょうか。

 排ガス(昭和)50年規制に適合するため、国内販売自動車は触媒を付加し始めました。ときを同じくして、車の火災事故が起こり始めました。触媒が加熱されて高温になるため、枯れ草などの上に駐車すると、下草が燃える惧れがあったのです。以後、車の取り扱い説明書のどこかに「下草などの上に駐車しないでください。火災の惧れがあります」とか、必ず記載されているはずです。

 キャンプ記事のメンバーに自動車評論家のまるも亜希子氏が加わっていたのですね。氏は某誌で見かけますけど、今回の件で仕事を失くすかもしれません。落葉の上に駐車する危険性に気づかない自動車評論家というのがあり得ないんです。以後はなにを書いても説得力がありません。

 お気の毒ですけど、やらかした内容が内容だけに仕方ないかと思います。今回のキャンプ記事批判は、もっぱら焚火に集中しています。しかし、車を山林に持ち込んで落葉の上に停める行為もまた危険度マックスです。これじゃあ新車PRどころか、メーカーの見識が疑われます。
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九百九拾七  地方のアートシーン(2021/2/13)
 コロナ禍によって、美術展も低調気味です。国立西洋美術館は未だ閉鎖中ですしね。その他の美術館や博物館は、入館制限などに配慮しながらも活動を続けています。都会の有名どころは、どうしても人が多いので事前予約による調整を行っています。さすがに地方は入館希望者が少ないので、今は平常運転に戻っています。

 問題は展示内容です。有名どころ施設の活動が低調なうえ、海外との行き来も難しいので、独自色で対応しています。そんな中、西日本の美術館が年初から頑張りを見せてくれています。
 次の三つの美術展が同時期に重なったので、今週のこと勇躍訪ねました。
 
 まずは、ひろしま美術館<とっておきの日本画>と西洋絵画 です。他所から借りたりの企画が難しいのでしょう。所蔵コレクションの逸品をまとめて展示してくれています。
 竹内栖鳳と前田青邨を展示しているとのことで、逃すわけにはいきません。この両者、私ファンなんです。下図は前田青邨の「紅白梅」屏風です。見事なものです。



 広島銀行が設立した美術館だそうで、作品撮影はご自由にと太っ腹でした。


 次に、岡山シティミュージアムで開催中の ホキ美術館名品展 を訪ねました。
 テレビせとうちが主催に加わっているので、TVで宣伝されていて知りました。岡山駅の隣という好立地なので迷いはありません。ホキ美術館は典型的な写実絵画を収集していて、現代日本の写実絵画の殿堂ともなっています。しかし、作品撮影が禁止されているのは残念です。順路最後に展示されている「森に還る」のみが撮影OKだったので、しっかり撮っておきました。



 70年前後のアメリカで流行した“スーパー・リアリズム”の系譜です。ありきたりな風景、人物、静物などを写真かと見まがうほどリアルに表現し、その潮流が一世を風靡しました。今回の作品はいずれも薄塗りで何重にも重ねて仕上げています。正直言って、こういうのは一度観ればもう充分です。


 最後に訪ねたのは、岡山県立美術館雪舟と玉堂―ふたりの里帰り です。当日は前期展の初日で、雪舟の国宝4点、重文6点で、田舎には珍しく力が入ってました。
 雪舟の国宝作品については、4年前に京都国立博物館で開催された国宝展で堪能済みです。今回は未見の重文作品を鑑賞できて幸せでした。岡山県立美術館もずい分と気張ったものです。ちなみに、雪村の屏風も素晴らしかったです。しかも、岡山県立美術館所蔵だそうで、やるじゃんとか思いました。

 ただね、私ってお馬鹿さんというか粗忽者なんです。タイトルを見て、内容も読まず、勝手に玉堂=河合玉堂と勘違いしていたんです。玉堂の名品を鑑賞するには、東京の玉堂美術館まで足を運ばなければいけません。それが、ついに岡山に来るのかと勝手に期待していました。
 順路に従って雪舟を鑑賞した後、続く展示が河合ならぬ浦上玉堂だったのです。自分の馬鹿さ加減に呆れましたわ。誰にも文句を言えません。勘違いした私が馬鹿なだけです。

 駆け足で3か所の美術館を回ったものだから、足が棒のようになって未だ回復していません。寄る年波から逃れられないというか、身体の鈍り具合が老人レベルなんです。

 移動は楽勝でした。新幹線は例によってガラガラで、指定席を押さえる必要がありません。3座と2座の並びながら、3座には誰も座っていませんでした。2座の方だけ、列を空けながら一人ずつ座って、なお空きがあるくらいでした。
 JRもお気の毒です。いいかげん、経済を回すように方向転換すべきです。ところが、TVに出演する有識者というのが、いずれも医療関係者ばかりで、肝心の疫学というかウィルス学者がいません。疫学の専門家は、医療関係者とは異なった知見を披瀝しています。マスコミは専ら危機感を煽る方向で番組を構成するので、本当の専門家の声を届けてくれません。
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九百九拾六  最近の世相(2021/2/6)
 2月3日の東洋経済オンラインの記事「実験で新事実「ウレタンマスク」の本当のヤバさ」を紹介します。こういう実証主義的な医師には敬意を払いたいです。

 国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一医師へのインタビュー記事です。この先生の仰っていることって、前からそうだろうなと思ってたことばかりです。

「使ったマスクを触らないように」というのは都市伝説です。
「ドアノブに触るな」などというけれど、ドアノブで感染している証拠も出てきてはいません。気になるなら消毒すればいいですが、学校などで椅子などをあんなに拭く必要もありません。


 マスクを触るなとか、散々っぱら聞かされましたが、私は無視して触っていました。西村先生の云うように、大勢に影響なかろうと思っていましたもの。もちろん、医療従事者、介護施設やら食品を扱う関係者には、徹底して適用すべきポイントだとは思いますよ。でも、一市民たる田舎のオッサンには、まず以って関係ないでしょう。

 また、学校や映画館などのホール施設が繰り返し拭いているニュースに触れ、余計な手間暇で大変だろうと気の毒に見ていました。食堂のテーブルを拭くのは意味があるでしょう。こぼした食べ物を口に運ぶこともありましょうから。でもね、一般施設の手すりなんかどうでもいじゃないですか。余計な手間暇を強いて、ただでさえ営業利益を圧迫している事業者に対して、さらでだに負担を強いることとなります。誰かが緩めることを主張すればいいのですけど、メディアは危険性を煽るスタンスでしか報じません。

 本論であるマスクの材質による遮蔽性能の差は驚くべきものがあります。理研やどこかの大学が発表した実験結果より、不織布と布、あるいは布とウレタンの差が大きいんですね。他所の実験では、それぞれの差が小さくて材質の差に目くじらを立てるほどのものでないと思わされます。しかし、西村先生の実験結果を知ると、不織布以外を使う気になりませんし、特にウレタンはエアロゾルに無力であるのが実感できます。

 私は買い溜めしていた簡易防塵マスクのDS1仕様を利用しています。高性能なDS2仕様が望ましいものの、長い間商品棚から消えていて、先々月にやっとDIYショップに入荷していました。狂喜し、すかさず購入しました。DS1タイプを使い切ったら、待望のDS2に移行します。


 2月4日の読売新聞オンラインの記事「ダイムラーが「メルセデス・ベンツ」に社名変更へ…トラック部門を分離」です。

 ダイムラーのここのところの動きはウォッチしていたので、これは解説できます。今の社長が、悪化した経営内容を好転させるため、分社化と外注(子会社へ)をドラステックに進めているんです。

