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九百六拾   香港のあり方(2020/5/31)
九百五拾九  特別定額給付金の案内到着(2020/5/24)
九百五拾八  参考にすべきは専門家の知見(2020/5/17)
九百五拾七  新説続々(2020/5/10)
九百五拾六  欲しがりません勝つまでは(2020/5/2)
九百五拾五  マスク着用開始(2020/4/26)
九百五拾四  出口戦略を語れない日本(2020/4/19)
九百五拾参  緊急事態宣言発令(2020/4/11)
九百五拾弐  日露戦争備忘録(2020/4/4)
九百五拾壱  世界のGDPをどれだけ押し下げるか(2020/3/28)
九百五拾   五輪なんぞやれるはずないのに(2020/3/21)
九百四拾九  コロナウィルス世界を席巻(2020/3/15)
九百四拾八  児島譲著『日露戦争』読書中(2020/3/8)
九百四拾七  Facebook どうすりゃいいの(2020/3/1)
九百四拾六  ワイルダーvsフューリー史上最大の決戦(2020/2/23)
九百四拾五  ウィルス共生社会へと(2020/2/16)
九百四拾四  バウハウス展来たる(2020/2/8)
九百四拾参  最近の世相(2020/2/1)
九百四拾弐  小泉大臣、もう適当は許されません(2020/1/26)
九百四拾壱  ミドル級の現役最強選手は(2020/1/19)


九百六拾   香港のあり方(2020/5/31)
 5月29日の BBC NEWS JAPAN の「中国、国家安全法を採択 香港は「自由の砦」と米英など批判」から引用します。

 国家安全法とは反逆や扇動、破壊行為などを禁止することを目的としたもので、中国が独自の治安機関を香港に設置できるとの規定も盛り込まれている。

 現時点では、その規定とされる具体的内容は一切不明です。ただ、昨年からの北京、香港行政府、香港市民とのせめぎ合いからすると、自由が大きく制限されるものでしょう。記事では次の点が問題になろうと予想しています。

 次の4つが犯罪行為とみなされるとみられる。
 ・ 分離独立行為 ― 中国からの離脱
 ・ 反政府行為 ― 中央政府の権力あるいは権威の弱体化
 ・ テロ行為 ― 人への暴力や脅迫
 ・ 香港に干渉する国外勢力による活動


 昨年の騒ぎの際、境界に控えた解放軍が導入されはしないか危惧されましたが、それはないものと思われました。習主席も行政長官に対して治安回復を厳しく要請するに止めていました。
 海外からの中国への投資と中国国債販売は、その過半が香港を窓口にしています。すると、北京当局としては静観せざるを得ません。下手を打つと、中国経済が壊滅しかねません。特に、アメリカが人権法案を成立させた以上、強硬策を採るわけにはいかなかったでしょう。

 そこで、今回は搦め手から攻めてきたんですね。対して、各国が強く牽制しています。
 特にイギリスが過去の経緯もあり、刺激的な対応をアナウンスしました。ちょうど、サイゴン陥落後にベトナム人をアメリカが受け入れたのにも似ています。

 アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダは、国家安全法を香港の司法制度を介さずに中国政府が直接導入することで「香港人の自由を狭め」、「香港の自治や、香港をこれほどまでに繁栄させた仕組みを劇的に損なう」ことになると主張している。
 イギリスは28日、中国が国家安全法を一時停止しない場合、香港の約30万人の英国海外市民旅券(英国が植民地時代に発行)保有者に対し、「将来的な英国市民権を獲得する手段」を与える可能性があるとした。

 そのイギリスとの歴史的経緯については、次のとおり軽く書かれているだけです。

 香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だった。
イギリスと中国は1984年に、「一国二制度」の下に香港が1997年に中国に返還されることで合意した。香港は中国の一部になるものの、返還から50年は「外交と国防問題以外では高い自治を維持する」ことになった。


 こんな軽く語って済む話じゃないです。ことはアヘン戦争にまで遡らなければいけません。アヘン戦争の凄惨さというのは、教科書には書かれていません。香港問題を語る向きには、一度は歴史の勉強をしていただきたいです。

 中国人の立場からすると、香港にまつわる歴史的経緯というのは、あまりに不条理です。その凄まじいまでの加害を加えたのはイギリスです。イギリスは帝国強盛時代に世界中で悪辣なことをやっていて、なかでも清国に対するそれが突出しています。
 私が中国人なら、アヘン戦争の実態を知れば血涙を流しますよ。アヘン戦争の結果としての香港割譲なわけで、その香港のあり方を考えたとき、あまり北京を責める気になりません。むしろ、欧米列強該当国こそが諸悪の根源と知るべきです。

 アヘン戦争は19世紀のできごとながら、未だ始末がついていない大虐殺事件です。そして、欧米は21世紀になってさえ、中国に対する飼い犬を扱うが如き意識を変えていないんですね。はたして、このような態度で話が片づくものでしょうか。今回の事案を報じるメディアにも、そのような視点が一切見られません。
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九百五拾九  特別定額給付金の案内到着(2020/5/24)
 噂の一律10万円給付案内が届きました。

 所在市が給付手続きの受付を開始してすぐのことです。マイナンバーを取得しているとあって、ネットでの申込みにかかりました。しかし、手続き案内にカードリードが必要と書かれていて諦めました。
 e-Tax 経由の確定申告にもマイナンバー読み取り用のカードリーダーが必要で、所有しているカードリーダー/ライターが適合していなかったのです。ただ、国税庁は非所有者に対して、ネット申告用のIDとPWを登録配布してくれたので、カードリーダーが不要となりました。おかげで、適合カードリーダーの購入を止めていたのです。

 ネット手続きを諦め、郵便が来るのを待っていた次第です。すぐに記入して投函しました。身分証明のための運転免許証の写しのみを貼付しました。通帳の写しは省略です。国保税の振り込み先と同じなので不要なんです。市側が内部で確認してOKとのことです。

 ニュースによると、これらのコピー作成のためにコンビニを訪れる方が多いそうです。あるいは、仕事場のコピー機を利用する方も多いことでしょう。私はといえば、スキャナーでスキャンして印刷します。いちいち面倒ですけど、出かけるよりはマシというものです。

 私は年金暮らしなので、収入が途絶えるわけでもないので、本来であれば不要な給付なんですね。公務員を始めとして給与が保証されている人間も関係ありませんし、生活保護受給者も関係ありません。
 かといって、収入が途絶える者との仕分けも事実上無理とあっての一律給付です。ですから、この金は貯め込むのでなく、むしろ散在するべきなんです。などと自分に言い聞かせ、美味い物でも食べようと算段しています。

 入金は少し先になるので自粛も解除されていることでしょう。贅沢をしようと今から楽しみです。
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九百五拾八  参考にすべきは専門家の知見(2020/5/17)
 5月16日の日経新聞から、「新型コロナ「欧州型」世界で猛威 半月で遺伝子変異」

 欧州で猛威をふるったタイプが米ニューヨーク州やブラジル、アフリカ、ロシアなどに渡り、さらに感染を広げている。米国では欧州型のほか米国型も猛威をふるう。ほぼ半月ごとに変異し、米大学の解析では17種類にのぼる。

 やはり、新型コロナウィルスが短期間で変異し、劇症型ともいうべき型が生まれているんですね。こうなると、先週書いたように、弱いウィルスに積極的に罹患しておくべきです。

 山中先生に代表されるような、専門でもない人間がしゃしゃり出て語るべきではありません。やはり専門家の知見には耳を傾ける点があります。

 同じ5月16日のYAHOO!ニュースに掲載されていた「一般に信じられている集団免疫理論はどこがおかしいのか免疫の宮坂先生に尋ねてみました(上)」を紹介しておきます。

 免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授の説明です。説得力があるし、ワクチンや免疫獲得の難しさが語られています。
 今回の新型コロナウィルス騒ぎに乗じて、数多の疫学者や臨床医たちが発言しています。それらを見聞きして思うのは、専門家であるほど、事態が複雑で混沌としていて、断定できるものがないとしています。素人や外野の医者ほど断定的に政府の対応を断罪したり、こうすべきなどと訴求しています。

 宮坂教授は、抗体検査の難しさとともに、現時点では実用に供さないと明言しています。

 最近出た論文では14種類の抗体検査キットを調べた結果、満足に使えるのは3つだけでした。つまり抗体検査キットは今の段階では精度も感度も非常に悪い。陽性率が高く出てしまうキットは鼻風邪コロナを引っ掛けてしまう。

 先週、献血センターでの抗体検査結果が報じられました。しかし、いかほど有意なものか疑問です。

 抗体の中には少なくとも3種類のものがあります。善玉抗体と悪玉抗体と役なし抗体です。SARS(重症急性呼吸器症候群)や MERS(中東呼吸器症候群)では善玉抗体とともに悪玉抗体ができることが報告されています。

 ネコのコロナウイルスのワクチンでは開発途中に悪玉抗体ができて病気が悪くなったという例もあります。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の場合には全てできる抗体が役なし抗体で、抗体がいくらできてもウイルスを殺してくれません。
 こういう役なし抗体も新型コロナウイルスではできています。ですから単に抗体の量だけを見ても、本当にどの程度、正しい免疫ができたのか、よく分かりません。


