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九百四拾   昨今のボクシング展望(2020/1/12)
九百参拾九  ゴーン氏逃亡劇(2020/1/5)
九百参拾八  一生行かなそうな都道府県(2019/12/29)
九百参拾七  日月早し(2019/12/22)
九百参拾六  アフガニスタンの悲劇(2019/12/14)
九百参拾五  スペインと日本との相違(2019/12/7)
九百参拾四  スペイン、歴史の旅(2019/12/1)
九百参拾参  F.L.ライトと望外な出会い(2019/11/24)
九百参拾弐  スペイン出立(2019/11/16)
九百参拾壱  井上選手激戦(2019/11/10)
九百参拾   札幌でいいんじゃね(2019/11/2)
九百弐拾九  夷吾死せば、斉国利あらず(2019/10/26)
九百弐拾八  台風のことども(2019/10/20)
九百弐拾七  太公望の名前(2019/10/12)
九百弐拾六  消費税10%(2019/10/5)
九百弐拾五  ショーン・ポーター残念でした(2019/9/29)
九百弐拾四  某ボクシング系ブログのお題(2019/9/21)
九百弐拾参  カペルスキーは肌に合わない(2019/9/14)
九百弐拾弐  NHKをぶっ壊せ(2019/9/7)
九百弐拾壱  柔道再生(2019/9/1)




九百四拾   昨今のボクシング展望(2020/1/12)
 例年であれば、年末のボクシング観戦に力が入るものです。しかしながら、昨年はわりとどうでもよかったです。

 12月23日、横浜アリーナでWBAミドル級王者の村田選手が8位のスティーブン・バトラー選手に5回TKO勝ちしました。
 村田選手の鮮やかなTKOは結構なことなのですが、対戦相手にもっと名のある強豪を選んでほしいんです。村田選手はやたらゴロフキン選手とアルバレス選手の名を口にするんですけど、その前に自身のグレードを上げるべきです。それが対戦実現に至る王道です。まずはWBC王者のジャモール・チャーロ選手、WBA暫定王者のクリス・ユーバンクJr選手、無冠の強豪ダニエル・ジェイコブズ選手、あるいはランキングは落ちるものの文句なしの実力者であるマット・コロボフ選手などです。
 彼らと闘って勝つことこそが、ビッグマッチへの切符なんです。彼らと闘わずしてスーパーマッチを希望しても、ビッグマネー狙いの思い出づくり路線にしか見えません。

 大晦日には、大田区総合体育館でWBO世界S.フライ級王者の井岡選手が1位のジェイビエル・シントロン選手に判定勝ちしました。
 井岡選手の相手もWBO1位といいながら、トップ選手といえません。現行S.フライ級の強豪というと、ニエテス選手(一昨年判定負け)、エストラーデ選手、シーサケット選手、アンカハス選手、ヤファイ選手、ゴンザレス選手(7年前に対戦回避)です。ファンが見たいのは、こういうグレードの高いカードなんです。

 同日、WBOフライ級王者の田中選手は、12位のウラン・トロハツ選手を3回KOで下しました。
 圧倒的な力の差を見せつけての勝利でした。しかしながら、相手は下位ランカーなんです。もっと良質な相手を準備してあげないと田中選手が気の毒です。ご本人も腐っているとか聞こえてきます。

 などとファンは欲張りなんです。会場に行きもしないTV観戦の私が、あんまり勝手なことを言っちゃあ駄目なんですけど。

 一方、世界に目を向けると、今年も興味深いビッグマッチが控えています。
 最注目は、2月22日にラスベガスで開催されるWBCヘビー級王者のデオンテイ・ワイルダー vs 3位のタイソン・フューリー再戦です。初戦の凄さというのは、ちょっとこれまでにも観たことない内容でした。フューリー選手はあのワイルダー選手の超強打をまともにくらいながら、なにごともなく立ち上がったのです。それも二度のダウンからです。あれには世界中の観戦者が驚いたことでしょう。皆が決まったと思った直後ですよ。
 再戦の期待も否が応にも高まります。なお、個人的には、フューリー選手がポイントで勝ったかと思ったのですけど。まあ、どちらが勝ってもおかしくない接戦でした。

 そして、我らがIBFバンタム級とWBAスーパー王者である井上選手ですよ。トップランクによると、4月25日にラスベガスで試合が組まれる予定だそうです。相手は未定ながら、他団体の王者との統一戦が期待されます。WBC王者のノルディーヌ・ウバーリ選手か、WBO王者のジョンリル・カシメロ選手が有望です。どちらも井上選手の敵でないと考えられ、さっさとバンタム級を片づけて S.バンタム級に進めていただきたいです。前WBO王者のゾラニ・テテ選手が最大のライバル視されていたものを、昨年末の対戦でカシメロ選手があっさりと下してしまったのです。

 もはや興味は、S.バンタム級の強豪たちです。なかでもWBO王者のエマヌエル・ナバレッテ選手が注目されていて、井上選手との対戦が待ち望まれています。こういうのは、旬を逃しちゃ駄目なんですね。再来年あたりで実現することを切望しています。これは世界中のボクシングファンの願いなんです。私なんか、今からワクワクしています。
 目次




九百参拾九  ゴーン氏逃亡劇(2020/1/5)
 昨年末のゴーン氏逃亡劇は驚きでした。国際謀略映画もかくやのドラマです。

  ゴーン氏の身柄確保はもう駄目でしょうね。ペルー政府がチリ政府にフジモリ氏引き渡しを要請したのと同じ手続きをしても相手にされないでしょう。レバノン政府にしてみれば、自国民保護の考えを崩さないでしょう。まして、あのときの日本政府は、フジモリ氏の身柄を護るスタンスでしたもの。また、小泉訪朝の際に連れ帰った拉致被害者を、約束を違えて返しませんでしたしね。

 むしろ反省すべきは日本の司法当局でしょう。鍵付のケースなんて無意味です。鍵なんか開いて当たり前だし、ケースなんて切削、切断工具でどうとでもなります。鍵を弁護人に預けていたとか意味ありません。むしろ、パスポートすべてを預け、必要に応じて弁護人が代理手続きをすればいいだけです。セキュリティがあまりにガバガバで情けないことです。

 加えて、あの弁護士さん不誠実です。当初はパスポート2通の件を黙っていましたもんね。その点が明らかになると、一転して失念していたとかの言いわけを始めました。見苦しいことこの上ないです。

 年が明け、さらにいろいろな情報が出てきました。出国の際のチェックが杜撰だったとか、日産側の監視が人権を犯しているので解くよう求めたとか、わけが分かりません。
 決定的なのは、いかにも大金がかかりそうな逃走実行チームを動かしていたことです。本来であれば失敗するであろう逃走プランを成就させてしまったのは、日本側のセキュリティ意識の低さです。すべてがユルユルなんですね。

 このまま推移すると、ゴーン氏はレバノンから動けません。日本は勿論、フランスに入れば身柄拘束されます。ブラジルはどうなんでしょうか。賄賂でなんとかなりそうですが、危険は犯せないでしょう。今回の逃亡劇で罪状も増えたことですから、余計に慎重になるでしょう。

 そのレバノンでも訴訟を起こされたそうで、四面楚歌の袋小路です。レバノン政府はゴーン氏に不利な判断を下さないにしろ、身動きが取れないのに変わりありません。一応がとこ言っておきます。ゴーンさん、震えて眠れと。
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九百参拾八  一生行かなそうな都道府県(2019/12/29)
 タウンネットとかが、例年の調査結果を発表していました。 「一生行かなそうな都道府県」無念の1位は佐賀 栄えある最下位は静岡 です。
 佐賀県の方はお気の毒です。佐賀県は不人気調査でも、常に下位に低迷しています。あるいは、「旅行したことない都道府県」でも第一位になっています。私自身、長崎を訪ねた際に通過しただけで、とても逗留する気になりませんでした。長崎は今調査でも39位で、旅行先として不動人気です。大分、宮崎も決して人気とまでは言えないまでも、中位くらいを確保しています。

 こういうのは、終着に位置していればゆっくりするもので、その途次だと厳しいのでしょう。宮崎県や高知県は、陸の孤島と呼ばれるようにアクセスが不便です。でありながら中位に収まっているのは、最終目的地として認識されるからでしょう。もちろん、宮崎県にしろ高知県にしろ観光地として満足度の高いものです。
 宮崎県はサボテン公園をはじめ、宮崎交通がコーディネートした日南海岸筋で南国イメージを上手くつくり上げています。
 高知県はといえば、これはもう有数の観光県でしょう。足摺岬まで足を延ばせば、太平洋の絶景パノラマが堪能できます。また、皿鉢料理は折り紙つきです。高知で食うカツオの叩きは他では味わえません。はりまや橋にがっかりするのもお約束ですしね。

 2位島根県、3位福井県、4位鳥取県と山陰方面が不人気なのも同情します。アクセスの不便さと冬場の雪に埋もれたイメージがよくないのでしょうか。私は好きで何度も訪ねました。冬場の蟹が堪えられませんものね。

