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五百八拾   西岡選手引退ですね(2012/10/14)
五百七拾九  「鉄の女の涙」観劇(2012/10/7)
五百七拾八  卑しき村上春樹(2012/9/29)
五百七拾七  中国打つ手なし(2012/9/22)
五百七拾六  外乱騒擾による国家回復(2012/9/16)
五百七拾五  日本よ国家たれ(2012/9/9)
五百七拾四  外務省元幹部って訳わかめ(2012/9/1)
五百七拾参  国難多事(2012/8/19)
五百七拾弐  48年ぶりの快挙(2012/8/12)
五百七拾壱  中村美里破れる(2012/8/4)
五百七拾   尖閣とオスプレイ(2012/7/29)
五百六拾九  中国、尖閣打つ手なし(2012/7/23)
五百六拾八  競馬シリーズ最終章(2012/7/15)
五百六拾七  尖閣の実効支配を(2012/7/8)
五百六拾六  消費税アップだってさ(2012/6/30)
五百六拾五  最近の世相(2012/6/17)
五百六拾四  パッキャオ陥落(2012/6/10)
五百六拾参  怪作「デイブレイカー」(2012/6/3)
五百六拾弐  中村美里の技U(2012/5/26)
五百六拾壱  尾形光琳展(2012/5/19)




五百八拾   西岡選手引退ですね(2012/10/14)
 本日、ラスベガスでWBCバンタム級王者の西岡利晃選手がWBO、IBF王者のノニト・ドネア選手の統一戦が開催されました。正確にはベルトを返上しての対戦だったみたいですけど。結果は9Rにショートの右ストレートを受けてのTKO敗けでした。

 今回の試合について、実はあんまり期待していませんでした。残念ながら、西岡選手ではドネアに勝てっこないですから。試合展開は予想以上に実力差が明らかなものでした。
 西岡選手はこの試合をやるべきではありませんでした。ガードを固めて相手を見ることしかできないのなら、なんで試合を行ったのか。打ち合うことができないほど、相手が強いと理解しているならリングに上がるべきではありません。まるで、パッキャオと闘ったモズリーの再現でした。試合後、パッキャオのトレーナーであるフレディー・ローチさんがいみじくも言いました。
「モズリーは引退すべきだ」
 モズリーはその後サウル・アルバレスとも闘って、完膚なきまで叩きのめされましたから、もう引退間違いないでしょう。西岡選手についても、帝拳の本田会長はこの試合がラスト・ファイトと宣言していましたから引退でしょうね。


 試合が始まって、西岡選手のガードスタイルを見ただけで勝ち目はないなと確信しました。ドネアの左フック対策として、右手を高く掲げ、顔面右を堅く守っていました。ああ、右フックは捨てているなと分かるスタイルです。申し訳ないけど、右フックなしで超一流のドネアと勝負できるはずもありません。
 また、防御に気を使うあまり、パンチを打ち切っていませんでした。得意の右クロスも伸びがなく、ドネアにとってはまったく怖さがなかったでしょう。
 さらに、慎重に構えるあまり、ベタ足で一歩一歩動くしかなく、回り込む動きがありませんでした。マルケス戦のように、左回りで相手を制することもありませんでした。おかげで、ドネアはサイドに動いてのアッパーを打ち放題でした。
 もう一点気になったのは、相手のパンチを潜って躱した後、下がるだけだったことです。本当は、潜った後上体を起こすタイミングでパンチをぶつけるべきなのです。危険性もありますが、これをやらないと、相手が一方的に攻撃できます。どうも、その練習をやっていない模様でした。

 お客さんも怒っていましたね。そりゃそうです。1Rなんか、パンチを2発出しただけでしたから。高い金を払いながら、あんな試合を見せられたら、誰でも怒りますよ。
 完敗としか言いようがなく、私ゃ途中で他の用事を片づけていました。録画もしていますが、多分見返すこともないでしょう。パッキャvsモズリー戦も見返していません。なんせ、時間の無駄ですから。
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五百七拾九  「鉄の女の涙」観劇(2012/10/7)
 久々にゆっくりできたので、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」をレンタルしました。公開時から見たかった映画ですけど、わざわざ劇場に足を運ぶまでの気が起こらなかったのです。で、レンタルで済ませたのは正解でした。まったく期待外れの内容でした。