 BMWがディーゼルエンジンを子会社に外注しているのに倣って、内燃エンジンを中国の会社で生産するそうです。その中国の会社というのが、ダイムラーの筆頭株主なんですね。外注することによって、売り上げが落ちた際に本社のダメージを最小にできます。子会社側は従業員のリストラなどで地獄を見るでしょうけど。

 併せてトラック部門を別会社とし、本社はEV開発に特化する方針だそうです。ダイムラーはこれまでも、HVで失敗し、EVでも大失敗と電動化に後れを取ってきた経緯から、全面的な方向転換が必要となったものと考えられます。保守的なダイムラーがここまでドラステックな転換をしたのは、よほど危機感が半端なかったのでしょう。
 このような従来であれば考えられないような変革は、今後、日本メーカーも向き合わなければならないでしょう。決して他人ごとでないと思います。
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九百九拾五  人種差別にもカーストがある(2021/1/31)
 この刺激的なタイトルは、一昨日の GuardianToday の「ノーベル平和賞にノミネートされたブラック・ライヴズ・マター運動」を目にしたためです。
 ブラック・ライヴズ・マター運動―いわゆるBLM運動が、2021年ノーベル平和賞にノミネートされたことを報じた記事です。
 平和賞を選考するのはノルウェーのノーベル委員会で、ノミネートを発出できるのは全国レベルで奉仕しているノルウェーの政治家だそうです。
 BLM運動をノミネートに指名したのは、ノルウェーの国会議員ペッター・エイデ氏だそうです。記事はその指名論文から引用し、その功績と意義とを讃えています。そのポイントを引用します。

「この運動により、米国外の国々が自国の社会の中で人種差別に取り組むことを余儀なくされた」
「私たちがアメリカだけでなくヨーロッパやアジアでも見た重要な課題の1つは、不平等に基づく紛争の増加です」
「彼らは、人種的不公正についての世界的な認識と意識を高めることに大きな成果を上げてきました」
「人種的不公正に対する最強の世界的勢力として、ブラック・ライヴズ・マターに平和賞を授与することは、平和は平等、連帯、人権に基づいており、すべての国がこれらの基本原則を尊重しなければならないという強力なメッセージを送ります」


 この記事を読んで不快感に囚われたものだから、思うところを述べてみます。

 BLM運動は2013年に黒人を撃った警官が無罪判決を受けたことにより開始された運動で、その後も続いた黒人の死をめぐる抗議で広く認知されました。そして、昨年のジョージ・フロイドとブレオナ・テイラーの死によってアメリカに留まらず世界的な抗議へと拡散しました。

 日本では小さな市民運動ですが、イギリスやフランスなどEUでは社会運動として深化しました。しかし、アメリカはもとよりEUでの運動が偏ったものでないかとの疑問を持ちました。

 昨年のコロナ禍で峻烈な(東)アジア人差別が生起しました。日本では断片的に報じられただけですが、その実態は凄まじいものがありました。YouTube でも東アジア人と思しき青年が、なんの脈絡もなく暴力を振るわれる動画を見ました。

 幸いなことに日本人が被害に遭った話は聞きませんが、中国人やベトナム人が大変な目に遭っています。街中でいきなりコロナ保有者と決めつけられ、暴行を受ける事件が多発しました。あるいは、暴行にまで至らなかったものの、唾を吐きかけられるなどの侮辱行為も多かったそうです。
 ロンドン警察のデータでは、昨年2月に64件の人種差別的犯罪が発生したそうです。イギリス鉄道警察は、昨年1月から3月までに42件を報告しています。これは前年比で4倍だそうです。しかも、中国系住民は被害を届け出ないのが一般的なので、実数ははるかに多いだろうとされています。また、Web 上での人種差別を監視しているアメリカの反差別団体が、東アジア系に対する嫌がらせが急増したと述べています。
 
 BLM運動体は、このような東アジア系に対する危機的状況を、まるでなかったことのように無視しました。そんなBLM運動に対して、ノーベル平和賞へ推薦するのが適切だと納得できますか。
「彼らは、人種的不公正についての世界的な認識と意識を高めることに大きな成果を上げてきました」
 とんだ嘘っぱちでしょう。

 国連専門機関での勤務経験がある谷本真由美氏の著書『世界のニュースを日本人は何も知らない』(ワニブックス|PLUS|新書1,2)を読むと、その矛盾に対する厳しい指摘が為されています。著書中において、谷本氏は「人種差別にもカーストがある」と、象徴的なワードで表しています。

 世界を覆う価値観は、欧米によってつくられるんだなあと、つくづく思い知らされます。ありふれた感懐ですけど。
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九百九拾四  習指導部は始皇帝に学んでいるのか(2021/1/24)
 先週の産経新聞ニュース「中国、始皇帝ドラマが物議、「暴君礼賛」に懸念の声」です。

 武漢大学の歴史学者、馮天瑜教授は文章で「比類ない暴君を政治的高みに押し上げた」と批判。「人民による政治は君主統治より強い」と、専制君主による集権政治の美化に警鐘を鳴らした。

 この教授の言は、美辞としてはそのとおりです。しかし、現実問題として、そのような美辞で中国が上手くいくものでしょうか。聞こえてくる拝金主義は凄まじいものです。他人の迷惑を省みず、ひたすら己の利益を追及するメンタリティが伝えられるばかりです。食品を例に採れば、衛生も糞もなく、他人の安全や健康など気にも留めていません。

 日中国交回復後、現地を訪ねた日本人が中国人の清潔な生きざまに感心した事案が伝えられました。例えば、私物を落としたところ、ホテルに届けられたとかの話です。今の中国とは別世界の感があります。その当時の世相というと、文化大革命の余波に覆われて窮屈な指導下にあったためと考えられます。地方の小さな村単位にまで共産党の監視が及び、さてこそ実現していた行動原理です。

 まして、紀元前の始皇帝時代を描くに、今日の民権意識で語ってもそぐわないと思います。少なくとも、始皇帝の功績というのは、中国史においても他を圧するものです。

 大規模な水利工事による治水事業、郡県制度による中央集権体制、諡名法の廃止、秦の小篆書体への統一、各地の度量衡の差異を統一(標準量器)、同軌による車輪の幅の統一(道路の統一)、いずれも紀元前において、すでに近代化に取り組んだとさえいえる偉大な功績です。

 始皇帝の治世は、中国の発展に大きく寄与したものと評価して間違いありません。ただ、焚書だけは残念です。焚書で失われた記録と事跡がでかすぎます。一方で、厳罰を伴う法治が下々にまで行き渡ることによって、逆に失期法皆斬ということで強大な秦が滅んだのも皮肉な話です。

 習近平指導部による集権を正当化する狙いではないかと懸念する人もいる。

 習指導部の立場に立てば、この中国を治めるには「人民による政治は君主政治より強い」などと簡単に言えないでしょう。この件は、昔から中国治世を語る際の大きなテーマです。
 大学時代、漢文の講座を趣味で受講しました。先生が自前のテキストで準備した講義のテーマは「孟子と韓非子」でした。孟子の王道と韓非子の覇道を対比することによって、典型的な統治思想への理解を深める講座でした。

 今不知治者必曰。得民之心。欲得民之心。而可以為治。則是伊尹管仲無所用也。

 『韓非子』の「顕学編」です。今、治を知らざる者、必ず曰く、民の心を得よ。民の心を得むと欲し、而して以て治を為す可し、と。則ち是れ伊尹管仲も用ふる所無きなり。

 伊尹は殷の湯王を輔けて建国に功績のあった大宰相です。管仲は言うまでもなく、斉の桓公を輔けて春秋五覇の初代覇者に押し上げた宰相です。この両者も用いなかった政治手法であるとしています。

