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四百弐拾  今夏のミステリ(2009/8/29)
四百拾九  ものづくり体験(2009/8/22)
四百拾八  統率の外道(お盆特別回)(2009/8/15)
四百拾七  芸能人とクスリ(2009/8/8)
四百拾六  リャドの技法(2009/8/1)
四百拾五  次期FXの選択(2009/7/25)
四百拾四  次期FXは問題ばかり(2009/7/18)
四百拾参  次期FX混迷(2009/7/12)
四百拾弐  アオイホノオ(2009/7/4)
四百拾壱  大巨人対決(2009/6/28)
四百拾   永井淳さん死去(2009/6/20)
四百九   虚ろな国(2009/6/13)
四百八   万全の体制(2009/6/7)
四百七   Vista SP2とBIOS昇天(2009/5/30)
四百六   おニューPC(2009/5/23)
四百五   二つの不正(2009/5/16)
四百四   大聖堂―果てしなき世界(2009/5/10)
四百参   史上最高のボクサー決定(2009/5/3)
四百弐   Windows Vistaここが変(2009/5/3)
四百壱   使えない液晶パネル(2009/4/29)




四百弐拾  今夏のミステリ(2009/8/29)
 私は毎年お盆時期にミステリ本を買い込んで堪能しています。今夏は佐々木譲氏の「廃墟に乞う」が収穫でした。佐々木氏の小説手法は私好みです。淡々とした描写が特徴で、これが虚構世界をリアルなものとしています。ただ、他人には薦めません。人によっては、物足りなさを覚えるかもしれませんから。

 本作以外にさして食指を動かされる新作がなかったことから、安心できる旧作を3作買い込みました。
 「デッド・ゾーン」スティーブン・キング(新潮文庫)
 「新版 大統領に知らせますか?」ジェフリー・アーチャー(新潮文庫)
 「ロシア皇帝の密約」ジェフリー・アーチャー(新潮文庫)

 「デッド・ゾーン」はキング未読本で、老後の楽しみに取っておいたものです。内容については映画で承知しています。やっぱ原作はいい。キング初期の作品に、屑はありません。あらためて納得しました。予知能力エスパーの悲劇の物語です。悲劇でありながら、読後感が爽やかなのです。こりゃお薦めですね。


 アーチャーの2作品は凡作でした。アーチャーの作品について、この2作品以外はすべて読んでいます。両作が未読だったのは、つまらないだろうとの予感を持っていたからです。我ながらいい勘をしていますぜ。

 「新版 大統領に知らせますか?」は、どうってことないミステリです。暗殺チームと阻止チームの丁々発止が繰り広げられる内容ですが、こういうポリティカル・スリラーはアーチャー向きではありません。

 「ロシア皇帝の密約」も大統領と同タイプのスリラーです。いずれもアーチャーの得意分野ではありません。やはりサーガ(一代記)こそ、アーチャーが本領を発揮できる分野だと思います。
 「ケインとアベル」「ロスノフスキー家の娘」「めざせダウニング街10番地」「チェルシー・テラスへの道」「メディア買収の野望」「運命の息子」「誇りと復讐」など、いずれもお薦めです。
 なかでも「ケインとアベル」は、本読みを自任する方であれば必読本でしょう。未読の方は一読を。

 今夏のミステリは不作でした。当分の間、傑作ミステリが提供される予定はない模様です。フロスト警部の新作が待ち遠しいよお。
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四百拾九  ものづくり体験(2009/8/22)
 私どもの業務の性格上、若年者に対するものづくりへの啓蒙が求められています。各種イベントを通じ、地道な取り組みを行っているところです。

 昨日のこと、子供たちの夏休み時期を利用したイベントを実施しました。いろいろな催し物の中、「親子ものづくり体験教室」が盛況でした。参加者は、工作の宿題代わりに活用した模様です。

 これは「ミニチェア」を組み立てているところです。


 これは「フラワーポッド」を溶接で製作しています。


 これは「マガジンラック」組立ですね。


 これは照明付「行灯」を製作しています。


 「アクリルコースター」製作のため、女性が旋盤に挑戦しています。


 これはバザーを兼ねた讃岐うどんの実演販売です。彼ら、彼女らは「さぬきうどん科」の生徒さんです。入学後、1か月で手打ち麺の製造ができるまでになりました。味は文句なしです。


 最近の子供たちは工作を経験していません。玩具も出来合いのものが溢れていますし、鋸や半田ごて、ハンマー、カッターなんかを触らせないよう過保護傾向にあります。そもそも親自身が自分で分解修理とか自作とかしませんからね。


 今まで何度も書きましたが、ものづくりは日本の生命線です。失われた技術・技能は取り戻せません。その重要性を理解しながらも、賃金の低廉化によって、日本人が捨て去っている職種や作業は多くに上っています。作業料金が日本人の所得水準に見合わない状況では致し方ありません。まあ、かつての日本がそうであったように、国際分業ということでしょう。
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四百拾八  統率の外道(お盆特別回)(2009/8/15)
 今、少し凹んでいます。22年目の我愛車ソアラの燃料ポンプが死んだ模様です。所用で出かけ、自宅付近まで帰ったところでエンジンが止まってしまいました。年式が年式ですから仕方ありませんが、これからいろいろ出費が嵩みそうです。近所で動かなくなったのがせめてもの慰めです。遠出して止まっていたら大事でした。お盆とあって、修理屋さんも閉まっていますからね。


 NHKが終戦特集として、「日本海軍 400時間の証言」を放映しました。NHKの紹介によると、「第一回 開戦 海軍あって国家なし」「第二回 特攻 やましき沈黙」「第三回 戦犯裁判 第二の戦争」です。実は私、番組を見ていません。内容の見当がつくことから、面倒くさかったのです。

 Web情報によると、予想どおりの内容でした。第1回の開戦状況を扱ったものは、「旧海軍の責任」に書いたように、組織としての方向に抗えなかった経緯を綴ったもののようです。NHKの紹介コピーでは、「戦争を避けるべきだと考えながら、組織に生きる人間として「戦争回避」とは言いだせなくなっていく空気までも生々しく伝えている。」としています。

 今回、触れたいのは第2回で採り上げられている特攻についてです。特攻を称して、一航艦指揮の大西瀧治郎中将は「統率の外道」と呼んでいます。外道ではありましょうが、特攻だけを特別視するのは納得できません。

 帰還の途を断つ作戦命令は、別に珍しくもなかったでしょう。島嶼防衛部隊への命令はずべて共通しています。「救援部隊派遣が望めない状況下、米軍侵攻の足止めのために死守せよ」ですから。ヒトラーも同じことを命じています。曰く、「降伏・後退は許さない。現陣地を死守せよ」です。
 赤軍(ソ連)はもっと凄まじいものでした。前衛部隊には周辺民族を配し、突撃させるために背後から機関銃で掃射していましたもん。また、T-34に乗員を入れたうえ、ハッチを外から溶接して逃げられないようにしていました。

 そもそも、陣地攻略には必ず歩兵の突撃が必要であり、これはすべて特攻じゃないですか。縦深密集火器が火線を連ねる陣地への突撃では、生還は期し難いものです。これが特攻でなくて一体何が特攻なのか。
 敗色濃い昭和19年のフィリピン戦から実施された特攻による戦死者数は14,000名強といったところでしょう。特攻で死んだ兵士は少ないのです。むしろ、通常の突撃命令で死んだ兵士の方が2桁は多いでしょう。その突撃命令というのが、今日の平時の感覚からすると不合理で無謀な命令なのです。ひたすら死屍を重ねるだけの意味のない突撃命令には怒りを覚えます。

 対して、航空特攻には合理的な側面があります。フィリピンや沖縄で実施された特攻による戦果は目覚しいものです。通常の航空攻撃では到底達成できません。

 ※ 戦果を整理したものですが、正確ではないので引用しないでください。
正規空母 護衛空母 戦艦 巡洋艦 駆逐艦 その他 輸送船 合計
沈没 3 12 18 20 53
損傷 20 20 14 14 138 67 106 379