 抗体が免疫を証するものでないとしています。そして、検査そのものの難しさを訴えています。
 有意と考えられる善玉抗体を測るには、細密研究レベルが必要としています。

 中和抗体測定法がそれです。試験管の中で培養細胞にウイルスをかける時にそこに抗体を共存させたならばどのぐらい感染が抑制されるか、ウイルスの感染度を中和する能力を調べる検査があります。この測定法はバイオセーフティーレベル3のところでないとできません。培養細胞を持っていてウイルスを培養しているところでしかできません。普通の検査機関ではできません。

 普通の検査機関では単にウイルスと結合する抗体の量だけを測っています。新型コロナウイルスの場合は3種類全ての抗体ができているのではないかとみられています。抗体検査キットにはそういう問題があります。

 抗体の量だけを測っても意味がないんですね。抗体それぞれの機能を明らかにしなければ意味がないとしています。

 HIVの場合は抗体をつくることができても役なし抗体ばかりなので、ワクチンはまだできていません。新型コロナウイルスでも、こういうことが起こり得ます。

 解決が困難な話のようです。TVで安易な結論を展開しているエセ学者たちの話を聞いても無駄なんですよ。某ノーベル学者さんなんか典型です。

 つい最近スイスのロシュが出した抗体検査キットは感度99%です。精度も高いので、そういうのを使うと、今の社会で何%ぐらい感染したのかが分かると思います。 フランスで調べたら4.4%しか感染していなかった、最も感染が広がっていたパリでも9〜10%だったというパスツール研究所の報告が出ています。スペインでも5%だったそうです。

 どの抗体検査キットを使ったのか、感度がどのくらいなのかという問題はありますが、メディアはわずか数%しか感染していなかった、やはりこのウイルスは集団免疫をつくりにくいんだという論調でした。

 どうも、このウイルスは免疫を起こす力が非常に弱いし、起こっても遅い。抗体だけを見ていると、判断が非常につきにくい。


 抗体に頼るのが現実的でないように聞こえ、無力感に囚われます。しかし、抗体でなく、別の可能性も示唆していて、光明が窺われます。

 今まで集団免疫は、獲得免疫の、しかも抗体というパラメーターだけを見て判断していましたが、私は、それは間違っているのではないかと思っています。

 ウイルスに対するからだの防御というのは、獲得免疫だけが規定しているのではなくて、われわれの免疫は自然免疫と獲得免疫の2段構えになっています。 自然免疫が強かったら獲得免疫が働かなくたってウイルスを撃退できる可能性があります。
 自然免疫だけでウイルスを撃退することもあるから、抗体の量や陽性率だけを見ていても集団免疫ができているかは判断できない可能性があります。今回はそういうことが起きているのかもしれません。


 先週紹介した、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学の高橋淳教授らの研究グループが提唱している仮説に信を寄せたくなります。上久保教授たちは、日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている可能性を述べています。

 現時点での可能性を示唆する宮坂教授の言と整合性があるじゃないですか。今後、精度の高い検査が行われることによって、少しずつ新型コロナウィルスの振舞いも明らかになるでしょう。
 現時点で想定されることは、ワクチン開発が困難なこと、変異したウィルスは劇症をもたらすこと、日本では自然免疫を獲得した人間が存在している可能性があるということです。
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九百五拾七  新説続々(2020/5/10)
 新型コロナウィルスによる死亡者数が、日本は圧倒的に少ないんですね。日本だけでなく、韓国や中国も少ないです。その理由について、以前からいろいろ論じられています。

 まず、BCG接種が取り沙汰されています。さらに、株種の相違が、感染者数や死亡者数と相関関係にあるとも言われています。日本株と旧ソ連株が他の株に比べて生菌数が多く、免疫刺激能力がより高くなるとされています。一方で、ワクチンの感化作用、つまり結核菌に対する免疫応答誘導能力は他の株と大きく変わらないそうです。

 いずれにしても、BCG接種を広汎に義務づけている国において、感染者数と死亡者数が少ない現実があります。しかしながら、むしろ結核治療に係っている医者から、安易に相関性を認めるべきでないとの否定的見解が出されています。

 次に、ビタミンDが関係しているとかの説があります。日射との相関性で語っているみたいですけど、今のところは眉に唾つけるべきでしょう。

 なんといっても説得力があるのは、衛生観念の有無と日々における実践です。手洗い、うがい、入浴、屋内に下履きを持ち込まない、会話の距離と発声の大小、キスやハグなど他者との距離と接触、マスク着用などです。東アジア諸国におけるこれらの実践は、確実に感染遮断効果があることでしょう。
 欧米の頬を寄せ合う挨拶なんか、感染を歓迎しているとしか思えません。握手も嫌ですね。アイドル達なんか、昔から握手会の後で念入りに消毒洗浄していることでしょう。
 日本語の話法も感染を緩和するでしょうね。必ず母音をともなうので柔らかい発声となります。対して、子音で終わる発声だと唾とともにウィルスゾルを撒き散らすことでしょう。

 などが考えられるわけです。ところで最近のこと、もっと直接的な理由が語られるようになりました。

 京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学の高橋淳教授らの研究グループの仮説「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」です。
 感染力や毒性の異なる3つの型のウイルス(S型、K型、G型)の拡散時期が重症化に影響したものと考え、日本は入国制限が遅れたことが結果的に奏功したというものです。

 中国の研究チームが古い「S型」と感染力の強い「L型」に分けました。京大の研究チームは、新型コロナウイルスに感染した場合、インフルエンザに感染しないという「ウイルス干渉」に着目し、インフルエンザの流行カーブの分析で、通常では感知されない「S型」と「K型」の新型コロナウイルス感染の検出に成功しました。「S型やK型は感知されないまま世界に拡大し、S型は昨年10〜12月の時点で広がり、K型が日本に侵入したピークは今年1月13日の週」としています。やや遅れて中国・武漢発の「G型」と、上海で変異して欧米に広がったG型が拡散しました。

 集団感染が最初に深刻化した武漢市が封鎖されたのは1月23日で、その後の各国の対応が命運を分けたと想定しています。イタリアは2月1日に中国との直行便を停止し、米国は同2日、14日以内に中国に滞在した外国人の入国を認めない措置を実施しました。
 これに対し日本が全面的な入国制限を強化したのは3月9日でした。「春節」を含む昨年11月〜今年2月末の間に184万人以上の中国人が来日したとの推計があります。

 以下は上久保教授の説明です。簡単に整理しています。

 日本では3月9日までの期間にK型が広がり、集団免疫を獲得することができた。一方、早い段階で入国制限を実施した欧米ではK型の流行を防いでしまった。

 S型へのTリンパ球の細胞性免疫にはウイルス感染を予防する能力がないが、K型への細胞性免疫には感染予防能力がある。S型やK型に対する抗体にはウイルスを中和し消失させる作用がなく、逆に細胞への侵入を助長する働き(ADE)がある。

 結論として「S型に対する抗体によるADE」と「K型へのTリンパ球細胞性免疫による感染予防が起こらなかったこと」の組み合わせで欧米では重症化が進んだ。
 日本で4月に入って感染者数が急増したのは、3月20〜22日の3連休などで油断した時期に欧米からG型が侵入し、4月上旬までの第2波を生んだと考えられる。

 上久保氏は「日本の入国制限の遅れを問題視する声もあったが、結果的には早期に制限をかけず、ワクチンと同様の働きをする弱いウイルスを入れておく期間も必要だったといえる」と総括しています。

 日本で感染者と死亡者が少ない理由として、弱い型によって、すでに集団免疫が獲得されている説が一番しっくりきます。
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九百五拾六  欲しがりません勝つまでは(2020/5/2)
 日本全国が自粛の波に覆われています。幸いなことに、無職とあって煩わしい手当てに奔走することもありません。今は大人しく隠棲するだけです。

 当地では1月の時点で春の彼岸関係仏事の中止案内がきていました。地域イベントも次々に中止となり、ついに用水浚えまでが取り止めになりました。田植えは普通にやるんですけど、水路の堆積物には目を瞑るんですね。来年の用水浚えが怖いです。きっと、とんでもない量を始末しなきゃならんでしょう。今から憂鬱です。筋力が落ち、腰痛がちな私には、きっと苦行となるでしょう。

 行きつけの飲食店の一部が営業を止めています。あるいは、テイクアウトのみでの対応となっています。
 幸いなことに、行きつけの喫茶店は健在です。昨年開店したコメダ珈琲は大盛況で、私も重宝しています。その他、長年の行きつけ店が頑張って開いてくれているので息がつけています。

 行きつけのネットカフェ3店のうち、2点が先週から閉めました。「自遊空間」と「ファンキータイム」です。「快活CLUB」は未だ営業していてオアシスとなっています。それも、いつまで続くかで心細い限りです。

 多分、自粛要請も延長されるでしょう。仕方ないですね。感染者が明確に減少傾向を見せませんから。しかし、釈然としない点もあります。あの西浦とかいう大学の先生の件です。数理モデルを駆使しているそうですが、その詳細を公にしません。こういうのは公開したうえ、専門家たちの検討が加えられてこそオーソライズされるものです。ところが、内部モデルを誰も知らない、西浦氏のみが操って結果のみを提示し、それを政府が参考にするといういい加減さです。

 西浦氏に近い専門家によると、数理モデル各処に変数を入れるそうなんですが、どのような精査を経た数値が入力されているのか、本人以外誰にも分からないそうです。

 そのように恣意的な理論によって国民が右往左往している構図は異常です。TVの討論番組を見ていても、西浦モデルそのものを俎上に挙げる人間がいません。常に結論の数字のみを示すだけです。そんなんでいいんかなあ。素人には、そこが一番気になります。