 為政而期適民。皆亂之端。未可與為治也。

 政を為して民に適うを期するは、皆、乱の端なり。未だ与に治を為す可からざるなり。

 正直、中国国民の金のためならなにをやってもいい式の現実を見ていると、孟子流の王道が役立つと思えません。国家運営の大任に思いを致せば、韓非子流の手法を採るのも已むなしです。性善説あるいは性悪説に立つかの違いでもあります。
 習指導部が始皇帝治世に倣うのも仕方ないでしょう。ただ、周りは迷惑だし、民族弾圧などは許されるものでありませんけど。
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九百九拾参  『石ノ森章太郎コレクション』刊行(2021/1/17)
 先日のこと、行きつけの本屋でちくま文庫の『石ノ森章太郎コレクション』を見かけたものだから、懐かしさから購入しました。その第一弾の「初期少女漫画傑作選」です。なお、第2弾が「ファンタージー編」、第3弾が「SF編」の全3巻です。文庫版なので、判型が小さいのは残念ですが、安いので惜しくありません。

 石森氏は昭和30年頃にデビューし、もっぱら少女漫画誌での連載で漫画家生活をスタートさせています。ちばてつや氏や赤塚不二夫氏も同様で、漫画に取り組む初期キャリアを少女漫画で磨いたんですね。

 その辺りの事情はトキワ荘関係者の自叙伝類に詳述されているし、なんといっても石森氏の名著『マンガ家入門(正続)』に例示された短編に表れています。「龍神沼」と「夜は千の目をもっている」がそれです。
 「龍神沼」は伝奇もので、短いなかに田舎の因習、さらにはオカルトまでが詰め込まれています。加えて、全編を少年少女の恋心で染めるというテクニカルな構成です。また、「夜は千の目をもっている」はSFでもオカルトでもなく、戦争の記憶を現代にまで引きずった悲劇を家族愛に昇華させています。
 小学生時分、『マンガ家入門』を読んだ際に構成作法として引用されたこれら短編にいたく感じ入りました。今回の文庫に両作が収められていたこともあって、迷わずに購入しました。

 その他の作品は、SFテイストが溢れたもので、今日の少女漫画とは一線を画しています。「青い月の夜」は、同時期の「おもちゃのチャチャチャ」に触発されたものでしょう。なので、童話テイストながらSFチックともいえます。

 「きょうはもうこない だが あすもまた…」は、お得意のタイムトラベルもので、主人公が出会う少女が急速に成長して大人びるさまが、後年の『ファンタジー・ワールド・ジュン』を髣髴させます。

 「きりとばらとほしと」は吸血鬼を題材にしていて、過去、現代、未来の物語を繋げています。三つの時代それぞれでテイストが違っています。過去では、吸血鬼カーミラの名とともにそのままのバンパイヤものです。現代では、今様の遺産争いが原因の殺人事件を題材にしています。未来では、もうまったくテイストが異なった異星人侵略ものです。異星人の異形ぶりというのが、後年の石森SFの原型を示していて興味深いです。

 「あかんべえ天使」は、ぼろアパートを舞台にした人情長屋ものです。各人各様の過去と事情を抱えた住人たちの群像劇で、物語の中心に主人公の幼女が常にいるスタイルです。

 「MY フレンド」は、漫画家志望の少女が漫画家石森にちょっかいを出す小話です。取りとめのない内容ながら、よくある少女漫画への批判的な部分があったりします。
 「とつぜん へんなとこに意味のないスタイル画がはいっちゃったり‥‥内容も恋だとか愛だとか」
 「(恋とか愛の)ほかにもっとありそうなもんだけどねえ」

 石森氏は少女漫画で漫画キャリアを開始したわけですが、少女漫画を描きながらもその題材が実に多岐にわたり、特に後年のSF作家としての素養が作品に横溢してるんですね。石森氏が示した斬新な発想が、今の少女漫画の大家たちに大きな影響を与えたものでしょう。竹宮恵子氏、萩尾望都氏、大島弓子氏らには、明らかに石森氏の血脈が見て取れます。

 私自身、石森氏のキャラクター造形に痺れた口です。十代まで、人間を描くと、知らず石森キャラになっていました。いえ、今もなんですけどね。
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九百九拾弐  五輪の行方(2021/1/10)
 週刊実話Webによると、政府は五輪中止の準備を進めているそうです。なにぶん週刊実話の記事ですから、信憑性のほどは判りません。

 来週に召集される通常国会に合わせ、東京都などと共同で中止発表の準備を進めているそうです。記事の内容を要約すると、ポイントは次の数点です。
  • 今国会では新型コロナウイルス対策を中心とした3次補正予算や21年度予算が審議されるが、五輪の開催有無で予算編成が大きく変わるため、判断を先送りできない。
  • 「桜を見る会」をネタにした安倍前首相の追及は必至のうえ、首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を出すに至った問題もあり、菅首相は議論の矛先を躱そうとしている。
  • 昨年末にIOCから首相のもとに、「開催する場合は無観客の方針」という通達が届いていたといわれるものの、応援自粛を呼びかけて実施された箱根駅伝では、多くの人が沿道に繰り出したこともあり課題を残している。
  • 菅首相の総裁任期は、前首相の残り任期である9月30日までとなっており、石破、岸田両陣営は「菅おろし」に動いており、年内には必ず総選挙が実施される。もし、五輪でパンデミックが起これば、取り返しがつかない。
  • 中止決定と同時に2032年の五輪再招致をぶち上げる案を予定している。決定済みの2024年パリ、2028年ロサンゼルスの後に東京五輪を招致するとの案である。会場整備も終わっており、これまでの投資も無駄にならない。昨年11月にIOCのバッハ会長が来日した際、菅首相、小池都知事、森会長との間で、この最終的な落とし所は確認されていたといわれている。
 どこまで本当かは分かりませんが、ありそうな話に聞こえます。もちろん中止には賛成です。しかし、再招致は勘弁してほしいです。どうせ、“所詮は税金、他人の金”とばかり、無軌道なばらまきが繰り返されるだけです。

 国や自治体の事業と違って、五輪事業なんてどんぶり勘定があらゆるところで罷り通ります。今に始まったことでなく、長野五輪でもひどかったものです。しかも、これを正す人間や仕組みが存在しないという怖さがあります。もし、モノ申したところで、世界中の人間に向けての事業なんだから、これに棹差してお前は責任が取れるのかとか返されて黙るしかないんでしょうね。そして、音頭を取っている人間たちが好きなように山分けするんでしょう。

 例の国立競技場選定のドタバタ劇に関して、いやな噂を聞きました。多分、誰かが尤もらしく流した噂なんでしょうが、気持ちのいい話ではありません。東京に引っ張る目玉として、刺激的なザハ案で訴求し、招致が決定した後で、建設費を理由に破棄したとかいう内容です。これは実際の経緯にそぐわないので違うでしょう。

 ザハ案に決定した経緯は、当時から詳細に語られていましたからね。あれは安藤氏による無責任なゴリ押しだったわけで、別に招致委員会向けのアピールを狙ったものではないでしょう。安藤氏の手続きを無視した恣意的なやり口によって、大きな損害が出たわけですが、誰も責任を取っていません。
 手続きが合法的に為されず損害が出た場合、免責されないはずでしょう。私らも公務員生活において、首長からこの点を厳しく申し渡されていました。手続きに瑕疵があれば、個人責任を問うと。

 長野五輪招致の際、事務局関係者が証拠書類を焼却処分したものの、誰も責任を問われませんでしたから、今さらですけどね。
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九百九拾壱  今年最大の課題は言わずと(2021/1/2)
 世界経済と世界中の人間の生活を沈滞させた2020年が過ぎました。昨年1年間で8,000万人が新型コロナに罹患し、180万人が死亡しました。死亡者数には、既往病症によるものが多く含まれているそうなので、これよりは少ないと見るべきです。とはいえ、凄まじいまでの数であり、20世紀初頭のスペインかぜには及ばないものの、治療や衛生予防体制が整った21世紀においてここまでのパンデミックになるとは誰も考えなかったでしょう。