 4位茨城、11位群馬、13位栃木県と北関東の3県が上位に入っているのもお気の毒です。これらは、なんでか不人気県の常連でもあります。首都圏の近在にあり、アクセスが不便というわけでもありません。特徴のなさが、どうでもいい感を醸し出しているのでしょうか。

 一方で、行きそうと最も期待されているのが静岡県です。富士山の威光と熱海の魅力でしょうか。私にとって、静岡県の存在価値はMOA美術館です。ここには尾形光琳の「紅白梅図屏風」があり、無視できません。

 しかし、東京が34位で、大阪、京都、奈良より静岡が上ってのはなんなのでしょうか。やはり富士山の影響力が圧倒的なのでしょうか。
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九百参拾七  日月早し(2019/12/22)
 先月のこと、50半ば過ぎの従妹が癌で亡くなりました。両親が老いているので、その子供たちがいろいろな段取りを立派に務め上げました。今月末に49日の法事が予定されているなか、先週のこと故従妹の母親までもが亡くなりました。体調が良くなかったといえ、気落ちが大きかったのでないかと想像しています。朝起きたら、文字どおり眠るように死んでいたそうです。

 昨日が告別式で、一か月遅れで子供の後を追った格好です。実は、従妹が亡くなったとき、同日にその母親の里方でも兄妹が亡くなっていたのです。わずか一か月の間に3人が亡くなり、世の無常を味わっています。
 家族の死によって、後を追うように人が死ぬのはそれなりにあるでしょう。私の母方の祖母と曾祖母は、一日違いで亡くなっています。葬式を連日で行ったわけで、家族は大変でした。

 従妹の子供は3人いて、協力しながら弔事をこなしました。最近のことなので、葬祭会館を利用したので、負担は少なめです。その分、金がかかる話ですけどね。また、街屋住まいとあって、近所の参列を断ったので親戚身内中心で済んだのも幸いでした。

 祖父である叔父さんが喪主ながら、老齢なので孫である長子が喪主の代わりとなりました。29歳の若さで喪主を連荘で務めるなど、全国レベルでもなかなかない話でしょう。すべてが終わった後で、我々叔父さん連中で労をねぎらいましたよ。

 年の瀬に思わぬ事態が重なり、予定が狂いまくっています。初七日以後、週ごとの廻り付もあり、読経の先読みまでやらされています。一向宗なので「正信偈」を唱え、「白骨の御文章」を読み上げています。読経が上手いわけでもないのに、男だからと仏壇前に座らされるのは苦痛です。49日が終わるまでと我慢していたのに、新たな法事が生じ、さらに読経が延長されます。
 仕方ないので、少しばかり練習に取り組んでいます。しかし、「正信偈」の節回しって難しいんです。一向宗の方はよく御存じでしょうけどね。
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九百参拾六  アフガニスタンの悲劇(2019/12/14)
 10日前、アフガニスタンで人道支援活動を続けるNGO「ペシャワール会」の現地代表である中村哲医師(73)が銃撃されて死亡しました。東部の都市ジャララバードを車で出発し、約25キロ離れた灌漑用水路の工事現場へ向かう途中のできごとでした。一緒にいた同会スタッフの運転手や護衛のアフガン人ら5人も銃撃を受けて死亡したそうです。

 殺害した組織がいずれであるか、未だ判然としません。タリバンは早々に関与を否定し、声明好きなISも沈黙しています。水利権を巡っての殺害が有力とされていて、地域利権の確執が招いたものと考えられています。

 中村氏の志と実行力、そして治水の実績は誰もが認めるもので、アフガニスタン再生に最も寄与するものだったでしょう。それだけに、その死を惜しむ声が大きく、中村氏の行動の迂闊さを悔やむ声もありました。

 しかし、セキュリティの不備を言っても、実戦を経験しているレベルの武装テロへの対処なんて無理です。まさか、移動先を事前にクリーニングしたり、諜報網を張り巡らせたりは非現実的です。そこまでの警備体制を敷けば可能でしょうけど、そんな余裕はどこにもないし、NGO活動に期待できる話じゃありません。
 また、特定勢力に偏すると敵対勢力から狙われる危惧があります。しかし、いずれかに話を通さなければ復興事業そのものに取り組めません。必ず、誰かの支援指示を受けないと活動そのものができません。
 それと匿名性を確保しての事業推進は無理でしょう。やはり、実績を売りにしてこそ説得力が発揮されます。名前も顔も出さないようでは、誰の信頼も得られないし、サポートも得られません。

 やれることといえば、せいぜい政治的な思惑がなく、生活基盤支援である点を強く訴求するだけでしょう。中村氏は、まさにそれをやってたわけで、身を守るためにあれ以上なにができたか、私には思いつけません。


 アフガニスタンの民は、すでに40年もの長きにわたって苦難を受け続けています。世上、ソ連による侵攻を苦難の端緒と報じる向きが多いです。正しくは、それ以前からの長い経緯があります。
 もともと親ソ政権下、反政府活動が盛んで、政権は反政府活動を弾圧し、ソ連はむしろ弾圧を止めるよう慫慂していました。弾圧を強行するアミンを除こうとして失敗し、逆にアミンに反撃され、アミンは弾圧をより強め、アメリカへの支援も求めました。事態が切迫したため、ソ連はアミン暗殺を強行して新たな親ソ政権を樹立しました。

 こうして世情不安定となって、ソ連軍の派遣が要請されたわけです。ソ連は中央アジアの4,000万人ともいわれたイスラム系と敵対するのを恐れ、介入を避けるべきとしていたものをブレジネフが強行してしまいました。その結果、今に続くアフガンの不安定、ムジャヒディンたちの成長と破壊活動が中東にまで飛び火し、今日まで筆舌に尽くし難い惨禍を招いています。
 そのムジャヒディンを育て上げたのは、アメリカというか当時の国家安全保障担当補佐官のブレジンスキーです。ブレジンスキーが仕掛けた罠に、ブレジネフが嵌ったものです。双方ともに愚かな選択をしたものです。

 武器と資金、さらに軍事顧問を投入し、イスラム原理主義者を育て上げて他国を荒廃に導いた罪は極めて大きいです。私はブレジンスキーこそが大罪人と考えています。念のために記しておくと、ソ連軍のアフガン侵攻は1979年のクリスマス時期で、反政府活動を支援するため、ブレジンスキーがムジャヒディンへの支援を大統領に決定させたのはそれ以前の夏頃なのです。

 アメリカは罪深い国です。この一文を常に頭に置いておきましょう
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九百参拾五  スペインと日本との相違(2019/12/7)
 スペイン旅行においても、素晴らしい絵画に出合いました。本来であれば、「スペイン、アートの旅」のお題で書くところなのですが、残念ながらオリジナルの写真がありません。プラド美術館は撮影禁止なのです。

 おかげでベラスケスの「ラス・メニーナス」を目にしながらも、ここに紹介できないのです。この絵が飾られていたのは広い部屋で、モデルの王と王妃が立っている位置も指定されていました。独特な空間処理をしているのが、指定された鑑賞位置から把握できる工夫が為されていました。
 また、フランドル絵画も所蔵していて、大量のボッシュやブリューゲルを鑑賞できました。他にも、ゴヤ、エル・グレコ、ラファエロなど、美術史に記される名画群を堪能できました。ただ、2時間の割り当てとあって、ほんの一部しか観ることができませんでした。メトロポリタン美術館で印象派以外を鑑賞できなかったのと同じです。

 ソフィア王妃芸術センターも訪ね、「ゲルニカ」も間近に鑑賞させていただきました。なにぶん時間がないので、現地ガイドさんのお薦めポイントだけを鑑賞しました。それにしても、ゲルニカは凄かったです。

 また、いくつもの教会を見学した際、当時の掲示状態ままの宗教画を観ることができました。信徒たちの信仰心をより高めるよう工夫された当時のままの姿です。特に、エル・グレコが抜群の才を発揮しています。


 スペイン現地を訪ねて気づいた点が多々あります。その中に、日本が参考にすべきこともありました。
 まず、日本の将来において、必ず課題になるであろう限界集落のインフラ整備の問題です。すでにコンパクトシティへの集約化が提案されていて、今は表に出ていないものの、将来において避けられない重点課題です。

 スペインの農村がすでに集約化を実現していました。農業は基本的に大規模集約化と機械化が達成されていて、完全に職住分離が成立しています。地の涯まで続く畑に住居がほとんど存在していません。住居は別な場所に集約していて、農民たちは遠くの畑まで出かけることとなります。

 新幹線やバスで延々走るなか、たまに住居が点在するくらいです。また、数十年前に放棄された家屋が、撤去されぬまま朽ち果てているのに出会います。このような集約化は、いずれ日本でも必要になります。上水道、下水道、電線など生活インフラの維持が難しいからです。
 これらの維持がすでに困難になり、水道管が老朽化したまま更新の目途さえ立っていない地域が現実にあります。送水の半分が漏れて失われているケースもあるそうで、まったく怖い話です。
 およそ40年間での更新が必要で、当地でも数年前に交換を終えました。しかし、次期更新は可能でしょうか。多分、無理かと危惧しています。

