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九百     野バト戦争勃発(2019/3/31)
八百九拾九  鳥避け対策完了(2019/3/23)
八百九拾八  PFP対決(2019/3/16)
八百九拾七  リフォーム最後の仕上げ(2019/3/10)
八百九拾六  コンパクトEVの行方(2019/3/2)
八百九拾五  畢生の傑作「紅白梅図屏風」(2019/2/23)
八百九拾四  困ったお隣さん(2019/2/16)
八百九拾参  ものづくり心をくすぐる『カデーニャファクトリー』(2019/2/9)
八百九拾弐  電気シェーバーの疑問(2019/2/3)
八百九拾壱  逃げることは恥ずかしくない(2019/1/26)
八百九拾   エルロイは『背信の都』で打ち止め(2019/1/19)
八百八拾九  業火に灼かれるジャーマン3(2019/1/12)
八百八拾八  日本は変質してゆく(2019/1/6)
八百八拾七  恩師の遺作展(2018/12/30)
八百八拾六  日本はどっちに向かう(2018/12/23)
八百八拾五  『ボヘミアン・ラプソディ』を観なくっちゃね(2018/12/15)
八百八拾四  詐欺メールの決定版(2018/12/8)
八百八拾参  美術展亂れ撃ち(2018/12/1)
八百八拾弐  最近の世相(2018/11/24)
八百八拾壱  北方領土が喧しい(2018/11/17)




九百     野バト戦争勃発(2019/3/31)
 鳥避け対策の中、取りあえず紐がまだまだ余っているので、もう少し稠密に詰めておきます。それでも塒にするというなら、鳥と戦争のつもりで紐を張り増すだけです。鳥に負けてたまるもんか、などと書きました。

 否応もなく、戦闘に巻き込まれつつあります。本日のこと、紐を張り増していたところ、例の野バトの番が侵入してきました。私が作業しているにも拘らず、気にも留めていません。頭にきて箒で追い払ったものの、すぐに出てもゆかず、ガレージ内を悠々と飛んで別の梁に留まりやがりました。
 完全に人間を舐めています。普通の鳥は、臆病というか警戒心が強いものです。ところが、昔から鳩は人間の身近で生活していて、人間を敵と認識していないと考えられます。

 このままにしていたら、快適な休憩所と認識され、凄まじい糞害を被ること必至です。かつて、職場の軒下が鳩の溜まり場となり、スコップで深く浚うくらい多量の糞害に悩まされました。あんなのご免です。

 もうね、戦闘態勢ですよ。今までのように適当に塞ぐのでなく、飛行ルートを読みながら空間を潰してゆきました。鳥の飛行性能はかなりのものです。鳩のように人間を恐れないとなると、僅かな隙間を飛び抜けます。

 そこで、三次元の空間を潰すよう見定めながら紐を展伸しています。なんか、先の長い話になりそうです。今日も今日とて、長時間の作業で指が切れたりで痛みがひどくなって中止しました。もうね、長期戦の覚悟で立ち向かいます。すでにピンを200本近く使用し、真田紐も300mほど投入しています。まだまだ残っていますから、敗けませんよ。

 取りあえず、現時点でここまで増やしています。これでも鳩がやってきます。なんか小枝を咥えてきたところを見ると、梁の上に巣を作ろうと企てているのでしょう。もう、許せませんわ。

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八百九拾九  鳥避け対策完了(2019/3/23)
 ガレージ完成後、少しの間はなにごともなかったのですが、冬場に入ると鳥の糞が散見されるようになりました。当然、車が汚れ、腹立たしいことこの上ありません。そこで、対策を取りました。

 鳥避けの手法はいろいろあります。剣山風のグッズが有名みたいですけど、これはまったく役に立ちません。鳥はあの突起物を無視して寛いでくれます。職場の鳥害対策で設置しましたが、すぐに除けました。

 そのとき私が推したのは糸を張り巡らせることです。以前、我が家の玄関に鳥が屯して糞で汚してくれました。このとき、糸を一本斜めに張るだけで鳥が近づかなくなりました。
 この手法は白土三平氏の漫画から仕入れたものです。下図は『忍者武芸帳 影丸伝』の一頁です。空間に張り渡された糸一本で、鳥が近づかなくなるシーンです。白土氏の描いたことは、まさに本当だったのです。

(C)白土三平

 ガレージの梁と野地板の隙間が狭いため、小さめの鳥が来ていたのでしょう。足の長いピンと細めの真田紐を購入し、紐を縦横に張ったところ、効果覿面でした。以後、まったく糞を見ることもなくなりました。



 さて、問題は裏手のガレージ兼物置です。こちらは屋根が高く、梁上方の空間も広めです。鳥にとっても、よき塒なのでしょう。
 気長に張り巡らせました。少々では鳥も避けてくれなくて、日々紐を増やしてゆきました。小鳥は来なくなったものの、ハトは厚かましくも侵入を止めてくれません。で、隙間なく塞いでゆき、今日のこと下図のとおり空隙をほぼ塞ぎきりました。おそらく、これで片づいたものと思われます。





 取りあえず紐がまだまだ余っているので、もう少し稠密に詰めておきます。それでも塒にするというなら、鳥と戦争のつもりで紐を張り増すだけです。鳥に負けてたまるもんか。
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八百九拾八  PFP対決(2019/3/16)
 本日、岐阜メモリアルセンターでWBO世界フライ級タイトルマッチが開催されました。
 王者の田中恒成選手に4位の田口良一選手が挑んだものです。田口選手は元WBAライトフライ級王者で、昨年5月に陥落し、今回が再起戦となります。

 両者ともに逃げず、真っ向から打ち合うスタイルですから予想どおりの激闘でした。田中選手はハンドスピードが速いうえ、ステップワークも速いとあって田口選手に勝ち目はないというのが大方の見方でした。
 まさに予想どおりの展開で、パンチのヒット率の差が徐々に開いてゆきました。田口選手も最初は手数も互角でしたが、3Rあたりからの執拗なボディ攻撃が効いてしまいました。
 ボディが効いてしまってからは、ステップワークも前後の単調なものになり、余計にパンチが当てづらくなったものと思われます。両者ともに右構えなので、最初は両者ともに左に回り込んでいました。ところが、田口選手はボディが効いてから、回り込むステップワークが辛くなったのでしょう。

 それでも田口選手は、意地を張るかのようにパンチを出し続けました。両者ともに出血し、顔面が腫れ上がっていました。それでも互いに攻撃の手を弛めませんでした。結局、田中選手を褒めるべきなのでしょう。前回の木村戦でもそうでしたが、負けん気の強さがファイトにそのまま出ていました。
 負けた田口選手は引退するでしょう。すべてを出し切った激闘で以ってしても、田中選手に相当及ばない点がありました。そして、その点を一番理解しているのが田口選手です。きっと、思い残すこともないでしょう。


 いよいよ明日は、ボクシングファンが待ちに待ったIBF世界ウェルター級タイトルマッチです。王者のエロール・スペンスJr.選手にWBCライト級王者のマイキー・ガルシア選手が挑みます。両者ともに無敗で、ともにPFPトップ10にランクされている強豪です。
 リングマガジンPFPではスペンス選手が9位、ガルシア選手が7位です。ちなみに井上選手は6位です。

 ガルシア選手は好きだし、ロマチェンコ選手とやれば勝つとも思いますが、スペンス選手には分が悪いでしょう。スペンス選手は長い距離を持ちながらも出入りのボクシングをせず、あくまで強打を揮える中間距離で闘います。固いブロッキングで近づいてパンチを振り抜きます。ということは、小さなガルシア選手からしても手が合います。これはもう、打撃戦間違いなしです。

 しかし、階級差は如何ともし難いでしょう。加えてスペンス選手は打たれ強いです。パンチを浴びながらも打ち返すくらいですから。さすがのガルシア選手も圧し込まれて12R保たないかもしれません。

 ガルシア選手は一分の隙もないハイテクマシーンです。好きな選手なのですが、明日は相手が悪すぎます。
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八百九拾七  リフォーム最後の仕上げ(2019/3/10)
 リフォームによって、我が家の敷地と隣家の田圃との境界である畦畔コンクリートの劣化があからさまになりました。私は営農を止めているので気にもなりませんが、裏の家は田圃を活用していることから指摘されました。
 「あのコンクリートの崩れ部分をどうにかしないの」
 あらためて指摘されると知らん顔もできません。我が家が上手になるため、我が家の側が修理せざるをえません。で、昨年のリフォーム後に畦畔コンクリート修繕も依頼したものです。建設型枠業者も忙しく、先々週からやっと作業にかかってくれました。