 1年前にダイヤモンド・プリンセス号への対応で右往左往していた日本を嘲笑っていた欧米各国こそが苦しんでいます。WHOによると、欧州>北米>南米>アジア>その他の順番で被害規模が大きくなっています。
 と同時に、ウィルス沈静化に向けてのワクチン接種もまた、欧州と北米が先んじています。ここまでくると、ワクチンによる克服しか手がないでしょうね。

 新型コロナへの対応が、2021年最大の課題であるのは論を俟ちません。とはいえ、日本においてはコロナの派生問題である五輪開催こそが癌となっています。
 IOCはWHOの勧告に従うとアナウンスしている一方で、WHOはなんのコメントも出していません。日本政府や東京都は、なにがしかやる気だけ見せています。また、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は、「もう中止はできないから、たとえ無観客という指示が出たとしても工夫してやるべきだ。昨年1年間、無観客のイベントや無出社でテレワークするなど日本は工夫してやってきた。どんな苦難があっても乗り越えられる」と、昭和16年の御前会議における軍部の発言と同じことを言ってます。
 昨年実施された国民へのアンケートでも、開催不可がやるべしを上回りました。どうやら国民の意向は、夾雑物の模様です。

 張作霖爆殺事件を曖昧にした結果、満州事変を惹起し、中央の統制を無視した関東軍を追認してしまいました。それ以後は、熱河作戦、長城作戦、(さんずいに欒)東作戦、関内作戦を経て盧溝橋事件に至り、北支事変を経て上海会戦から南京を攻略しても片づかず、徐州作戦から蘭州や漢口攻略を成しても講和を結べませんでした。
 その都度、決定していた戦域制限を転任参謀たちが無視し、新たな攻勢作戦を実施しては戦域を拡大したものです。その参謀たちは、新たな攻勢作戦を立案実施するのを権利くらいに考えていた様子が窺えます。中央の統制を無視するのが常となり、現場が暴走し続けました。あげくに仏印進駐にまで至り、ついに対日輸出制限を受け、昭和16年に入って全面禁輸措置となって進退窮まりました。

 さしずめ、現在は昭和15年の対日部分禁輸あたりでしょう。ここに至っても方向転換できない様は、かつての軍部暴走と変わるところがありません。

 ワクチン接種といっても、先進国はともかく200か国が参加する五輪なんですよ。夏といっても、各国の予選はそれ以前の話です。それどころか、地域予選なんてもうまったく目途も立っていません。ボクシングを例にとると、南米と欧州の予選が中止になったままです。欧州や南米にしてみれば、「五輪予選だって、あんたなに寝ぼけたこと言ってんだ」でしょう。

 医療従事者の不足と疲弊が問題視されている中、大量の医療従事者を無料奉仕で担ぎ出そうとしています。本当に何を考えているのでしょうか。学生をボランティアで招集しようとする試みも、もはや破綻してるんじゃないですかね。
 一部の関係者にとっては、なにごともない話なのでしょうか。私には理解できません。
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九百九拾   電気ポットの寿命は(2020/12/26)
 電気ポットが壊れました。先日のこと、ポットの下に水が溜まっていました。ついに寿命が尽きました。電気ポットは外殻と内側の魔法瓶との間を仕切るパッキンというかストリップ部分が弱点なんですね。ゴムですから経年劣化を免れません。まして、高温蒸気に晒され続けるとあって、短命なのも仕方ありません。

 メーカーのQ&Aによると、5年程度で漏れが生じるとか書かれています。悲しいのは、メーカーの部品保守義務が5年で切れるとされている点です。多分、5年を超えて在庫もありましょうが、保証の限りではありません。ネットにはユーザーたちの不満の声が溢れています。

 買ってすぐに漏れ始めるケースもあります。保証期間内であれば交換、あるいは無償修理コースです。可哀そうなのは、保証が切れた後に漏れたケースです。修理するくらいならと、買い換える方もそれなりにいます。電気ポットは安いものだと数千円で買えますから、修理の間の不便を思って面倒が先に立つのでしょう。

 下図が壊れた旧ポットです。汚れ具合から古さが伝わるでしょう。なんせ15年ものなんです。よく保ったものです。ですから、買い換えになんの迷いもありませんでした。



 翌日、すぐに近在の某量販店を訪ねました。
 旧モデルが気に入っていたので、似たようなタイプにしました。値段は以前のものに比べ、かなり安くなっています。これは喜ぶべきことではありません。安さには必ず理由があります。速い話がコストダウンのせいです。部品の品質―特にゴム系や軟質樹脂系の品質は、製品寿命に大きな影響をもたらします。きっと、早い時期に水漏れを起こすであろうとの確信があります。



 一見、高品質そうですが、まじまじ見ると安物感が窺えます。まるでBMWのインパネみたいです。写真だとお洒落な高級感ですが、現物を間近で観察するとチープ感が明らかなんです。便利機能が増えているんですけど、そんなのどうでもいいです。
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九百八拾九  二人の中谷選手が快挙(2020/12/20)
 コロナ禍によって、世界中のあらゆる事象が停滞しています。ボクシングもその洗礼を受けている競技のひとつです。
 3月以降、世界中の興業が延期となり、あるいは中止に追い込まれました。プロ興業だけでなく、五輪向けの地域予選も中止となり、再開の見込みはまったく立っていません。

 関係者は再開に向けてあらゆる努力を重ねています。選手たちの隔離措置、宿泊施設だけでなく、練習施設についても配慮しています。また、無観客あるいは座席を限定しての開催を試行してきました。それでも、予期せぬ事態が次々に出来し、興業が中止に追い込まれたり、カード変更を余儀なくされています。あるいは期待が大きいカードについては、何度も延期されもしました。また、コロナの猖獗ぶりが国や地域によって大きく異なることから、選手や関係者のビザが下りなかったりで移動にも困っています。

 ボクシング界で起こっていることだけを眺めても、東京五輪開催が無理なのは自明です。IOCをはじめ、都や政府にも誤魔化し路線を改めていただきたいです。現況を眺めていると、昭和16年の日本かと錯覚させられます。


 とはいえ、10月あたりから徐々に再開され始めました。アメリカのTV局はボクシング予算が未執行であったため、冬に入ってから頃合いよしとばかり好カード目白押しです。
 日本の年末はボクシングや格闘技が本番ですが、アメリカの12月はクリスマスシーズンということで、あまりボクシングに力を入れてきませんでした。ところが、今年は上に書いたような事情から年末に至って好カードが集中したのです。

 九百八拾弐  井上選手ラスベガス初登場(2020/11/1)や九百八拾四  PFPトップはテレンス・クロフォードで決まり(2020/11/15)も、同じ理由から遅い時期となったものです。

 ここ数日間だけでも、ファン必見のカードが組まれました。
 昨日、フロリダ州において、DAZNがWeb配信(無観客)で、IBFミドル級タイトルマッチを開催し、王者のゲンナジー・ゴロフキン選手に3位のカミル・シェレメタ選手が挑みました。強い挑戦者といわれていたものの、7回KOの一方的な内容でした。

 また、本日のことコネチカット州において、PBCがPV(無観客)でWBCバンタム級暫定王座決定戦を開催しました。WBA1位のレイマート・ガバリョ選手と4位のエマヌエル・ロドリゲス選手による決定戦です。結果は、一方的にポイントを取ったであろうロドリゲス選手が、まさかの1-2の判定負けでした。日本のWOWOW観戦者とアメリカのPV視聴者たちが怒りを表明しています。