 電線にしても、地下埋設か電柱かの議論があり、都市部では地下埋設も可能でしょうが、住居が点在している田舎では無理です。いずれ、コンパクトシティへの集約化が切実な議論として表に出てくるでしょう。
 スペインでも、点在している住居や施設に対しては、空中電線で配電していました。そんな個別への埋設整備は経済的に合わないんでしょう。


 第二次産業の中心に据えるべきは自動車産業です。かつての日本では、自動車産業関連に従事している労働者が製造業の4割という時代がありました。これも円高と貿易摩擦緩和のため、他国に生産工場を移転しました。それでもなお、自動車産業が重要な役割を担っていることに変わりありません。

 なので、他国を訪ねた際には、どんな車が走っているかついつい興味が向いてしまいます。
 私が訪ねたのは、マドリッド、セビージャ、グラナダ、バルセロナといった主要都市です。田舎だと、また違った結果なのかもしれませんが、その都市部で見かけた車を記します。
 よく見かけたのが、VW、BMW、MBのドイツ御三家、プジョー、トヨタ、SEAT(セアト)が多かったです。SEATはスペインメーカーですから当然ですね。それと、トヨタはタクシーや公用車にも多用されていて、プリウスが使用されています。低燃費エコで頭抜けているとあって、EU政府も公用車に指定しているくらいですから。
 次いで、シトロエン、ルノー、アウディ、フィアットなどEU車が多く、若干少な目ながら、日産、レクサス、ホンダも走っていました。また、ヒュンダイ、キア、フォード、オペルも見かけました。アメ車はフォードだけですね。それもコンパクトカーだけです。

 世界的な傾向なのでしょう。各社ともにSUVを競っています。ところで、そのSUVですけど、一番格好よかったのはC-HRでした。それも白ばかりでした。私が若い頃、ヨーロッパで白は流行らない、個性的な色が好まれるとか言われたものです。しかし、日本で生まれたピュアホワイトやクールホワイトが、今やヨーロッパでも主流となっています。実は私、それを若い頃すでに予言していたんです。ピュアホワイトの清澄さを美しいと捉える感性に、洋の東西は関係ないとの確信がありました。その予言が当たっていたのを確認できて安心しました。


 最後に、スペインの負の部分を記しておきます。あらゆる地点でスリ、置き引きに対する注意喚起が為されました。

 グラナダからバルセロナへ空路跳ぶ際、搭乗口前に並んでいたとき、私の後ろに二人の若い日本人女性が続いていました。そこへ、若禿のスペイン人らしき男性が近づき、頼りない日本語で話しかけました。
 若禿「日本人ですか?」
 女性たち「そうです」
 若禿「なにかお手伝いしましょうか」
 女性たち「いえ、結構です」
 その男が去った後
 ぬばたま「さっきの奴、なんか怪しいんとちゃいます?」
 女性たち「ホント、怪しいわ」

 また、サグラダファミリア訪問の際、まずは隣の公園から全景を望じました。
 現地ガイドさんの説明を聞いていたとき、いきなり後ろでホイッスルが鳴り響きました。振り向くと、赤いスタジャンを着た黒人女性がボードを掲げ、すぐ後ろにいた○○系男性二人組を指差して注意喚起していました。
 ガイドさん曰く「赤い方はボランティアの保安員で、この二人組がスリだから、気をつけろと言ってる」
 二人組は怒った顔で去っていきましたが、黒人女性は後を追い、公園エリアから出るまでホイッスルを鳴らして追っ払いました。なお、ボードには「スリに注意せよ」と書かれていたそうです。
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九百参拾四  スペイン、歴史の旅(2019/12/1)
 先週紹介したグラナダのホテルは、ライト設計ではありませんでした。20世紀末に建てられたそうです。しかし、設計者は間違いなくライトを模しています。

 関西空港を昼頃に立ち、10時間余のフライトでヘルシンキに着きました。時差の関係で着いたのは5時頃です。さすがに緯度が高くて暮れなずんでいました。
 ここから乗り継いでマドリッドまで4時間のフライトです。ユーラシア横断はビジネスだったものを、ここからはエコノミーです。時間待ちの間、ヘルシンキ空港内を散策しました。下図のように、すでにクリスマスを迎える準備が為されていました。
 最近は搭乗に際して保安検査が厳しいものの、EU内の乗り継ぎについては、シェンゲン協定のおかげで同一国内の扱いになります。一旦入国すれば、パスポートチェックも必要なしです。



 2日目は、まずトレッド見学です。エル・グレコであまりに有名なトレドの丘です。



 プラド美術館です。2時間ではどうにもなりません。あまりに巨大な美術館です。全景を写そうにも収まりませんでした。



 スペイン王宮です。これまた巨大で、フェリペ朝の権力が世界を覆っていた時代に造られたものです。現地ガイドさんによると、部屋数が3,400余とかで、もう笑っちゃいます。これまた全景を撮ろうと、ギリギリまで後退しましたが、下図が限界でした。



 3日目は新幹線でセビージャへ行き、市内観光です。世界遺産のカテドラルには、イスラムとキリスト教両者の風合いが残されています。
 スペイン広場がまたでかく、下図の写真もまた最大限後退して写しながら、とても全景を収めることができませんでした。



 サンタクルスの街中を散策した後、投宿したのが下図の「アルフォンソ・トレセ」です。セビージャ最高のホテルで、首脳クラスが必ず泊まるそうです。内装や調度品が凄かったです。私がこれまでに泊まったホテル中で最高レベルです。



 4日目はミハスの街を訪ねました。白い建物が有名で、白い住居が重畳する様は美しいものでした。



 午後はグラナダに転じ、世界遺産のアルハンブラ宮殿を見学しました。ここもまた、イスラムの痕跡とキリスト教とが混淆しています。所謂、レコンキスタの歴史が刻まれているわけです。



 5日目はグラナダからバルセロナまで空路で移動しました。午後からは、いよいよ今回の旅行の本命であるガウディとの邂逅です。

 サグラダ・ファミリア教会堂との初見は感動的でした。およそ40年間憧れ続けてきた建築物です。やっとですもの。
 EU統合によってEU内の移動が自由になり、観光客が大幅に増えました。さらに世界中で中産階級が増えたため、世界レベルで観光客が殺到するようになりました。観光収入が激増し、かつての人力による作業が重機を多用した建設に変貌しました。下図のとおり、大型クレーンが活躍しています。



 現在の彫刻部門のチーフは日本人です。この方がバルセロナに身を投じたのは30年以上も前のことです。その当時、下っ端の青年としてNHKのドキュメンタリーでも採り上げられました。それが今や大出世です。



 内部も大きく進捗していました。正面の祭壇です。ちょうど見学時にパイプオルガンの演奏が行われ、暫し聞き惚れました。



 その後、グエル公園を散策しました。あまりTVなどで採り上げられていない部分を載せときます。



 6日目は自由行動とあって、ガウディを堪能しました。
 グエル邸です。朝一番で訪ねたので、静謐な空間でガウディの大技小技に目を楽しませていただきました。グエル氏はガウディのパトロンを長年努めたこともあり、この富豪の自宅を豪奢に設えています。
 退出時には入場待ちの列ができていました。朝一訪問は正解でしたね。



 各部屋ごとに異なった意匠が凝らされていて、中でもこの天井は贅を尽くしていました。



 お目当てのひとつであるカサミラです。外壁の波打つようなカーブは、採光を考慮したものです。



 スペインの裕福な家は中庭を設えていて、カサミラもまた中庭というか空間を持っています。



 屋上です。外壁のカーブ同様に、内側にも採光窓を多用しているのが見て取れます。



 夕食はオプションのフラメンコ・ディナーで、本場のフラメンコを観るのは初めてです。日本に紹介されている映像では、なんか恰好づけの踊りのイメージです。しかし、違うんですね。まるで勝負を挑むかのような情熱的というか、ハードスポーツのようなステップワークでした。下図の女性は、ダンサーの中でも年配の方ですが、一番激しい踊りを担当していました。きっと、メインダンサーなのでしょう。



 7日目早朝にホテルを出立し、往路の逆で帰路を辿りました。関西空港に着いたのが時差補正で11時頃、帰宅したのが夕刻でした。待ち時間を除いて、飛行機やバスに乗っていたのが総計17時間ですよ。もうね、腰が壊れそうでした。
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九百参拾参  F.L.ライトと望外な出会い(2019/11/24)
 スペイン旅行4日目にグラナダを訪ね、夕刻にホテル「サライ」に投宿して驚きました。
 まずは添乗員さんから説明があるので、ツアーメンバーはロビーに寛ぎました。ソファに身を預けたその目の前に、下のフロア照明が鎮座していたんですよ、奥さん。
 え〜、ってなもんです。この縦の意匠から、そこはかとなくフランク・ロイド・ライトの感性が伝わってきます。



 まさかと思い、ロビー全体を見渡せば、下図の見慣れた風景じゃないですか。両サイドの柱が途中から階段状のレリーフで斜めに天井へと繋がっています。天井の中心にある明り取り(照明)との組み合わせが、もうライトそのものなんです。