 アメリカやEUでは、ロックアウト解除や社会生活再開、あるいは経済活動再開までを議論しています。日本も冷静に議論するする必要があるかと思います。健康大事のみを語っちゃあ駄目でしょう。
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九百五拾五  マスク着用開始(2020/4/26)
 当地でも2月からこっち、マスクが一切手に入りません。ただ、最近まで感染者が殆どいなかったのでノーマスクで過ごしていました。それが、最近のこと感染者が増え始めたのでマスクを着けたくなりました。なにせ、私の肺は死にかけていて、感染したが最後、重症化から死亡への一本道です。

 ウィルス遮断を図るなら、平型とか布タイプではとても心細いです。幸いなことに塗装用というか簡易防塵マスクが手元にかなりあり、先週から着け始めたところです。
 ブランドや性能区分が不明な、見た目がこれに近い簡易タイプです。リンク先の3M製品に近いDS1仕様と思われます。マスク上部の鼻に掛かる部分に横長の柔らかい金属が充てられていて、鼻の隆起に合わせてフィットさせる構造です。
 立体タイプなので、作業場でなら違和感ないんですけど、街中での買い物とかだと恥ずかしいです。大半の方が平型の布タイプなので、大げさなんですね。

 製品詳細が不明なので、集塵性能は分からないものの、息苦しいのでそれなりに有効なんだと思われます。息苦しくなければ、それは素通し構造ってことですからね。
 カップの立体面が濾過材を兼ねています。ここが電荷を帯びて、通過時の微粒子を吸着する仕組みです。本格的にいくならフィルター交換タイプですけど、作業時ならともかく、日常使用だと変態扱いされますね。下手すりゃ、職質ですよ。

 忘れないよう車に備えていて、降車時に着用する案配です。今朝も大型スーパーで買い物をした際、店内の客を観察しました。ほとんどの客は平型タイプです。たまにプリーツタイプがいて、立体というか防塵マスクは私だけでした。なんとなく周りの方々の眼が気になります。あのおっさん、作業場から脱け出して来たんかいのとか思われていそうです。
 ただ、より安全度が高いと認識されるのも間違いないでしょう。マスクが新規で入手できない以上、当面の間は簡易防塵マスクで凌ぎます。
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九百五拾四  出口戦略を語れない日本(2020/4/19)
 コロナウィルスの悪影響が生活すべてを浸食しています。すでに地域によって、病床不足が顕在化し始めました。その状況下、感染者が増加傾向にあり、必然的に重症者も増えています。
 事態を根本的に打開できるのは、ワクチン実用化です。しかしながら、今回の新型ウィルスに対応できるワクチン開発は想像以上に難しいそうです。すると、症状緩和を図る薬での対応となります。アビガンへの期待が高まる中、世界中で試験的投与が行われています。

 アビガンが症状改善の特効薬になることを願うばかりです。でないと医療崩壊を目前にしては、ロックアウトしか手立てがなくなります。それはそれで市民生活停止とともに経済活動が停止しますから厳しい話です。

 中国はロックアウトしながらも経済活動再開を指向しています。アメリカも感染者が増える状況でありながら、経済活動再開を国中で論じています。
 イギリスは集団免疫を目指したものの挫折し、ロックアウト下にあります。スウェーデンも感染を覚悟しながらの免疫獲得路線です。さて、日本はというと、よく判りません。緩く感染を避けながら、経済活動を継続する路線です。上手くいくなら、これが理想的です。ところが、最初に書いたように破綻しかけています。

 厳しく外出規制をかけたり、公共交通機関の運行を制限したり、道路通行にも制限をかけたりをいずれはやるのでしょうか。あるいは現行式に行動制限はあくまで限定的とし、感染者増もまた仕方なしとするのでしょうか。
 どちらを選択するにしても覚悟が問われます。政治家や専門家たちも、あちら立てればこちら立たずの現実を提示し、選択いかにすべきの議論を持ち出さなきゃもはや間に合いません。

 厳格なロックダウンを実施している先例がすでにあり、また感染爆発による医療崩壊と経済完全停止のサンプルもまた眼前にあります。玉虫色の手法で済む時期は、すでに過ぎたものと思われます。

 私は、集団免疫を獲得しなきゃいつまで経っても従前の生活を再開できないぞとか考えていました。しかし、新型コロナウィルスの凶悪さが報じられるに従って、免疫獲得路線は無理と思うようになりました。肺へのダメージが報じられていますが、それだけでなくあらゆる臓器にダメージが残る説が出てきました。アメリカの医者が論じているもので、ほぼすべての内臓に加え、眼まで関係しています。これが正しいかどうかは判らないものの怖い話です。
 重症から回復した方は、呼吸循環以外の検査をしていません。身体のコンディションを把握するなら、人間ドック並みの多項目に渡る精密検査が必要です。しかし、そんな危険を冒す病院はないでしょうし、またそんな余裕もないでしょう。

 このような身体ダメージの惧れがあるとすると、集団免疫獲得も危険な方途となります。かといって、強制ロックダウンで経済活動を殺せば生存生活そのものが毀損されます。なんか、究極の選択に見えてきました。難しい判断が求められるだけに、なにが正しいか判りません。
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九百五拾参  緊急事態宣言発令(2020/4/11)
  4月1日から飲食店での屋内喫煙が原則禁止となりました。2年間の禁煙を経ながらも、昨年のこと旅行をきっかけに再度喫煙習慣を再発させてしまいました。とはいえ、一箱を3日で喫う程度の節煙に抑えています。なので、禁煙店だろうがもはや困ることもありません。冷静に飲食店の店舗改装を眺めているところです。

 近在のネットカフェも大幅リニューアルをしていました。内部空間がエリアごとに隔離され、禁煙、喫煙、加熱煙草エリアに分けられていました。手前が禁煙エリアで、未成年者は奥側への入室が制限される案配です。また、行きつけの喫茶店も入り口に灰皿を設置しています。常連さんは変わらず席で喫っていますけどね。


 4月7日、安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大による、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づいて、「緊急事態宣言」を発令しました。

 もはや隠居した私には、さほどの影響もありません。4月に予定していたアメリカ西海岸ツアーを、1月時点で取り止めたくらいです。早々と見切ったのは正解でした。今じゃ入出国もできませんもんね。

 EUやマレーシアなどと違って緩い対応です。この件についての是非が云々されていますが、日本式の緩い自粛対応は正解だと思います。もちろん、EUのように感染爆発への対処となると、外出制限と移動禁止を厳格に取り締まのも仕方ないでしょう。
 幸いなことに日本は未だ重症者数や死亡者数がすくないので、現行の緩い制限下での沈静化を目指すのが最適解です。ウィルスがある程度広まった状態で、緩やかに免疫を獲得する手法です。
 ワクチンが開発されたり、症状を軽減する薬が得られるまで長期間かかります。1年半から2年、あるいはそれ以上とも言われています。1億2千万人の人間が生活し、ワクチン配布に至るまでも、社会生活や経済活動を営む必要があります。となると、そこにはウィルスと共存する考えが必要となります。
 ウィルス感染は避けようがない、できるだけ局所化し、重症化患者に早目の治療を提供することを目途に、感染爆発だけを抑制する考えです。

 台湾の対応が称揚されていますが、むしろ先々で困るんじゃないでしょうか。いずれ各国とも航空便も再開するでしょうし、人的交流も再開します。しかし、台湾のように閉ざして感染遮断に成功した国は、国境を開くタイミングをどうするんでしょうか。まさか、ワクチンが開発されるまで国を閉ざし続けるわけにもいかんでしょう。
 台湾は集団免疫を獲得できないとあって、グローバルに社会を開くことができないはずです。いずれ、重大な問題として立ち塞がるでしょう。

 4/10 朝日新聞デジタルから引用

 「なんて勝手」国が百貨店を非難 デパ地下休業で板挟み
 新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言をめぐり、休業を要請する事業者の範囲があいまいだったことに百貨店業界は振り回された。

 宣言が出る前の6日夜に公表された東京都の対応案で、要請範囲に百貨店が含まれていたこともあり、百貨店大手は7日に早々と当面の臨時休業を相次ぎ発表した。食料品フロアを含めて全面的に休むところも出た。

■経産省「なんて勝手なことを」
 これに、政府側がすぐさま反応した。「なんて勝手なことをしてくれるんだ」。宣言が出た7日夜、大手4社のトップが東京・霞が関の経済産業省の庁舎に呼ばれ、宣言前に当面の休業を決めたことをそう非難された。関係者によると、経産省がこだわっていたのは食料品を売る「デパ地下」だ。

 緊急事態宣言では、各知事が使用制限を要請できる施設に百貨店も含まれている。ただ、食品や医薬品といった生活必需品は除外されており、政府は「『デパ地下』は営業を続けてほしい」(経産省幹部)との立場だった。都心にはタワーマンションに住んでいる人も多くなり、「都心回帰が進み、デパ地下をスーパーのかわりに使う人も多い」(同)との理由からだ。