 同じくテキサスにおいて、WBA & WBC S.ミドル級王座統一戦が開催され、WBAスーパー王者のカラム・スミス選手とレギュラー王者のサウル・アルバレス選手が対戦しました。圧倒的な体格差をものともせず、アルバレス選手が大差判定勝ちとなりました。

 このように、年末ながらアメリカにおいてビッグマッチが集中するのも珍しいんです。コロナによって、いかに歪な世故に至ってしまったものか。

 そんな中、二人の日本人選手が快挙を成し遂げました。しかも、期せずして同じ中谷姓なんです。
 11月6日のこと、後楽園ホールにおいて、WBOフライ級王座決定戦が開催され、3位の中谷潤人選手が1位のジーメル・マグラモ選手に8回KO勝利を飾りました。
 マグラモ選手は24勝(20KO)1敗です。アマエリートのムハマド・ワシームと接戦で敗れたのみで、その後7連勝で、昨年には中国でWBOインターナショナル王者のグ・ウェンフェン選手にTKO勝ちした26歳の俊髦です。

 中谷選手は軽量級ながら長身です。背の低いマグラモ選手は距離を詰めるしかないものの、接近戦でも中谷選手が優位に闘いました。長身らしくアッパーを多用し、タフな相手を徐々に弱らせました。感心したのは、下図のように左右フックを潜(くぐ)って外したことです。日本人選手には珍しいんですね。いえ、こんなの当たり前の防御動作なのでしょうけど。
 ただ、外すだけだったんですね。できたら、潜った後に浮き上がる動作でパンチをぶつけて欲しんです。それが、いわゆる攻防一体のボクシングです。



 先週にはラスベガスにおいて、ESPNがPV(無観客)興業を開催し、セミ試合でWBOインターコンチネンタル・ライト級王座決定戦(10回戦)が行われました。14位の中谷正義選手が11位(IBF5位)のフェリックス・ベルデホ選手を9回TKOで下しました。
 ベルデホ選手は28勝(17KO)1敗、ロンドン五輪でロマチェンコ選手に敗れたアマエリートで、連勝街道を突っ走ってきたホープでしたが、17年にバイク事故で足を負傷したのに続き、転倒で手首負傷という不運の後、18年に38勝2敗のアントニオ・ロサダ選手に10回TKO負けしました。その後は順調に4連勝し、今年7月に15勝無敗3分の相手に初回KOで鮮やかに勝ちました。

 トップランク社がビッグマッチを予定するホープであり、中谷正義選手はぶっちゃけカマセ犬扱いでした。それを、まさかの大逆転勝利で未来のスター選手から、そのポジションを奪ったのです。

 ベルデホ選手は俊敏でスピードに勝り、初回と4回にダウンを奪うなどスキル差を見せつける展開でした。しかし、中谷選手は諦めず、後半に入ってなお攻勢を強め、弱った相手に見事なジャブを打ち抜いてダウンを奪いました。
 下図のとおり、フォロースルーたっぷり打ち抜いています。しかも、打ち下ろす角度とあって、完全に効かせましたね。立ち上がったところを強烈なワンツーで完膚なきまで叩きのめしました。



 もともと中谷正義選手は、今年最大の話題ボクサーであるティオフィモ・ロペス選手に苦戦を強いた実績があり、それなりに名前が売れていました。今回の劇的な勝利でアメリカでの認知度が爆上がりです。
 きっと、来年には高額なギャラを提示されての好カードが示されることでしょう。上の中谷潤人選手とともに、来年の活躍が楽しみな選手です。
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九百八拾八  劇場版『鬼滅の刃』見ました(2020/12/12)
 話題作とあって気になっていました。漫画は知っていたものの、アニメの方はまったく縁がありませんでした。BS時代になって、HV映像のアニメが溢れています。いずれも、お子ちゃま向けかオタク向けの装いなので興味もありません。
 ただ、『鬼滅の刃』の漫画本は、以前から本屋で目にしていたので興味もありました。チャンバラ時代劇ながら、書生姿もあったので明治以降の時代背景であろうと想像していました。

 雑誌に目を通すため、喫茶店やネカフェを利用しています。そのネカフェに『鬼滅の刃』が並んでいて、お薦めです、さあどうぞとばかり目立っているんですね。
 話題作ならとばかり、手に取ってみたものの、初巻の剣術修行あたりで挫折しました。剣客ものというと、白土三平、小島剛夕、臣新蔵、平田弘史的な絵柄や内容を期待してしまうんです。いえ、子供向けジャンプ作品に対して的外れな感想ですね。

 そして、劇場版が公開されて大評判になりました。世上、コロナ禍の鬱憤を吹き飛ばすような席巻ぶりです。子ども達の入れ込みぶりというのが、また異常レベルですね。そんなに凄いアニメなら、見ないと世間から落ちこぼれてしまうとばかり観劇しました。

 なお、事前に漫画本にも目を通しておきました。最初は無理やりな読書だったのが、途中からは夢中になりました。これは受けますよ。受ける要素満点なんですね。
 まず、怪力乱神たる鬼たちと、これを滅しようとする鬼殺し剣士たちとの闘いというチーム戦の構図を採っている点です。チーム戦を正面に据え、エンターテインメントに昇華した最初の漫画は『伊賀の影丸』でしょう。以後、チーム戦は少年漫画における闘いの最上アイデアかと思います。漫画以前にも、『封神演義』みたく中国古典においてすでに存在しています。

 もう一点がキャラ立ちです。チームの面々をいかに特徴づけるかが、作者の腕の見せどころです。この作品のキャラは素晴らしいです。鬼殺し部隊の面々でさえ、ビジュアル面、性格、剣技など多彩です。まして、鬼たちときた日には、その個々のキャラの特異さが際立っています。個人的には“黒死牟”が好きです。目玉6個のグロテスクなデザインがまた秀逸です。そして、あくまで剣技を究めようとうとする剣士スタイルに共感します。

 などと本作の面白さを堪能した上で映画を観ました。すでにアニメで回を重ねているだけあって、ビジュアル効果が手慣れていましたね。加えてサウンド効果も適切であり、ラストの感動シーンに向け、一直線に収束する展開です。
 これは泣きます。大人であっても泣くでしょう。むしろ、子供より世故を重ねた大人の方が抉られるんじゃないでしょうか。さすがに、初老おっさんが涙を流すわけにはいかないので、さりげなく涙の処理をして誤魔化しました。

 国内興行収入トップ目前で、『千と千尋の神隠し』を抜くのは確定だそうですね。それどころか大幅に上回ることも予想されています。景気浮揚までの力はないにしろ、少なくとも気分の高揚には資するでしょう。コロナ禍で鬱々とした人々の心を浮き立たせる役割は果たせています。
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九百八拾七  柄糸の巻き直し再度(2020/12/5)
 一昨年に巻き替えた柄糸を再度巻き直しました。前回の巻きにはいろいろ問題がありました。なにせ、修理して2週間ほどで緩みが生じ、柄糸がズレ始めたのです。ズレとともに柄糸の下に挟んだ菱紙が顔をのぞかせました。刀屋さんによると、居合愛好家たちの修理を請け負っているベテラン職人さんとのことでしたが、雑な仕事ぶりでした。

 居合の稽古のたびに生じるズレを千枚通しで直しながら使い続け、腹立たしかったものです。そして、先月のこと緩みのひどさから柄頭が外れ、柄糸で繋がってはいるもののグラグラの状態となりました。こうなると修理せざるを得ません。刀屋さんに電話で修繕依頼した次第です。