 ※ 通常の航空攻撃による戦果の一例です。
航空機 損害 戦果
マリアナ沖 498 378 0
台湾沖 340 312 巡洋艦2隻小破

 通常の航空攻撃は、急降下爆撃、水平爆撃、雷撃の3方式があります。その他、アメリカは反跳爆撃という爆弾を舷側にぶつける方法も運用していました。
 水平爆撃は高々度爆撃であり、静止目標でないと命中は期待できません。また、急降下爆撃は艦船の進行方向の後上方から進入するとともに降下速度制限が必要です。そのため迎撃側からすれば、対空火器の管制が容易です。雷撃もまた、進入高度が一定なのと速度が遅いために対処が容易なのです。

 特攻は一種の誘導兵器です。パイロット自身が最終誘導まで行うので、進入角度や方向が自在なのです。しかも、降下速度は舵の利く範囲で高速を維持できます。航空特攻が合理的といった理由はこの故です。

 上に昭和19年6月のマリアナ沖海戦の戦果を記していますが、これこそが無謀というか無意味な作戦じゃないでしょうか。そもそも、アメリカ主力艦隊への航空攻撃が有効だったのは、開戦後半年間だけでしょう。ミッドウェーまで何とか通用したものの、10月の南太平洋海戦では、強力な対空砲火で優秀なパイロットを多数失っています。さらに翌18年からVT(近接)信管の配備が始まったため、米艦隊への通常攻撃はほとんど実効性を失いました。
 昭和18年後半以降、米艦隊はナンセンスといえるほど強力な体制を整えました。
  • 対空レーダーと火器の連動
  • 防空駆逐艦による輪形陣
  • 大出力エンジンによる強固な機体の戦闘機配備
  • 防空管制システムにより、迎撃機の事前誘導
 海軍首脳と現地指揮官はそのような実態を把握していながら、無意味な作戦を継続し、戦果も上がらない中、ひたすらパイロットと機材の損耗を重ねました。

 これに異議を唱えたのが有馬正文少将(戦死時)でした。うろ覚えなので自信がありませんが、昔なにかで読んだ記憶があります。有馬少将は、上に記したような損耗率と突入成功率との相関関係から、通常攻撃の無意味さを意見具申しています。そして自ら一式陸攻に搭乗し敵艦に突っ込んで戦死しました。これが特攻のアイデアの元になったとも言われています。

 ここで誤解しないでください。旧海軍の将官のなか、有馬氏は私が最も尊敬する方です。有馬氏は極めて合理的思考の持ち主なのです。
  • ミッドウェー海戦の戦訓をもとに、南太平洋海戦の作戦前に空母翔鶴(当時艦長)の艦内の塗装を剥がしたうえ、ハンモックを含め無用な可燃物を撤去させた
  • 戦闘時、攻撃隊が発艦した後、甲板上の消火ホースから水を流しっぱなしにした
 これらの対処によって、翔鶴は被弾しながらも火災が発生せず、艦の放棄をしなくて済みました。ちなみに旧海軍は消火設備の貧弱さと消火訓練が不十分であったことから、不必要に艦艇を放棄しています。消火が徹底していれば、半数が助けられたとされています。

 有馬氏の合理的思考は、戦果拡大思考にも顕れています。優勢な状況下であれば、攻勢を取り、戦果拡大に努めるべしとの意見具申も行っています。この点では、栗田健男氏と対極を為しています。

 また、有馬氏は兵士の生命を大切にした武人でもあります。未帰還機を迎えるために、夜間照明照射を命じました。また、不時着パイロット捜索のために戦場残留を具申してもいます。
 有馬氏が航空機による突入攻撃の意見具申をしたのは、決して人命軽視の故ではありません。戦果を上げるための合理的検討による結果だと思われます。


 特攻を酷いものと語るのは簡単ですが、そもそも戦争そのものが酷いというべきでしょう。劣悪貧弱な武器で闘う兵士の心情は無念さに溢れていたでしょう。逃げ場もなく、圧倒的な米軍を迎え撃つ命令を受けるのは、死ねというのと同義です。メジュロ、マキン、タラワ、サイパン、硫黄島、沖縄、千島などの守備隊兵士の運命もまた過酷であり、特攻に劣るといえるのか。
 ことさら、特攻を悲劇的に語るのは止めましょう。優勢に戦っていた中国戦線でさえ、70数万人が戦死しています。戦死した兵士たちの任務というか、作戦命令は死ねというに相応しい内容です。
 また、インパールやニューギニア戦線の悲惨さは、特攻すべてを合わせてもはるかに及ばないでしょう。
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四百拾七  芸能人とクスリ(2009/8/8)
 今、NETのニュースで、タレントの酒井法子容疑者が警察施設に出頭のニュースが流れました。次いで、TVで「酒井法子容疑者逮捕」の速報が流れました。

 実は私、お恥ずかしいことに酒井法子氏のことをまったく知りませんでした。名前を聞いたことがある程度の無知さ加減です。ですから今回の失踪事件については、意外でも何でもありませんでした。

 旦那が覚醒剤所持で現行犯逮捕された後、行方不明になっているとのニュースを聞いたとき、「あ〜、こりゃクスリを抜くための時間稼ぎだな」と思いましたもん。子供への影響を心配しての行動だとか、周囲への気配りが繊細だとかの被害者像をつくり上げようとする報道はうざかったです。

 普通だったら、旦那に弁護士をつけたり、接見したりで忙しくなるところです。それをばっくれるというのは、自身に後ろめたいことがあるからに違いありません。
 酒井容疑者に同情的な報道をしていたマスコミも、容疑者の自宅から覚醒剤の吸入器が見つかったとの警察情報が与えられるや掌を返しました。一転、容疑者は以前から常習の噂があっただのの報道を始めました。知っていたなら最初から書けよな。


 押尾学容疑者逮捕のニュースを聞いても意外性がありません。ちなみに、この押尾容疑者のこともまったく知りません。

 芸能人に限らず、若者の間でクスリの使用は珍しくもないでしょう。酒井容疑者の旦那が職質を受けたのは、渋谷署警邏隊でしたっけ。きっと、渋谷署管内においては、クスリの使用者がわんさかいるのでしょうね。


 今、ワイドショーで逮捕の状況が報じられています。
 弁護士に付き添われて出頭したそうです。自首というのは、こういうものです。個人で出頭しても駄目だそうです。本当にちゃっかりしています。自分のことについては、しっかり弁護士を手配するくせに、旦那はほったらかしだもんね。
 まあ、旦那もろくでなしですから、どっちもどっちでしょう。

 彼女のタレント生命は、もうおしまいでしょうね。まあ、仕方ありませんわな。日本の覚醒剤使用に対する刑罰は軽いものです。東南アジア各国は、極めて厳罰で臨んでいます。日本人旅行者が、東南アジア税関で覚醒剤所持によって拘束される例は多いそうです。その場合、5〜10年間の収監は珍しくありません。
 日本ももっと厳しくして、覚せい剤使用は割に合わないものだとの考えを浸透させるべきです。飲酒運転が減ったのも、厳罰化が効いたためでしょう。

 酒井氏も激しく後悔していることでしょうが、仕方ないことです。犯した罪は自ら贖うしかありません。
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四百拾六  リャドの技法(2009/8/1)
 美の巨人で、ホアキン・トレンツ・リャドの「カネットの睡蓮」が採り上げられました。

 リャドについては、以前にも書きましたが、“光の収集家”と称される天才画家です。今回の番組中で、リャド自身の言葉として「私は天才ではない。ただ、才能はある」が紹介されていました。おしゃれなセリフですね。しかし、彼はまぎれもなく天才です。リャドが天才でなくて、一体誰が天才だというのか。


 今回の番組でピックアップされた「カネットの睡蓮」は次の絵です。リャドの特徴であるモチーフを囲む窓が存在しない、むしろリャドには珍しい構図です。

 印象派というか、モネを彷彿させるモチーフです。太陽光が降り注ぐコントラストが鮮やかです。水面に映る樹木と光線の反射も見事に計算された描写です。

(C) TV東京


 描写は荒いものです。でありながら、距離をとるとリアルな筆致と感じさせられます。



 番組では、絵の細部を拡大し、リャドの秘密を明らかにしてくれました。



 さらに拡大すると、下図のようになっています。
 「スプラッシング」と呼ばれる、絵の具を飛ばす技法です。絵の具が飛び散り、あるいは滴り落ちています。



 リャドの技法については、想像していたとおりでした。こういう技法は、圧倒的なデッサン力あってのものです。多分、この手の描画を為す画家は、世界中でごまんといることでしょう。リャドは、その頂点に位置する画家です。