 念のためにと、照明を下から見上げるとこうなっています。ご覧のように面を分割するライト風処理です。



 下図がロビー全体の様子です。壁面や床面の意匠もライトですね。奥のバーに設えられた椅子もライト風味なんですよ。
 全体的に帝国ホテルと同じ香りが匂ってくるでしょう。材料コストと精緻具合は段違いですけど、ライトが表現しようとしている感性は同じでしょう。



 1階のドアがまたライトです。2階以上の客室ドアは安い素材で作られていました。それがまたライトらしいんです。
 帝国ホテルを建築する際、コストと手間を徹底的にかけた一方、同時期に建築した自由学園は徹底的なコストダウンを図っています。薄いベニヤまで多用したくらいですから。それでもチープ感が一切ないというセンスの良さ、ライトには誰も敵いません。



 翌早朝に外観も撮影しました。もっと明るくなってから撮りたいところですが、すでにバスが待機したんですよ。
 3本の垂直な溝はエレベータ区画です。この縦の溝がまたライトの意匠なんです。



 ホテル従業員に設計者を尋ねても、誰も知りませんでした。ひょっとしたら、違うかもしれません。しかし、その場合は誰であれ、ライトをお手本にしたものでしょう。
 今回のスペイン旅行はガウディに触れる旅だったものを、嬉しい変化球が投げ込まれて嬉しかったです。なお、弐百四拾五 フランク・ロイド・ライト (2006/5/13)でもライトに触れています。
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九百参拾弐  スペイン出立(2019/11/16)
 海外旅行第三弾を明日に控えています。次はスペインです。台湾、アメリカ東海岸に次いで行きたかった国のひとつです。
 目当てはガウディの建築物です。いろいろなツアープランを比較考量し、サクラダファミリア教会堂、グエル公園、カサミラのすべてを見学できる案を選びました。これが結構難しいんです。サクラダファミリアを外から見学するだけとか、グエル公園を訪ねないとか、なにかと抜け落ちているプランが多いのです。プラド美術館は、いずれのツアーでも必ず組み込まれているんですけどね。

 本当はルーブルとオルセーで芸術鑑賞したり、パリの街中を散策するのを優先したいんです。しかし、今のフランスはとても訪ねる雰囲気じゃないですね。荒れているし、治安も怖いことになっています。世上が落ち着いてから、ゆるりと訪ねたいと考えています。

 当然のことビジネスクラスです。アメリカ東海岸とほぼ同じ時間がかかりますから、とてもエコノミーでは耐えられません。また、同一ホテル連泊プランを条件にしました。今回のツアーだと、二か所で連泊があるので下着類を大幅に省略できます。

 旅行に必要な小間物は、前回に揃えましたから、なにも問題ありません。今回はお気楽にその日を待っています。

 アメリカへは成田から飛びましたが、今回は関空発です。成田便もあったのですが、関空も一度体験したかったものです。面倒なのは関空までの直行バス便です。当地を4時過ぎに出るとあって、眠いところを無理やりな出発となります。

 深夜というか早朝なので、駐車場の手配が面倒です。通常の駐車場は利用できません、かといって時間貸しパーキングは高くつくし、保安面も気がかりです。
 そこで、akippa を利用します。安くて時間の融通が利くし、街路パーキングと違って少しは安心です。一週間の契約なので、全日通して空きがなければいけません。予約可能日を待ち、予約開始と同時に申し込みました。バス乗り場近くにある隠れた駐車場を抑えることができました。一週間強の長期なのに4千数百円という安さで万々歳です。

 ツアー担当者がオプションプランを二つ企画しているのですが、いずれも潰れそうです。希望者がぬばたまさん一人なので、実施できそうにないと言われました。けっこう有名な教会の見学とフラメンコ実演を観ながらのディナーで、参加しないのは勿体ないと思うのですがねえ。今回のツアー参加者たちは、ケチンボばかりみたいで、なんか嫌だなあ。
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九百参拾壱  井上選手激戦(2019/11/10)
 先週木曜日、さいたまスーパーアリーナでWBSSバンタム級トーナメント決勝戦が行われました。WBA/IBF王者の井上尚弥選手とWBAスーパー王者のノニト・ドネア選手との新旧交代とも言われた注目の一戦です。
 この試合は世界でも注目されていました。勝敗への興味でなく、井上選手の勝ちっぷりが如何なるものか、そこに期待が集まっていたものと想像します。

 ドネア選手は5階級制覇した強豪ながら、加齢による劣化は明らかで、以前のスピードと力感は失われています。それでも強打(左フック)は健在でした。フェザー級まで上げたため、パワー不足をカバーするため、やたら力んでの強振が目立ちました。すると、スムースさと当てるタイミングが失われ、的中率が悪化しました。ここ数戦、分の悪い試合内容ばかりでした。ピーター・フランプトン選手には余裕で遊ばれましたし、WBSS初戦のライアン・バーネット戦(当時WBAスーパー王者)には分の悪い展開だったところ、バーネット選手が試合中に脇腹を痛めて途中棄権しました。準決勝では、対戦相手のゾラニ・テテ選手(WBO王者)が肩を痛め、6位の選手が代役となって勝ったものです。

 新旧交代劇を誰もが予想していました。かつて、オスカー・デ・ラ・ホーヤ選手がフリオセサール・チャベス選手を完膚なきまで叩きのめしてスター交代劇を演じました。そのデ・ラ・ホーヤ選手はパッキャオ選手にこれまた完膚なきまで打ちのめされました。そんな風に交代劇が行われてきました。ただ、パッキャオ選手は40才でありながら、今夏に無敗の強豪王者キース・サーマン選手に勝ったりで、未だモンスター健在ですけどね。

 判定勝利ながら、厳しい内容でした。2回に左フックをまともに貰って以降、縮こまった印象でした。踏み込みが浅い、パンチのフォローが効いていない(奥まで振り抜いていない)ように見えました。試合後の情報では、トレーナーからディフェンシブに戦うよう指示されたとか、右目が不調で二重に見えて右クロスを打ち辛かったとか聞こえてきました。
 左フックを貰うまでの、伸びやかに振り抜くパンチとは別物でしたもの。それとあって、ドネア選手も強く出てきました。ドネア選手が語った「井上選手のパンチはさほど強くない」は、そのような事情を知らない中での印象でしょう。

 圧倒的な内容でなかったものの、これでよかったかと思います。実戦でいろいろな状況を経験したことが、今後の糧にもなるでしょう。ただ、ファンとしては、どうしてもPFPの誉れを気にしてしまいます。なにせ、ライバルのサウル・アルバレス選手がつい4日前の日曜日に、一階級上のライトヘビー級王者セルゲイ・コバレフ選手を11回KOで鮮やかに倒し切りました。なので、アルバレス選手に負けるなの思いもありました。
 9回の右クロス被弾といい、2回の左フックといい、よく持ち堪えたものです。打たれ強さも大したもので、ひとつの証明が為されたかと思います。

 ところで、昔から気になる点があります。速いスッテプワークで出入りしたり、強打を打てるポイントに素早く移動する位置取りができているので、今は欠点ともいえないのですけど。
 近間(至近距離)での攻防一体のボクシングができないんです。相手のパンチを潜(くぐ)るボディワークはできています。今回も上手く潜っていました。しかし、潜るだけなんです。例えば、相手の右クロスを潜る際、U字を描くように右から沈んで左に浮き上がります。そこで、伸びた勢いで左フックをぶつければいいんです。また、相手の左フックを潜る際、左から沈んで右に浮き上がり、その勢いを予備動作として右クロスか右フックをぶつけます。これが攻防一体のボクシングであり、身についていれば近間で打ち合うことができます。メキシコの選手が特に鍛え込まれていて、近間でも相手のパンチを外しながら同時に強打を打ち合います。
 井上選手に限らず、日本の選手はこれができないんです。できないということは、練習していないからでしょう。練習していないのは、トレーナーにノウハウがないからじゃないでしょうか。例外として、井岡選手はできています。見事な攻防一体ぶりです。

 素人が偉そうなことを書いて済みません。すべて受け売りなんです。
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九百参拾   札幌でいいんじゃね(2019/11/2)
 五輪マラソンが札幌開催で決着しました。小池都知事が同意できないがとか、未だ納得していないとかブツクサ言ってます。IOC委員長が紳士然としているから助かってますが、攻撃的に出てきたらグウの音も出ないでしょうに。関係事務方は、大人しくしといてと首を竦めているものと想像します。
 招致委員会及び東京都が提出した招致資料がトンデモですもの。

 この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリート が最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。

 7月15日〜8月31日のうちの16日間が開催期間として指定されていたんでしょう。梅雨明け以後の時期で、今日びの関東は酷暑、炎暑、猛暑で連日炙られるのがお約束です。東京都は連日広報してるじゃないですか、暑さに注意し、屋外体育には配慮せよって。