 「デパ地下」が安心かと問われたら頷けません。ベンチレーション環境が良好とも思えませんし、むしろウィルスゾルが充満しているイメージです。いえ、あくまでイメージです。
 むしろ、上階の売り場こそ安心です。えてして閑散としていますから。売り上げも見込めないし、自粛要請にも合致するしで、そりゃ閉めるでしょう。まさか、「こんな気詰まりな日々だからこそ、デパートでハレの日を」とかアピールするわけにもいきませんし。自粛要請に応じて文句を言われたのでは、業界関係者も立つ瀬がありませんね。同情します。

 当地のデパートは、先月から催し物系イベントを中止しているものの、地下飲食街は一部フェアを除いて通常営業です。田舎でよかった。
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九百五拾弐  日露戦争備忘録(2020/4/4)
 日露戦争と太平洋戦争の国家指導者を比較し、昭和はなっていない、それに比して明治は偉いと語る方が多いものです。東京裁判で断罪されたように、昭和の指導者たちが国家を誤らせ、日本国のみならず東アジア全体に悲劇をもたらしたのはそのとおりです。かといって、明治国家の方策が正しきものであったか、大いなる疑問があります。

 明治も昭和ほどでないにしろ、大概であったかと思います。明治の指導者たちが国家隆盛を目指し、懸命に国家の舵取りをしたのは事実です。しかし、果たしてそれが正しきものであったか。むしろ、違う道をこそ選ぶべきでなかったかとの疑問を持ち続けてきました。児島譲著『日露戦争』を読み終え、かねての自身の考えが間違っていなかったことに確信を持ちました。その辺りを自分自身のために整理してみます。

 日露戦争が得るもののない戦争であったことは、むしろ当時の日本人全般が気づいていたことです。日比谷焼打ちだけでなく、講和条件への不満を訴える主張は全国で為されました。当時の国民は戦争の実相を知らされていませんでした。華々しい戦捷の誉ればかりを聞かされており、日本に戦争継続の力がなく、むしろ講和を乞う立場である実態を知りませんでした。
 この事実は、対ロ戦がいかに得るもののない、やってはいけない戦争であったかを如実に示すものです。開戦に至る経緯を眺めると、力を背景に傍若無人な侵略を進めるロシアこそが諸悪の根源です。しかしながら、侵略を受けている清国が立ち上がるならともかく、日本が開戦する筋合いではありません。

 日本が開戦に踏み切った背景は、概ね次のような経緯によります。

 ロシア陸軍は義和団の騒乱鎮圧を名目にして満州制圧に動きます。一方の日本は日清戦争後に朝鮮国内に鉄道権益を確保していました。その過程で韓国側に強圧的な施政を行って反感を植えつけ、韓国のロシアへの接近を生みました。韓国がロシアに弱腰だったのは、強大なロシアを恐れてのことではありますが。
 日露両国は互いの権益を尊重する満韓交換策を進めますが、ロシア側の政変で挫折しました。この満鮮分離案は、日露双方が互いを信用しておらず、危うい土台に立ったものではありました。特にロシア政府内では、満州派、韓国派のせめぎ合いがあり、最終的にツアーリーと意を通じあった宮廷顧問官S.ベゾブラゾフ大尉が中心となった韓国権益派が実権を握ります。関東長官に任ぜられたE.アレキセーエフ海軍中将(のちの大将)らと共謀した「東亜木材会社」を設立し、朝鮮の満州境界の利権を強要し、これに危機感と反発を強める日本側との対立が避け難くなりました。

 1903年5月、龍岩里事件において、強大国ロシアの侵略的攻勢に韓国は弱腰の対応しかできませんでした。日本に対する嫌悪感もあってのことですが。ロシアが朝鮮に権益を強要する態度に、日本は危機感を募らせるばかりでした。

 日英同盟締結時、日露協商案もあり、伊藤元老や井上元老などが推進派でした。これは満韓交換策でもあり、対ロ融和策でもありました。しかし、ロシア側の回答は、韓国政府に対する日本の指導にはロシアとの事前協議を要するとし、一方で満州はロシアの統治に服するという片務的な内容でした。それが当時の日露の国力差を反映した上下関係でもありました。とはいえ、日本側には到底受け入れられない要求であり、日英同盟を背景にして対ロ開戦へと傾斜を深めました。

 1902年に日英両国の圧力を背景にして、清国も意を強くして「満州還附条約」が締結されました。遼東半島を含む満州駐留のロシア軍の撤退を定めたものです。しかし、ロシアはまともに履行しませんでした。

 日本陸軍はロシアとの戦争を避け難いものとし、時が経るごとロシアの戦備が充実するので、できるだけ早い時期での開戦を望むようになりました。1903年6月8日、参謀本部部長会議が開催され、今後の基本方針が策定され、陸軍内で総意を得、政府重鎮、元老たちへの同意取り付けが図られました。
  ・戦費検討:戦費5億円、うち国庫負担1.5億円、公債3.5億円として、利子6分で50か年償還
 6月17日には、長田少将が「朝鮮問題解決ニ関スル意見書」を策定しました。
  ・彼我の戦力バランスがロシア有利に傾くことを危惧し、時期を逸してはならじと
 ただ、山本海相が表明した反対意見に注目すべきです。日露戦争を正当化する方々にも、立ち止まって傾聴していただきたいのです。
 「韓国の如き之を失うも可なり。帝国は固有の領土を防衛すれば足れり」

 7月初旬、「旅順口会議」が招集され、陸相クロパトキン、アレキセーエフ提督、太平洋艦隊司令長官O.スタルク中将、ベゾブラゾフ宮廷顧問官、駐清公使、駐韓国公使らが出席し、満州併合は不可、国庫資金投入不可、韓国占領不可等の対日非戦が決議されました。

 しかし、ベゾブラゾフらが宮廷や軍に対する巻き返し工作を成功させ、満州併合に向けた極東総督設置が皇帝の勅許を得たことに加え、ウィッテ蔵相、クロパトキン陸相、V.ラムスドルフ外相ら穏健融和派が更迭されました。極東総督にアレキセーエフ大将が任命され、8月にウィッテ解任、クロパトキン大将は辞任希望が容れられず長期休暇扱いとされました。

 満州還附条約は不履行のまま、むしろ遼陽のロシア軍兵営が拡充し、旅順口要塞が鉄壁の防備にまで強化されました。また、ロシアが日本と清国に提示した満州・韓国問題解決案は、ロシアが満州を領有し、日本は朝鮮の南2/3のみ勢力圏と認め、北1/3と半島周辺の沿海には手出ししないことを求めるものでした。

 ここに至り、日露開戦は決定的となり、国民の間にもロシアの暴虐を叩くべしの声が澎湃と高まりました。
 日本赤十字病院雇医師E.ベルツが車中で出会った日本人から受けた感興を記しています。
 「ただ感情の赴くままに走り、このような戦争が極めて重大な責任を伴うことを全然念頭に置いていない。日本の新聞の態度もまた厳罰に値するものといわねばならぬ ― 戦争をあたかも眼前に迫っているものの如く書き立てるのだ。交渉の時期は過ぎ去った、すべからく武器に物を言わすべし ― と。しかしながら勝ち戦であってさえ、その半面にいかに困難な結果が伴うことがあるかの点には、一言も触れようともしない」
 この感想はまさに正鵠を得ていて、戦勝後の厳しい状況さえ予言しています。


 陸の戦場で日本はすべて勝利しました。クロパトキン大将にしてみれば、予定どおりの撤退をしただけで、敗けではないとの認識です。しかし、さすがにこれは説得力がありません。
 とはいえ、実際に後退戦術と本国からの大量動員によって、日本側に勝ち目がないのも事実でした。
 陸戦への参加人員は、日本が945,394人、ロシアが842,335人です。このうちの戦死は、日本が82,252人(傷死14,652人、病変死22,223人を含む)、ロシアが19,467人です。同じく傷者は、日本が153,584人、ロシアが121,485人です。なお、ロシアには39,729人の行方不明者がいます。

 ロシア満州軍の主力を構成していたのはシベリア兵で、日本陸軍の総力を投入した満州軍はこれに大きく痛めつけられ削られもしました。戦死数だけでなく、士官兵があまりに大量に戦死しています。3月の奉天戦終了時、日本満州軍兵力は約47万8千人です。増派した9月末で、約68万5千人、火砲1千46門に達するのがやっとでした。質的にも士官は促成の数合わせで、兵も老齢の予備兵まで動員しています。
 対して、同時期のロシア満州軍は本国精兵の増強で、歩兵約60万人、騎兵約3万2千人、後方員約14万3千人、総計約77万5千人に増勢し、火砲も2千2百門を数えました。
 不本意であれ、日本が講和を受け入れざるを得なかった満州のこれが現実です。

 貧しい日本にロシアと戦争をする金はありませんでした。英米の金融支援があってこそ可能となったものです。
 戦費として、外債約7億円を調達し、高利故総計約14億7千万円を20年賦払いが課されました。負担軽減のため外債借り換えを行って、総計約12億円を25年払いとしました。
 貧しいなか、昭和の初め頃まで戦争の借金を払い続けたのです。それだけでなく、朝鮮統治と関東州経営のため、貧しい日本がさらにだに資金を投入し続けなければならず、日露戦争のメリットをどこに尋ねればいいのか。ひたすらに貧しくなっただけです。