 リャドは速描きだったそうです。素早く手を動かし、休む間もなく絵の具を置いていったとのことです。番組では、弟子がその技法を再現してくれました。
 私も学生時代に油絵を描いていた頃は、リャド風の速描きをしていました。もっとも、デッサン力がありませんので、ある程度説明的な描きこみが必要でした。当然、出来上がった絵は、リャドに比べるべくもないお粗末なものです。


 ところで、明日まで東京でリャドの原画展が行われています。観に行きたくて仕方ないのですが、往復航空運賃が5万円を超えるとあっては躊躇ってしまいます。あ〜、自分の貧乏性が恨めしい。
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四百拾五  次期FXの選択(2009/7/25)
 先週のコラムに書いた、アメリカの2010会計年度国防予算案から、F22の調達費を削除する法案が上院で可決されました。

  これで完全にF-22の目はなくなりました。今後の防衛省側の焦点は、F-35に絞られるでしょうが、勘弁して欲しいです。防衛省は国内航空産業の壊滅を問題にしていません。「産業政策は、経産省のマターだ」などとほざいています。なんだかなあ、今の軍人も旧軍のメンタリティと変わっていませんねえ。

 ユーロファイターの目は、まずありえません。現在の要撃を含む制空戦闘は、AWACS(早期警戒管制機)のサポートと一体化しています。戦闘機個々の性能など、AWACSの圧倒的な索敵、識別能力の前には無意味です。AWACSとミサイルの性能でほぼ勝負は決まります。日本が採用しているE-2CとE-767は、採用戦闘機との間でデータリンクが構築されています。特にE-767とF-15は、互いのコンピュータ同士で直接やり取りできます。ユーロファイターだと、そこまでのリンクが構築できないのではないか。
 データリンクだけでなく、工業規格の面でも、アメリカ機を運用してきた日本には無理が多いと思われます。


 私が希望するファントム後継機は、F-15SE(ストライク・イーグル)です。FX用として、F-15FXと称する向きもあります。F-15Eの発展型で、複座の空対地性能を強化したものです。機体の軽量化やアビオの強化も顕著で、今後もアメリカ空軍の主力であり続けます。
 ボーイング社がステルス版として提案している、SE(サイレント・イーグル)は相手にする必要ないでしょう。まだ、開発前の実体のない代物です。発注すれば、きっと巨額の開発費を要求してくるでしょうし、ステルスを理由にライセンス生産を拒否されそうですしね。


 F-15Eであれば、現行機運用のノウハウも生かせますし、共用部品も多いことから無駄がありません。心配なのは強力な対地攻撃能力に対して、野党なんかがいちゃもんをつけそうなことです。
 この点には矛盾があります。今の戦闘機はペイロードが大きいので、必然的に強力な対地攻撃能力も併せ持っているのです。国産FXは専守防衛の観点から、常にその能力を削いで開発されてきました。その一方で、対地(対艦)攻撃能力を持った支援戦闘機という別機種を別途採用しています。一体何をやっているんだか。馬鹿馬鹿しい限りです。

 F-15Eを採用すれば、F-4EJだけでなく、F-2の後継をも兼ねることができます。まさに、日本の航空戦力は大幅に整備されます。

 ロシアが開発している第5世代機が極東配備され、中国が同機を採用するのは20年後くらいでしょう。日本がF-15の後継を配備するのは、そのタイミングに間に合えばいいと思います。

 20年後に向けたFX開発こそが日本の生命線であると考えます。今度こそ国産開発を実現すべきです。防衛省は第5世代機時代の防空体制を研究するため、実証実験機「心神」の開発を進めています。機体形状、材質、推力偏向エンジン、デジタル・フライ・バイ・ワイヤなどの技術検証を行う予定です。日本には、これらをクリアする技術があります。
 ただ、エンジンだけは無理でしょうね。アフターバーナーなしのドライ燃焼で超音速飛行するなんて、夢のまた夢でしょう。エンジンだけライセンス生産する線で考慮していただきたいところです。優秀なエンジンはアメリカだけでなく、ロシアやイギリスにもあることから、導入は可能です。


 F-2支援戦闘機開発時のようなごたごたはもうたくさんです。まず、日本側が明確な国産開発の意思表示を為すべきです。その際には、アメリカ側の圧力やアメリカの尻馬に乗った政治家が口出ししてくるでしょうが、撥ね返して欲しいものです。
 きっと素晴らしい飛行機が完成すると、私は信じています。
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四百拾四  次期FXは問題ばかり(2009/7/18)
 この一週間、F-22をめぐる状況に変化がありました。アメリカの下院が上院に続き、F-22調達費と禁輸解禁に向けての調査費を含む補正予算案を可決しました。

 生産中止の決定以降、製造に係わる企業を選挙区に有する議員たちは、生産再開の大合唱を唱えてきました。生産や部品供給に係わる州は44州にも及ぶそうです。おかげで、下院の予算案可決は圧倒的多数に拠っています。
 しかし、政府側もまた強硬です。国防総省幹部が次々とF-22不要発言を行っています。また、上院軍事委員会のレビン委員長(民主)とマケイン筆頭理事(共和)が歩調を合わせて、来年度国防予算案から調達継続削除を求める法案を提出しています。レビン、マケイン両氏は文句なしの大物です。

 両者の綱引きはまだまだ揉めそうな雲行きです。主張する内容を整理すると次のような具合です。

 政府側
 ・F-22は高額で、調達継続は国防費を無駄にする。
 ・調達価格だけでなく、維持費が高額すぎる(ぬばたま注:F-15の4倍程度)
 ・今後は、F-35の開発調達に注力すべきである。F-35は、空軍だけでなく、海軍、艦載、海兵隊、イギリス海空軍などの多用途に応えられるマルチロール機である。
 特に、オランダが出資グループから抜けたので、是非とも日本を取り込み、莫大な開発費を出させたい。そのためにもF-22は不要。

 議会側
 ・F-22の生産は、2万人を超える雇用を保障する。
 ・禁輸を解除し、日本のFXに採用させればアメリカの負担は生じない。


 なんだか、アメリカ側にいいように扱われているでしょう。議会が推すF-22の輸出仕様なんて喜べません。基本的にF-22にしろF-35にしろ、ライセンス生産は認められません。そのうえ、修理もアメリカ側が行います。加えて、輸出仕様は俗に言う“モンキー仕様”で、大幅な性能ダウンとなります。そんなモンキー仕様開発費まで請求されます。請求の内訳なんて、どうせ丼もいいとこでしょうし。
 ちなみに、現行F-15Jも劣化仕様であり、エンジンパワーが大幅に制限されています。

 もし、F-22かF-35を導入するとなったら、日本の航空機製造・開発現場は壊滅します。すでに、支援戦闘機F-2の調達終了が間近であり、次期FXまでが輸入となると完全に止めを刺されます。
 そもそも防衛産業の危うさというものは、昨日今日の話でなく、30年前から言われ続けてきたところです。毎年、僅かな納品をするために大きなラインを維持するなど、経営的に見合わないのです。昨今の不況もあって、メーカーも“お国のため”とか言っていられないでしょう。
 例えば、火炎放射器なんて自衛隊以外に売れません。修理部品の納入は僅かです。でありながら、特注品ばかりのパーツ製造ラインを維持しなければならないのです。やってられないでしょうね。


 私は、F-22導入に大反対です。米空軍調達価格は1機当たり140億円程度でしょう。F-15の4倍以上ですね。調達機数が違うので単純比較はできませんけど。
 で、日本への輸出価格は240億円とかほざいています。もうこんな好き勝手を言わせるのは止めましょうぜ。昔、F2支援戦闘機の国内開発を目指したとき、アメリカは無理難題を押しつけました。国産ASM(対艦ミサイル)のプラットフォーム化を図るための開発費用について、アメリカは日本側見積りの1.5倍くらいふっかけてくれましたから。