 ここで、どうにも話が通じなかったんですね。刀屋さんにしても、わずか2週間で糸が緩むなんて信じられなかったのでしょう。私の説明が承服し難かったのも無理ありません。
 私が、菱紙を入れない方が好ましいのでないかと意見を述べたところ、菱紙は必須であり、そのような希望には添えない、他を当たってくれと拒否されました。仕方なく、刀屋さんの意に沿う修理でよいからとお願いしました。

 訪ねて現物をみせたところ、私の問題提起にも納得がいったようで、柄巻師には念入りな巻きをお願いすると請けてくれました。その際に菱紙を入れない方が、柄糸が鮫皮により噛みつくのでないかと素人考えを述べたりもしました。刀屋さんもひどいあり様を見て、さすがに電話のような拒否反応を示さずに考え込んでいました。

 2週間ほどして、巻き直された柄を受け取りました。それが下図です。



 刀身を着けて握ると、以前と違うソリッドなグリップ感です。柄巻師の方も、丁寧な仕事をしたものと想像しています。これなら、相当持ち堪えられそうです。
 今回の修理に当たって、京都在住の名のある柄巻師との説明でした。以前の修理の際には、岡山県在住とか言っていた憶えがあり、なんか話が不明遼なんです。私としては、巻きがしっかりしてさえいれば、誰であろうと文句ありません。

 しかし、次回の修理は難しそうです。いずれの業界も職人さんの高齢化によって後継者に困っていますね。柄巻師も同様で、その方も数年後にこの仕事をしているか怪しいそうです。他の職人さんはというと、明らかに技量が落ちるそうで、刀屋さんとしても信頼できないので困っていると嘆いていました。
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九百八拾六  対コロナの進歩(2020/11/28)
 気温が下がり、空気が乾燥する中、新型コロナウイルスの俗にいう第3波に見舞われています。
 国内での感染死亡者数が22日に7人確認され、累計で2,001人となりました。感染者は連続で2千人前後で推移しています。死者は欧米に比べると1〜2桁低く抑えられているものの、感染が急拡大することによって医療機関が患者に対応できなくなると危惧されています。
 しかし、死者数増加を単純に恐れるのでなく、内容に目を向けるべきです。

 日経BPの集計によると、6月6日以降の入院例において、入院後に死亡する割合(世代、入院時重症度別)を見ると、高齢者が問題なのであって、それ以外は特に騒ぐ必要もないのが明らかです。
 入院時軽症・中等症例   入院時重症例
 0歳〜69歳 0/1,868  0歳〜69歳 1/116
 70歳以上 11/191   70歳以上 21/101
 入院時重症:入院時に酸素投与、沈香呼吸器管理、SpO2が94%以下、呼吸数24回/分以上のいずれかに該当する場合
 注:退院が完了した症例からデータの登録を行うため、直近の症例の中でも入院が長期化している症例は含まれていないことに注意が必要。

 厚生労働省の集計では、11月18日時点の死者1,857人のうち、80代以上が1,092人と半数を占めています。感染者のうち死亡者の割合を示す致死率は、全体で1.5%、60代1.9%、70代6.2%、80代以上が14.8%と、高齢になるほど致死率が高まっています。
 もちろん、20代で2人、30代で6人、40代で20人の死亡報告があるので油断はできません。なお、19歳以下の死亡の公表はないそうです。

 上の数字からも分かるように、死亡者は確実に減ってきています。6月6日以降の数字を見ると顕著です。減少した理由は、医療関係者の努力によって、症状に応じた対処法が確立してきたからです。
 週刊新潮11月19日号に掲載された「医師が明かす「コロナを恐れる必要がない理由」 死亡者は前年比減少、治療法も大きく進歩」に詳述されています。貴重な内容なので、引用紹介します。

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授によると
 治療経験が豊富になり、治療薬も早めに使えるようになったことです。重症化リスクが高い症例には、抗ウイルス薬のアビガンを早めに投与します。やはりこの薬は、体内でウイルスが増えるのを抑制し、症状を軽減して陰性になるまでの日数を短縮できている。酸素吸入が必要な中等度になると、ステロイドホルモンのデキサメタゾンを早めに投与します。新型コロナウイルスは、ウイルスの増殖を防ぐ働きをするサイトカインが正常な細胞も傷つけてしまうサイトカインストーム、つまり免疫暴走を起こす場合があります。その結果、肺や腎臓に機能障害を来たすことがあり、デキサメタゾンはそれを抑える働きが期待されます。英国で行われた臨床試験で、酸素吸入や人工呼吸が必要な患者は、デキサメタゾンを使って死亡率が低下したというデータが出ているのです。さらに、人工呼吸器が必要となりそうな段階では、抗ウイルス薬のレムデシビルを投与します」
「これまでは人工呼吸器を使ったような症例に、ネーザルハイフローという、鼻腔から大量の酸素を送る療法で対処できることがわかりました。人工呼吸器は管を肺まで入れるので、二次感染を起こす危険性があるうえ、本人も意識がなくなって負担が大きい。医療者にとっても、人工呼吸器の患者1人は、酸素療法の患者10人に匹敵するくらいの負担で、人工呼吸器をつける前に救えるということが、医療リソースを逼迫させないためのポイントです。大量の酸素による療法なら、患者に意識があってご飯も食べられます。


 ワクチンができるまではとよく言われますが、寺嶋教授は、すでに手持ちの治療法で有効に対応できていると述べています。
 治療の手段、持ち駒が増えたし、推奨されている薬を迷わずに使えるようになった。だから重症化率が下がったのです。

 また、血栓についても、
 新型コロナウイルスの合併症として、血栓症が知られています。血栓が肺や脳の血管を詰まらせるのです。しかし、血液検査で血栓の数値が上がっていたり、画像検査で血栓が疑われたりという症例では、血栓ができにくくする抗血栓薬を早めに投与するようになった。このことも重症化率と死亡率の低下に寄与しています。感染流行の初期には、血栓ができることも知られていなかったわけですから。

 感染症が専門の浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師も同様の説明をしています。
 感染者の8割以上を占める軽症者には、発熱したら熱さましという対症療法で、本格的な治療の対象は、CTで肺炎が確認されるような中等度以上の人や、心臓が悪いなど基礎疾患がある人、そして高齢者です。

 こうした患者にアビガン、デキサメタゾン、レムデシビルを使うという説明で、前記、寺嶋教授と重なっています。加えて
 これまでは人工呼吸器を使ったような症例に、ネーザルハイフローという、鼻腔から大量の酸素を送る療法で対処できることがわかりました。人工呼吸器は管を肺まで入れるので、二次感染を起こす危険性があるうえ、本人も意識がなくなって負担が大きい。医療者にとっても、人工呼吸器の患者1人は、酸素療法の患者10人に匹敵するくらいの負担で、人工呼吸器をつける前に救えるということが、医療リソースを逼迫させないためのポイントです。大量の酸素による療法なら、患者に意識があってご飯も食べられます。

 再びの感染者増は日本と欧米で共通でも、感染者数と死者数が決定的に違い、ともに日本は欧米の100分の1程度です。にもかかわらず、日本で問題とされているのは、医療関係者がよく訴えている医療崩壊です。しかし、欧米では日本の100倍の感染者を出しながら、困難な状況といえ医療崩壊を起こしていません。では、日本の医療のなにが問題なのでしょうか。

 東京大学名誉教授で食の安心・安全財団理事長の唐木英明氏が指摘しています。これは、私が九百七拾六  新型コロナ、舵を切るべし(2020/9/20)に書いたのと同じ趣旨です。
 日本は新型コロナウイルスを、指定感染症第2類以上に指定してしまったため、軽症者も無症状者も病院に入れなければならず、医療に余計な圧迫を与えている。もう一つは、病院内で一人でも感染者が出たら世論に叩かれ、ひどい風評被害を受けるので、みな慎重になる。こうした2重の足かせのせいで、“大変だ”と騒いでいるのです。