 招致委員会の提案資料って詐欺でしょう。その嘘というか虚偽が世界中のアスリートに迷惑をかける話なわけで、この点を正面から非難されたら面も上げられないでしょう。

 昨今の酷暑への熱中症対策として、WBGT(湿球黒球温度)が活用されています。東京だと、概ね昼間は30度前後かと思います。これは「運動に関する指針」において、「厳重警戒:熱中症の危険が高いので激しい運動や持久走など熱負担の大きい運動は避ける。運動する場合には積極的に休息をとり水分補給を行う。」とされており、学校関係者やスポーツ主催者が参考にしているはずです。東京都も夏場にあんだけ熱中症に対する警鐘を鳴らしながら、どの口でマラソンなんぞをやらせるのか。

 安全衛生における職場労働環境への留意が煩いものだから、私も念のため、「作業者に関する指針」で作業内容の適性をチェックしたりしました。
 IOCの提案は選手、スタッフ及び観客たちに対する安全を優先していて、むしろ良心的じゃないですか。某国のように、東京都に謝罪と賠償を要求しているわけでなし。小池知事もアスリート・ファーストを散々ぱら謳ったのですから、選択は自ずと明らかなはずです。

 メディア側は歓迎していない模様です。そりゃあそうでしょう。メディア、特にTVメディアは絵になるか、視聴率を取れるかがすべてで、選手の健康だのは一顧だにしていないでしょう。選手の健康を心配した日には、夏の甲子園大会なんぞ後援できませんもの。

 ブラジルからの研修生を何度か受入れまして、彼ら、彼女らが口を揃えて言ってました。「リオデジャネイロは40℃になるけど、日本の方が暑い」と。とにかく湿気が我慢ならないそうです。ブラジルだと、いくら暑くても日陰に入れば凌げるけど、日本は日陰とか関係ないとうんざりしていました。
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九百弐拾九  夷吾死せば、斉国利あらず(2019/10/26)
 時候も凌ぎやすく、まさに読書の秋です。ために、以前に書いたように、積読状態の書籍を片づけています。
 今は安能務氏の『春秋戦国志(上中下)』(講談社文庫 1992年刷)を読んでいる途中です。春秋戦国史については、高校時代に『史記』や『十八史略』、そして『戦国策』を読んだところです。これらによって得られた知見は、私にとって貴重な養分になりました。学校の勉強もせず、多大な時間を割いたことも、その後の人生に寄与すること大でした。

 なお、中国文学に傾倒していた私は、その決定版として『資治通鑑』にも挑戦しましたが、これはもう読み始めてすぐに挫折しました。あまりに大冊すぎて心が折れたのです。

 商周革命によって紀元前11世紀頃に創業された周朝は、紀元前8世紀に東西に分かれて争い、諸侯が立てた東周が勝つことによって、ここから春秋時代が始まりました。

 周朝の権威が低下し、その現状を正確に把握したのが鄭の大夫である祭足でした。祭足は鄭荘公の信任厚く、強国である鄭の実力を背景に周王をも手玉に取ります。このようにして、周の権威は徐々に有名無実化の道をひた走ります。

 中原の力関係が微妙なものとなり、国際関係がいかにあるべきか誰もが手探りの時期に、圧倒的な経綸とビジョンを以って新しい国家観を打ち立てたのが斉の管仲です。

 本書上巻の大部が斉の桓公とこれを補佐した管仲、鮑叔たちの覇道の歩みに充てられています。管仲は字を夷吾と称し、その治世の能力が圧倒的で、諸葛亮が雌伏時代に自ら管仲、楽毅に比していたのが有名ですね。

 管仲が経済に明るくて殖産興業に功があり、人事にも巧みで、加えて外交の達人であったのは知っていました。しかし、戦にも閃きがあって神算鬼謀を駆使した詳細までは知りませんでした。隣国との諍い、中原の外にある楚国との関係づくり、外戎(犬戎)への対処、これらすべてで違った対応が求められます。
 その鬼謀ぶりが見事であったため、衛の公子は斉国に身を捧げました。また、犬戎に脅かされた燕を救うため、管仲は中原の兵を糾合して打ち破りました。犬戎と対立していた外戎の無終も参加し、無終随一の武将である虎児班もまた、その戦いの中で管仲を尊敬するまでに至りました。

 管仲は斉の桓公を補佐し、春秋五覇の初代となる諸侯会盟の盟主に推戴させます。ここに中原を束ねる「攘除夷狄」の意義を成立させました。牛耳を取る の故事は、斉の桓公が諸侯の盟主となったことから来ています。
 また、産業が発展し、法制を徹底することによって民政が安定しました。このように斉国が豊かに安定したことを指す 倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る の故事が有名です。
 管仲を語る際、常に管仲とタッグを組み、互いに絶妙のサポートをし合った鮑叔との関係を抜くわけにはいきません。所謂、管鮑の交わり ですね。

 読みながら、かなりの部分を忘れていました。ああ、そうだったと思い出しながら、かつて夢中になった中国史の面白さを改めて満喫しています。本書は春秋戦国時代を深く掘り下げていて、知らなかった事跡が満載されています。特に、管仲による戦闘指揮が詳述されていて堪えられません。将軍としての才能も頭抜けているんですね。後世の有名軍師でさえ及びません。常に国際関係を大局的に鳥瞰し、新しい中国づくりに成功しています。
 ここまでの天才性は、ちょっと他に例がありません。正直なところ、管仲がここまでの人物であったとは知りませんでした。大政治家であり、大行政官であり、大戦略家なんですね。

 本書を今まで放っておいて読まなかったことを悔やんでいます。もっと若い時分に読んでおけば、もっと感じ入ることもあり、もっと感性を豊かにすることができたでしょうに。
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九百弐拾八   台風のことども(2019/10/20)
 先日の関東を中心に東日本を襲った2度の台風は、今後の防災に多くの教訓と問題点を炙り出してくれました。河川の氾濫については、実に多様な要因が関係していて、私などが語れるものでありません。
 そんな大きなことでなく、私が気になった小さなことどもを記してみます。

 施設名称について、軽く名づけたものが市民の反発を招いたケースがあります。10月8日の東京新聞からの引用です。

 台風で破損、神栖の防災アリーナ 肝心な時に使えず 市民から疑問の声
 県内でも大きな被害を出した台風15号の来襲から九日で一カ月。災害時に約一万人を収容できる施設として六月に開館した神栖市木崎の「かみす防災アリーナ」は当時、強風で破損したため休館し、市は住民向けの避難所として開放しなかった。これに、本紙読者部に「市の対応はおかしい」との声が届き、市にも同様な意見があったという。市の対応を振り返った。


 当該施設の公式サイトを見ると、避難場所として設計したものでなく、よくある多目的ホールです。大勢の被災者を受入れるであろうスペースは典型的な屋内競技施設です。早い話が市民体育館ですね。それならそうと言えばいいのに、なまじ防災アリーナなどと称するものだから、肝心なときに役立たないとの批判に繋がったものでしょう。

 防災センターを謳うなら、高台に設置し、地震、大雨、暴風などへの抗堪性を高くし、被災者の長期受入れ生活に耐える設計であるべきです。被災者を大勢受入れ、24時間生活する場とするなら、よりによって体育館みたいなのは最悪です。夏暑くて、冬寒いですから。
 被災生活のアメニティを考慮するなら、天井を低くして窓を多く開けなければいけません。冬に暖を取り、夏に風を呼び込むのが求められるコンセプトです。加えて、できることなら畳部屋とすべきです。畳に毛布があれば取りあえず寛げます。地域コミュニティの公民館がそのようなつくりになっています。あのスタイルを大部屋として拡張すればいいのです。

 体育館だとワンフロアになりますが、上の大部屋だと複数設置できます。女性専用部屋やペット同伴部屋は今後必須になるでしょう。さらに、昨今の傾向からLGBT部屋も欲しいところです。また、台東区だっかで生じたホームレスの受け入れ拒否にも対応できます。たしかに浮浪者は臭い方が多く、全般的に衛生状態がよろしくないのも事実です。そこで、ホームレス専用部屋を配すれば問題も起きません。
 神栖市があれを防災センターを謳ったのは迂闊じゃないかと思います。


 19号が近づいてのニュースで、千葉の被災者たちが屋根の覆いに余念がない模様が映りました。15号は40mとかの暴風だったそうですが、あの屋根の破損具合がよく分かりません。波板やスレートなどが剥がれるのは当地でもよくある話です。瓦の剥がれもままあります。しかし、野地板まで裂け飛んでいたのは不可解です。

 古い家なら野地板も腐って傷んでいることでしょう。しかし、けっこう新しい家までもが剥がれていました。部分的に野地板が破損した写真を見ると、ずい分薄い合板が覗いています。あれじゃあ風圧に負けるのも納得です。あるいは止め釘の本数が少ないのかな。金物もかなり剥がれていましたし。
 とにかく、千葉方面と当地とでは、施工の手法が違うのかと思わされました。西日本は台風の暴風に晒されるのが当たり前ですから。


 暴風に晒された千葉県で、電柱の倒壊が多発しました。そこで、電線の地下埋設がさかんに語られました。多分、いいことなのでしょうね。問題は工事費です。特に少子化と人家の閑散化が進んでいる地方では、もうまったく割に合わないでしょう。それに一度設置してそれで終わりでなく、更新のたびに道路を剥がすという高コストが永久に続くんですね。