 重機を扱う関係から、裏の田圃の麦作付の一部を潰させてもらいました。謝礼というか迷惑料として商品券を進呈しています。
 水田土壌を一旦取り除いた後、型枠設営して生コンを流し込みました。そして、上図のとおり、仕上がった後に土を戻したところです。さらに、明日予定している花崗土の均し作業ですべてが完了します。

 ついでにやり残していた仕舞もお願いしました。
 ガレージの床面が3cmほど高くなって残差ができていました。こういう小さな段差が怪我の元になります。当初から段差を傾斜面で仕上げるようお願いしていました。
 下図のとおり、畦畔コンクリート修繕のついでにちゃっちゃとやっていただきました。我が家には脚の弱った年寄りもいることで、これでやっと安心できます。



 昨年の6月から始めた旧屋解体も、今回の境界修繕で完了します。およそ9か月に渡るリフォームで、この間なにかと気を使いました。特に、職人さんへのお茶出しの都合から身動きが取れなかったのが辛かったです。これで完璧に解放されます。

3月23日追加
 下図が完成図です。畦畔と排水路の間に花崗土を入れています。そのうち気が向いたら庭草を植えようかと考えています。当分の間はなにもする気が起きませんけど。


 隣家の水田土壌は戻した後、転圧したそうですが、一年間は手を出さないよう業者から注意を受けています。土が締まるまでは危険とのことです。すぐに農機具を入れての転倒事故が多いそうです。隣家の主人にも伝えておきました。
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八百九拾六  コンパクトEVの行方(2019/3/2)
 2月27日の DIAMOND online から引用します。

 川崎ベンチャーが開発した超小型EVが「タイの国民車」になる日

 川崎市の企業がタイで展開 世界最小クラスの電気自動車とは
 2018年3月末から4月にかけて、タイでバンコク国際モーターショーが開催され、日本生まれの4人乗り超小型電気自動車がお披露目された。

 川崎市に本社を置くFOMMが開発した「FOMM ONE」である。全長約2.6メートル、全幅約1.3メートル、全高約1.6メートルという世界最小クラスのコンパクトさで、エアコンも搭載、緊急時には水に浮いて水上を進むことができる。
    略
 モーターショーでは限定2000台で予約販売を実施、355台の予約が入った。価格は66万4000バーツ(1円3.38バーツとして約224万円)と安くない値段ながら、順調に注文が入り、2019年1月以降の納車予定だ。
    略
 タイの大洪水が開発動機に 水面を移動できる仰天機能
 前輪のホイールに内蔵したFFインホイールモーターにより、エネルギー回収効率がよく、応答性が高い。ガソリンに換算すると燃費は1リッター当たり約100キロメートルと経済的だ。インホイールモーターを採用したことにより、ステアリングや電装系部品を効率的に配置、小型化を実現した。
    略
 ユニークな機能が、水に浮いて進むこと。内部に水が入らないように設計されており、タービン形状のホイールが水を吸い込んで後方へ吐き出す構造で、水面を移動することができる。タイでは2011年に大規模な洪水が発生し、大きな被害を出した。大量の自動車が水没する光景は鶴巻の心にも突き刺さり、「タイには水没車用の保険はないので、水に浮く車があれば役に立つと思いました」と語る。

 バッテリーは着脱可能なカセット式だ。フル充電で航続距離は約160km(国際的な標準試験方法であるWLTC相当)と、市内を走るには問題ない。
    略

 自動車業界のマクドナルドを目指す
 鶴巻は世界を舞台にFOMM ONEの展開を考えている。

 「私は自動車業界のマクドナルドを目指しているんです。電気自動車は主要部品であるバッテリーとモーター、インバーター、コントローラー、充電器を共通化して大量生産すれば安くなる。しかも組み立てやすいので、販売する現地でマイクロファブ(小規模量産工場)を立ち上げればすぐに量産できます。

 メニューは同じだが、細かいレシピは現地に合わせて仕様変更すればいい。100拠点のマイクロファブで1万台ずつ生産すれば100万台になるので、コストが下がります」

 タイに続いて中国からの引き合いが積極的で、現在、深センにある企業と交渉中だ。また、上海の投資家も視察に来日したという。

 「インホイールモーターは中国にない技術なので、興味があるようです。中国は始まれば早いでしょう。あとは、今年3月にジュネーブのモーターショーにも出展しましたが、ヨーロッパからも引き合いが来ています。ヨーロッパ人は小さい車が好きですからね」
    略


 リンク記事が長く保たないので、長々と引用しました。
 とても意欲的なチャレンジなので、応援したところです。しかし、いろいろ気になります。
 一国の“国民車”になるには、もっと低価格路線に振らないと無理でしょう。特に、最大顧客としての可能性を秘めている中国市場を睨んだとき、まったくお話にならない高価格です。

 EV車をもっとも積極的に導入しているのは中国で、バリエーションが豊富です。低価格(低品質)な底辺車を始めとして、十分な品質を持った中級車、そしてMBとの共同開発になるハイクオリティ車まで多彩です。グレードによる違いだけでなく、SUVタイプや二人乗りのコンパクトタイプと多士済々です。

 今年から大幅に減額されるといえ、多額の補助金が手当てされていて、ビジネスチャンスとばかりEV市場が賑わっています。また、登録制限があり、内燃機関車は長く待たなければいけないところ、EV車であればすぐに登録できます。

 「FOMM ONE」は、全長2,585mm、全幅1,295mm、全高1,560mm、重量630kgなので、旧規格の軽自動車ほどのサイズです。中国にも3m未満の似たようなサイズのお洒落なコンパクトカーが多数販売されています。価格は86万円から148万円です。いかに「FOMM ONE」が高いかが分かるでしょう。

 なかなかに中国メーカーのバイタリティには勝てません。はたして「FOMM ONE」が中国市場で闘えるか難しいところです。下手するとインホイール・モーター、ボディの素材や製造ノウハウを盗まれるだけに終わるかもしれません。

 中国以外の途上国をターゲットにした方が正解でしょう。その場合でも、問題になるのは価格です。ここを見直さない限り成功はないんじゃないかな。

 FOMM のサイトに各種資料が置かれています。PDF資料なので、ブラウザ内での表示が横向きになります。ファイルを別名保存したうえ、Acrobat Reader で開いて回転表示すれば正対して見ることができます。
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八百九拾五  畢生の傑作「紅白梅図屏風」(2019/2/23)
 上野の美術館に見逃せない催し物が並びました。昨年末の展示群に劣らぬ内容です。
 国立博物館「顔真卿 王羲之を超えた名筆
 国立西洋美術館「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
 東京都美術館「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
 いずれも見逃せません。特に顔真卿には思い入れもあります。大学時代に専攻外の国語必修関係を受講し、当然のこと「書道」も受けました。基礎として楷書を学ぶ中、虞世南、欧陽詢、ちょ遂良、顔真卿の書を臨書しました。授業の後半からは、お手本の書家からひとりを選んで練習を重ねるよう指示されました。
 私は迷わず顔真卿を選びました。授業を受けるまで、楷書といえば欧陽詢しか知りませんでした。欧陽詢の“背勢”の筆法に対して、顔真卿は“向勢”です。筆の置き方、離れ方、速度、力加減のすべてが欧陽詢とは逆なんですね。もう、とにかく新鮮でした。

 顔真卿の筆法を学んだことは、後にレタリングあるいはフォントデザインに取り組むうえで貴重な示唆を与えてくれました。今回の展覧会で展示されるのは、故宮博物院所蔵の超一級品の国宝ともいうべき「祭姪文稿(さいてつぶんこう)」です。国立博物館のサイトから引用します。

安禄山と史思明らによる安史の乱が勃発すると、玄宗皇帝は成都(四川省)に亡命し、唐の都長安は安禄山らに占領されました。内乱は8年の長きに及び、 763年にようやく収束します。顔真卿は義兵をあげて乱の平定に大きく貢献しましたが、従兄の顔杲卿とその末子の顔季明は乱の犠牲となってしまいました。「祭姪文稿」とは、顔真卿が亡き顔季明を供養した文章の草稿で、悲痛と義憤に満ちた情感が紙面にあふれています。最初は平静に書かれていますが、感情が昂ぶるにつれ筆は縦横に走り、思いの揺れを示す生々しい推敲の跡が随所に見られます。

 「祭姪文稿」が日本で公開されることについて、中国や台湾の方々は複雑な思いに駆られるみたいです。秘蔵品ゆえ台湾でも公開されず、好事家たちはなんで日本で公開なんだとお怒りです。と同時に、なんとしても東京へ飛んで「祭姪文稿」を鑑賞すべしと気が逸っています。

 海外からの観客で大混雑だろうと予想はしていたものの、甘かったです。朝一で国立博物館を訪ねると、入り口周辺は黒山の人だかりで近づくこともできませんでした。こりゃ駄目だと後回しにして、都立美術館を訪ねました。こちらの待ち人は少人数で、先頭グループに並ぶことができました。

 岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一の8人衆ともなれば見応えたっぷりでした。しかし、迂闊でした。私が一番観たかった曾我蕭白の「群仙図屏風」が見当たらなかったのです。見逃したのかと何度も館内をうろうろしました。そこで、はたと気づいて展示目録を確認すると、「群仙図屏風」は後期展示でした。私って本当にお馬鹿さん。

 あと、顔真卿と並んで楽しみにしていた「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」は、肩すかしのがっかりモノでした。当然の話なんですけど、建築物は美術館に展示できません。しょぼい模型を眺めたって、満足感は得られませんわな。
 それとコルビュジェは絵が下手くそです。基本ができていないんです。そのくせ頭でっかちで御託ばっかし並べているんです。ど素人にありがちな安易な陰影づけで表現しています。普通の神経だったら、恥ずかしくて人に見せられませんよ。
 昨年のマルセル・デュシャンと大違いです。デュシャンがレディ・メイドとかで現代アートに転身したのは、決して絵が至らなかったためではありません。それどころか見事な絵でした。仮に画家の道を選択しても、名前を残せたでしょう。

 再度、国立博物館を覗いて諦めました。入館60分待ち、「祭姪文稿」観覧70分待ちが表示されていて、もう並ぶ元気がありませんでした。もうね、自分の愚かしさに泣けてきました。前日の夕方に観覧すればよかったのです。その時間帯はすることもなく、夕食前とてホテルでのんびりしていたのです。夕方なら空いたことでしょうし、閉館30分前で閉め切りますから、ゆっくり観覧することもできたでしょうに。私の馬鹿。


 お馬鹿2連発の残念な旅行であったかというと、そんなことはありません。MOA美術館で「リニューアル3周年記念名品展 第1部 国宝「紅白梅図屏風」」を鑑賞できたからです。国宝である尾形光琳の「紅白梅図屏風」をいつかは鑑賞したいと切望していました。MOA美術館の所蔵物であり、毎年年明けに公開されています。この絵を観るためだけに、わざわざ熱海まで足を運ぶ気にならなかったものを、今回は東京から足を延ばすだけですからね。

 MOA美術館って世界救世教の関連施設なんですね。今回、現地を訪ねて初めて知りました。
 山上の美術館まで、山腹の長い距離をエスカレーターで乗り継ぎながら登ってゆきます。下図のようにエスカレーターを乗り継ぎます。奥の方、さらに右上に延びているでしょう。


 この長いエスカレーターの先にドーム型の休憩スペースがあります。


 ドーム内面をスクリーンに見立て、万華鏡から投射される神秘的な映像です。宗教関連施設らしい趣ですね。


 ここからさらに奥のエスカレーターを上がりきると、右手山上に美術館が聳えています。MOA美術館のサイト内「美術館について」の頁下部に施設の写真が掲載されています。

 奥まったスペースに「紅白梅図屏風」双曲が鎮座していました。


 もうね、感動するばかりです。歳をくって感性が鈍るのを止めるに、私の場合は美術品鑑賞が有効です。これはボケ防止にも役立ちます。
 センターの川の形状、水の波紋の様式の完璧さはただごとではありません。左右の梅の幹と枝の形状もまた完璧です。そして、この絵の最大の見どころは幹の表現です。たらし込みで梅の幹の質感を余すことなく描き切っています。
 館から出るとき去り難くなり、再度この絵の前に立ち戻りました。もうね、離れるのが辛かったんです。

 他にも長谷川等伯の「故事人物図屏風」が目を引きました。
 これは「屈原」をモチーフにしています。“衆人 皆酔ひて 我一人醒む”のフレーズが好きなんです。


 同じく「伯夷叔斉」です。“義として 周の粟を食らわず”のフレーズが好きなんです。


 コルビュジェでがっかりしたのと顔真卿を見逃したのを挽回して余りある内容でした。今回の鑑賞旅も大正解でした。
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八百九拾四  困ったお隣さん(2019/2/16)
 慰安婦合意をことごとく破り、あげくに破棄しようと目論む文政権によって日韓の関係は冷え切っています。そんな中、政府間合意を無視した徴用工判決がさらに軋みを強めています。加えてレーダー照射問題で落としどころのない状況に至っています。
 難しい日韓関係を目の前にしながら、韓国国会議長が天皇を侮蔑するような発言をしました。この件はアメリカの金融情報メディアのインタビュー内で迂闊に口にしたものです。で、韓国でこのような侮日発言を訂正謝罪することは不可能です。特に政治家ともなれば、日本に謝罪するなど自殺行為でもありましょう。

 日韓のメディアは連日これを報じ、これまで韓国を庇うことの多かった日本メディアも天皇相手の侮蔑とあって無視できません。下手に等閑な姿勢を取ると、メディアそのものが嫌悪される恐れがあります。
 当分の間、日韓の軋みは続くでしょう。しかしながら、頭に血が上った具合に相手を悪し様に罵り続けることができるのは韓国側です。日本はとても勝てないかと思います。

 この件に関しては、西原理恵子氏の言が一番核心をついています。
 「ケンカは相手の10倍えげつなくないと負ける」
 「『そんなことしたら相手のレベルに落ちるだけ』こんな寝言言ってる日本人が韓国、中国に勝てるワケもなく」
虚しくもありますが、アメリカを舞台にした情報戦なんかこのとおりでしょう。ちょっと勝てないですね。特に海外での誹謗合戦ともなると、敗戦確実です。海外在住のアメリカ国籍の韓国人は、同時に韓国籍でもあります。韓国人としてのアイデンティティを持った上、徹底的な反日教育を施されていますから、運動に向き合う意欲が根本的に違っています。

 また、両国間の軋轢が解決し難いのは、決して時間が解決してくれないからです。
 “日帝強占35年”とか言うものの、日本統治時代を知る老人たちが亡くなるにつれ、むしろ観念的な恨みに凝り固まった人間ばかりになってしまいました。その戦後生まれの方々は、徹底的な反日教育を受けている反日エリートです。

 さらに、ここ何代もの政権によって、真っ当な歴史議論を社会から抹消するという暴挙に出て、理性的な考証を圧殺してしまいました。もう、すべてが手遅れでしょう。なので、韓国の世論とか空気に働きかけるのは無理でしょう。やるべきは、対外的な情宣活動の場で汚名を被らないよう闘うことではないでしょうか。
 これは個人にできることでなく、また自発的な組織に頼れることでもありません。外務省を中心にして、国家が乗り出さない限り、成果が上がると思えません。
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八百九拾参  ものづくり心をくすぐる『カデーニャファクトリー』(2019/2/9)
 impressの「家電Watch」に面白い連載漫画を見つけました。たきりょうこ氏による『カデーニャファクトリー』がそれで、氏は元SEのライター兼漫画家さんです。

 連載開始に当たっての惹句は、「ハードウェアスタートアップ企業、カデーニャファクトリー。経理の新人・原わかばには奇妙に見える事も、エンジニア達にはいつもの事。たぶん業界初、ハードウェアスタートアップあるある4コマ漫画。※この物語は事実に基づいたフィクションです」となっています。

 まずはご一読ください。ものづくり系に係っている方なら、誰もがクスリとくるエピソード満載です。仕事に疲れた心身が癒されること請け合いです。
 特に「第2話:みんな(修理)だいすき」なんか典型でしょう。私が勤めていた職場でも、まんまこのとおりです。電気系であれ、建築施工系であれ、機械加工系であれ、すぐに手すきの人間がワラワラ寄ってきました。

 「第1話:社長の趣味社長」からしてアルアルですね。社長さんからして機械いじり命なんですね。趣味が高じて仕事になった典型でしょう。その昔、探偵ナイトスクープでも似たような話がありました。「故障で動かなくなったラジコンカーを動くようにしたい」旨の依頼がありました。製造メーカーを探し当てたところ、関連会社の社長さんご本人が該当品の設計者でしたというオチで、社長さんは、「懐かしい〜」とか言いながら、仕事そっちのけで修理に集中していました。本作の社長も、まんまあのとおりです。

 中国工場とのやり取りも面白いです。中国の方の意識も考えさせられることが多々あります。一口に否定できるものでもないでしょう。
 また、オフィス引っ越しに際し、新居の設営を嬉々として自前でやる話にも和みました。
 「このへんに大きめの棚 欲しくない?」わくわく
 「やっちゃいますか」わくわく
 「あらあら 寸法決めなくちゃ」わくわく
 もうね、笑っちゃいました。ものづくり系職場なら、アルアルじゃないでしょうか。