 認知症を患っている晩年のサッチャーが、正気と妄想の狭間で過去を回想する手法を採っているのが鬱陶しいです。私が期待していたのは、サッチャーがいかに議員に選出されたかの過程、いかに保守党党首に選出されたかの過程、いかに英国初の女性首相に選出されたかの過程などを味わいたかったのです。

 その辺りが実におざなりなのです。認知症に煩わされる今を描く時間があるなら、政治家サッチャーを描けよとイライラしました。第一、保守党候補として、地区組織に認められるシーンさえ省いてるものですから、政治家としての途が開けた端緒さえ分かりません。
 また、新自由主義によるイギリス経済立て直しを図る過程もポイントのはずです。その辺りのことも、字幕や経過報告程度の描出でした。

 それから、息子のために軍用機を用立てた件もスルーされていました。また、レーガンに対して、ゴルバチョフをリスペクトするよう要求した件も省かれています。
 一方で、フォークランド紛争については時間を割いていました。あれくらいのバランスで他の箇所も描いてくれればよかったのですが。

 とにかく、期待外れの一作でした。イギリスの国会議員選挙や党首選挙もドラマチックです。特に政策論争が重要となります。つまり、サッチャー・スタイルというのは選挙時から始まっているのです。その時点から丹念に描くことによってこそ、サッチャーという政治家人生が描けるのです。
 皆さん、この映画を見てサッチャーを理解できると思わないでください。この映画、駄目です。
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五百七拾八  卑しき村上春樹(2012/9/29)
 村上春樹氏が朝日新聞に寄稿した記事が話題になっています。領土問題は、ヒトラーが政権を固める際に利用した政策であり、過ちを繰り返してはいけないという趣旨です。これを読むと、あんた一体誰に語っているのと問いたくなります。

 村上氏は大江氏の後を襲い、ノーベル文学賞を狙っていると巷間噂されています。その線からすると、まさにらしい発言内容です。しかし、そういう露骨な功名心というのは、もの書きが忌避すべき生きざまじゃないですか。何を語ろうが、日本では自由です。自由であるからこそ、発言内容を大切にしたいのです。村上氏の誰かしらに都合のよい発言には悲しくなります。

 郭沫若氏が文革時に自己批判して、転向日和ったのと一緒にすべきではありません。命の危うさが問われる状況では、人間が弱さに負けるのも仕方ありません。誰も責められないでしょう。
 一方で、ソルジェニーツイン氏のように、本当の愛国者ゆえに収容所生活を送りながらも節を枉げず、文学者の務めとして国家告発を止めなかった豪の者もいます。村上氏もノーベル賞を狙うなら、ソルジェニーツインを師と仰げばいいのに。

 東アジア地域における最も喜ばしい達成のひとつは、そこに固有の「文化圏」が形成されてきたことだ。私の経験に基づいて言えば、「ここに来るまでの道のりは長かった」ということになる。

 東アジアの発展が為し遂げられたのは、議論の余地なく日本の存在と日本の功績です。そして、村上氏の言う「領有権をめぐるアジア国家間の葛藤」で「人々の声は大きくなり、その行動は粗暴になる」のを実践しているのが中韓であるのは明白です。であるのに、その主語を絶対に書こうとしません。で、ついつい邪推してしまうのです。

 いま「東アジア文化圏」は豊かな、安定したマーケットとして着実に成熟を遂げつつある。音楽や文学や映画やテレビ番組が、基本的には自由に等価に交換され、多くの数の人々に楽しまれている。

 村上氏にとって、美味しいマーケットだし、ノーベル賞を狙う際のアジア枠という国際性も満たしてくれます。しかし、もの書きとしての矜持として問うべきは、独裁や偏向教育に対する批判であり、北京政府が指示した焚書に対してでしょう。
 その結果として、中国や韓国で自身の著作が発禁になろうとも、村上氏が心から領土問題に警鐘を鳴らす気なら、大きく声を発すべきです。郭沫若氏のように抹殺を恐れなければならない状況はないし、ソルジェニーツイン氏のように収容所に送られることもないのですから。
 それに、発禁になろうとも、十分以上の蓄えはあろうし、国内でせっせと稼いでいることでしょう。恐れるものなど、氏の環境に一切ないはずです。この寄稿文からは、村上氏の卑しさしか伝わってきません。
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五百七拾七  中国打つ手なし(2012/9/22)
 尖閣領有権について、中国は打つ手なしの状況に立ち至っています。外交報道官曰く、「釣魚島および付属島しょ(尖閣諸島)は古来、中国固有の領土。中国の管轄海域であり、中国漁民の伝統漁場でもある。中国の漁業監視船や漁船が進入するのは正当で合理的な行為。われわれは一貫して日本側に対し、中国側の厳正な要求と中国人民の正義の叫び声を正視し、話し合いで解決するという軌道に戻すべきだと促している」