 あのとき、エンジンだけ提供してくれれば、国産機開発は可能だったのです。ブッシュ政権はOKだったのが、クリントンに替わったために、F-16の再設計とか訳の分からないものを押しつけられました。

 F-22は、維持の面からも避けるべきです。同じステルス機(爆撃機)のF-117は、昨年すべて退役しました。就役期間が短かったのは、維持費が高額なためです。出撃のたびに塗装をしなければならず、運用基地には専用保守設備が必要となります。F-22運用の難しさは、F-117以上でないか。

 F-35は日本のFXに必要な要目を満たしていないでしょう。統合打撃戦闘機とか謳い、多様な用途を満たすため、不十分な面があります。速度と航続距離の2点は、FXとして能力不足が否めません。
 もっとも、FX導入に間に合わないことから、性能云々以前の問題ですけど。開発が順調に進んだと仮定して、米空軍に一番手で納品されるのが2012年、アメリカ以外への納品は2014年以降です。開発計画に参加していない日本への納品は、2020年以後のことでしょう。

 ついでに言うと、防衛省が開発中の空対空ミサイルは大型であり、F-22、F-35両機への機内格納はできません。機外装着は可能ですが、それだと、あえてステルス機を導入する意味がありません。


 アメリカ機が駄目なら、ユーロファイターはどうでしょうか。
 イギリス、イタリア、スペイン、ドイツの共同開発になるもので、先代のトーネードの経験があるのでマルチロール性能は折り紙つきでしょう。アフターバーナーなしでの超音速巡航も可能です。

 ユーロファイターの優秀性をアピールするため、BAE(ブリティッシュ・エアロスペース)社はSu-27を基準とした空戦性能評価表をプレゼン資料として作成しています。ただし、この性能評価は当てになりません。各戦闘機のアビオ性能は推測であり、ユーロファイター有利の評価は手前味噌というものです。

 また、ヨーロッパ各国とも財政状況が厳しいため、契約機を購入したくないのが本音なのです。ドイツでは2004年からの導入開始であり、購入価格は1機当り110億円という高騰ぶりです。政治的な理由から、生産工場を開発4か国に振り分けざるを得ないため、効率が悪いのです。しかも故障が多く、原因究明のための対応も煩雑な状況です。

 ドイツ国民自身が、なんでこんな時代遅れの(F-22に比べ)戦闘機に110億円も払わなけりゃならないのだと怒っています。また、故障多発による稼働率の低さでも不評を買っています。
 ちなみに、設計・製造上の不備による故障であっても、修理費は購入政府が支払わなければならないのです。大きな声では言えませんが、ユーロファイターはポンコツです。まあ、数年後には完成度も高まっているでしょうが。


 F-22、F-35、ユーロファイターのいずれも導入すべきでないと私は考えています。なら、次期FXはどうすべきか、次週にでも書きます。
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四百拾参  次期FX混迷(2009/7/12)
 日本のFX(次期主力戦闘機)選定が行き詰っています。第3次FXまでの決定機種に間違いはなかったと思います。第1次:F-104J、第2次:F-4EJ(ファントムU)、第3次:F-15J/DJ(イーグル)と、その時点において最良の選択を行ってきたところです。現在、日本の防空の主力を担っているのは、F-15J(単座)とF-15DJ(複座)で、配備数は合わせて200余機といったところでしょう。


 問題は、1971年から導入を開始したF-4ファントムUが38年目を迎え、本格的な退役スケジュールが始まっていることです。これに替わるFXとして、平成17年度から22年度の防衛計画で導入を開始する予定だったのです。この予定が大幅に狂ったというか、まったく目処の立たない状況なのです。

 ちなみにF-4ファントムは、西側世界11か国で採用され、5,000機以上が生産されました。中でも日本は唯一ライセンス生産が認められたため、最終生産機は国産のものです。しかも、製造能力があるため、改修や補修が可能であり、F-4EJ改によって、日本独自の戦術要目を満たすことも可能としました。
 後で述べますが、ライセンス生産の可否は極めて重要なポイントとなります。


 FXは、F-4EJの直接的な後継であるとともに、F-15Jの後継でもあります。そのため、F-15Jの次世代仕様を満たす必要から、選定が難しいものとなっています。この次世代仕様が第5世代機と呼ばれるものです。第5世代機の呼称は、もともとロシアが発したものといわれており、その仕様は次のようなものです。

 ステルス性能
  ・レーダー反射波を特定の方向に制限する
  ・投影面積を縮減する
  ・レーダー波を吸収する など
 アビオニクス性能
  ・遠距離性能、目標認識、画像解析、地形画像機能、地上移動目標識別・追跡、データリンク など
 フライ・バイ・ワイヤ
  ・推力偏向エンジン
  ・カナード翼(CCV)
  ・あらゆる速度域、飛行状態に応じた自動制御
 スーパークルーズ性能
  ・アフターバーナーなしでの超音速飛行
 マルチロール性能
  ・対地、対艦など多用途ミッション

 これら仕様を高度に満たす機体が第5世代機といわれ、現在のところ、アメリカ空軍が採用しているF-22(ラプター)のみが該当します。

 現在、実戦配備に向けて開発中のもの
 ○F-35(ライトニングU)
   米(ロッキード・マーチン社)、英、伊
 ○T-50
   ロシア(スホーイ社)

 また、4.5世代機に該当し、実戦配備されているもの
 ○ユーロファイター(タイフーン)
   英、独、伊、スペイン共同開発。スーパークルーズ可能
 ○ラファール
   仏(ダッソー社)

 同じ4.5世代機で開発中のもの
 ○F/A-18E(F)(スーパーホーネット)
   アビオ改修予定。マルチロール性能は絶大
 ○F-15E(ストライク・イーグル)
   レーダー近代化などのアビオ改修で大幅な能力アップ

 F-22(ラプター)は、唯一実戦配備されている機体であるとともに、開発中の機体をさえ上回る高性能を誇っています。第5世代機の要件中、マルチロール性能に関しては、高いステルス性能と引き換えに劣っています。もっとも、アメリカ空軍としては高価なF-22を危険な対地攻撃ミッションに使う気はないでしょう。F-35とのハイロー・ミックス戦略で賄うつもりのはずです。
 F-22は制空戦闘に特化した、まさに無敵のファイターです。空自のFX第一候補であったのが、アメリカ議会の対日禁輸議決を受けたうえ、オバマ大統領が生産中止を決めたので、空自FXへの導入は絶望的となりました。


 さてさて、今後の方向をどうすべきか。F-22導入断念は、個人的には喜ぶべきことだと考えています。そのあたりのことは、次週にでもじっくり書きます。
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四百拾弐  アオイホノオ(2009/7/4)
 漫画家の島本和彦氏の半自叙伝「アオイホノオ(小学館)」が話題を集めています。私は本作まで島本氏のことを知りませんでした。普段は読まない「週刊ヤングサンデー」をたまたま手に取ったところ、不定期連載されていた本作を目にして衝撃を受けたのです。

 以後、欠かさず読み続け、単行本で以って堪能させてもらったところです。ちなみに「週刊ヤングサンデー」は廃刊になり、新たに創刊された「ゲッサン(月刊少年サンデー)」で連載は継続されているそうです。


 物語の舞台は1980年代の初め、大阪の大作家(おおさっか)芸術大学に学ぶ焔燃(ホノオモユル)が漫画家を目指す日々を描いたものです。
 「自分の実力ならいつでもプロデビューできる」と自信に溢れている中、豊かな才能に恵まれた同校の学生達や、あだち充、高橋留美子といった若手漫画家の台頭を目の当たりにして焦燥に駆られたり、挫折感に打ちのめされたりしながらも一歩一歩前進する内容です。

 この漫画が話題になっているのは、作者自身の学生時代の交遊関係が濃い点です。主人公が通う大作家(おおさっか)芸術大学は、大阪芸術大学をもじったものでしょう。当時の在学生たちが実名で登場します。

 映像計画学科の同級生として
 庵野秀明
 「エヴァンゲリオン」製作
 山賀博之
 「オネアミスの翼」の監督、アニメ会社「GAINAX」社長
 南雅彦
 「鋼の錬金術師」製作、アニメ会社「ボンズ」社長