 私はプロダクト系でなくクリエイティブ系といえ、やはりものづくり関連に携わっていました。この社長と同じく叱られたことがあります。忙しい業務の合間を縫ってリーフレットを制作していたら、それはリーダーのやる仕事じゃないでしょう、ってね。笑ってごまかしたものの、デザイン作業は仕事疲れをむしろ癒してくれたんです。
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八百九拾弐  電気シェーバーの疑問(2019/2/3)
 愛用している電気シェーバーの電池がへたってきたので更新しました。その際に納得できないというか、疑問に思うこともあって記してみます。

 私が長年愛用しているのは下図のシェーバーです。National ES612 で、ロングセラー製品です。実はこれが3代目なのです。数十年間、こればっかり使ってきました。多分、旅行用としてのラインアップなのでしょう。コンパクトで安価なので、愛用者も多いことでしょう。

 電池性能が日々向上しているとあって、この3代目は長持ちしてくれました。よく憶えていませんが、20年くらい使ったでしょうか。初代なんか数年間で電池がへたりましたもん。カッターの方はメンテ次第で切れ味を維持してくれますしね。



 さすがに電池寿命が尽きた模様で、充電して数日後には弱々しい回転になってしまいます。そこで買い換えを検討したものの、量販店店頭に後継製品がなかったので、よくある下図のタイプ Panasonic ES-RT26 を購入しました。で、これが期待外れでした。



 往復タイプの切れ味の悪さにがっかりしました。所謂、深剃りが利かないんですね。調べてみると、同様の感想を持つ方が結構いました。5枚刃とかの高級品なら、もっと切れそうです。しかし、店頭に試用品はないしでどうにも信用できません。

 そこで、従来使ってきた旅行用を探して購入しました。同型品はなく、後継である下図の Panasonic ES-KS30 です。二千数百円の安さに加え、某量販店のポイントを利用して2円也で購入できました。



 切れ味は旧製品ほどでないにしろ、文句はありません。旧製品に近いタッチで、使い慣れたプロダクトに懐かしささえ覚えました。上の往復タイプに比べ、深剃り感は別次元です。もうね、カミソリで当たったくらいの肌触りです。思わず、「これよ、これ」とばかり声に出ました。
 世間の皆様の感想はどうなんでしょう。皆様方は往復タイプの剃り味で満足できているのかしら。
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八百九拾壱  逃げることは恥ずかしくない(2019/1/26)
 河北新報ONLINE NEWS(2019年01月25日)から引用します。

<いじめ母子心中>「しにたいよ」とつづった手紙、学校は昨夏把握 重大事態と捉えず

 仙台市泉区で昨年11月、寺岡小2年の女児(8)へのいじめを苦に母親が女児と無理心中したとみられる事件で、市教委がいじめ防止対策推進法上の「重大事態」と同等の調査を続けている。女児は昨年7月ごろから「死んでしまいたい」と両親に訴え、手紙に思いをつづっていた。元校長らから「夏の段階で重大事態と捉えて対応すべきだった」との声が上がっている。
 いじめ重大事態の調査に関する文部科学省のガイドラインは、児童生徒の生命や心身に重大な被害が生じた疑いがある場合、学校は調査を始めると規定。被害の深刻化を避けるため、疑いが生じた段階で動き始めるよう求める。
 父親によると、経緯は表の通り。女児は昨年7月7日に「死んでしまいたい」と吐露。8月24日には「しにたいよ」と手紙に書いた。文部科学省の担当者は「手紙は、心身の苦痛が大きいことを示す一つの根拠になる」と指摘する。
 手紙は、同24日のうちに両親が校長に手渡したという。母親は9月14日、市教委の教育相談室に「いじめがなければ、自殺したいと思うほど追い詰められない」と訴えた。学校と市教委は9月までに、女児が死を意識していることを把握したとみられる。
 市教委幹部は「市内で相次いだ、いじめなどによる自死事案と異なり、いじめと事件の関連性を早計に決められない。まずは重大事態と同等に位置付け、しっかり調査する」と言う。
 重大事態と判断しなかったことに批判的な意見もある。ある市議は「重大な被害が生じた疑いは十分にあり、疑いを知った段階で調査すべきだった」と強調。県内の元小学校長は「手紙は決定的。『死にたい』と発言した時点で深刻に受け止めた方がよかった」と語った。


 いじめを苦にしての自殺が後を絶ちません。上のケースでは、母親と娘が心中という悲劇に突き進んでしまいました。残された人間は恨み言を述べたり、対応の拙かった周囲を非難するものです。しかし、被害者としての立ち位置で責めるばかりでいいのでしょうか。自分自身がやるべきこと、できることを尽くしたのでしょうか。

 そんな私の疑問に応えるような事案が紹介されていました。いじめと違って、発達障害児を持つ親が子供のために為した人生の見直しが参考になります。Yahoo!ニュース(1月7日)で紹介された内容が、極めて示唆に富んでいるので引用します。

裁判官を辞め、夫を残し、自閉症の子と鹿児島移住…母の勇気が開いた家族の未来

当時住んでいた愛知県で、1歳10か月の大雅君を保育園に入れた。その後、自閉症が分かると、「来年からは受け入れる枠がない」と言われた。裁判官としてようやく一人前になる時期。だが、仕事を辞めた。
大学3年で司法試験に合格し、2002年、24歳で裁判官になった。間もなく同期の裁判官だった大作さん(41)と結婚し、04年に長女を出産。仕事と育児を両立する「裁判官夫婦」としてキャリアを積むと信じていた。
<略>
そんな時、障害があっても積極的に何でも挑戦させるという鹿児島県志布志市の保育園を本で知り、すぐに現地へ見学に行った。
<略>
自立を促す教育方針に共感し、入園を決めた。突然の決断に「非常識だ」と反対する大作さんを兵庫に残し、12年4月、志布志市に移住した。

縁もゆかりもない土地の人たちは、図書館で大雅君が騒いでも笑顔で見守ってくれた。園の指導で、4歳で両足跳びができるようにもなった。その場の雰囲気をぱっと明るくできる、表情が豊かな子どもに育っていた。

同年9月、知人の契約書の作成を手伝ったことをきっかけに、「まだ法律家として人の役に立てるのでは」と、長らく弁護士がいなかった同市に法律事務所を開設した。その直後、大作さんも裁判官を退官。「弁護士夫婦」となり、親子4人での生活を再開した。


 この生き方はお手本になるでしょうし、また大いに参考にすべきです。いじめで自殺に至るケースは、その土地(学校)を離れるのが悲劇を避ける最も有効な方法です。場合によっては、親が仕事を辞めることも考慮すべきです。本当に子供を救うなら、最終的には親がすべてを捨てる覚悟も必要でしょう。
 残された親たちがTVカメラの前で自死を選択した子供を悼み嘆く姿を幾度も見ました。本当に自殺を防ごうと思うなら、なんで仕事や土地を捨てなかったんだとか疑問を持ってしまいます。
 再就職が難しい。給料が大幅に下がる。見知らぬ土地で人生をやり直すのは覚悟がいる等々、まさにそのとおりでしょう。しかし、残された親たちに問いたいです。子供の命より、自分の生活の方が大切なんですかと。

 また、仕事のストレスで鬱を発症した場合でも、無理をせずに仕事内容を見直すべきです。給与が大幅に減ること、ブルーカラーに転身するとかも視野に入れるべきです。

 土地を離れたり、職を変えたりで前の生活を捨てる選択を、逃げの姿勢と難じる向きもありましょう。しかし、命を絶ったり、精神が壊れたりするくらいなら、考慮の価値もあろうかと思います。
 世間体を重視して行動に移さない方は、子どものことを真剣に考えていないのでしょう。あるいは鬱といっても、余裕がある状況なのでしょう。逃げ場なしの袋小路に追い込まれたら、すべてを捨ててやり直す気持ちになりますよ。
 それをしないのは、子供が自殺に追い込まれようが自分の仕事や生活を優先したいのでしょう。もちろん、自分の側に落ち度もなく、不正も犯していない中ですべてを捨てなければならないのは理不尽です。それであっても、子供を失ったり、精神の均衡を崩して戻れなくなるよりましでしょう。この点は真剣に考慮すべきと思います。
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八百九拾   エルロイは『背信の都』で打ち止め(2019/1/19)
 かつては大ファンであったロバート・ゴダートにも一昨年にケリをつけました。八百九    ロバート・ゴダートはもうたくさん(2017/7/9)に書いたとおり、大長編大作である“1919年三部作”のあまりな出来の悪さが、ゴダートを切り捨てるきっかけになりました。