 いつもこのような発言に終始しています。悲しいことに、国際法に則した根拠を示すことができません。もっとも日本側も似たようなものです。「尖閣に、領土問題は存在しない」というばかりで、首相なり外務大臣なりが、その根拠を内外に発信したことがありません。
 韓国の李大統領の無法に際して、野田首相が時間をかけて竹島領有の論拠をじっくり語りました。あれを尖閣に対してもやるべきです。それも繰り返し行う必要があります。

 今回の反日デモは、当局の計画的煽動によるものだったようですね。中国国旗の配布が計画的に為されていましたし、日本車への攻撃を主導したのが私服警官だったのには笑っちゃいました。警官のチョッキが透けているし、通信用イヤホンを装着していましたから。
 そこまでしなければ、日本側を圧し返せないと危機感を抱いていたのでしょう。一説には習近平国家副主席による領導説もあります。胡錦濤氏との権力闘争に当って、反日によって勇名を馳せようとの思惑との観測もあります。また逆に、幽閉状態であったとの見方もあります。なんか、よ〜分かりません。

 漁船団1,000隻が尖閣に向かうとかの報道もありました。出港する漁船の映像は、結局単なる出漁風景だったのですね。日本側が海保の監視船を増勢させたのと、突発事態に備えて護衛艦を派遣したのも効いたみたいです。
 中国外交部の報道官が定例記者会見で、「日本政府は中国側の厳正な要求と中国人民の正義の叫び声を正視すべきだ」との発言をしました。これは、事実上のギブアップ宣言です。

 人民解放軍の将官たちが、相次いで好戦的発言をしていますが、これは明らかにポーズです。軍のスペシャリストたちは、中国軍が自衛隊に敵わないのを知悉しています。ただ、威勢のいいことを言わないと自分の立場が悪くなりますからね。
 で、もし開戦を命じられたら青くなるでしょう。自衛隊の海空戦力には歯が立ちません。もし、負ければ責任を取らなければなりませんから、いい迷惑でしょう。


 もうひとつ面白いのは、習近平国家副主席が、広西チワン族自治区南寧で開かれた中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)博覧会のビジネス首脳会議基調演説で、「国家主権と安保・領土を断固たる姿勢で守っていくが、隣国との領土・領海・海洋権益紛争問題を友好的な交渉を通じて平和的に解決する」と述べたことです。見事な言行不一致です。南沙諸島や西沙諸島を舞台にして、ベトナムやフィリピン相手に無法者として振舞いながらよくも言えるものです。
 また「中国は発展するほど、より安定的かつ平和的な国際環境を必要とする」としていますが、その意味は“自分は無法を通すが、環境(周辺国)は平和的であるべき”との意でしょう。

 我々は、このように厚顔無恥な無法者と向き合っていることを自覚しなければいけません。
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五百七拾六  外乱騒擾による国家回復(2012/9/16)
 日本政府による尖閣国有化決定を受け、中国での反発が強まっています。北京政府は中国の領土である旨を何度も訴え、国民を煽動しています。その結果、中国全土で反日デモが起こり、暴動略奪に至っています。
 日系企業の打ち毀し、放火、日本車破壊、日本人への暴行などが行われています。中国国民の意識は80年前から進歩していません。かつての大陸で何度も繰り返された悲劇です。通州事件や済南事件の悲惨さは、当時の日本国民の憤激を誘い、暴支膺懲の気運を決定的にしました。しかしながら、戦前のこれらの暴虐については、本質的に日本側に問題があったわけで、むしろ日本人が反省すべき点です。

 今回の尖閣の対立については、日本に非はありません。中国は深く自身を省みるべきです。でも、中国に真っ当な対応は望めないでしょう。
 そこで、日本は何を為すべきか。日本政府の対応としてやってはいけないのは、“今さえよければいい”式の妥協・沈静策です。日中国交回復以来、繰り返し日本が犯してきた間違いです。
 先日の石原氏の発言が典型です。「国有化するなら中国とも事前に打ち合わせるべきだった」ってのが、従来の自民党方式です。事前協議は結構ですけど、曖昧な妥協策は駄目です。まあまあ、なあなあで当面の状況を誤魔化せばいい式の手法は二度とやっていただきたくないです。40年間に渡る妥協の積み重ねが、今回の問題を惹起したわけですから。