 同じように繁華街の地下街化も有効な案です。ただ、ものごとには、なんであれ長所短所があろうかと思います。大昔、静岡だったかの地下街火災事故で大きな人的被害が生じたはずです。火災への対応も怖いところだし、昨今の想定外の大雨を勘案すると、耐浸水性の施工は大ごとでしょう。


 堤防の嵩上げ、川底の浚渫、川幅の拡幅、止水弁の導入など、あまりに多くの課題が突きつけられた災害でした。とにかく金のかかることばかりです。しかし、文字どおり生活を守るためにやらざるを得ません。泥濘にまみれながら、生活を取り戻そうとしている方々にお悔やみ申し上げます。
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九百弐拾七  太公望の名前(2019/10/12)
 若い頃から老後の楽しみとして、興味深い本を見つけると取り敢えず購入しておきました。20代から続けていたとあって、かなりな冊数になっていました。

 その老後が訪れたわけで、積読状態の書籍を昨年から少しずつ片づけているところです。まずは取っつきやすい小説から始め、すべて読み終えました。
 次いでノンフィクションや実用書にかかっています。私の志向から歴史関係が多く、なかにはもっと早くに読めばよかったと後悔させられるものもあります。現在は『超巨人・民の太祖朱元璋』(講談社文庫 1989年刷)を読書中で、元末から明初の動乱に心躍らせています。

 先日読んだ『黄河の覇王−太公望のナゾ』(講談社 1982年刷)も実に刺激的で、中国文学ファンであった十代の頃が思い起こされました。史記やら十八史略やらに記された太公望の半生はドラマチックです。
 当時から太公望は、他の人物に比して名前が多いという違和感を覚えていました。それもあって、タイトルに興味を惹かれたものでしょう。

 著者の森秀人氏は、太公望の人物像に多面的に迫っています。先人の研究を下敷きにするだけでなく、中国現地に事跡を訪ねてもいます。1970年代の終わり頃の訪問らしく、いろいろ不便な中での現地踏査だった模様です。なにせ、未だ旅行先が制限されていた時期で、森氏の場合も対外文化協会の管理下で調査したそうです。

 詳細は原本を読んでいただくとして、私の興味の対象である名前について、自身のメモ書きとして整理しておきます。

 Wikipedia には、“呂尚”の項目立てで次の説明が記されています。
 姓は姜、氏は呂、字は子牙もしくは牙、諱は尚とされる。軍事長官である師の職に就いていたことから、「師尚父」とも呼ばれる。謚は太公。斉太公、姜太公の名でも呼ばれる。一般には太公望(たいこうぼう)という呼び名で知られ、釣りをしていた逸話から、日本ではしばしば釣り師の代名詞として使われる。

 『広辞苑』には、次の解説が記されています。
 【太公望】@周代の斉の始祖。本姓は姜、字は子牙。氏は呂、名は尚。以下略

 太公望の生地、職歴、履歴、文王との邂逅等について、実に多様な説があります。その理由として、儒教において理想化されたため、その事跡を伝承としてあまりに多くの人間が語ったためです。治世の理想形である堯・舜を受け継いだのが周の文王、武王、周公担で、儒教の規範として称揚しています。その周創業の名君を補佐した太公望も同時に高評価したわけですね。

 老荘の道教もまた、清貧から身を起こした太公望を高く評価しています。道教は日本において広まらなかったものの、中国庶民にとっては最も身近な思潮です。そのため太公望に関する民間伝承もまた、あまりに多いのです。
 伝承の多様ぶりは、文王と太公望の出会いの場についても言えます。参考までに列記すると、黄河、渭水、そく水(さんずいに束)、ばん渓川(いしへんに番)など、黄河及びその支流各所に伝承が残っています。

 『史記』は姓を姜とし、『呂覧』『周書』は本姓を望としていて、文献上も判断が分かれています。こんな混乱も珍しいというか、太公望ならではです。それもこれも、あまりに伝承が多く、しかもその中身が多様なのでしょう。
 太公望の由来を最初にオーソライズしたのは、司馬遷の『史記』(「斉太公世家」)です。

 吾が太公、子を望むこと久し、と。故に号して曰く、太公望と
 わが太公(古公亶父)は、あなたを久しく待ち望んでいた。なので太公望と号する。

 ※ 「吾が太公」を訳すのに、「我が父」としているのは間違いです。古公亶父は文王の祖父に当たります。
 司馬遷は多くの伝承を検証して、この説が相応しいと判断したのでしょう。しかし、違う伝承もあります。すでに逸書となっている『周志』に次の記述があるそうです。

 帝の曰く、昌、汝に望を賜う
 天帝の声として、文王に望を与えた。
 ※ 昌は姫昌のことなので、文王です。
 このように読めます。ただ、ここでいう望の解釈も難しく、望祭、望祀などといい、国家の重要事を卜占で司る役職と見ることもできます。
 武王が殷の紂王を破って王朝を建てたとき、即位の礼において牛を牽いたのが太公望です。同じく殷の湯王が即位する際に牛を牽いたのが伊尹です。王朝が革まる際の祭祀において、牛を供えるのが重要な手続きであり、牛を牽く役割は最高位の栄誉と地位を表しています。
 殷治世の立役者が名宰相の伊尹で、太公望は伊尹に比すべき栄誉を担いました。その最高栄誉からすると、庶民上がりの伝承に違和感を覚えます。当時は身分にシビアな時代ですから無理があるでしょう。太公望は姫氏に次ぐ名家である姜氏を統べる大物であったとするのが妥当ではないでしょうか。ちなみに古公亶父の妻が姜氏なので、この両氏は古くから協力関係にあったと考えるのが自然かと思います。

 2021年10月29日追加
 上で書いた呂尚が有力氏族を統べる人物であったであろうとする説の問題点が抜けていました。
 もし、そうであるなら斉国がその旨を強調していたでしょう。斉の太祖なのですから、庶人上がりなどの流説を絶対許さなかったはずです。国格の沽券に係わりますから。

 次に姜子牙です。日本では釣りとともに太公望が広く人口に膾炙されていますが、中国では太公、または子牙と呼ばれているそうです。姜子牙が広く一般的なのは、明らかに『封神演義』の影響でしょう。
 以前に書いた『封神演義』の感想文を再掲しておきます。

 昔から中国三大奇書と呼びならわされている物語があります。「三国志演義」「水滸伝」「西遊記」の3書です。これに「金瓶梅」を加えて四大奇書と称するケースもあります。ぬばたまもずっとそう信じていましたが、一部違和感がありました。「金瓶梅」は他書に比べ、奇書というには力不足の感が否めません。武松のエピソードは「水滸伝」とかぶっていますしね。

 1989年1月講談社文庫から「封神演義」が刊行されました。耳慣れないタイトルですが、中国古来の伝奇書の趣で、これは読まないわけにはいきません。訳者の安能務さんの解説によると、三大奇書に相応しいのは「三国志演義」「西遊記」と「封神演義」だそうです。ぬばたまは安能版が出版されるまで本書の名前さえ知りませんでした。日本語訳は抄訳を別にして、この講談社文庫版が本邦初公開のはずです。中国では物語のバリエーションも多く、広く親しまれ、読み継がれてきたそうです。

 本屋の店頭で頁をめくったぬばたまは、本書が商周革命を下敷きにした伝奇であると知り、すぐにレジに持っていきました。「三国志演義」が後漢から晋統一までを舞台にした馬鹿話であり、「西遊記」が大唐西域記をネタにした馬鹿話であるように、「封神演義」もまた、どれほどの荒唐無稽さか、もう楽しみでわくわくしました。
 期待は裏切られませんでした。物語世界の無稽さは「西遊記」といい勝負です。地上には現実の歴史世界があり、その上に仙界、天界があり、さらに神界を創設するプロセスが封神です。つまり仙人や妖怪、仙術をマスターした人間を神に封ずるということです。神になるということは、言葉を代えると死ぬことです。この殺し合いの大義名分が、地上の商周革命の国家争奪戦です。この戦いに、仙人たちが数千年にわたって練り上げた必殺兵器を携えて参加してきます。しかし、彼らは死ぬ(神になる)運命にあります。不条理ですが、これが天命(宇宙運行の定め)なのです。

 こんなプロットですから面白くないわけがありません。孫悟空と妖怪たちの戦いよりはるかにダイナミックで凝っています。「西遊記」はワンパターンですから。この奇想はSFと呼んでもいいでしょう。ここでいうサイエンス・フィクションとは、道教世界の物語空間構築の意です。
 面白い理由のもう一点は、人間界の歴史記述の正確さです。正確といっても仙人や仙術使いが人間界に混じっていますから、相当なアレンジはなされています。仙界戦争が始まるまでの記述は、結構正確に史実をたどっています。このリアル(伝奇にしては)な歴史記述を下敷きにしているからこそ、フィクションの面白さも際立つわけです。