 同じように、『背信の都』がジェイムズ・エルロイから離れるきっかけになりました。本作は2016年に出版されていたものを、2017年秋に気づいて購入したものです。最近は本屋の海外本スペースが極小となっていて、僅かな新刊しか置かれません。そのために1年以上も知らなかったのです。しかも、購入して1年間も放置していて、最近のことやっと読み終えたところです。

 帯の説明によると、“LA4部作”の前章となるロス市警を舞台にした「究極の警察小説」だそうです。ロス市警ものとあって本当にがっかりしました。以前、“アンダーワールドUSA三部作”の次作は、ウィスコンシン州警察の30年代から50年代にわたる二世代記を手がけるとか予告していて楽しみにしていました。スチュアート・ウッズの『警察署長』や佐々木譲氏の『警官の血』を髣髴させ、否が応でも期待が高まりました。

 それがLA4部作の前章と聞くと、手抜きのがっかり感が半端ありません。LA4部作の登場人物を使うとあって、新たに人物を造形する苦労がありません。また、ウィスコンシン州警察の歴史を調べ直す必要もありませんしね。

 読後感は、とにかく残念の一語に尽きます。取ってつけたようなエピソードをひたすら付け足すばかりで、小説世界を緻密に構築する様子が窺われないのです。まるで、エルロイの自慰につき合わされる気分です。本人が豪語した「俺はアメリカのトルストイになる」は、空疎な言葉で終わりそうです。
 予兆はありました。前作“アンダーワールドUSA三部作”の完結編である『アンダーワールドUSA』が、期待外れの内容だったのです。その昔、開設していたミステリの頁で触れています。

 完結編は来年の刊行でしょうか。ニクソン政権時代を背景に、「アメリカン・デス・トリップ」の主人公の一人であるウェインがニクソンの裏仕事をこなすのでしょう。激化するベトナム戦争、激化する反戦運動、そしてパリ和平。マフィアの中南米への浸透、これを支援するように深みにはまっていくアメリカの中南米政策。民主党盗聴と暴露、そしてニクソン失脚。このような背景のもとで、個性的な登場人物がアメリカの暗部とともに破滅してゆくのでしょうね。

 仮にもアメリカ現代裏面史とか大上段に構えるなら、上のような内容を期待するところです。ところが、刊行された完結編は、歴史のうねりに触れていませんでした。前2作で物故した実在の人物を登場させ、好き勝手に描きすぎた反省があったのでないかと邪推しています。遺族からの反発もあったでしょうし、風当りも強かったでしょう。
 結局、沈香も焚かず屁もひらず式の面白くもなんともない小さな話に終始しています。特に腹立たしかったのは、ジミー・ホッファ失踪に触れていないことです。エルロイ流の謎解きを読みたかったです。

 さらに、『背信の都』が問題なのは、訳文が曖昧である点です。佐々田雅子氏には、もっと真剣に仕事に取り組んでいただきたいです。多分、原文そのものが明晰でないのでしょう。しかし、明晰でないからといって、意味が不明瞭なまま日本語に置き換えるのは無責任です。意味の通らない日本語箇所が多いのです。本来であれば、編集者が指摘して訳文を推敲すべきなのでしょうが、編集者そのものが劣化しているのでしょう。

 佐々田氏といえば『ホワイト・ジャズ』の訳者でもあります。『ホワイト・ジャズ』は理解できます。主人公の一人であるディビッド・クラインの語りが小説の叙述となっていて、破滅に向かって突っ走る生き様故、麻薬患者の狂騒を思わせる文体にも納得できます。
 ところが本作の場合、単に出来の悪い文章でしかないのです。エルロイも老いたのでしょう。文章を巧みに紡ぐ才能が枯渇したものと想像します。いずれにしても、エルロイは打ち止めにします。『背信の都』は“新LA4部作”の第一弾だそうですが、続きを読みたい欲求もありません。エルロイは忘れます。
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八百八拾九  業火に灼かれるジャーマン3(2019/1/12)
 先週のこと、Appleの株価が暴落し、昨年の好調時と比べて時価総額の3割〜4割も吹っ飛びました。とはいえ、長期的視点で見ると、今現在も十分な高止まりでしょうけど。短期間で経営環境が激変する状況を目の当たりにしたわけで、明日は我が身と捉えるべきなのでしょう。

 ドイツにおいても劇的な状況が出来しています。VWグループ、BMW、MBのジャーマン3(ドイツBig3)が切迫した販売不振に見舞われています。ジャーマン3の危機的状況について、あまり報じられていないので備忘録的に整理してみます。

 まず、例のデフィートデバイス搭載車に対するリコール費用がべらぼうです。
 VWグループ:アメリカ=約32万6,000台、EU=約850万台
 MB:EU=約77万台
 総額で400億ユーロ(本日換算で約5兆円)
 VWに科された制裁金も前代未聞レベルです。
 アメリカ:147億ドル(本日換算で約1兆6,000億円)
 ドイツ:10億ユーロ(本日換算で約1,200億円)
 ユーロ安が続く中、莫大な資産形成を為したVWグループも損失計上に苦しんでいます。
 また、VWやアウディの当該エンジンは、他国メーカーにも採用されていて、そちらへの手当ても必要になります。

 ここで素朴な疑問を持ってしまいます。そんな大それたインチキに手を染めれば、ライバル社に解析されて大ごとになるだろうと。それを敢えてやった経営判断とはなんだったのか。実は根深い理由があったのです。
 ドイツの上記3社というか3社グループは、以前からカルテルを結んでいたのです。17年7月に発覚した不正は、メーカーよりの姿勢が顕著なドイツ政府をも怒らせました。尿素SCR還元触媒について、歩調を合わせて不正を行ってきたのです。ドイツ政府はメーカーに対して、ユーロ5、6適合車輛約500万台にリコールを命じました。

 さらにユーロ4以前のディーゼル車とユーロ2以前のガソリン車の走行が禁止されます。NOx濃度が高い都市が対象で、規制する都市は増えるものと考えられます。昨年5月にハンブルクが、今年1月からシュトゥットガルトとアーヘンが、2月からはフランクフルトが乗り入れ禁止の(部分的)規制を実施します。また、ケルン、ボン、エッセン、ゲルゼンキルヒエンでも規制が施行されます。
 なお、規制の端緒になった訴訟を起こした環境団体が、実はトヨタの支援を受けていると噂されているそうです。

 禁止地域及び周辺地域のユーザは走行禁止を受けて買い換えが必要になります。そこで各社は買い換え需要に合わせて20数万円から100数十万円の販売インセンティブを実施して、顧客囲い込みを競っています。
 このような経緯でドイツのディーゼル販売は大きく落ち込み、買い替え需要をめぐって各社の草刈り場になっているところです。

 凄まじい話なのに、ドイツメーカーの悪辣な不正体質について、日本のマスコミはなんでか表立って批判しないんですね。きっと、多額の広告出稿料に配慮しているのでしょう。
 一方、ドイツ本国においては経営陣が多数逮捕されるなど、当局も厳しい態度で臨んでいます。直近のAppleの件といい、身から出た錆といえ、世の中は短期間、短時間にして変貌するものだと実感させられます。
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八百八拾八  日本は変質してゆく(2019/1/6)
livedoor NEWS(1月3日)から引用します。
日本人はなぜ「新築」大好きなのか 中古住宅「不人気」の背景

 国土交通省の調べでは、日本で流通している中古住宅は2013年時点で全体の14.7%。平成が始まった1989年には8.0%だったのを見れば、市場は徐々に拡大しているのは間違いない。だが、米国や英国では約9割、フランスでも約7割と欧米の主要国に比べればかなりの低水準だ。

 日本の場合、戦後から高度経済成長期にかけて住宅不足が深刻化し、数を造ることが最優先された。この結果、住宅の質は低下。地価が急騰する一方で、住宅は20年も建てば価値がなくなると評価され、「買うなら新築」という「新築志向」が生まれた。このため中古住宅はほぼ見向きもされないできたといえる。

 だが、中古住宅を使おうという動きはだんだん盛り上がりつつあり、「実際には2割を軽く超えているのではないか」(不動産関係者)との見方もある。その背景の一つは、中古住宅が放置され、空き家問題が深刻化していることから、政府が中古住宅活用の環境を整えようとしていることがある。宅建業法の改正などがその現れだ。


 「住宅の質」の問題は、あくまでコストとの兼ね合いです。低所得者層向けには廉価でなければいけないので、クオリティが低くなって当然です。さらに、日本は土地が高かったので、余計に家屋部分を安く仕上げる必要があったでしょう。そのような低品質な家は20年も経てば各部が劣化して、満身創痍状態ともなって商品価値を損なうものと思われます。終の棲家たる我が家を購入するに当たって、中古を避けて新築を選択するのも無理ありません。