 講和後すぐに韓国を統督する日韓条約、満州のロシア権益を譲渡する日清条約も締結されました。樺太半分の割譲と賠償金なしと引き換えに得たもので、和平仲介のT.ルーズベルト大統領の勧めもあっての講和条件です。対中国政策の基本はここから生まれ、後の対華二十一か条要求に繋がり、アメリカはその後も日本の要求を支持し、中国側に要求を飲ませる後押しさえ行っています。東京裁判やWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)で犯罪とされた、国家による共同謀議を15年戦争に限定した所以でもありましょう。

 このようにして中国の反日気運が決定づけられ、激烈な反日運動を惹起し、満州事変を経て日中戦争にまで至りました。また、日露戦後、日米海軍は互いを第一仮想敵国と看做し、40年後に日本国壊滅にまで至りました。アメリカ海軍を仮想的に据えたため、ワシントン軍縮会議で対英米7割保有を主張するまで勘違いを深めてしまいました。
 対米10数分の1の貧しい国力の日本が、こんな大海軍保有を目指すなど狂気の沙汰です。大海軍保有は国民の犠牲の上に成立していたもので、長きに亘って日本国民に塗炭の苦しみを強いました。


 歴史を冷静に眺めれば、日露戦争を明治先人の壮挙などと称揚できるはずもありません。悲劇でしかない話が、何故か歴史を観ずる眼が曇っているんですね。そんな勘違いが大勢を占めている理由はなんなのでしょうか。

 講和に不満な国民たちから戦争の実相を隠し、なお正当化するため、教科書に“軍人広瀬中佐”だの“軍人橘中佐”だの“出師営の会見”だので称揚し、よく言えば啓蒙、悪く言えば洗脳しました。また、列強に名を連ねただので栄誉心をくすぐりました。

 とはいえ、現代日本は自由な言論が保証されていますから、真っ当な態度で歴史に向き合うことができる筈です。だのに、明治の元勲や軍人、政治家たちが決然と国際舞台で最善を尽くしたとか持ち上げるんですね。そのような高い自己評価に貢献したのが『坂の上の雲』でしょう。日露戦役に関する書籍は数多あります。しかし、それら歴史書は、多くても数千部の発行部数で、うち実際に購入されたのは数割だけでしょう。対して、『坂の上の雲』は昭和40年代後半に驚異的なベストセラーとなり、その後の文庫化で、おそらく50刷を超える重版を重ねているでしょう。読んだ日本人は100万人を下らないでしょう。

 日本人が日露戦争に親しんだネタは、圧倒的に『坂の上の雲』です。私は該当書を否定するものではありません。ただ、あれはあくまで歴史“小説”で、司馬氏が観ずる日露戦争として構成されています。
 児島氏の『日露戦争』は、初版刷り止まりと思われます。その落差が哀しいんです。でき得ることなら、児島版『日露戦争』をこそ読んでいただきたいんです。
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九百五拾壱  世界のGDPをどれだけ押し下げるか(2020/3/28)
 新型コロナウィルスの影響がいかほどになるか見当もつきません。
 EUは完全に死に体です。イタリアとスペインは完全に機能停止状態で、フランス、イギリス、ドイツもまた崖っぷちで墜落寸前です。その他の国も国境封鎖の上、なんとか生き残ろうと必死です。単に産業が休止状態というだけでなく、EUの機能そのものが不全に陥っています。国境封鎖、医療器具や関係消耗品が輸出禁止措置の対象になり、互助も失われています。

 アメリカもまた、経済の中心地であるニューヨークが機能不全で、最大人口のカリフォルニアが感染爆発の手前と想像されます。カリフォルニアが外出禁止とかになったら、武漢以上の悪影響が考えられます。

 ウィルス対策にもいろんな考えがあり、各国各様の対処が行われてています。マスコミが毎日のように取り組みはいかにあるべきか論じていますが、正解なんて誰にも判りません。各国の感染度合、医療体制、衛生状態などで対処方法も異なるのでしょう。

 そんな中、BCG免疫が有効でないかとの推論が取り沙汰されています。BCG接種が関係するものかどうか、現時点では判然としないものの、感染者数と接種国との間に相関性が認められるのも事実です。幸い、日本型BCG株接種国において感染者数が少なく、免疫として有効でないかとの考えがあります。そうであるなら、まことに結構なことです。私も肩口に接種痕が未だに残っています。免疫が得られているのなら嬉しいことです。

 BCGの有効性については、各国が検証にかかっているそうで、その結果が待たれます。一方で、ワクチン開発は途遠しです。1年半以上も先のこととされていて、世界中の人間の行動が抑制、あるいは制限され続けるのですから。
 一番厳しいのは航空会社でしょうね。当面の間、収入一切が断たれます。関連して航空機会社、旅行代理店、観光地などはどうしようもありません。
 現時点でイベント関係も全滅です。野球、サッカー、バスケ、フットボール、ボクシング、モーターなどなどスポーツ興行は壊滅状態です。また、音楽、レジャー、美術などの施設も開所できるのがいつのことか、まったく目途が立ちません。

 外食も厳しいですね。日本はまだしも、外出禁止令が出た国なんか、外食産業が全滅ですもんね。人々の動きが制限され、賃金支払いが止まるとなると、車が売れません。世界中のメーカーが生産停止に追い込まれていて、車製造の停滞は製造業全般の停滞にまで繋がります。

 医療関係、保存食品、流通部門などの例外はあるものの、大ざっぱに言って全産業部門の停滞が進んでいます。世界的にレイオフが実施されていて、これが購買力低下にも繋がるという悪循環が回り始めています。
 今年のGDPが世界全体で2割も低下するするなんて刺激的な予想にも説得力があります。アメリカが2兆ドルの経済対策を行うそうで、効果のほどが期待されています。しかし、どうなんでしょう。焼け石に水なんじゃないでしょうか。もちろん、やらないよりやるべしですけど。
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九百五拾   五輪なんぞやれるはずないのに(2020/3/21)
 なんか、森氏と小池氏が癌細胞に見えてきました。

 ボクシング業界においては、コンタクトスポーツであるだけにシビアな対応が行われています。アメリカ、イギリス、メキシコ、タイ、日本などほぼすべての興業が中止延期となっています。
 問題は、いつまで延期するかです。概ね5月では無理だろうとの見通しで、取り敢えず6月以降としたうえ、状況を窺いながら決定する考えです。大金が期待できるビッグマッチについては、慎重に9月以降での実施が表明され始めました。100億円オーバーとかのビッグマッチだと、事前のプロモーションやら海外からの観客呼び込みにも時間をかけなければいけませんから。

 で、五輪です。五輪こそ、最大のイベントであり、世界中から観客を集め、膨大なチケットセールスを行わなければいけません。選手も世界中からやってくるわけで、一ボクシング興行どころではありません。
 すでに予選トーナメント等が中止になり、実施の目途も立っていません。この先、予選会をやるにしても問題が多すぎます。海外からのエントリー選手は一定期間留め置く必要があります。その間の練習もできずでは、公平な競技が成立しません。そんな状況で7月開催が可能なのか、子供にだって判る話です。

 五輪実施の決定は、あくまでIOCです。しかし、実施主体である東京都というか日本にしても、現状を踏まえた発信があってしかるべきかと思います。
 近々、五輪延期の発表があるものと予想します。こういうのはできるだけ早く決定する方がよいのでしょうが、影響の大きさから皆が躊躇っているのでしょう。

 その影響も五輪の有無に係らず、とてつもなく悲惨なことになりそうです。各国の景況指数が発表されていて、ひどい状況です。特に中国が厳しい数字です。EUも死に体まっしぐらみたいですし。中国にリーマンショック時のような大盤振る舞いが可能なのか、どうやら難しいみたいです。あのときの財政投資額をBS番組で聞き知りましたが、11年間で500兆元(8,000兆円)にまで及んだそうです。その利払いもあって、もはや大盤振る舞いできる余地はないそうです。

 日本も、とてつもないダメージが直撃することでしょう。まずは、今春のベアが厳しいんでしょうね。内定取り消しもあちこちで取り沙汰されています。そんな中、むしろ取り消し者に対して門戸を広げるケースもあり、人手不足解消のチャンスと捉える企業さんもあります。沈む瀬あれば浮かぶ瀬ありとばかり、若者に光明が差すことを願っています。

 五輪の延期は早いに越したことありません。今後、経済対策で右往左往しなきゃならんしで、揉めごとを先延ばししちゃ駄目です。ウロウロ対応だと、世界が迷惑しますよ。
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九百四拾九  コロナウィルス世界を席巻(2020/3/15)
 アメリカの「アレルギー感染症研究所」「国立衛生研究所」「国防総省先端技術開発庁」「全米科学財団」などの委託を受けて行われた「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)媒介物報告書」が紹介されました。
 注意すべき点として
 ・COVID-19のウイルスは空気中であれば3時間、プラスチックなどの表面の場合には3日間ほど滞留する
 ・ヒトは空気感染や媒介物による感染リスクにさらされることになる
 ・湿度に弱い。加湿器を使い、湿度50%で華氏72℃(摂氏22.22度)にすれば、ウイルスの活動が収まる

 以前勤めていた施設でもインフルエンザ罹患者数が一定以上になると臨時休校を要します。すると取得できなくなる資格があったりで避けたいところです。ですから、インフルエンザ流行をできるだけ抑え込むよう、冬場ともなると加湿器をフル稼働させたりしていました。で、コロナも同じようなものだろうと誰でも思っていたことでしょう。上の報告を聞いた方々は、今頃になって明らかになったんかよって思ったことでしょう。