 中国において、『封神演義』は『西遊記』と同レベルで大衆に親しまれているそうです。姜子牙が『封神演義』で主人公的役割を果たしているので、その名が孫悟空と同じように親しまれているそうです。明代に書かれたロングセラー小説なので、近世以降の太公望伝承に少なからず影響を与えてきたことでしょう。
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九百弐拾六  消費税10%(2019/10/5)
 今週から消費税10%が実施されました。10%の可否は判りません。ただ、軽減税率の複雑さが亡国ものであることだけは間違いありません。特に小売業に携わる方々の怒りは半端ないでしょうね。

 ポイント還元も余計です。これで以って、消費税率アップの意味がなくなっています。むしろ税率を下げたのと同じことになります。期限付きといえ、馬鹿な制度です。

 私はスマホにいらんアプリを入れたくないし、小売業者のカードを作りたくありません。ただでさえカードだらけで鬱陶しことこのうえないですから。
 私が重宝するのは、プレミアム付き商品券です。こればっかしは美味しい大盤振る舞いです。20,000円で25,000円分の商品券が購入できます。言わば、20%の値引き、あるいは25%分のボーナスともいえます。ポイント還元の小さな余禄どころでありません。我が家では二人分の限度額5万円分を購入しました。都合、1万円のインセンティブです。

 軽減税率の対象品目を眺めると、誰もが納得できない項目に気づきますね。食品と新聞だなんて、誰が考えても疑問を持つでしょう。日常必需品で重要なものは、食品以外にもたくさんあります。よりによって、新聞なんて必需品でも何でもありません。
 いつもなら大衆受けを狙ってリベラルな論陣を張る新聞が、この偏った対象について口を噤んでいます。この嫌らしさを日本国民すべてが感づいていて、なお知らん顔をする新聞業界の厚顔ぶり。ここまでの面の皮の厚さ、盗人猛々しいとはこのことです。

 消費税を社会保障費を賄うための財源とかいうけど、誰も信じていないのが喜劇というか悲劇です。一般会計なんですから、高齢化に向けた社会保障に充てるといっても無意味です。むしろ、消費税導入や税率アップを当て込んで、いらん支出を増やしてきました。消費税導入時、凍結していた整備新幹線事業が再度動き出しました。また、8%アップの法案が衆院を通過した翌日、当時の国交省大臣の馬淵氏が会見で、凍結していた各所の新幹線事業復活を公言しました。まさに、「所詮は税金、他人の金」です。
 こんな具合に支出を増やすのに、消費税率アップで社会保障費の財源確保が為されるはずもありません。

 消費税だけでなく、“ふるさと納税”もひどい話です。税に係る人間すべてが心得ています。納税促進に必要なのは、公平と公正です。ふるさと納税は、脱税を国家が使嗾する制度です。あれは審議会だか諮問会だかで提案されたもので、今日の混乱を見通せなかった甘い答申を元にしています。
 本来は、都会に住む者による出身地へのお礼的な意味合いでの“ふるさと返礼(寄付)”を趣旨としていました。それが、返礼品目当てで納税先を恣意的に選ぶという欲得づくの制度に堕しています。制度設計を推進した総務省の罪は大きいかと思います。

 10月7日追加
 地元大手スーパーが「プレミアム商品券利用キャンペーン」をやってました。
 1万円利用で500円分のインセンティブが付与されます。ということは、20,000円で26,250円の買い物ができることになります。30%のボーナス、あるいは24%の値引きともいえます。確実な還元なので、プレミアム商品券はこのスーパーで消費することにします。
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九百弐拾五  ショーン・ポーター残念でした(2019/9/29)
 昨日今日のスポーツ最大の話題はラグビー・ワールドカップでした。私はラグビーがチンプンカンプンです。まして、国別対抗の形を取りながら、その実多国籍連合軍とあってしらけます。

 ラグビーはどうでもええです。ボクシングファンは本日のビッグマッチに興奮したところです。ウェルター級のIBF王者エロール・スペンスJr.とWBC王者ショーン・ポーターによる統一戦がロサンゼルスで開催されました。2か月前のパッキャオ vs サーマンほどでないにしろ、全勝の強打スペンス選手と突貫小僧のポーター選手の激突とあって興味がいや増しました。

 結果は判定によるスペンス選手勝利で、大半の予想どおりです。11回のダウンは唐突でした。僅差と思われた試合も、あれで明確になりました。それでもスプリットデシジョンで2-1の判定でした。ジャッジ1名は、あんまりよろしくない採点ですね。

 スペンス選手は長い距離からの強打、ポーター選手は一気に距離を詰めての連打との特徴があります。その噛み合わせの帰趨がいかなる展開になるかが焦点でした。
 意外だったのは、近間の打ち合いでのパンチの差異です。ポーター選手は大振りが多く、的中率が悪かったです。むしろ距離の長いスペンス選手がコンパクトな振りで的中率がよかったのです。11ラウンドにダウンを奪った左フックも短い距離合わせが見事でした。

 明確な勝ちを得たスペンス選手は、今後クロフォード戦へと歩を進めるのでしょう。これこそがウェルター級のラスボス対決です。勝敗はやってみなきゃ判らないといえ、普通に考えるとクロフォード選手有利です。スペンス選手の長い距離をさらに上回るリーチが優位性をもたらせています。長い距離による深い懐を持ち、その空間を自在にコントロールしています。踏み込みの速いガンボア選手さえ、余裕で迎撃されました。タフでパワフルなジェフ・ホーン選手も子ども扱いされました。

 クロフォード選手はライト級から始め、すでに3階級を制覇しています。それも各階級の強豪を完膚なきまで叩き伏せての制覇です。スペンス選手に勝てば、もはやウェルター級で証明するするものはありません。上の階級も視野に入れていることでしょう。スーパー・ウェルター級戴冠も十分に可能と考えています。

 やはり中量級は刺激的です。レナード vs ハーンズ、デ・ラ・ホーヤ vs クォーティ、メイウェザー vs パッキャオなど、いずれも時代を代表する名勝負です。私はウェルター級が好きなんだなあ。
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九百弐拾四  某ボクシング系ブログのお題(2019/9/21)
 ここのところお邪魔しているボクシング系ブログに「拳論ときどき猫論」があります。
 数日前、記者である主宰者がブログ常連たちにお題を出しました。私はほんのたまにか書き込まないものの、このお題には興味を惹かれてすぐに書き込みました。

【テーマ】 ボクシングファンに10の質問!
 1.いま一番好きな選手は誰ですか?
 2.ボクシングファンになったきっかけは?
 3.今までに見たベストバウト1試合を選ぶとしたら?
 4.現役・引退を問わず最強(最優秀)だと思う選手は?
 5.今まで引退して一番残念だった選手は?
 6.いま一番、実現してほしい対戦カードは?
 7.いま一番、世界挑戦してほしい選手は?
 8.ボクシングの魅力は何だと思いますか?
 9.ボクシング以外の趣味はなんですか?
10.日本のボクシング界に言いたいことを

 ブログ参加者たちの自己紹介がわりにもなろうかとの親心みたいです。私が書き込んだ内容に若干の修正を加えて転載します。

 1.いま一番好きな選手は誰ですか?
 パッキャオ選手です。ライト級の戴冠試合はディアス戦でしたっけ。さすがに苦戦するだろうとか思っていたら、失神KOさせちゃいました。速いハンドスピードでありながら、その一発一発が強打だったんですね。あれを見て、今後の中量級戦線でも強打が通用するだろうと安心しました。

 2.ボクシングファンになったきっかけは?
 どちらかというとキックファンだったものを、レナード選手とハーンズ選手の映像を見てショックを受けました。中量級の力強いボクシングは当然のことながら、軽量級をさえ上回るスピードに認識を改めさせられました。

 3.今までに見たベストバウト1試合を選ぶとしたら?
 デ・ラ・ホーヤvsクォーティ戦が好きです。

 4.現役・引退を問わず最強(最優秀)だと思う選手は?
 マービン・ハグラー選手への思い入れが一番です。技術面の評価については、選手ごとそれぞれにポイントもありましょう。ハグラー選手がそれらを超越して凄いのは、スタミナと打たれ強さです。これが異次元レベルなので、負ける姿が想像できないのです。レナード戦は余裕をかましてポイントを失いましたけど。
 そのハグラー選手と11Rまで真っ向から打ち合ったムガビ選手は大したものだと思います。この無謀な挑戦さえしなかったら、Jr.ミドル級でレジェンドになれただろうにと妄想してしまいます。

 5.今まで引退して一番残念だった選手は?
 レノックス・ルイス選手が齢といえど、もう少しやれたのでないかと残念でした。ビタリ選手との再戦、ウラジミール戦、ワルーエフ戦などを観たかったです。

 6.いま一番、実現してほしい対戦カードは?
 クロフォードvsメイウェザー戦です。メイウェザー氏が這いつくばる姿を見たくて仕方ないんです。私、性格が悪いもので。

 7.いま一番、世界挑戦してほしい選手は?
 今のトップコンテンダーを知りません。
 古い話ですけど、村田英次郎氏に世界を獲ってほしかったです。

 8.ボクシングの魅力は何だと思いますか?
 ボクシングは拳による打撃という、本来であれば刑事犯罪に該当する極北のスポーツです。言っては悪いのですが、怖いもの見たさの見世物興行であり、その危うさを魅力と捉えています。それだけに安全面に対する配慮を徹底していただきたいです。