 しかしながら、今後は高品質な住宅も中古市場に出てくるものと考えられます。
 昨年、近所の中古豪邸が売れました。親が死んで、継いだ娘が不要ということで売り出したものです。田舎とて買い手もつかず、はや10年が過ぎていました。
 築40年ながら、家の品質に問題はありません。金をかけた造作なので、しっかりしたものです。伝統的な田舎の日本家屋であり、壁も厚く、板材も厚く、しかも檜や杉板を多用していて安心の部材です。床も高くて、湿気による劣化にも無縁でしょう。かつての家主が町会議員だったので、歓談できるように部屋や廊下も広いこと。畳もよいもので、40年経っても古さを感じさせません。
 その娘とは付き合いがないので売値は知りませんけど、激安なのは間違いないでしょう。購入した方は地域に馴染む気がないみたいで、一切の交流がありません。おかげで購入に至る動機なんか興味があるものの知るすべがありません。

 今後はそのようなお買い得中古住宅も市場に増えてくるでしょう。跡継ぎが別に家を建てていたり、転出していたりだと放置するしかありません。あるいは係累が途絶えてしまって無人となるなどです。

 しかし、仮に売ろうとしても、田舎だと安くても買い手がつかないんだなあ。今日びは家屋だけでなく、田畑も売れるものではありません。また、別荘とかバブル期のリゾートマンションなんかも、タダみたいな売価でも売れませんね。仮に無料であっても、所有すれば税金がかかるし、水道や電気のサービスが受けられないケースもあります。その場合には、飲料水や電気を自前で手配しなければいけません。
 TV朝日の「ポツンと一軒家」によく出てきます。山深い一軒家ともなれば、すべて自給自足を強いられています。あんな生活、無料で提供してくれると言われても、応諾する人間はいないでしょう。

 かつての日本は、狭い国土とあって住宅地を求めて山に分け入った時期があったものです。今、その流れが逆流している感があります。少子化と一極集中によってつくり出される流れは、もはや止めることはできません。
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八百八拾七  恩師の遺作展(2018/12/30)
 先年、大学時代に絵画を指導してくれた恩師が亡くなりました。残された膨大な絵を埋もれさせては勿体ないということで、故恩師の母校である東京芸大関係者と数十年前の学生たちが協力して遺作展を開催しました。
 11日間の会期で県立美術館を中心に、また小品を画廊で展示しました。小品は販売して利益を展覧会開催費用に充てたそうです。美術館に掲示した大きな作品は、希望する団体や法人などに寄付する形を採りました。

 恩師の作品を観るのも久しぶりでした。中高時代のデッサンやクロッキーまで披露し、大学の卒業制作作品なんか初めてお目にかかりました。卒業後の画業をあらためて眺めると、セザンヌ時代あり、カンジンスキー時代ありの遍歴を辿っています。後年はマチエールを駆使するタイプの絵に至っていました。

 私はデザイン専攻学生だったので、特段の付き合いはありませんでした。まして、ロクでもない学生だったので、間違いなく嫌われていたはずです。今回の画業を確認して、嫌われていたことを確信しました。先生の中高時代の絵を観ると、もう若い頃からアート志向が際立っています。真面目一徹な画学生像が偲ばれるのです。
 これだけ絵が描ければ、普通だったら少女漫画風のスケッチを描くはずです。中原淳一風とか、あるいは水野英子氏や西谷祥子氏の流麗なタッチを真似ずにおれなかったはずです。しかしながら、そのようなスケッチが一切ないのです。膨大な量を描きながら、それらがすべて静物、風景、人物なのです。普通だったら、たまには気休めに少女漫画のキャラくらい描きそうなものです。
 その生真面目さが、もう徹底しているんです。きっと私みたいなスチャラカ学生は、表面上はともかく、内心では蛇蝎の如く嫌っていたんじゃないでしょうか。

 教え子のうち、専ら女性たちがリストづくりやら額装やら名札作成やらの整理を担当してくれました。また、展覧会の受け付けも協力して分担していました。私ら男衆は能がないので、搬入、搬出、掲示などの力仕事を受け持ちました。学校や病院へ寄付する絵が多く、先週のことトラックで配送という運送業に勤しみました。

 大学の同期生から連絡を受け、喜んでお手伝いさせていただきました。先輩、後輩、同輩と懐かしい顔ぶれに会うのが楽しみでした。20年ぶりの面子もいれば、40年ぶりの面子もいて、遺作展を手伝ってよかったとつくづく得心しました。
 その懐かしい顔ぶれと久闊を叙していると、話はすぐに身体の不具合や病気方面に流れるんですね。年配者が顔を合わせると、すかさず病気自慢が始まるとかよく聞きます。まさにそのとおりでした。歳を食うってのは、こういうことなんですね。

 で、その私ら年寄り世代が身につまされる漫画がありました。Web漫画「ギャグマンガ家 人間ドックデスレース」です。
 第1話「デスレース開幕」
 第2話「デスレーススタート」
 第3話「玄米茶で大丈夫!」
 第4話「○○先生さようなら!」
 人間ドックを受診して一喜一憂している方々には、とても笑えない内容です。
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八百八拾六  日本はどっちに向かう(2018/12/23)
 先週のこと、『ボヘミアン・ラプソディ』を観てきました。まばらな客は、ほぼすべてがジジババでした。私も含め、リアルにクイーンと同時代を生きた方々ばかりなのでしょう。
 フレディ役の俳優さんに若干の違和感がありました。髭を生やしてからは、フレディのイメージにきっちり重なりました。問題は髭なし時代です。なんとなくミック・ジャガーに似ていて、フレディの風貌に似つかわしくないと感じられました。
 「Don't stop me now」とともにエンドロールが流れたのには、思わずうるっときました。


日本経済新聞(12月21日)より引用

日本、IWC脱退へ 政府方針、商業捕鯨の再開めざす

政府は20日、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する方針を固めた。25日の閣議で正式決定し、来年6月末をもって脱退する。反捕鯨国との意見対立から、日本が目指す商業捕鯨再開のメドが立たないためだ。脱退で日本の領海や排他的経済水域(EEZ)内での商業捕鯨の再開を目指す。ただ日本が国際機関から脱退するのは極めて異例で、国際社会から批判が出そうだ。

商業捕鯨が再開されれば1988年以来となる。IWCを脱退すれば国際法上、南極海での捕獲調査はできなくなる。

IWCはクジラの資源保護と持続的な利用を目的に48年に設立。現在89カ国が加盟する。日本はクジラについて、マグロなど他の水産資源と同様に科学的なデータに基づき食料として持続的に利用できるよう訴えてきた。ただ、9月の総会で反捕鯨国が「いかなる捕鯨も認めない」と宣言。反捕鯨国との立場の違いが鮮明となっていた。

 海洋資源にも漁業にもまったく縁のない内陸国が加盟国となり、捕鯨反対票を投じています。捕鯨反対国のえげつないやり口が、昔から不愉快でした。拠出金も最大額を負担していたはずです。もう、ここまでのお付き合いでええんとちゃいますかね。
 今後は捕鯨国と協調して、EEZ内での捕鯨を淡々と進めればいいんじゃないですか。大和煮や竜田揚げの缶詰を輸出したら、きっと珍味に目覚める外国人も多いかと思います。中国の方なんて、絶対に食いついてきますよ。


 日経BizGateに掲載された海老原嗣生氏の「新卒採用ルール」の記事が読み応え満点です。海老原氏は雇用ジャーナリストの肩書で、人材コンサルタント業を営んでいます。
 皆さまにも、ご一読をお薦めします。読めば蒙を啓かされること請け合いです。私なんか、目から鱗どころか頭から頭蓋骨が落ちました。

 第5回「新卒採用を欧米流に改革すると、日本の若者はブラック職場行き?
 第6回「欧州の若者は「薄給でブラックな訓練」に耐えてやっと就職

 フランスにおいて、インターンシップの大学生が低賃金労働の重要な原資となっているなんて、初耳もいいとこでしょう。無給あるいは最低賃金の1/3が相場だそうです。しかも、雇用関係でないので、保険関係はありません。通勤費や手当類の支給もありません。また、有給休暇もありません。であれば、簡単なルーチンワーク程度の仕事かというと、これが正社員と同じ重要な責任業務を課されるという悪夢みたいな話です。
 一方でエリート学生に対しては、大手企業が大金を提供して内定拘束を競うそうです。まさにEUという階級社会の縮図模様です。

 フランスの若年者雇用について、奴隷労働かと見紛うような実態が初めて紹介されました。まるで、近代の貴族社会かと思わせるほどの格差であり、日本においては絶対に受け入れられないでしょう。いえ、フランスでさえ憤懣が爆発していて、その結果がパリを舞台にした苛烈なデモです。上のような事実を知ると、実力行使で以って世の中を変えようとするのもむべなるかなです。
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八百八拾五  『ボヘミアン・ラプソディ』を観なくっちゃね(2018/12/15)
 今、『ボヘミアン・ラプソディ』が全世界でヒットしています。アメリカにおいては、入場者数第一位さえ記録しました。私はなんやかやでまだ観ていません。来週あたりにはなんとかしたいと考えています。