 学内サークル漫研「グループCAS」創始者として
 矢野健太郎
 代表作「ネコじゃないモン!」
 「グループCAS」からは、後に「攻殻機動隊」の士郎正宗、「ゴン」の田中政志、畑健二郎、克・亜樹らを輩出


 また、当時の漫画界の状況を島本氏自身が感じたであろう想いとして主人公に語らせています。その対象として、あだち充や高橋留美子、細野不二彦、新谷かおるらが俎上に上げられています。
 その語り口がまた独特なのです。アマチュアからの憧憬に満ちた眼差しであるとともに、素人の身勝手な妄想でもあるわけです。ピント外れの分析を加えたり、わけの分からない思い込みでプロ作家たちを色づけしています。ネタにされたプロ作家たちはシャレと受け取っている模様ですが、島本氏自身はかなりびびっていたそうです。
 ほかにも石森章太郎氏の「漫画家入門」をおちょくってみたりで、読んでいてにやりとさせられました。


 映像計画学科とあって、漫画だけでなくアニメ関係のエピソードも満載です。富野由悠季、宮崎駿、金田伊功なんかが話中にネタとして語られています。ちなみに大阪芸術大の教授である依田義賢氏をモデルとして、妖怪のような風貌の教授が登場します。関係者の方々は、この作品が気になって仕方ないんじゃないかな。


 この作品の面白さは、他の自叙伝と違って熱血漫画として描かれている点です。私もそうでしたが、クリエイティブな方向を目指す若者の生態はまあこんなものです。根拠のない自信が漲っていたり、同時に根拠がない分薄っぺらであったりで、テンションだけで格好をつける面があります。業界関係者がやたらと注目するのも、彼らは一様に思い当たる節があるからではないでしょうか。

 物語は出版社への持込へと進んでいるそうです。とすると、実在の編集者らが登場していそうですね。第3巻の発売が待ち遠しいなあ。
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四百拾壱  大巨人対決(2009/6/28)

 ロイターによると、ボクシングのWBA世界ヘビー級王者のニコライ・ワルーエフ(ロシア)が、WBC王者のビタリ・クリチコ(ウクライナ)と統一戦を行うと発言したそうです。両者は試合を行うことに合意し、9月末か10月初めを検討している由です。

 ワルーエフは身長213cm、リーチ216cmであり、ボクシング史上最大の巨体を誇っています。一方のビタリ・クリチコは、弟のウラジミール・クリチコ(200cm、リーチ206cm)とともに世界王者に君臨する203cm、リーチ213cmの長身ボクサーです。この対戦が実現すれば、間違いなく史上最大のモンスター対決となるでしょう。


 近年のヘビー級は大型化が顕著であり、数年前までヘビー級のトップに君臨していたレノックス・ルイスもまた195cm、リーチ208cmの大型ボクサーでした。
 ウラジミールに勝ったレイモン・ブリュースター、ワルーエフにいい打ち込みをしたジャミール・マクラインも190cm台後半の大型ボクサーです。外にもマイケル・グラントやマウント・ウィティカー、トニー・トンプソンなどの2m級ボクサーがいます。


 これまで、モンスター対決の決定版といえば、レノックス・ルイスvsビタリ・クリチコ戦でした。互いに必倒ともいえる超強烈な右クロスを打ち合い、人間離れした闘いを見せてくれました。
 そのシーンをご覧ください。

 2m同士の闘いだと、このような構図になります。これは互いにパンチが届く中間距離です。左の黒人がルイスです。


 クリチコの右クロスが炸裂したシーンです。


 ルイスのお返しです。


 右クロスだけでなく、ジャブやアッパーも強烈でした。恵まれた体格のクリチコは、常に自分より小さい相手と対戦してきました。ルイスが初めての体格互角の相手でした。しかも、テクニックやパンチの多彩さはルイスが上で、クリチコが苦戦した唯一の試合でした。クリス・バード戦の脱臼による試合放棄は別にしてですが。

 クリチコvsワルーエフ戦では、ルイス戦以来の超ド迫力映像が見られそうです。というか、現在のヘビー級戦線はクリチコ兄弟とワルーエフが圧倒的な強さを誇っており、カードに魅力がないのです。期待のサミュエル・ピーターでさえ、ビタリに一発のパンチも当ることができませんでした。そんな一方的な試合を観ても面白いはずがありません。

 で、この大巨人対決を楽しみにしているのですが、私の予想では凡戦になりそうな気がします。多分、クリチコがスピードと連打で圧倒し、大差の判定勝ちとなりそうです。やっぱヘビー級は今後も盛り上がりそうにありません。

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四百拾   永井淳さん死去(2009/6/20)
 翻訳家の永井淳さんが6月4日、逝去されました。74歳とかで、静養中も仕事をしていたそうです。というか、肺を患って出歩くこともできず、仕事をするしかないと言ってたそうです。

 業績は多岐にわたっていて、私の好きなジェフリー・アーチャー全作を手がけています。また、スティーブン・キングの出世作「キャリー」も永井さんの翻訳です。

 この6月に出版されたジェフリー・アーチャーの『誇りと復讐』が遺作となりました。アーチャーの新作を完成させた後、亡くなったことに運命的なものを感じます。
 『誇りと復讐』は待ち望まれていた作品です。アーチャーは偽証の罪で収監され、自身の収監体験をもとに短編集『プリズン・ストーリーズ』を書いています。『プリズン・ストーリーズ』は、受刑者たちから聞いた話を元にウィットの効いた小話に仕上げたものです。
 さらに、刑務所の体験をふんだんに生かした現代版モンテ・クリスト伯ともいうべき復讐譚を書いているという噂が以前からありました。そして、永井さん死去のニュースと時を同じくして出版されたのです。

 ジェフリー・アーチャーは、サーガ(一代記)、コンゲーム、短編集の3ジャンルをローテーションで書いています。本作は、『百万ドルを取り返せ』にも似た物語です。『百万ドルを取り返せ』は、詐欺にあった株損失をきっちり損害分だけ取り返す話ですが、本作は身内を殺された恨みと濡れ衣を晴らす復讐譚ともなっています。

 罠に嵌められた主人公が送る刑務所生活は、まんまアーチャー自身の体験が生かされています。さすが体験を元にしているだけあって、描写は生き生きとしています。おかげで、嘘くさい仕掛けにも不自然さを感じることがありません。
 モンテ・クリスト伯ということは、他人になりすます展開です。殺された同房の男に入れ替わり、その男の財産相続問題にも立ち向かいます。このあたりはアーチャー得意のコンゲームの趣があり、さらには殺人の罪をなすりつけた4人組を罠にかけて破滅に導きます。

 ラストは法廷での決着であり、法廷シーンには何度もニヤリとさせられました。リーガル・サスペンスとしての面白さも格別で、贅沢ともいえる小説です。
 アーチャーの小説は誰であってもお薦めできます。読んで損はないし、お楽しみ度は二重丸です。ご一読を。
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四百九   虚ろな国(2009/6/13)
 統一日報の記事に、朝鮮労働党中央党副部長による講演の録音テープ(抜粋)紹介がありました。

 2002年10月3日の「米朝会談」で、北朝鮮外務省の副相によるケリー国務次官補に対する発言を紹介しています。
 「オイ、核兵器がお前らだけが持てるものか、我々も持つ権限がある、出て行け!」

 続けて
 ケリーは、10日間一言も言えずじっとしていて、十一日目の10月17日、北朝鮮が核を開発したと認めた、とその時嘘をついたのです。なぜ嘘をついたのか。我々の周りの国々が、我々が強くなるのを望みません。だから、我々が核を開発したと認めた、と嘘をついておけば、我々の周辺の国々が一斉に我々に悪態口を浴びせるだろうと思ったということです。ところが、我々の周辺の国々が一斉に、米国に騒ぎ始めたのです。なぜか、これから情勢が悪化し戦争が勃発する場合、自らの屋根に先に火が付くから,,,

 この発言から、北朝鮮が勘違いしていることが窺われます。
 核の恫喝に日韓が怯えると思い込んでいる模様です。これは大いなる勘違いであるとともに、講演内容全文を読むと、北朝鮮の行動原理が理解できます。

 テポドン2の発射、地下核実験のいずれもが金正日の指示であると、はっきり述べられています。ロケット開発や核開発のために、大切なリソースを食い潰していることも認識しています。確信犯的に国民生活を犠牲にしているのです。