 唐木氏は、今の状況の根底にあるのは、感染初期に日本人に植えつけられた恐怖感だと訴えています。しかも、現実に「第2類以上」なので欧米に比べればわずかな感染者の増加でも医療はすぐに圧迫されると訴えています。
 このままでは感染者数は欧米の100分の1のままでも、ロックダウンや外出自粛になりかねない。感染者が増えている北海道でも欧米にくらべれば100分の1程度なのに、すでに営業時間短縮やGo Toトラベルの中止が検討されています。原因は政治家のポピュリズムです。感染者が増えると政治家は非難され、一方、厳しくするほど人気が上がるという妙なことになっていますから。菅総理が“コロナ対策を第一に考える”と言うのも、まさにポピュリズムで、これ以上考えてどうするのか。本当のことを繰り返し伝え、国民の恐怖感を取り除く対策なら歓迎ですが、感染者数が圧倒的に少ないのに、恐怖感を煽るようなことをしてはいけません。
 テレビに出演している医療関係者たちが“医療崩壊する”“みんなが外出するからだ”と言って、国民に恐怖心を植えつけています。彼らは“冬はインフルとコロナのダブルでやられる”とも言っていますが、インフルの感染者数の劇的な減少を見るに、それは起こらないと思います。

 今年のインフルエンザ感染者数は、昨年より2桁も少なくなっています。同時に、日本人全体の死者数も去年に比べて減っています。この圧倒的な事実も、TVのワイドショーでは触れないんですね。
 感染者数に一喜一憂するのでなく、むしろ死者数にこそ注目すべきなんです。さらに、その年齢構成やインフルエンザ死者数と並べて検証すべきなんです。

 一方で、肝心な点がおざなりにされています。昨日の東洋経済オンラインの記事「海外帰国者「公共交通利用せず」守られているか」を読むと、哀しくなります。海外からの渡航者が野放しなんですね。こういう点をこそ、きっちり対応していただきたいです。
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九百八拾五  コア復活(2020/11/21)
 Windows10の大型アップデートが用意されていたので、適用してよいものか確認しました。MSのサマリーによると、これを適用しないと今後のアップデートが利用できないとかで、すぐに実行しました。
 Windows 10 October 2020 Updateが適用されると、下図のようにバージョンが「20H2」となります。それまでは、「1909」とかであったかと思います。新しいバージョンは、バグ修正とかセキュリティ関係でなく、ファイルの格納場所が変更されたり、インターフェースに若干の変更が加えられました。気に食わない箇所については、自分好みにカスタマイズして見慣れたインターフェイスとしました。
 下図のように、バージョン情報が変わります。皆さんは適用されていますか。



 OSのベーシックな部分に変更が加えられたので、CPU動作も復調したかもとタスクマネージャーで確認すると、コア動作がすべて復活しました。下図のとおり、2コア4スレッド(4論理プロセッサ)で動作しています。



 システム情報にも「2個のコア、4個のロジカル プロセッサ」と記述されています。



 ブート詳細オプションでも、プロセッサ数を4個から選択できます。ここはブート時だけの動作なので、1個でも2個でもいいのですが、二度と失効しないよう「4」を選択しておきます。



 起動も少し速くなりました。以前は「2」としていたので、若干の速度向上が図られたものでしょう。やっと肩の荷が下りた心地です。
 8年モノの我がノート、更にあと8年は戦えそうです。
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九百八拾四  PFPトップはテレンス・クロフォードで決まり(2020/11/15)
 先々週のコラムでPFPの最新順位を紹介しました。テレンス・クロフォード選手は、リング誌が3位、ESPNが1位となっています。私はテレンス・クロフォード選手こそが現役最強と考えています。もちろん井上選手を贔屓したいところですが、キャリアと対戦相手を眺めると譲らざるを得ません。

 今はWBOウェルター級王者で、3階級制覇を為しています。その前のスーパーライト級時代には、WBA、WBC、IBF、WBOの4団体すべてのタイトルを奪取してもいます。身長は173cmながら、リーチが驚異の188cmといわれています。おかげで懐が深いため、余裕でカウンターを打つことができます。こんな恵まれた身体に加え、スイッチヒッターという器用さで、しかも左右ともに強打なんですね。

 距離の優位を生かし、相手の動きをよく観察しています。距離が長いので、余裕があるんですね。それで強打なんですから、対戦相手は堪ったものでないでしょう。これまで、ピンチらしいピンチも経験していません。ガンボア選手がいいのを入れたくらいでしょうか。

 本日、ラスベガスにおいてWBOウェルター級タイトルマッチが無観客試合で行われ、テレンス・クロフォード選手にS.ウェルター級10位のケル・ブルック選手が挑みました。ケル・ブルック選手は好きな選手です。39勝(27KO)2敗の元IBFウェルター級王者です。
 その2敗というのも仕方ない面があります。ミドル級統一王者のゲンナジー・ゴロフキンに挑んで5回TKO負けしたものです。これは無茶でした。もうまったくパンチが通用していませんでした。ウェルター級であれば相手を崩せたであろうパンチがヒットしても、委細かまわず打ち返されました。この試合で相当なダメージを受けたものと想像します。
 翌年には、1位のエロール・スペンスJrの挑戦を受けて11回KO負けを喫しました。この試合は競った内容でしたが、互いにダメージブローを繰り出しながらも、スペンス選手の方がタフというか、打たれ強かったように見えました。

 いずれにしても、ブルック選手の技術は高く、その強さも文句なしです。当て勘がよく、動く相手、あるいは自身が動きながらも、ピンポイントで急所を打ち抜く技術を持っています。そのような強敵を迎えて、いかなる闘いを演じて見せるか興味を集めていました。試合結果は予想を超えるものでした。4Rにコンパクトな右フックでカウンターを打ち抜いてダウンを奪い、その後のラッシュでTKOを呼び込みました。ブルック選手は最初のカウンターで完全に効かされ、あとはなにもできない状態でした。
 下図のとおり、ブルック選手が踏み出そうとした出鼻を打ち抜いています。



 2週間前の井上選手のカウンターも見事でしたが、私にはクロフォード選手の方がより鮮やかに見えました。いえ、甲乙つけ難いというべきなんでしょうね。
 井上選手が見事な勝利を飾り、今日のクロフォード選手の内容次第で次回のPFPランキングが決まるところでした。残念ながら、クロフォード選手が上に位置するでしょうね。

 井上選手には来年2月か3月に予定されているWBO王者カシメロ戦に期待しましょう。ここでの勝ちっぷり次第で、より上を狙えますからね。来年が楽しみです。
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九百八拾参  Go Toで「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020/11/7)
 一昨日のこと、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の大阪展を訪ねました。東京展(国立西洋美術館)はコロナもあってパスしました。それなりに興味があったものの、諦めていました。

 それが、地元旅行代理店が例のGo Toトラベルの一環で「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」日帰り観覧ツアーを企画していたので、すかさず申し込みました。昼食にホテルでのフレンチ和牛コースを配した美味しいコースです。

 Go Toキャンペーンは、代理店、宿泊業者、観光地などを潤すよい手法だとは思います。とはいえ、結局は税金の負担なので後でしっぺ返しがきますけどね。21,990円に補助ありで14,990円のお得です。これに3,000円の地域クーポンを加えています。なので、実質11,990円で済むんですね。
 嬉しいキャンペーンではありますが、後で負担の請求書が回ってくるわけで、誰かが割を食うはずです。

 展示作品はまあまあでした。もともとロンドン・ナショナル・ギャラリーは王室や貴族のコレクションを元にしたのでなく、近代以降において購入を進めていったものです。予算の制約が大きく、競売に勝てなくて名品をイギリスから数多流出させてもいます。また、好事家や実業家たちがコレクションを寄贈して厚みを増していったものです。