 学生時代、クイーンの曲っていいなとか思いながらも、好きと言えない空気がありました。合唱的ボーカルのせいで、ポピュラー音楽の雰囲気が醸し出されていました。ハードなギターワークに関わらず、レッド・ツェッペリン系統を聴いていた人間には受け入れ難かったのでしょう。

 当時私はオーディオ趣味もあって、プログレッシブ・ロック大好き青年でした。クイーンの複雑な音色には、まるでプログレであるかのような風味が感じられました。しかも、シンセサイザーを使わずにあの音色を作り上げているのが興味深く、密かに2枚目と3枚目のアルバムを買ってしまいました。聴くと、まるでベストアルバムかと思わせるほどのクォリティと密度の高さでした。で、自信を持ってクイーンが好きと言えるようになりました。
 クイーン・サウンドの独特な音色の秘密は、理系メイ氏による自作楽器ですね。いろいろ音出し試行しては、音づくりに活用したそうです。

 一番好きなのは『Don't stop me now』です。なんかのCFがこの曲を使っていました。ただ、せっかくの名曲なんだから、もっと効果的に演出してくれよと文句を言いたくなりました。
 あと、聴いていて心地よいのは、『I Was Born To Love You』ですね。リンクしたのは、オリジナルのフレディ版です。フレディの死後、メイ氏らによって再アレンにされたバージョンもあります。そちらは、いかにもなクイーンの楽曲イメージですが、フレディらしさが横溢しているのは、あくまでオリジナル版です。

 クイーンの音楽は好きでしたが、クイーンは嫌いでした。表向きの親日ぶりはともかく、内心では“イエロージャップ”くらいに見下していたんじゃないですかね。来日した際、ホテルのロビーに屯するファンの少女たちをピックアップして部屋に連れ込んでいたとか、あの当時散々噂されました。嘘か本当かは知りませんけど。
 そんな話を聞けば、愛国青年としては「夷蛮許すまじ」と敵愾心が募るのも仕方ありません。当時、宿泊ホテル関係者の義憤に満ちた告発も嘘とも言い切れないし、かといってすべて信じるわけにもいきません。今となっては闇の彼方の話です。
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八百八拾四  詐欺メールの決定版(2018/12/8)
 迷惑メールはいろいろあるものの、たちが悪いのは詐欺メールです。メール本文内にURLが記述されていれば、対応ソフトが自動的に弾いてもくれます。そこで、あの手この手でユーザー側にその気になってもらおうと知恵を絞ってきます。そんなアホなことに労力を使うくらいなら、額に汗して働けよとか思いますけど。

 先々週のこと、よくできたメールが届きました。最下部の「検証」を押させようという魂胆なのでしょう。う〜ん、押す人間もまれにいるのでしょうね。iPhonやMacを所有している方、あるいはWindowsでもiTunesやiCloudを利用している方は気になるでしょう。中には、取りあえず押しとこかという方もいるんかな。

 Windowsのブラウザクラッシャーにも通ずるタイプですね。あるいは、セキュリテイ上の問題を指摘し、修正ボタンに誘導するタイプにも似ています。


 
 内容をよく読めば、変な話なんですけどね。「アカウントがロックされている」かどうかは、試してみればいいだけです。
 私もiCloudを利用していて、データのやり取りでPC側からアクセスすると、すかさずスマホに「誰かがiCloudにアクセスしたよ」って通知が来ます。それは、あくまでAppleの通知フォーマットによるもので、上図のようないかにもな汎用文書ではありません。
 「お客様各位」って、笑わせてくれます。個別アカウントの話なのに、相手を特定できずに不特定多数の宛名なんですね。

 もし、Appleのフォーマットと完全に合致した文書で通知されたら、私も一瞬は信じるでしょう。とはいえ、内容を読むと辻褄が合わないので、詐欺メールだと気づきます。
 「確認ボタンを押して、アカウントが完全に安全になるまで提供する手順を完了してください。」なんて指示、意味不明でしょう。
 というか、不特定多数相手の詐欺メールでAppleのフォーマットは無理ですね。などと考えると、やはりこんなのに騙される人間が馬鹿だと思わされます。そのような方々は、基本的にWebを利用するのは止めておいた方がいいのでしょうね。問題が起きてから悔やんでも遅いでしょうから。
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八百八拾参  美術展亂れ撃ち(2018/12/1)
 家の造作のために家を空けられなかったものの、一段落したとあって美術展を堪能しました。たまたま上野に良質な展覧会が集中してくれたので、一昨日に観覧してきました。今回はネタが多かったので日帰りは無理と判断して上野に泊まりました。

 「マルセル・デュシャンと日本美術」
 東京国立博物館 平成館 10月2日(火)〜2018年12月9日(日)

 今秋、一番の目玉はマルセル・デュシャンです。
 『泉』『瓶乾燥器』『レディメイド自転車の車輪』のレディメイドはもちろん注目です。加えて大作の『大ガラス』にも出会えました。しかし、私が最も興味深く鑑賞したのは、若き日に追及していた画業です。
 少年時代に描いた絵の見事なこと。そして、20世紀初頭のパリで新しい時代に向けた絵を追求する中、セザンヌの構成主義的作品を描いています。また、キュビズムに傾倒した作品の完成度の高さは、ピカソも真っ青じゃないかと思います。あるいは、フォービズムの作風もありで、デュシャンの画家としての才能もまた非凡であると理解できました。

 「中国近代絵画の巨匠 斉白石」
 東洋館8室 10月30日(火)〜2018年12月25日(火)

 現代中国絵画の巨匠というか第一人者です。同じ東博敷地内の東洋館展示なので、しっかり鑑賞させていただきました。
 同じ筆を使った絵でも、やはり日本人とは違った感性を持っています。広大な中国の幅広い芸術を長年月研究し、ひたすら研鑽を積んだ成果なのでしょう。斉白石に倣わなければ知ることができない世界が厳然とあるように思われます。

 「ムンク展−共鳴する魂の叫び」
 東京都美術館 10月27日(土)〜2019年1月20日(日)

 今回の展覧会中、一番混み合っていました。それでも入場制限を加えて入場者数をコントロールしていたので、満員電車みたいな混雑はありませんでした。
 絵の前に立とうとすると、牛歩の流れに加わらなければいけません。せっかちな私には耐えられないので、絵の前の人だかりの頭越しに鑑賞しました。なんか、ご婦人が多かったので、背丈の関係から十分に観ることができました。

 『叫び』系、『マドンナ』系、『吸血鬼』系らの逸品がすべて展示されていて、満足感を味わえました。若い頃から順番に鑑賞してゆくと、後年に描かれた前記傑作群に繋がるムンクの本質が理解できました。若い頃から、身内の死や病をテーマにした絵を描いています。また、夜に佇む女性を好んでモチーフにしています。その流れで『叫び』や『吸血鬼』を観ると、自然な流れというか、違和感がないのです。

 「ルーベンス展−バロックの誕生」
 国立西洋美術館 企画展示室 10月16日(火)〜2019年1月20日(日)

 「王の画家にして画家の王」のルーベンスです。もうね圧倒されちゃいます。ヨーロッパ中の王侯貴族たちからの注文に応え続けたことから、工房生産方式で量産したとされています。中には、署名しただけの作品もあるそうです。ルーベンスが手を入れた割合で価格が設定されたとか言われています。

 今回はあらゆるジャンルの作品、合わせて45点が一堂に介しているそうです。個人的には、肖像画が好きです。身近な人物がモデルとあれば、ルーベンス本人の手によるものでしょう。有名な長女の肖像画なんか圧倒的です。

 「リヒター/クールベ」
 本館2階常設展示室 6月19日(火)〜2019年1月20日(日)

 国立西洋美術館が所蔵する絵の企画展なので、他所からの絵ではありません。しかしながら、好きなクールベを軸に構成したとあって見逃せませんでした。

 「ピエール・ボナール展」
 国立新美術館 企画展示室1E 9月26日(水)〜 12月17日(月)

 上の展覧会はいずれも上野の施設によるものです。『ピエール・ボナール展』だけは、国立新美術館なので、六本木まで足を運びました。国立新美術館というと、8年前だったかの『オルセー美術館展』以来です。流石に東京の変化は目まぐるしいものです。大江戸線の六本木駅の様子が違っていました。また、駅から美術館へ辿る道筋の光景も以前と違っていました。