 労働党中央党副部長が言うように、大きな犠牲を払うことによって、周辺国がアメリカをせっつくような効果が上がっているのでしょうか。この点が勘違いなのです。


 テポドン2の失敗は明らかだし、2009年5月25日の地下核実験成功の発表も怪しい状況です。
 6月11日の朝雲新聞によると

 政府は6月5日、北朝鮮が核実験を実施した5月25日から、空自のT4中等練習機を使って大気の浮遊塵を採取し、放射性物質のモニタリングをしていた活動を終了させた。

 モニタリングの分析結果で異常値は検出されなかった。

 浮遊塵の採取は北部(三沢基地)、中部(百里基地)、西部(築城)から浮遊塵採取ポットを取り付けたT4を使い、3空域で高度1万メートルと3,000メートルを、毎日1〜2回実施。述べ18回採取し、日本分析センター(千葉市)で核種分析を実施していた。


 つまり、現時点では北朝鮮が地下核実験を実施したことが確定していないのです。地下核実験であっても、必ず放射性物資が大気中に放出されます。これを確認して、初めて核爆発が認定されるのです。現時点において、自衛隊は確認できていないのです。ひょっとしたら、米軍やロシアはすでに放射性物質を回収しているかもしれませんが、未だ発表されていません。

 ロケット打ち上げ失敗といい、核爆発未達成といい、その実態は筒抜けですから、北朝鮮幹部の期待するような効果は上がっていないでしょう。マスコミや一部政治家が騒いでいるだけで、国民一般は冷静なものです。

 6カ国協議でも、日本政府は核より拉致被害者救出を優先させているくらいです。核の恫喝は無駄というものです。
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四百八   万全の体制(2009/6/7)
 PCの修理が完了しました。マザーボードは入れ替えで、電源とCPUファンは、より大容量のものに換装された模様です。旧いパーツが手元にないので正確なところは分かりません。電源投入時のファンの音が大きくなったことと内部イルミネーションがえらい派手になったことから、上位の製品に替えたことが窺われます。

 VistaにSP2のパッチを当てたことと相まって、すこぶる快適です。もう一台のAthlonマシン(2000年モデル)も、この2週間よく代役を務めてくれました。こちらも快調で、死角なしの状況です。

 職場で使っているノートPCもご機嫌です。CPUコアは2つも要りません。Celeronで十分です。Windows XPともなれば、メモリを2GB積めば天国気分です。Adobe CS4を使っていて、メモリ不足でディスク・アクセスが生じることもありません。

 2001年に購入した旧いノートPCは、仕事を手伝っていただいている嘱託の方に貸しています。WordとExcelのみの用途ですから十分です。Windows2000にOffice2000の組み合わせはベストマッチでしょう。いえ、Office2000を使うだけなら、NT4.0がベストかも知れませんね。
 個人的にCMS(カラー・マネージメント・システム)が必要なので、Windows2000以降を必須としますが、色に拘らない方であれば、未だWindows NT4.0でこと足りるでしょう。Office2007なんて触りたくもありません。あんなのを使っている方の気が知れません。使い勝手がよくなったと誉めるユーザを知りませんし。


 ブロードバンド・ルータもBUFFALOに新調しました。左側の旧いものはスループットが低く、光ケーブルの100Mbpsに見合わないので放置していました。先月、90数Mbpsの高速タイプを購入し、晴れてLAN環境も復活しました。ここ2年間、ファイルのやり取りはフラッシュ・メモリに頼るという退化した状況でしたから。




 現場仕事に復帰したことから、デザイン業務が増えています。そのための準備は着々と整っています。さあ、来いってなものです。
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四百七   Vista SP2とBIOS昇天(09/5/30)
 Windows Vista SP2が公開されたので、さっそく適用しました。これはいい。Windows Vistaここが変で指摘していた不具合がすべて直っています。

 試しにフラッシュメモリを挿し、内部のファイルを使用した後も、問題なく取り外しできるようになりました。また、ごみ箱を空にした後、ちゃんとアイコンが“ごみ箱(空)”に変更されます。そしてなにより嬉しいのは、エクスプローラーの挙動がスムースになったことです。フォルダを指定した際の、内部ファイルの表示が明らかに速くなっています。まあ、今までが遅すぎたのでしょう。

 この感想は、SP2適用後、少し触ってのものです。症状が完全に解消されたかどうかは、もっと多様なケースを検証しないと断定できません。いろいろ検証するはずが、メインマシンが起動しなくなり凹んでいます。

 

 Vistaが快適になったので、調子に乗ってBIOSアップデートも試みました。で、やってしまいました。今までBIOS書換えで失敗したことはありません。最近はバックアップも取らず、Windowsモードで更新していたくらいです。まったく油断していました。BIOSの書換え失敗どころか飛ばしてしまったのです。

 プログラムの書換えが開始されても、全然進行しなかったのです。30分ほど待って、仕方なく電源を落としました。当然起動せず、というかブートさえしませんでした。きっと昇天してしまったのでしょう。

 翌日、修理に出したところ、マザーボード交換が必要と言われました。てっきりBIOS交換だけですむだろうと甘く考えていました。さらに本日、電源とCPUファンも交換しなければ持たないとの追い打ちがあり、ショックを受けています。まったく予定外の大出費で腹立たしい限りです。しかも、部品が届くのに日数がかかり、修理できるのは早くても2週間以上先とのことです。

 不具合の原因は、基本的に内部冷却の問題だと思われます。今のパーツはいずれもが消費電力が大きくて熱を出しすぎです。2000年に購入したAthlonマシンも発熱が大きいと思っていましたが、現行機器と比べれば緩いものです。PC購入後2年余での部品交換は、辛いものがあります。

 

 この文章は、職場に持参していたノートPCを持ち帰って書き込んでいます。メインマシンではホームページ・ビルダーで作業していましたが、ノートにはどうせならと Dreamweaver を入れました。まあ、勉強も兼ねてです。

 四苦八苦しながら作業しています。Dreamweaverには馴染みがないので、余計な手間がかかります。それと動作が遅いため、入力と表示のラグが大きいのです。また、レイアウト画面の表示にバグがあります。あり得ないような表示が為されるのです。

 不安になって、ときどきビュー画面で確認をしてしまいます。レイアウト画面でレイアウト表示が狂っていたら意味がありません。まあ、Web本職の方々は、テキスト画面主体で作業しているのでしょうね。でなきゃ、Adobeに苦情が殺到しているはずですから。

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四百六   おニューPC(2009/5/23)
 新しいノートPCのセットアップを終え、早速仕事で利用しています。Faithでカスタマイズした安価な商品です。

 CPU:Celeron2.16GHz
 メモリ:2GB
 グラフィックはチップセット内蔵の安価なモデルで、64.799円でした。しょぼい内容ですが、Windows XPなので快適です。

 ただ、液晶だけは17インチ(1,440*900)を奢っています。この液晶は安価なモデルだけあって、視野角が若干狭めです。まあ、大型の液晶であれば、こんなものかとも思います。

 問題は諧調レンジが狭いことです。また、諧調のバランスも悪く、ハイライト部分が飛び気味でした。でも、この問題は解決できます。
 セットアップの最終作業は、i1によるハードウェア・キャリブレーションです。i1は万能薬といっていいほどの効果を発揮してくれます。

 作成したプロファイルを指定すると、リニアな諧調が得られました。ただ、パネルそのものの品質が低いので、色再現性の悪さは仕方ありません。下図はAdobe Illustrator CS4を全画面表示したうえで、CMYKの色指定をしたところです。



 墨0%〜100%のグラデーションをご覧ください。ハイライト飛びはかなり緩和されています。一方、シアン/マゼンタ/イエローのインキ色再現には不満があります。また、シアン100%とマゼンタ100%を掛け合わせた色も若干変です。

 画面の広さはさすがでしょう。あと、もう少し縦方向があると助かるのですが、現行機種には適切な表示解像度の製品が存在しません。WUXGAであれば1,200ピクセルですが、17型のパネルだと表示が小さくなりすぎます。1,440*900が適当なところでしょう。