 正直言って、今回の展示作品はもうひとつの感がありました。なにぶん、メトロポリタン美術館やプラド美術館、あるいはワシントンのナショナルギャラリーを観覧する贅沢を味わったものだから、もの足りないんです。

 なお、大阪展の会場となった中之島にある国立国際美術館は、アメリカの建築家による地下3階の地中美術館です。地上部分は下図のとおり、金属チューブによる彫刻と見紛うばかり、上空へ伸びゆくイメージです。



 大阪市立科学館に併設されていて、周囲の光景に溶け込めていないきらいがあるのが残念です。有体に言うと、取ってつけたような建築物です。

 今回のツアーで嬉しかったのは、昼食がアベノハルカスだったことです。初めて見上げるとともに、19階の高みから大阪を一望しながらのフレンチでした。ただ、正直どうってことないフレンチでしたけど。



 久しぶりの大阪で、やはり都会は間が空くと様相が変わりますね。東京ほどでないにしろ、変化が激しいです。田舎者にはついてゆけません。
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九百八拾弐  井上選手ラスベガス初登場(2020/11/1)
 本日昼頃、ラスベガスにおいてWBA、IBFバンタム級タイトルマッチが開催され、王者の井上尚弥選手にWBA2位のジェイソン・モロニー選手が挑みました。
 モロニー選手は、一昨年のWBSS初戦でエマニエル・ロドリゲス選手に僅差判定で初黒星を喫しました。判定は2-1(115-113、115-113、113-115)で、どちらが勝ってもおかしくない内容でした。

 勝敗予想は圧倒的に井上選手の勝ちで、その勝ち方によってはPFPの順位が変わるかもしれません。リング誌の最新PFPランキングは次のとおりです。
 1位 サウル・アルバレス
 2位 井上尚弥
 3位 テレンス・クロフォード
 4位 オレクサンドル・ウシク
 5位 エロール・スペンスJr.
 6位 テオフィモ・ロペス
 7位 ワシル・ロマチェンコ
 8位 ゲンナジー・ゴロフキン
 9位 フランシスコ・エストラーダ
10位 アルツール・ベテルビエフ

 米スポーツ専門NW「ESPN」の最新PFP
 1位 テレンス・クロフォード
 2位 サウル・アルバレス
 3位 井上尚弥
 4位 エロール・スペンスJr.
 5位 テオフィモ・ロペス
 6位 ワシル・ロマチェンコ
 7位 オレクサンドル・ウシク
 8位 タイソン・フューリー
 9位 フランシスコ・エストラーダ
10位 ゲンナジー・ゴロフキン

 前回のランキングから大きな変動がありました。トップ争いの一角を占めていたロマチェンコ選手が2週間前にロペス選手に負けたため6〜7位まで落ちました。2週間前、九百八拾   ラスベガスで大波乱(2020/10/18)に書いたとおりです。ロペス選手の大金星に関係者やファンが驚きました。まさか、パーフェクトマシンことロマチェンコ選手が敗れることを誰も予想しませんでしたから。そのため、現在はアルバレス選手、井上選手、クロフォード選手の3人が競っているわけです。

 大金が稼げるとあって皆が闘いたがっているアバレス選手は、訴訟を抱えているうえに本人がカードをシビアに選ぶため、当面は試合が組まれそうもありません。そして、クロフォード選手はケル・ブルック戦が来月に組まれていて、これも興味深いカードです。
 今日の井上選手の試合内容、来月のクロフォード選手の試合内容、それぞれがいかなる闘いぶりを示すかで、次回PFPランキングに影響があるものと考えられるのです。ですから、井上選手のPFPトップもあり得ない話ではないんです。


 試合結果は、井上選手の7RKO勝ちでした。モロニー選手がワンツーを放ったとき、ワン(ジャブ)の帰り際に合わせて右クロスを打ち抜きました。モロニー選手のツー(右クロス)より速く、カウンターともなっていました。右クロスを打ちに来たモンロー選手が踏み出すのに、タイミングがドンピシャで合っていました。力みもなく、打ち抜いています。



 モンロー選手はガードが固く、パンチをコンパクトに打つとともに、常にすばやくガードを戻していました。なかなか隙がないので、井上選手はじっくりチャンスを窺っていました。6Rに左フックでダウンを奪ったのも、相手の動きをよく見ていて、ジャブを出した際に右ガードが離れ気味だったのを見逃さなかったものです。そして、下図のとおり、右ガードを躱すよう、フックを内側から伸ばすような軌道でした。



 完勝といってよい勝ちっぷりだったし、文句のつけようもない内容でした。しかしながら、PFPトップを称するには届かないかもしれません。やはり、強い相手と手に汗握る攻防を繰り広げないと難しいんかな。あるいは、力の差があるときには、暴風雨のように圧倒的な勝ちでないといけないのかもしれません。
 今回のような見事な勝利であってさえ、こと井上選手に関しては、そのように高度な注文をつけたくなります。それだけ、素晴らしい逸材ということなんですね。
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九百八拾壱  コアが認識されない(2020/10/24)
 6月にノートPCをWindows10にアップデートしてから起動が遅くなりました。Windows7時代の感動的な爆速が失われたんです。新しいOSゆえ、重くなったんだろうと諦めていました。起動時に動かすプロセスが増えたものと想像しています。
 特に気にも留めずに使用していて、先週のこと「タスクマネージャー」の異常に初めて気づきました。コアが1個しか表示されておらず、論理コア(ハイパースレッド)も動作していなかったのです。項目で「コア:1」「論理プロセッサ:1」とされていました。当然のこと、「ブート詳細オプション」でも、「プロセッサの数」が「1」しか表示されていませんでした。

 CPUはi5-2450Mなので、2コア、4スレッド(4論理プロセッサ)だと思います。Windows7時代には、そう表示されていたはずです。Windows10以降、WOWOWオンデマンドでの映画鑑賞中に引っ掛かりを感じることがありました。

 これは放置できません。とはいえ、原因が分かりません。下図のとおり、「デバイスマネージャー」には4個の論理プロセッサーが認識できているんです。ハードウェア的にCPUを正確に認識していながら、これを利用するドライバ関係が適合していないのでしょうか。



 ネットで調べると、稀に同じ症状を訴えているケースがありました。その方も、7から10にアップデートして2コアが1コア動作になったそうです。これに対する有志のアドバイスを参考にして、いろいろ試みました。

 まず、BIOSの問題です。BIOSバージョンが古いために動作しないんだろうという尤もな指摘です。しかし、私のノートは8年前のモデルとあって、BIOSもチップセット関係にも新しいファイルが用意されていません。Windows8.1までしかサポートされてなく、動作保証がないんです。

 最後のあがきで、取りあえずBIOSをデフォルトで再上書きしてみました。すると、ハイパースレッドが復活して、論理プロセッサが2個と認識されました。それが、下図の「タスクマネージャー」です。二つのグラフが甦っていますし、「論理プロセッサ数 2」と記されています。



 下図のとおり、「システム情報」にも「1個のコア、2個のロジカル プロセッサ」と記されています。



 「ブート詳細オプション」でも、「プロセッサの数」を「1」と「2」から選べるようになりました。



 結局、半分だけの解決です。「2コア、4スレッド」が「1コア、2スレッド」でしか動作しないんです。口惜しいけど、やりようがありません。ドライバがWindows10に対応していない以上、私にはどうしようもありません。まさか、Windows7に戻すわけにもいきませんしね。各種使用中のアプリが使えなくなりますから。
 それと、ノートで小難しい作業はしません。限られた作業だけに絞っていますから、これで我慢します。いえ、我慢するしか他に手がありません。
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