 それと感染初期の頃、飛行機内で感染者から離れた座席の方が感染したことから、エアロゾル感染の可能性が言われていましたね。また、ダイヤモンド・プリンセス号で感染が爆発した件でも、船内ベンチレーションが関係したとしか思えませんでした。
 ですから、今頃になって空気感染の可能性と聞いても、今さらの感があります。

 コロナ感染から逃れている地域が気になります。そこで、状況を俯瞰するため、毎日「都道府県別感染状況(NHK)」をチェックしています。
 今や九州でも鹿児島が残っているだけです。最後まで生き残るのは何処か、サバイバルマッチの帰趨が気になって仕方ありません。

 鳥取、島根の山陰勢も有望です。なにせ、中国山脈に遮られていますもんね。不思議なのは、岡山、香川です。感染地域に挟まれ、人とモノとが往来するというのに、今も健在なんですね。うどんときびだんごのお蔭でしょうか。

 うどん県の優勝はありそうな気がします。
 1 ゲーム規制
  ・どくれて引き籠る
 2 うどん常食
  ・湯気たっぷりの上、部屋の湿度を上げる
  ・小麦粉の粉じんでコロナエアゾルを沈下させる
  ・糖尿病に罹って喉が渇き、水分補給頻り
  ・うどんズゾゾ、プファ〜と肺を活性化
 3 うちわで寄せつけない
  ・マスクの代わりにうちわで扇いで避ける
 とあって、香川県の勝ち残りに一票入れます。
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九百四拾八  児島譲著『日露戦争』読書中(2020/3/8)
 積読状態であった書籍類を日々片づけているところです。
 年明けから陳舜臣氏の『中国の歴史(講談社文庫 全7巻)』に心躍らせました。私が購入していたのは第3巻まででした。多分、買った時点では3巻までの刊行だったのでしょう。その第3巻で五胡十六国の戦乱を経ての南北朝、そして隋の文帝による久々の中華統一までを描いています。

 この五胡十六国時代というのが、私には難しすぎるんです。若い頃に『十八史略』を読んだときも頭に入りませんでした。その前の三国時代、そして曹氏から司馬氏への転変も急であるし、それに続いての五胡十六国ですから整理が追いつきませんでした。ガキの時分の柔軟な頭であってさえ無理だったものを、老齢の今の私に把握できるはずもありません。五胡十六国を理解するのは、やはり無理でした。

 Web で本書を確認すると、全7巻だったものだから慌てて楽天で追加注文しました。刊行は1990年から翌年にかけてでした。こういう本は、なかなか重版もかからないのでしょう。中古本の取り寄せです。

令和2年5月13日追加
取り寄せた『中国の歴史(4〜7巻)』は、18刷〜20刷でした。中国史のファンは多いのですね。


 本書が届く前に、別の書籍を読み始めました。それが児島譲氏の『日露戦争(文春文庫 全8巻)』です。出版年を確認すると1994年でした。これもまた長く放っておいたものです。ところで、第4巻までしか買っていませんでした。これもまた買った当時に刊行途中だったのでしょう。『中国の歴史』同様、楽天で中古本で買い揃えました。これもまた、あんまし重版がかかっていないみたいです。

 今現在、第6巻の途中で奉天戦の真っ最中です。日露戦史でよく読まれているのは、圧倒的に司馬遼太郎氏の『坂の上の雲』ですね。当時、大ベストセラーになりましたもの。私もガキの頃に読みました。大昔のことなので、内容をほとんど忘れているものの、それなりに児島版との違いに気づきました。

 『坂の上の雲』の印象的なシーンといえば、なんといっても乃木第3軍による旅順口攻略戦です。第三回総攻撃において、それまでと同じく兵の損耗を重ねるばかりで攻略が進まない中、攻撃目標を203高地に変更して、ここに攻撃を集中しました。司馬版では、この転換が児玉大将によって為されたことになっていたはずです。また、本国の沿岸防備用 28cm 砲の投入も児玉大将が果断に実施したと書かれていた記憶があります。しかし、事情が違っていました。

 児島氏がその辺りの経緯を詳細に記していますので、自分自身の備忘録として整理しておきます。

 海軍 28cm 沿岸砲の投入を推進したのは、東京の参謀本部次長である長岡少将です。
 ウラジオの巡洋艦隊による太平洋岸での通商破壊戦は、日本国民に衝撃と危機感を募らせました。その恐怖から高まった移設反対の声を抑え、順次旅順口に送り込んだものです。28cm 砲弾の製造も急がせています。そして、第二回総攻撃からその威力を発揮しました。児玉大将が行ったのは、203高地攻略に向けて東方面の重砲も西方面に移したことですね。

 また、203高地を攻略すべしと主張したのも長岡少将です。
 満州軍総司令部の総参謀長である児玉大将は、東北部への重点攻勢を主張し、これは最悪の戦法です。
 旅順口攻略第三軍司令官の乃木大将や参謀長の伊地知少将は、西から東北方面にかけての堡塁全体への攻勢を企図し、実施しました。

 ロシア軍の堡塁陣地を構築する技術は高く、当時の日本陸軍の知見を超えるものでした。そもそも、コンクリート胸壁と掩蓋の強度さえ知りませんでした。しかも、前後左右の堡塁が互いに連携できるよう設計され、日本側突入兵は前面だけでなく、左右や背後からさえも的にされました。それも高みからの瞰射だったので、身を隠すこともできませんでした。
 身を隠すに効果的な夜襲も、旅順口では通用しませんでした。サーチライトと照明弾を潤沢に備えていて、夜間であっても射撃の的になるだけでした。
 ロシア側は堡塁周辺を整理し、日本側が身を隠すもの一切をなくし、深い溝と鉄条網群で接近を妨げる設計でした。ここを破るにしても隘路と成らざるを得ず、兵が蝟集せざるを得ません。ですから、特定方面に兵を集中したところで混み合うだけで有効な攻撃に結びつかないのです。むしろロシア側からすると、効率的に大量虐殺できることとなります。そういった問題点が考慮されていない児玉案は最悪というべきで、第3軍が採用しなかったのも当然です。

 第一回及び第二回の総攻撃で大損害を受け、第三回の攻撃が最後のチャンスとなりました。参謀本部が懇望する 203高地を敢えて拒否し、従来に近い全方位攻撃を実施しました。しかし、予想されたように損耗を重ね、第9師団長からも成功の見込みなしの意見具申を受け、ついに203高地攻略へと大転換しました。そして、日露双方が203高地を天王山と見据えた頃、児玉大将が訪れて指揮権の委譲が為されたものです。

 『坂の上の雲』の記述については、司馬氏が敢えてアレンジしたものと想像します。悲劇的な旅順口攻略戦が最後に成功するわけで、戦勢転換をドラマチックに描きたかったのでしょう。勝手な想像ですけど。

 児島氏の『日露戦争』を読みながら、幾度も深く考えされられています。はたして、あの戦争を成功体験として語ってよいものか。私は以前から日本国の致命的失敗と認識してきました。明治の先人の歩みを称揚する向きが多く、この手前味噌な評価を苦々しく思っていました。本書を読みながら、その思いに間違いはなかったと確信を深めています。
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九百四拾七  Facebook どうすりゃいいの(2020/3/1)
 私も Facebook のアカウントを取得しています。ただし、SNS にまったく興味がありませんし、細々とした発信をする気もありません。アカウントを取ったのは、ボクシングの生中継を観るためです。ボクシング観戦を目的にWOWOWと契約し、ときにビッグマッチが生中継で放映されます。
 数年前、いつものように生中継を観ようとすると、アメリカの映像提供側が Facebook 経由で放映すると表示したのです。仕方なくアカウントを取得した次第です。ボクシングを観るためだけの目的ですから、必要最小限の記入で済ませました。

 試合を観戦した後、アカウントを削除すべきか悩んだものの、次回の生中継の提供の際に必要になろうかとそのままにしています。すると当然のこと、いろんな通知が来るようになりますね。なかには「知り合いかも」やら「お友達申請」やらも含まれるようになりました。これがまずいんです。Facebook を活用する気がないしで、放置するしかありません。しかし、それだと無視する形になりますから、本当に困っています。

 関係を繋げればいいんでしょうけど、なにぶん名前以外の情報を載せる気がないとあっては、あまりに愛想がないでしょう。かといって通知を無視したままも無愛想だしで悩ましいんです。

 Facebook からの通知を見ながら、なにもしないで数年が経ったところです。きっと、私の名前を確認した方々は、不愉快な思いをしたことでしょう。いっそ、アカウントを削除すればいいのですが、ボクシング生中継だけでなく、たまに情報アクセスに Facebook のログインが求められるケースがあります。

 仕方ないですね。不愉快な思いをした方々にはご免なさいしかありません。ご寛恕のほどをお願いします。
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九百四拾六  ワイルダーvsフューリー史上最大の決戦(2020/2/23)
 本日、ラスベガスにおいて、スーパーマッチが行われました。WBCヘビー級王者デオンテイ・ワイルダー選手に1位のタイソン・フューリー選手が挑んだものです。両者は一昨年末に対戦し、三者三様の引き分けに終わりました。KO必倒のワイルダー選手のパンチで二度のダウンを喫しながら、何ごともなく立ち上がったフューリー選手に世界が驚きました。私にはフューリー選手のポイント勝ちに見えましたが、こういうのは観る場所によって印象が異なります。引き分けのおかげで、こうやって再戦を観ることができたのですから、喜ぶべきなんでしょう。