 今のところ、前に使っていたノートに比べて快適です。14.1インチ(1,024*768)から大幅に広くなったことから、幸せ気分を味わっているところです。
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四百五   二つの不正(2009/5/16)
 アメリカで4月に開催されたエドウィン・バレロvsアントニオ・ピタルア戦が放映されました。バレロはS.フェザー級屈指の強打者でしたが、タイトル返上の上、ライト級王座決定戦が行われたのです。

 私はバレロが嫌いです。試合ぶりが汚く、反則すれすれのことをやるからです。実力は文句なしなのだから、もっとフェアに闘えばいいのにと残念なのです。
 今回の試合を観戦する際、フェアに闘うかどうか着目していました。で、やってくれました。2R開始直後、左右のコンボでダウンを奪い、立ち上がったピタルアを滅多打ちにしてのTKO勝利でした。

 最初のダウンを奪ったパンチは右フックです。問題とすべきは、その前に放った左です。どうみても肘を畳んでぶつけているようにしか見えません。映像をご覧ください。

ここからさらに左腕を引きます。


こちら側からでは分かりづらいですが、フックの軌道ではありません。ストレートのようにまっすぐ打っています。


ところが、肘が畳まれており、完全な肘打ちとなっています。


 レフェリーは眼前で行われた反則が見えていないみたいです。本来であれば、バレロから反則減点を取り、ピタルアに十分な休憩を与えるべきところです。
 私にしても、バレロのボクシングが汚いことを承知の上で注視していたからこそ気づいたのであり、知らなければ見逃したでしょう。

 誰かバレロにお仕置きをしてくれんかなあ。マルケスあたりなら、きっちり倒してくれるでしょう。今後のお楽しみということで。


 5月15日のYOMIURI ONLINEから

 公金でコンパニオン、宴席代4年で990万円…福井の職能協会

 飲み食いだけで990万円−−。多額の不正支出が明らかになった職業能力開発協会を巡る問題で、福井県の協会では、宴席に女性コンパニオンを呼んでいたことも判明。公金のあきれた使い道に批判が集まりそうだ。

 「このようなカネの使い方に、国民は納得しませんよ」。昨年4月、福井市内の官庁街にある福井県職業能力開発協会(職員14人)。会計検査院の調査官から経理書類を前に追及を受けた協会幹部は、ただうろたえるばかりだったという。

 同協会で発覚した不正は約1585万円。懇親会費のほか、各職業団体や企業の担当者を集めた総会で配った記念品代。中身はせっけんやタオルだった。

 宴席は市内のホテルで催され、役員だけが集まる会合でも、毎回のように女性コンパニオンが呼ばれたという。2次会も恒例。行きつけのスナックもあり、支払いは協会の資金をあてた。

 その費用が4年で計約990万円。幹部は調査官に、「国や県は以前、懇親会を認めてくれていたんですよ」と釈明。これについて、国とともに協会に補助金を支出する同県労働政策課は「『会議費』の中に懇親会の飲食代が潜り込み、見抜けなかっただけ。認めていたわけではない」と否定した。

 検査院は昨年から協会の調査に着手。無作為に選んだ8県で計約3400万円の不正を突き止めた。すべての県で不透明な支出が判明したことから、他の39都道府県の協会についても調べることにしたという。秋に首相に提出する年次報告書に全容が記載される見通しだ。


 このニュースは他人ごとではありません。職業能力開発協会の不正支出は決して多額でないにしろ、襟を正すべき問題です。この件については守秘義務もありますから、コメントできません。まあ、私は今年度から配置替えで、担当でなくなったので傍観するだけです。
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四百四   大聖堂―果てしなき世界(2009/5/10)
 ケン・フォレットの新作、あの畢生の大傑作「大聖堂」の続編を読みました。ソフトバンク文庫から3月に発売された「大聖堂―果てしなき世界」です。

 前作の「大聖堂」は、全世界で1,500万部という空前のベストセラーとなりました。この作品は、発売当初はさして話題にもなりませんでした。専ら口コミで評判が広がっていったそうです。そりゃあそうでしょう。この小説を読んだ者は、例外なく感動に衝き動かされます。誰であっても、他人に薦めずにはおれないでしょうね。

 フォレットが続編を書いたのも、熱心な読者からの希望があまりに多かったからだそうです。で、発売後1年間で350万部も売れ、全米第1位のベストセラーとなりました。

 前作は新潮文庫1,800頁、本作はソフトバンク文庫2,000頁の大冊です。私はこの連休中の楽しみとしたのですが、結局、読み終わらなくて、つい先ほど読了したところです。なにせ頁数が多いだけでなく、政治、戦争、宗教、職人、商人、農民、疫病と物語の舞台装置が広いうえ、40年近い年月を描いているため、登場人物が多いのです。そのため、人物の把握が難しく、何度も読み返したりで暇がかかりました。


 読んだ感想としては、さすがに前作には及ばないというものでした。前作は、主人公のフィリップ(聖職者)がイングランドの架空の村であるキングスブリッジを信仰の拠点とし、繁栄に導き、信仰のシンボルとしての大聖堂を建立するまでを描いています。物語の目指すべき方向が明確であるだけに、小説としての完成度が高いのです。

 対して、本作は散漫な印象を免れません。主人公の一人であるマーティンは、前作のジャック・ビルダーの子孫であり、ジャックの建築家としての才能を受け継いでいます。で、キングスブリッジの大聖堂の尖塔をより高く再生する目標を持ちます。取ってつけたような目標であり、リフォーム程度の内容ですから大して重みがありません。
 マーティンの才能は建築だけでなく、生産機材の発明を通じての産業育成に発揮され、むしろその方面が面白くもあります。

 マーティンの幼馴染のカリスもまた、トム・ビルダーの子孫であり、重要な主人公です。カリスは14世紀の女性らしくなく、合理的な思考をする自立した女性に描かれています。マーティンと愛し合い、教会や宗教の理不尽さに挑んでいきます。

 マーティンやカリスの敵役となるのがキングスブリッジの修道院長です。アントニー、ゴドウィン、フィルモンと三代続く院長たちは、それぞれ凡庸、悪辣、恥知らずな気質である故、マーティンたちを苦しめます。前作のフィリップ院長とは大違いです。

 また、前作における無法者はウイリアム・ハムレイでしたが、本作ではマーティンの弟のラルフがその役を担っています。無慈悲なキャラクターで、憎々しいかぎりです。このラルフのおかげで読者はハラハラさせられるわけですけどね。

 もう一人、農村の娘のグウェンダも重要な主人公です。そもそも物語はグウェンダの視点から始まります。グウェンダは土地さえ持たない農民の娘であり、父親はごみ屑のような人間です。この父親の命令で盗みを働き、かろうじて糊口を凌ぐほどの貧困に喘いでいます。まあ、その悲惨さを描くことによって、当時の生活の厳しさや社会の苛酷さを読者が実感できるのでしょう。


 本作はフォレット自身が「大聖堂」の続編と位置づけていますが、別物と考えた方がいいでしょう。タイトルの大聖堂にさして意味はありません。むしろ原題のまま「World without End(果てしなき世界)」の方が、より作品の内容に合っていると思います。

 散漫な内容と書きましたが、それだけ14世紀の世界を緻密に描いているのです。タイトルが単に「果てしなき世界」であれば、不満を感じることはありません。なまじ「大聖堂」と謳うから、前作と同じ風味を期待してしまうのです。
 未読の方は、本作を先に読む方がより楽しめるでしょう。面白さは保証します。
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四百参   史上最高のボクサー決定(2009/5/3)
 “アジアの至宝”“PFPボクサー”等々の称号を与えられているボクサーがいます。フィリピンのマニー・パッキャオがそれです。

 本日、ラスベガスにおいて、リッキー・ハットンと対戦しました。ハットンは最近のこと、WBA王者のポール・マリナッジに勝った実力者です。ウェルターまで制覇したがっちりした体格に加え、スピードのあるファイターです。さすがのパッキャオにとっても厳しい相手で、苦戦が予想されていました。

 ところがところが、2RTKOで鮮やかな勝利をかざりました。1R早々、身体を沈めながらの右フックでダウンを奪い、追撃の左ストレートで再度のダウンを奪いました。
 ここから一方的なパッキャオ・ワールドが展開され、2R、カウンターの左フックで沈めました。