 河野談話や村山談話も同根ですね。今さえよければ、或いは問題点を追求せず、取り敢えず誤魔化しておけばいい式の対応だったと思います。

 政府には日和らず、原則論で以って毅然とした姿勢を貫いてください。ここで日和見を決め込むと、中国は味をしめて何度も繰り返すことでしょう。そもそも日中関係においては、日本側が長年月の間、優位に立っていたのです。それなのに、ひたすら下手に出て損を続け、有利に解決する時期を失してしまったのです。この件に関して、自民党には国民に謝罪していただきたい気分です。

 目の前の経済的損失を優先して原則を歪めないことです。一度の妥協が将来において巨大な負債となってのしかかってくるのです。現在の状況そのものが、先人たちがやらかした負債なのです。我々は同じ過ちを繰り返さないよう自戒しましょう。
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五百七拾五  日本よ国家たれ(2012/9/9)
 尖閣、竹島問題が喧しいものだから、この件に引きずられて、少しずつ日本の体制が変わってきています。これは好ましいことですね。本来であれば、戦後67年も経っているんですから、領土問題なんぞ関係なしに、ありうべき姿に立ち戻るべきなのですけど。
 “日本よ国家たれ”は、清水幾太郎氏が30数年前に著した著作のタイトルです。副題に“核の選択”とあり、物議を醸した本です。

 皮肉っぽいタイトルです。普通に考えると、日本はまぎれもなく国家です。しかしながら、独立した国家とは言い難い情けない面が多々見られ、それは今以て続いているわけです。

 竹島を韓国に軍事占領され、漁業従事者に死傷者が出るという悲惨な目に遭いながらも放置してきたものです。今回、やっとこさ国際司法裁判所に提訴する運びになりました。まったく変な話です。
 尖閣についても、都が購入して沖ノ島と同様な管理を行おうとしたところ、国が横槍を入れましたね。国というか、外務省ですけど。本当に外務省って腐っています。日中関係の係争点に、他者が介在することを嫌がっているのでしょう。ちょうど日米安保について、他者が口出しするのを徹底的に排除するのと同じ構図です。

 外交上の肝心なポイントは譲らないものの、外堀については否応もなく変化してきています。例えば、島嶼防衛を謳う防衛省は、ついに北の護りを縮小し始めました。北海道防衛は冷戦時代の対ソ戦略に拠るもので、時代に合わなくなって久しくなっていました。

苫小牧民報(2012年 9/8)から

 防衛省は7日に発表した2013年度予算の概算要求に、陸上自衛隊第7師団の改編と第1戦車群(北恵庭)の廃止を盛り込んだ。

 第7師団の戦車は230両のうち、約60両が削減される。内訳は90式戦車が50両減り、74式戦車が約10両。隊員の定員は常備自衛官約600人が増員され、現在の約5,860人から約6,460人体制となるが、定員約870人の即応予備自衛官(即自)は同師団から外れ、北部方面混成団へ集約される。即自を含めた師団の編成定数は実質、約270人減となる。

 一方、北恵庭の第1戦車群は2013年度中に廃止予定とし、代わりに第11旅団(真駒内駐屯地)の第11戦車大隊が移駐するとした。規模は第1戦車群の74式戦車約60両、定員約350人から第11戦車大隊は90式戦車約30両、定員約190人と小さくなる。


 自衛隊も予算削減を受け、スクラップ・アンド・ビルドの対応が必要です。陸自も西へのシフトが求められ、実質的な対応を始めたと考えられます。


産経新聞(2012.9.6)から

 香港の活動家らによる沖縄県・尖閣諸島上陸事件などを受け、海上保安庁が不審船などの監視能力を高めた最新鋭の大型巡視船4隻と、中型ヘリコプター3機を新たに導入することが6日、同庁関係者への取材で分かった。

 また、第10管区海上保安本部(鹿児島)の人員や装備を増強し、尖閣周辺海域への応援態勢を整える。いずれも、関連の費用を来年度予算の概算要求に盛り込む。

 関係者によると、1970年代半ばに集中的に配備された巡視船や航空機の多くが老朽化。速力など性能面でも不安視されているため、新型への切り替えを進める。

 尖閣諸島の警備をめぐり、海上保安庁は既に「那覇海上保安部」を那覇市に新設することを決めている。


 むしろ、こちらの方が実効性のある話です。尖閣をめぐる今後の対応は、あくまで警備の問題ですから、軍隊より海保の充実が必須となります。尖閣は遠いので、那覇に拠点を設けるのは有効です。また、艦船の速度と航洋性も重要となります。さらにまた、人員増は最優先で考えなければいけません。
 海保の打つ手は頼もしいですね。海保職員は東シナ海で日々辛い業務に当っており、切実さが伝わってきます。来年度概算要求に見られる施作には大賛成です。