 ワイルダー選手は、身長201cm、リーチ211cmです。対するフューリー選手は、身長206cm、リーチ216cmです。今回の体重はフューリー選手が123.8kgで、ワイルダー選手の104.7kgを19kgも上回っていました。

 過去の巨人決戦といえば、四百拾壱   大巨人対決(2009/6/28)が凄かったです。
 また、2017年に9万人の観客を動員して開催された、IBF王者アンソニー・ジョシュア vs ウラジミール・クリチコ戦も凄かったです。この試合は各メディアで年間最高試合と年間最高ラウンドに選出されてもいます。ジョシュア選手が身長198cm、リーチ208cmで、クリチコ選手も身長198cm、リーチ206cmなんですね。この試合もまた、凄まじいまでのモンスター対決でした。
(C)WOWOW


 ただ、これら2m級巨人の中でもフューリー選手は一等抜きんでています。打たれ強さといい、パンチの強さといい、他のヘビー級強豪と比べても規格外の観があります。最終ラウンド、ワイルダー選手の右クロスからの左フックをまともに食らいながら立ち上がったのは悪魔的でさえありました。また、パンチの強さにも量り難い面があります。軽く打ってるようで、打たれた方のダメージが普通じゃないんです。やはり、大型重量級とあって、そこから生み出される打撃エネルギーが半端ないのでしょう。


 特に今回は、前戦より 8kg 増量したことによって、ジャブの威力もいや増していました。
 加えて前戦のアウトボクシングと違い、前に出るボクシングだったので、ジャブがより強力でした。あのワイルダー選手がジャブを受けてよろけるくらい強烈でした。

 下図は3回、ワイルダー選手をロープまで下がらせ、大振りの右でダウンを奪ったシーンです。


 5回には、左ボディフックでダウンを奪いました。下半身がいうことを聞かないものと見えます。


 ワイルダー選手は足元がふらつき、踏ん張れないため、もはや強打も打てません。レフェリーはワイルダー選手の状態を注視しています。
 そんな 7回、コーナーに追い詰めて右クロスをまともに打ち抜きました。その後も連打を加え、レフェリーがたまらずストップしました。画面からは判りませんでしたが、コーナーがタオルを投入したんですね。


 完全勝利ですね。契約上、再戦があるそうですが、ワイルダー選手に勝ち味が見えません。新王者はリーチと上背で勝り、その長所を利して遠くから攻めます。超重量級なのに軽いステップで出入りするんですね。そして、放ったパンチは軽く打ったように見えても強烈です。20kg 近く体重差があるんですからそりゃあ効くはずです。まるでウェルター級とミドル級の選手が、それぞれの体重で闘うようなものです。

 次に期待されるビッグマッチは、フューリー選手と WBA、IBF、WBO 統一王者アンソニー・ジョシュア戦です。ただ、ジョシュア選手も昨年のこと、つまんないミソをつけたものだから、少しばかり値打ちが下がっています。今は、フューリー選手こそが最高の栄誉とステータスを勝ち取っています。
 さて、ジョシュア選手が勝てるものか、興味はその一点です。
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九百四拾五  ウィルス共生社会へと(2020/2/16)
 武漢発と思われるコロナウィルスの水際作戦は失敗しました。そもそも水際で食い止められるなどと考えていた方は存在しないでしょう。
 11年ほど前、舛添氏が厚労大臣だったときにも新型インフルエンザ流入問題がありました。あのときも日本着の航空機内での検疫強化など頑張りましたが、いつのまにか国内で罹患者が現れましたね。

 まして、今回はインバウンド強化とか何とかで、特に中国からの旅行者が多い上、春節の流入を止められなかったのですから、ウィルスはすでに国内に蔓延したと考えるべきです。

 仮令、流入制限が遅れたにしろ、少しでも制限し、罹患が疑われる人間を足止めすることが重要です。対応できる医療リソースが限られている以上、抑え込む効果があります。武漢市みたく爆発的な流行を許したら、まったくのお手上げになります。というか、医療体制そのものが崩壊してしまいます。

 クルーズ船の停め置きも仕方ありません。船客には辛抱していただくしかないでしょう。すでに相当数の罹患が考えられますから、船内でウィルス発症を待つしかありません。
 なにせ、ウィルス暴発のニュースが伝えられてからも、船内での濃厚交流が普通に行われていたそうで、船長の判断ミスですね。加えて、船の空調や通風換気システムそのものがウィルス拡散の主原因でないかと想像しています。感染者がいる狭い部屋内はウィルスが充満するでしょう。その空気が他の部屋にも流れるわけですから、拡散しない方が不思議です。構造上、ベンチレーションを塞ぐわけにはいきませんから。

 識者が感染を避けるために自衛すべきと宣っていますが、不可能ですよ。宮仕えの人間は否応もなく公共交通機関を利用しなきゃならないし、学校や会社は人いきれで満たされるものです。
 いくらご本人の衛生意識がくても、どうしようもありません。塗装に使う防毒マスクを着用すればウィルス感染を避け得ますが、そんなので通勤したら通報されるかな。

 以前にも書きましたが、罹患を前提に据え、最終的には各個人が耐性を身につけるしかありません。体内ウィルス戦と考えればいいわけで、食事や睡眠に気をつけ、疲労を溜めないことです。そして、念を入れ、不要な外出、特に人混みを避けることです。身体が弱っている老齢者、耐性の低い乳幼児、妊婦さんたちは、前記留意事項を最大限に守ることです。あくまで通常のウィルスと捉え、各人が肺炎予防に取り組むしかないでしょう。
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九百四拾四  バウハウス展来たる(2020/2/8)
 今日から3月末まで地元美術館で「開校100年 きたれ、バウハウス - 造形教育の基礎 -」が開催されます。まさに私の専門なので、初日幕開けに訪ねました。受付のお姉さんが嬉しいことを言ってくれました。
 「10時から開会します。その開会式に参加いただければ、入場無料です」
 もちろん否やはなく、隣の本屋で時間を潰して参列しました。

 バウハウス開校100周年にあわせ、「バウハウス100周年委員会」が発足され、2020年まで3年間に、「バウハウス100ジャパン」と題したプロジェクトが展開されているそうです。

 この展覧会は、新潟市美術館を皮切りに、西宮市大谷記念美術館、高松市美術館、静岡県立美術館、東京ステーションギャラリーの全5会場で順次開催されるものです。当地の美術館がその巡回展として手を挙げてくれたのは、まことに喜ばしいことです。



 展示内容はすべて知悉しているものばかりです。ただ、書籍類の写真で見るのと実物との違いがあり、その違いが大きいんですね。特に立体物については、現物の迫力です。

 一番好きなのは、マルセル・ブロイヤの椅子やテーブル類です。カンチレバーチェア、ワシリーチェアはお馴染みだし、いろいろな店などで利用もしてきました。それ以外にも椅子やらテーブルやら、ブロイヤの仕事を実見できて楽しくなりました。

 マリアンネ・ブラントの金属調度類も多数出品されていました。

 グンタ・シュテルツルの織物も現物ですよ。

 舞台工房のオスカー・シュレンマーの作品は、フィルムに残されていて、動画で鑑賞することもできました。

 また、忘れがちな陶器工房の作品も現物を見ることができました。

 タイプフェイス、書籍類、ポスターなど印刷工房、あるいは広告部門の成果物も多数展示されていて、所謂バウハウス様式を堪能できました。

 そして、今回の目玉は予備課程、後の基礎教育で実際に使用された教材や生徒の作品、あるいはイッテン、カンジンスキー、クレー、モホリたちの研究例や作品群です。単なる作品というのでなく、あくまで教育カリキュラムに即した作品なんですね。ですから、彼らの事績においても作品集などには載っていないタイプの作品なのです。

 残念なのは、写真撮影が禁止されていたことです。所蔵者が著作権を主張するケースもありましょう。しかし、中には撮影を拒む理由のない作品もあります。例えば、ブロイヤの椅子なんか商業販売されていて、どこにでもあるし、広く世間に出回っている家具なんです。撮影を拒む理由なんてないんだけどなあ。
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九百四拾参  最近の世相(2020/2/1)
 新型コロナウイルスが猛威を振るっています。
 症状なしの感染者がいるそうですから、体温測定や咳の有無でのチェックじゃどうにもなりません。すでに中国から大量の旅行者が入国していますから、チャーター機での帰国者を止め置くかどうかの議論は今さらの感があります。大海の一滴を選り分けるイメージです。それでも、やらないわけにはいかんのでしょうけど。

 新型ウィルスが拡散したのは、もはや仕方ありません。現実的には、耐性をつけるのと沈静化するのを待つしかないんじゃないでしょうか。

 ところで、WHOによる中国当局の対応への感謝称賛には疑問符が飛びまくりです。昨年中に対応を開始すべきであったと万人が認めています。武漢の病院関係者自身がその点を発信していますもんね。保健の大元であるWHOが理解していないのが残念です。

 それと、武漢の病院の待合風景が異様でした。まるでバンデミック・ホラー映画もかくやでしたもの。なんでウィルスが充満しているであろう建物に居るんかな。わざわざウィルスを体内に取り込もうとすかに見えました。