 パッキャオは試合のたびに成長の跡を披露してくれます。
  ・対モラレス戦におけるショートの右フック
  ・対デラホーヤ戦におけるロングの右フック
  ・今回、ロングの左フック

 左フックが決定打になったのは意外でした。過去のパッキャオであれば、左を打つ空間とチャンスがあれば、必ずストレートを打ったところです。今回は、身体を突っ込みながら、左肩が遅れて回り込みました。もう、十分すぎるほど体重が乗り、ハットンの顎にピンポイントで激突しました。あのパンチを食らったら、もっと重い階級のボクサーでも倒れるでしょうね。

 フットワークのスピード、上体の柔軟性、パンチのスピード、連打のスピード、スタミナ、パンチ力などすべてが超一級品。しかも、パンチの多彩さは、試合ごとにバリエーションが広がるという成長ぶり。

 おっと、重要なことを忘れていました。パッキャオを指導しているフレディ・ローチさんも、トレーナーとして当代随一の名伯楽です。オスカー・デラホーヤvsフロイド・メイウェザー戦でも、デラホーヤについたローチさんは、対メイウェザーの戦法を完璧に仕上げていました。残念ながら、デラホーヤのスタミナが12Rまで持たなかったので敗けましたけど。

 昨日まで、パッキャオは現役ボクサー中、PFP(パウンド・フォー・パウンド)に最も相応しいと見なされていました。しかし、今日からは、ボクシング史上最高の称号が与えられるかもしれません。他の人は知らず、少なくとも私は、彼以上のボクサーを挙げることができません。


 現在、引退中のフロイド・メイウェザーがカムバックするそうです。復帰戦の相手はファン・マヌエル・マルケスで、体重次第では厳しい試合になりそうです。スーパー・ライト級だと、メイウェザーの楽勝でしょう。しかし、ライト級だと苦しみそうですね。
 マルケスはライト級において、ホエル・カサマヨルのスピードとタイミングに苦戦しました。また、パッキャとも接戦を2度演じています。彼らとの試合により、対スピード・スターの経験を積んでいます。ライト級で闘えば、メイウェザーといえど、勝てるかどうか難しいところです。

 メイウェザーvsマルケス戦は、パッキャとの対戦を睨んでのことですから、スーパー・ライト級で行われるでしょうね。メイウェザーにしてみれば、今さらライト級王座なんぞに興味もないでしょうし。

 さてさて、パッキャオvsメイウェザー戦が実現すれば、文句なしのスパーマッチとなります。私は、もう今から楽しみで仕方ありません。本音を言うと、メイウェザーが敗けるところを見たいのです。
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四百弐   Windows Vistaここが変(2009/5/3)
 Windows Vistaを使っていると、ときどき訳の分からない現象に出会います。一番困るのは、フラッシュメモリを挿した後、取り外しできないケースがあることです。
 ファイルにアクセス中だと、アンマウントできないのは当然です。ところが、使用中のアプリケーションをすべて終了してさえ取り外しができないのです。急ぎの場合は、仕方なく再起動しています。この仕様って、一体なんなのでしょうか。

 同じような現象として、ごみ箱を空にできないことが多々あります。いえ、空になっているのでしょうが、アイコンが“ごみ箱(空)”に変化しないのです。この現象は一般的に知られたケースのようですね。

 ごみ箱内のファイルに係るプロセスが動作中のためという説明を読んだことがあります。しかし、納得がいきません。アプリケーションをすべて終了しても駄目で、該当しそうなプロセスを終了しても駄目なのです。なにせ、再起動してもアイコンが変わらないのですから、プロセスの動作云々は関係ないでしょう。

 で、アイコンを“ごみ箱(空)”に再指定すれば、あっさり直ります。きっとバグなのでしょう。前述したフラッシュメモリがアンマウントできない件と似た話でないかと想像しています。


 アイコン表示とかアンマウントできないとかの話と違って、致命的な問題も存在します。“Explorer”が曲者で、ファイルにアクセスするだけで応答しなくなることがあります。Explorerを強制終了させるなんてことは、昔はそうそうありませんでした。NT3.51時代には、まず経験していません。一体なにが原因なのでしょうか。Explorerはファイル・マネージャーとしての役割を担っており、OSの基本的な構成要素でしょう。Vistaは、なんか信頼できないのです。


 Windows7のRCが配布開始となったそうで、β版から動作が速くなっていると専らの評判です。速さの秘密は、初期にロードされるサービス数が減っているためで、XPが40、Vistaが61に対し、Windows 7は49だそうです。単純にサービス数を比較すると、7は、XPとVistaのほぼ中間ですね。といっても、それぞれ、どのパッケージかによってサービス数が異なっているので、比較は難しいでしょうけど。
 私は不要なサービスを停止しています。それでもUltimate版とあって、サービス数は70を超えています。もう少しサービスを停止することは可能でしょう。でも、動作に不具合が出るかどうか判別し難いので、これ以上は自制しています。

 近々、SP2がリリースされるそうなので、Vistaの不具合が解消されることを願っています。ついでに、Windows7に実施したチューニングをフィードバックしてくれると有難いけど、まあ、MSがそんな殊勝なことをやるはずもないでしょう。


 一方で、MSに感心することもあります。私のもう一台のPCは、Windows2000なのですが、未だにセキュリティ更新プログラムが提供されます。もう9年前にリリースされたOSだというのにご苦労なことです。

 ちなみに、職場のMacは昨年更新しました。それまで使っていたのはOS9で、やはり2000年モデルでした。で、Appleはずい分ユーザを馬鹿にしてくれました。OS9は不具合満載のOSというか、メモリ管理ができないという根本的な問題を抱えていました。
 このOS9は、二度のマイナーアップデートを経、2002年にサポートが終了しました。以後、見捨てられたまま、2005年モデルを最後にインストールさえできなくなりました。私のように、否応もなくAppleに付き合わされたユーザにとっては、腹立たしい限りです。

 同じ2000年に出たOSですが、両者に対するメーカーの姿勢はあまりに違いすぎます。世間には、徒にMSを貶め、Appleを称揚する向きがありますが、現実は真逆なのです。
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四百壱   使えない液晶パネル(2009/4/29)
 デルに注文していたノートPCがキャンセルされました。パーツが品切れとかの理由です。仕方なく、返金手続きをしました。

 私がカスタマイズしたパーツで、品切れの可能性があるのは、WXGA+(1440*900)のパネルだと思われます。この表示サイズは、16:10になります。同じ16:10でも、WSXGA(1280*800)は各社とも相変わらずラインアップされていますが、WXGA+はカタログから消える傾向が窺われます。

 液晶パネルの生産は、明らかに横長にシフトしています。フルHDのWUXGA(1920*1200)が代表格で、16:10の比率となります。あるいは、これを上回る横長タイプとして、1366*768モデルが増えています。ちなみに、デルの16型モデルは1920*1080です。

 前回にも書きましたが、これら横長モデルはAV用途にフォーカスしています。映画の視聴には、まさに最適でしょう。一方、仕事には使えないというか、馬鹿げた仕様です。
 横方向は無駄なスペースが空くし、縦方向は明らかに表示不足となります。何度も言いますが、A4ドキュメントの縦表示こそが大切なのですから。


 デルのお間抜けな返答にムカッときた私は、ショップ・ブランドの“Faith”で注文しました。17型でWXGA+(1440*900)ですから、表示バランスはまあまあでしょう。OS抜きで64,799円ですからお買い得ですね。余っているWindows XPを使用し、メモリは2GBですから、十分以上です。

 ある程度の大型パネルなら、解像度を高めにできます。私が理想とする比率は4:3で、SXGA+(1400*1050)がベストとなります。残念なことに、今後ともこの解像度のパネルが生産されることはないでしょう。

 で、後悔しているのです。5〜6年くらい前に販売されていたFMV-BIBLO/NHを何故買っておかなかったかと。この製品は、価格以外文句のつけようがありませんでした。Webからの注文を二度、店頭での購入を一度、直前までいきながら、その都度思いとどまった経緯があります。
 なにせ、30万円近い価格でしたから、踏み切る度胸がなかったのです。こうして、今も後悔しています。俺って馬鹿。
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