 オルセー美術館が企画し、所蔵コレクションを中心にして130点余を集めたそうです。人気が高かったとあって、企画そのままに日本でも開催したそうです。
 リトグラフのポスターや雑誌の挿絵まで見ることができたのは嬉しかったです。ポスターに見られる洒落た構成は、同時代のロートレックやミュシャにはないものです。例えば、娘が手にしたグラスにシャンパンが注がれ、その泡が溢れて画面に広がって背景を構成するアイデアは秀逸です。


 せっかくということで、他にも国立西洋美術館の新館の「ローマの景観−そのイメージとメディアの変遷」10月16日(火)〜2019年1月20日(日)も鑑賞しておきました。

 国立西洋美術館の予定コーナーを眺めていたら、ありましたよ奥さん。
 「ル・コルビュジェ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代へ」来年前半です。見逃せませんね。

 国立博物館では、来年1月〜2月に「顔真卿 王羲之を超えた名筆」が予定されています。

 また、東京展を見逃した「フェルメール展」が、来年前半に大阪市立美術館で開催されます。うまくスケジュールを調整して、他の有力展覧会と併せて観覧したいと考えています。
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八百八拾弐  最近の世相(2018/11/24)
 11月20日の Livedoor NEWSから

 来年10月22日の新天皇即位パレード 御料車本命はトヨタ「センチュリー」か

 政府は次の御料車について、発注する国内メーカーは今後検討するとしているが、どこになるか。

 「最有力なのは2006年から導入されているトヨタのセンチュリー・ロイヤルの現行モデルのオープンカーバージョンでしょう。その前の1967年導入の日産プリンスロイヤルも名車でしたが、再現は難しいでしょう」(メーカー関係者)


 センチュリーには乗ったことがありません。想像ながら、きっと素晴らしいものでしょう。
 なにせ、ライバルの日産プレジデントの初代(2代目も中身は同じ)もまた、極上サルーンでしたから。
 大昔、職場の公用車が初代プレジデントでした。多分、組織トップの送迎用だったのを、古くなって更新した際に、当方勤務の出先施設に押し出されてきたものでしょう。

 初代プレジデントは、後輪が板バネのリジット式、ドラムブレーキ、ヘッドレストなしのローバックシートでした。半世紀前の車とあって、いかにもなスペックでした。
 板バネですから、しょぼい乗り心地であろうと想像していたのに、運転してみると目から鱗でした。もうね、氷上を滑るが如き滑らかさでした。まさに極上の乗り心地で、未だあれを上回る乗り心地を体験していません。どっしりした手応えでありながら、細かいゴツゴツ感を一切シャットアウトしていました。履いているバイアスタイヤのおかげもありましょう。いずれにしても、カタログスペックで判断しちゃ駄目よの典型です。

 ブレーキのフィーリングも格別でした。ドラム式ながら、よくいわれる「巨人の手で掴まれたかのような」減速フィーリングでした。まるで、後方に押し戻されるかのような感覚でした。重い車でありながら、ブレーキ剛性感と手応えがしっかりしていました。

 その初代プレジデントは50年前に造られた車でした。でありながら、本物の高級感が横溢していて、コストに縛られた量産車とは、根本的にクオリティが違っていました。3代目以降のプレジデントは、量産車ベースの当たり前のプロダクトでしたけど。
 そこでセンチュリーです。トヨタが今の技術をコスト度外視で投入したであろう新型センチュリーは、もう間違いなく極上サルーンでしょう。


11月22日の Livedoor NEWSから

 「ガッテン!」の影響でえごま油が大人気に スーパーから姿を消す

 11月21日に放送された『ガッテン!』(NHK)で、えごま油が特集された。えごま油はシソ科の植物「荏胡麻」から取れる油で、血液をサラサラにする効果のある必須脂肪酸「オメガ3脂肪酸」を多く含む。番組の実験では、48人の被験者に毎日スプーン1杯分のえごま油を摂ってもらい、このうち33人に体重減少が見られたと紹介していた。

 放送から一夜明けた22日、番組の影響か、ネットでは「えごま油買ってきた!」という呟きが相次いだ。さらに多かったのが、売り切れを知らせるツイートだ。


 私も番組を見ました。感想は、アザラシ油すげえ「代替品として似た効能を発揮するえごま油を購入しよう」でした。
 オメガ3脂肪酸の効能であり、他にも魚油、亜麻仁油が該当するそうです。

 数年前の人間ドックで内臓脂肪過多を指摘され、一年間の油断ちをしました。鶏のから揚げ、豚カツ、海老天その他天麩羅を我慢しました。その甲斐あって、数値を戻すことができました。しかし、油断ちは辛かったです。我慢したのは、好物ばかりですから。

 で、番組を見てこれだって思いました。我慢しなくていいんですね。オメガ3脂肪酸でバランスが取れる模様です。
 さっそく近在のスーパーを訪ねたところ、いずこもえごま油が完売状況でした。見事にえごま油の棚が空っぽなんです。店員さんに確認すると、当分の入荷はないだろうとのことでした。気長に待ちますよ。


11月16日の THE SANKEI NEWSから

 小池知事、鳥取知事に不快感 「母の慈愛」発言に「私は母になれなかった」

 東京都の小池百合子知事は16日の記者会見で、地方税収の大都市から地方への配分強化を巡り、平井伸治鳥取県知事が東京都に譲歩を促そうと、「母の慈愛で大都市と地方が折り合える案を考えてほしい」と発言したことに不快感を示した。「私は母になれなかった。安易な発言で大変傷ついた」と述べた。小池氏は子供がいない。


 本当にくだらない話です。自分の経験にないことを、「体験していない事象を押し付けてくるな。失礼だ」とか言ってたら、貧しい会話しか成立しません。政治家は未来を語ったり、大きな予想枠を想定しなきゃならんのに、仕事にならないでしょう。

質問:東南海巨大地震によって、関東が機能不全に陥る恐れがある。東京都として対応を考えているのか。
答弁:私は関東大震災クラスを体験していない。経験値のない人間に対する安易な質問であり、大変傷ついた。

 まるでジョークです。都知事選での成功体験に執着しているのでしょう。つまり、なんとしても被害者ポジションに収まろうと腐心し、こうして実践もしているのでしょう。なんか、お隣の国みたいなメンタリティです。
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八百八拾壱  北方領土が喧しい(2018/11/17)
 急遽、北方領土の返還交渉が俎上に上がってきました。朝日新聞デジタルから引用します。

 安倍晋三首相は14日、訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した。56年宣言は平和条約締結後に歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島の2島を引き渡すと明記している。日本政府は従来、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の2島も含めた北方四島の一括返還を求めていたが、首相は今後の交渉で2島の先行返還を軸に進める方針に転換した。

 4島一括返還といえば、昔から保守界隈の大物論客である伊藤憲一氏や木村汎氏の主張が有名です。この両者は領土原則論者ともいうべきスタンスで、領土交渉は絶対に譲ってはいけないとしています。
 ひとつの見識ではありましょうが、現実を動かせる力は皆無です、4島返還に拘ったら未来永劫ものごとが1mmも動かないのは明白です。国後、択捉までを返還させるのは、ポーランド分割領土を返還させるのと同じ無理筋です。

 2島返還にしてからが、詰めに際してはロシア相手の困難な交渉ごとが待っています。また、プーチン大統領がクレムリンから去れば実現が遠のくでしょうし、日本側にしても安倍首相が去れば4島返還勢力に抗えずに潰れる恐れがあります。この機を逃したら、後にはペンペン草も生えないでしょう。

 返還した島嶼部に米軍を駐留させないことを問題にする向きがあり、ロシア側のこの要求を「高いハードル」と問題視しています。変な話です。こんなの敢えて問題視するようなことではありません。外交交渉には必ず相手がいます。ロシアが米軍忌避を絶対条件にするのは、朝に東から陽が昇るのにも似た自明のことです。「高いハードル」などと問題視すること自体が、反対勢力の因縁づけです。

 領土交渉を進めるに当たって、日本の保守陣営が後門の狼となっている模様です。与党の強力な支持層でもある彼らを抑えるには、安定した安倍政権でないと無理かと思います。繰り返しますが、この機を逃したら返還は遠のくだけです。
 プーチン大統領にしても、2島返還を具体化するために国内の反感を抑えるのに腐心しています。プーチン氏なればこそ、ここまで具体的な政治課題にも掲げることができているのです。プーチン氏が去れば消えるのみの話です。

 そのような状況下、4島返還論者たちは反発を強めているのでしょう。政府側も2島返還だけでなく、他の2島についても帰趨を協議するとかの適当な情報を流しています。そんな無理筋を敢えて流すのは、反体勢力を宥めすかす意図なのでしょう。見え透いていますけどね。
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