旧ソ連戦勝75周年式典、出席検討する=安倍首相
一昨日のロイターの記事です。

 これは悪手でしょう。本来の趣旨は“対独戦勝記念式典”です。仮に“対日戦勝記念式典”が開催されるとして、ドイツ首相が出席するのと同じことです。失礼にもほどがあるでしょう。少し冷静に処していただきたいです。

NECにサイバー攻撃 2万件超えるファイルの情報流出か
一昨日の NHK NEWSWEB の記事です。

 NECさんは企業や官公庁にセキュリティソリューション提供の美味しい商売をしています。その総本山がこんなお粗末な仕儀だと、営業部隊は冷や汗で言い訳もできんでしょう。昨年暮れの神奈川県の情報システム課の不始末と同じで、哀れさえ誘う話です。

丸川珠代夫妻にご近所トラブル、冷たい対応に隣人ショック
昨日の @niftynews の記事です。

 世の中によくいるド屑人間ですね。交通事故なんかでよくある話です。保険会社の通常の指導は、「金の話は絶対にしないでください。しかし、謝罪や見舞いはあなた自身が誠心誠意努めてください」ですね。ところが、被害者への見舞いや謝罪に足を運ばない恥知らずがそれなりにいます。昨年池袋で暴走した某I氏なんかも典型です。きっと、丸川夫妻も同類なのでしょう。

 私も嫌な思いをしたことがあります。車同士の軽微な接触事故で、加害学生が修理費を払うので警察を呼ばないでと懇願されました。私も社会人人一年目で、加害学生が後輩みたいな思え信用しました。しかし、この学生さん、悪い人間でないにしろ、いいかげんな性格だったんですね。連絡を自分からすることが一度もありませんでした。私がすべての連絡を取り、すべての段取りをつけました。途中、その無責任ぶりを叱責もしました。
 腹が立ったのは、最後の修理費支払いで会ったときのことです。金額が高いとぬかしやがりました。
 「じゃあ、なんであんたは途中での確認をしなかったの。この安い金額にも文句があるなら、第三者にも確認できただろう」
 「分かりました。ただ、学生なので金がないんです」
 「金がないなら車売れよ」
 で、嫌々金を支払った次第です。ムカつきましたよ。きっと丸川夫妻も同類なんでしょう。
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九百四拾弐  小泉大臣、もう適当は許されません(2020/1/26)
 1月23日の日刊ゲンダイ DIGITAL に小林節氏の「大臣の育休は単なる勘違いだ 制度の趣旨にかなっていない」が掲載されました。

 大臣という地位は、法律で言うところの「事業主、国……」そのものであり、「使用者」であり、「従業員」ではない。

 省の大臣の職務は、特定の行政事務をひとりで全権限と全責任を担う「独任」の身分(内閣法3条1項、国家行政組織法5条1項)で、代わりの利かない立場である。つまり、日常的に仕事を分担し合う同格の同僚はいないのである。


 これですね。多くの国民が感じた違和感がこれでしょう。大臣でなくとも、政治家ともなれば一家の主です。なので、誰でも突っ込みたくなるでしょう。子育てに関して、育児に協力する意義を世間に訴えるなら、部下に対して実行すればいいんです。
 それも育児だけではありません。厚労省が浸透させようとしている新しい生活スタイル−ワークライフバランス(生活と仕事との調和)−の実践も該当します。家庭生活の充実、地域との係りの濃密化、自身のスキルアップ、健康の増進など多方面での充実を図るものです。部下に対してこそ、生活の見直しを求めるべきで、本当に率先範を垂れる気があるなら、秘書たち部下の生活が充実するよう最大限の便宜を図ればいいんです。

 多分、小泉氏の頭には部下に対する一片の思い入れもないでしょう。部下の生活を省みないのなら、自身にだけ優しいご都合人間ということになります。今回の件で、完全に馬脚を表しましたね。

 いえ、今さらです。環境大臣就任後に散々でしたもの。ノドグロがどうとか舐めてます。国連での恥ずかしい演説も記憶に新しいしね。

 もっと致命的なのは、不倫報道への対処です。私的なことに答える必要なしの態度でした。それはいいのですが、そんなら結婚報告を真っ先に官邸に行い、マスコミを集めて芸能人よろしく会見したのはなんなのさ。相当に痛い人間に堕したかと思います。


 私は小泉氏に期待すること大だったんです。政治の舞台に登場したとき、その語り口に感心しました。明確な結語を選び、実に爽やかな語り口で、第一次安倍政権時の安倍氏の演説や説明と対照的でした。第一次での安倍氏の演説というと、「〜 と、かように思うところでございます」風に結語を二段階に重ねるもので、聞き苦しかったものです。
 多分、批判が多かったのでしょう。第二次政権で再登場した際には、「〜 でございます」と明確な語り口に改めていました。政治家は言葉で語って政策を進めるものです。その点から、小泉氏への期待が大きくなったんです。

 しかし、大臣就任後の無様を見るにつけ、結局のところ任に堪える力がないということでしょう。これまでは、都合の悪い場面を避け、また責任の生じない立場でのみ景気のよい発言をしていただけなんですね。
 かといって否定はしません。経験を積み、地道に力をつけて今後の糧にしていただければと思います。問題は、ご本人に自身を省みる謙虚さがあるかです。
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九百四拾壱  ミドル級の現役最強選手は(2020/1/19)
 12月7日にニューヨークで開催されたWBCミドル級戦が、先週のことWOWOWでやっと放送されました。王者のジャモール・チャーロ選手に5位のデニス・ホーガン選手が挑んだ一戦でした。
 ホーガン選手は昨年4月、WBOS.ウェルター級王者のハイメ・ムンギア選手に接戦で敗けたところです。この試合の観戦者たちは、むしろホーガン選手の勝ちとする向きが多かったくらいです。パンチはないものの、速いヒットアンドウェイでポイントを稼ぐスタイルです。

 打っては離れの相手を、チャーロ選手は右クロスなどで追うも、クリンチ、ボディワークに阻まれてなかなかクリーンヒットできませんでした。4回にダウンを奪い、続いて7回にも左フックで倒してTKO勝ちとなりました。速い跳び込みで打ち込んでは離れのスタイルだと、捉まえるのが難しいものです。チャーロ選手は跳び込みに対して、左フックやアッパーを合わせようと苦労していました。

 それでも、全般的に横綱相撲の趣で、チャーロ選手に負ける雰囲気がまったくありませんでした。まさに、圧倒的な強さで、私にはミドル級最強に見えます。そこで、現行ミドル級の強豪を再確認しておきます。

 WBAスーパー王者:サウル・アルバレス選手(53勝1敗2分36KO)
 WBA正規王者:村田諒太選手(16勝2敗13KO)
 WBA暫定王者:クリス・ユーバンクJr選手(29勝2敗22KO)
 WBCフランチャイズ王者:サウル・アルバレス選手(53勝1敗2分36KO)
 WBC正規王者:ジャモール・チャーロ選手(30勝無敗22KO)
 IBF王者:ゲンナジー・ゴロフキン選手(40勝1敗1分35KO)
 WBO王者:デメトリアス・アンドラーデ選手(28勝無敗17KO)

 現在、PFP最強に位置づけられているのがサウル・アルバレス選手です。しかし、彼がチャーロ選手と闘うことはないでしょう。S.ウェルター級時代にあっても、ファンの期待するチャーロ戦を忌避しました。当然のこと、ミドル級においても同じでしょう。また、強豪たちと激闘を繰り広げてきたゴロフキン選手もチャーロ選手の名を口にしません。皆さん、チャーロ選手の強さを恐れているかと邪推しています。

 アルバレス選手は2団体でベルトを持っているものの、スーパーとかフランチャイズとかのインチキタイトルで、対戦義務を回避できています。普通だと、対戦義務を忌避したらタイトル剥奪になるところですが、超人気ボクサーなので、統括団体も高額の承認料目当てで許容するという銭ゲバぶりです。


 チャーロ選手は身長183cm、リーチが187cmという恵まれた体格です。長い距離を持っているので、スタイリッシュな真っ直ぐ系のボクシングができます。加えて、中間距離と近間でもフックとアッパーを強く打てます。さらに、パンチが左右ともに強いという攻撃的なボクシングです。

 強靭な体幹を利し、離れているときは後ろ重心です。余裕で距離を取って、相手の動きをよく見て対応しています。凄いのは、後ろ重心なのに、そこから打ち出すパンチが強いのです。アイク・クォーティ選手を髣髴させる強靭な背筋で、恵まれた体幹を見せつけます。
 距離が近づくと前掛かりで、驚異的な広背筋量が生み出すフックとアッパーをぶつけます。上に書いたように、それが左右ともに強いので、相手からすると堪ったものでないでしょう。

 耐久性については、未だ底を見せていないので判りかねます。それだけ効かされたことがないということで、打たれ強いのは間違いないでしょう。スタミナ切れを見せたこともありません。

 これほどの強さなのに、トップ選手たちが避けるのでビッグマッチに至りません。というか、強さゆえの悲哀が感じられます。いっそのこと、村田選手が手を挙げると面白いのですけどね。もちろん、勝てないでしょう。しかし、強い相手に挑むことでファンの共感を得られるものです。たとい勝てなくてもいいじゃないですか。そこでの闘いぶり次第で、負けようともボクサーとしてのグレードが上がるものです。村田選手がもうひとつ魅力を増さないのは、強豪にチャレンジしないからでしょう。
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