 9.ボクシング以外の趣味はなんですか?
 秘密です。

 10.日本のボクシング界に言いたいことを
 今に始まったことでないにしろ、興業として成立させるのが難しいスポーツかと思います。ですから、私のようなTV観戦の外野にどうこう言えるものでありません。


 常連たちが続々と書き込んでいます。一段落ついたところで、主催者によって集計報告が為されることと思います。書き込みを眺めていると、年齢層が把握できます。私のような老齢層も多く、最強ボクサーに多くがハグラーを挙げています。若いと思われる層は、断然井上尚哉選手ですね。
 最終的な集計がどのような結果になるか今から楽しみです。
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九百弐拾参  カペルスキーは肌に合わない(2019/9/14)
 セキュリティソフトとして、ずっと Norton を使ってきました。3年版を使用中のところ、残り15日になったので次のことを考えました。
 私は長く Pikara で接続していて、契約者に対する特典サービスとして Kaspersky の無料配布が行われています。アクティベーションコードが配布されていたので、乗り換えるか悩んでいました。

 カペルスキーの性能は折り紙つきみたいです。一方で動作の重さが嫌われているみたいですね。まずは試してみるべしとノートにインストールしたところ、さして重さを感じなかったのでデスクトップにもインストールしました。設定はあんまりよく分かりません。使ううち、ボチボチ調べるべしとしました。

 ところで、今秋にもスペイン旅行を予定しています。すでに手付を払っていて、残金をそろそろなんとかしなければいけません。なにせ、来月から消費税が10%にアップするので、ひょっとすると値上げの惧れがあります。すでに確定している代金なので、そのままかもしれませんが、値上げされてから悔やんでも遅いです。スペイン旅行、それもビジネスクラス選択となると、2%の差額は大きいです。

 で、残金をキャッシュカードから振り込みしようとして、手続きが完了できなかったのです。原因として考えられるのは、カードに紐付けている口座の振込上限設定です。上限を超えた金額だと扱えません。結果としてこれだったのですが、そのときは勘違いしました。上限を引き上げた経緯があるものの、今春に別口座へ変更したことを忘れていました。

 なので、カペルスキーのセキュリティが邪魔をしてるのでないかと勘違いし、いろいろ設定を弄ってみました。カペルスキーって設定が分かりにくいんです。ネットで調べると、マニュアルがなくて皆が困っていました。
 さらに、詳しい人間によると、ロシア製らしく情報を抜き取っていると書かれていました。その方によると、アンインストールしただけでは安全でなく、フォーマットして再インストールしないとカペルスキーの送信プログラムは取り除けないそうです。真偽のほどは知りませんけど。また、アメリカの公的機関がカペルスキー排除を義務づけているそうですね。

 そういう話を聞くと気味が悪くなります。仕方なく削除の上、Norton を再インストールしました。それでも振り込みができなかったので、本日のこと銀行を訪ねて確認してもらったところ低い上限でした。変更手続きしたので、来週の本店業務開始後に設定が反映されます。

 カペルスキーとノートンのウィルス駆除性能は互角でしょう。あとは好みなのでしょうが、動作の軽さと手慣れた設定から、ノートンの方が気安くつき合えます。それと、ロシアに情報が送られるというのが、なんとも気色悪いです。カペルスキーの無料提供は魅力ながら、セキュリティソフトは今や安価なのでさしたる負担でもありませんしね。
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九百弐拾弐  NHKをぶっ壊せ(2019/9/7)
 9月5日の毎日新聞ニュースサイトより引用

 NHKの上田良一会長は5日の記者会見で、今年7月の参院選で「NHKから国民を守る党」が議席を獲得したことについて「民意の一つとして受け止める」とした上で、「受信料は、公共放送の事業を維持運営するための負担金であり、放送の対価ではない」と受信料制度に対する理解を求めた。上田会長が同党について見解を述べたのは初めて。

 同党が、受信料を払った人だけが番組を視聴できるスクランブル放送の実現を主張していることについては「NHKに求められる公共の役割とは相いれない」と否定的な考えを示した。災害報道などを例に挙げ「受信料を財源とすることで、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報を提供できる」とも強調した。

 同党の立花孝志党首は「受信契約をしないのは法律違反だが、受信料の不払いは違法行為ではない」と主張している。受信料の不払いについては「放送受信契約に基づいて支払いを求め、公平負担のため適切に対処する」とし、NHKのこれまでの立場を繰り返した。【小林祥晃】


 会長の見解に頷く方は少ないんじゃないでしょうか。なんと言っても、“受信料”を“負担金”とする説明に納得がいきません。なにぶん、私は法制度についてチンプンカンプンなもので理解が及びません。
 これまで普通に“受信料”は“使用料”的なものと考えていました。同時に“手数料”としての側面もあろうとも考えていました。しかし、“負担金”で説明がつくものなのでしょうか。

 仮にNHKが国営放送なら納得できます。受信契約することによって、受益者負担の観点から“負担金”を徴収するのは理屈に合います。ねえ、いっそ国営にすればいいのに。多分、反対する国民はいないでしょう。

 国営になれば、総務省の一部局になるでしょう。そして、職員は国家公務員ですよ。当然のこと、国家公務員の給与表が適用されます。また、現今の行財政改革の波に洗われ、国といわず地方といわず嘱託職員や臨時職員に多数が入れ替わっています。NHKだって同様な見直しが為されるでしょう。

 国の会計規則が厳密に適用されるし、総務省の監査も受けるでしょうし、会計検査院の監査や行政監査も受けることとなります。現在のようなお手盛りは一切許されません。
 受信料は公共料金の決定と同じ扱いになるんかな。間違いなく現在の高負担は是正されますよ。なんせ、ありえない金額ですから。

 これなら、国民も納得するでしょう。私も文句を言わずに払います。スクランブルをかけるより、こっちの方が正解かと思います。
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九百弐拾壱  柔道再生(2019/9/1)
 先週最大のスポーツイベントは柔道世界選手権でした。日本チームの獲得メダルは、金4、銀6、銅5個でした。金メダルは前大会の7個から、総数では16個からの減でした。メダルは減ったものの、試合そのものは新ルールのおかげで見応えがありました。

 柔道の国際ルールは2017年に改正され、さらに翌年に見直しが為されて完成度が高められました。この新ルールによって、柔道が生き返ったものと思料します。改正内容は概略次のとおりです。

○試合時間:男女とも5分→4分
  時間短縮で密度が高まると期待されます。
○有効の廃止:「一本」「技あり」「合わせ技一本」のみ
  「有効」こそが諸悪の根源だったかと思います。これによってポイントを競うレスリングに堕していたかと。
○固め技:「抑え込み」の宣告から10秒間で技あり。すでに「技あり」がある場合は10秒で合わ一本
  従来の15秒間が10秒間に短縮されたとあって、やはり試合密度が高まります。
○3回目の「指導」で「反則負け」
  従来の4回が3回に減ったため、選手は堂々と勝ちに行くよう緊張感を求められます。
  また、指導の数の違いで勝敗が左右されませんし、当然のこと両者反則負けがあります。
○延長戦:ゴールデンスコア方式延長戦で決着
  ゴールデンスコア方式はサドンデス方式であり、従来のような指導差とか優勢ポイントでの勝敗はありません。
  指導3での反則負けはあります。
○延長戦に入る前の得点と「指導」は、延長戦に持ち越し

 総括すると、明確な技によるポイントか指導3つによる反則負けでのみ勝敗が決せられます。そのため、勝敗が実にすっきりしたものとなっています。以前のルールはひどかったですもの。
 いっときは有効とか効果とかが導入されていて、中途半端な仕掛けであれ、やり得で勝つという作戦がありました。今はしっかり組んで仕掛けないと勝ちに結びつきません。その分、組み手争いが重要になっていて、なかなか組み合わない展開になりがちです。ただし、組みにいかないと指導が入って反則負けになりますから、あくまで積極性を強いる仕組みとなっています。

 その指導も3回で反則負けとあって、下手なことができません。掛け逃げを始め、反則に厳しいとあって、正々堂々とした柔道に向かっています。

 私が一番気に入っている点は、常に道着を正すことを求めていることです。以前からサイトでも指摘してきました。両者が道着を正さないと公平な試合になりません。投げようとしても、上着がはだけていると上手く力が伝わりません。そんな不公平な状況でよくも試合をやらせるものと不満でした。

 ルール改正は、日本チームにとって喜ぶべきことです。おかげで明確に投げ主体の柔道に転換しています。昔はジャケットレスリングなんて揶揄されていました。投げにもいけず、崩し目的で仕掛けるポイント狙いの柔道が横行していました。あれはもう柔道ではありませんでした。
 ルール改正のおかげで、柔道本来の姿を取り戻しました。まことに結構なことです。
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