 領土問題を巡って韓国や中国に対する日本の対応が変化しているのは結構なことなのですが、未だ日本が独立国家として成立していない面が他にあります。アメリカと向き合う姿勢がその最たるものでしょう。
 日米安保を見直さない限り、日本は国家とはいえないでしょう。そして、この点こそが最も難しい点です。韓国や中国との向き合い方なんぞ簡単な話です。対米問題がなぜ難しいのか。話はGHQによる対日占領政策まで遡ることなので、またにします。
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五百七拾四  外務省元幹部って訳わかめ(2012/9/1)
 先週はイベント開催に追われ、疲れ果てていました。おかげで、サイト開設以来2度目のコラム記載をさぼりました。

 ここのところ世上を騒がせている領土問題について、外務省元幹部というかOBがいろいろ発言をしており、これがひどいものです。いえ、仮に立派なことを言ったとしても、じゃあなんでそれを現役時代にやらなかったんだと突っ込みたくなります。

 『週刊ポスト』から
 元外務省国際情報局長の孫崎享氏が次の発言をしています。

 尖閣は米が守ってくれると思ったら大間違い
 多くの日本人は「在日米軍は日本領土を守るために日本にいる」と信じている

 信じている日本人が、本当に多いものか疑問です。在日米軍の駐留意義は、今でこそ緩くなっているものの、やはりそれなりに理解されていると想像します。日本人はそこまで馬鹿じゃないでしょう。
 ベトナム戦争やインドシナ紛争では、後方支援基地として日本が絶対的な役割を果たしました。また、(西)ドイツとともに東西冷戦の最前線を担ったわけで、在日米軍がアメリカの世界戦略における極東正面の楯であったのは実に明確でした。そのようなことは、年配者にしてみれば周知のことでしょう。孫崎氏は、ずい分日本人を低脳と見なしていますね。


 中国網日本語版(チャイナネット)による東郷和彦・元外務省条約局長への取材から

 日本は中国と台湾の意見を取り入れるべきで、そうしてようやく「尖閣諸島周辺海域に進入するな」などの尖閣諸島をめぐる主張がより直接的で鮮明になる。

 東郷さん、一体なにが言いたいのかさっぱり分かりません。
 中国と台湾のどのような意見を取り入れるかを言わないと意味不明です。中国、台湾の意見は、「あくまで自国領土」なのですから、それを取り入れると、「『尖閣諸島周辺海域に進入するな』などの尖閣諸島をめぐる主張がより直接的で鮮明になる。」とはならないでしょう。むしろ、『進入するな』でなく、前提としての互いの領有権主張を戦わせる地点へ還らなければいけないでしょう。

 日本政府は最大限の努力を尽くし、外交を通して尖閣諸島問題を解決する必要がある。

 よく言うよ、ですね。東郷さん自身、外務省時代に尖閣問題解決に向けてなにもやらなかったわけで、「お前が言うな」でしょう。昔のことなので記憶も曖昧ですけど、東郷さんが現役時代に書いた論文は、屁の突っ張りにもならないものばかりだったはずです。

 思考麻痺や状況の判断ミスと比べると、現状を維持し、戦いを招くことほど愚かなことはこの世にない。日本は外交を通して戦争回避に極力努めると同時に、自身の防衛力を強め、集団的自衛権の行使を強調すべきである。

 もう一体なにを言ってるかさっぱり分かりません。これ、前段部分が意味不明です。皆さんは理解できますか。多分、中国誌のインタビューなので、翻訳がうまくいっていないためだとは思いますけど。

 外務省の領土問題への取り組みがひどいのは今さらですけど、すべて外務省の責任でなく、自民党政治家の責任もあります。
 北方領土はソ連侵攻によるものなので仕方ない面があります。竹島は自衛隊が未整備時代に軍事侵攻してきたので、やはり無理からぬ面があります。しかし、尖閣は違います。これは明らかに自民党−正確には当時の田中首相と大平外務大臣コンビの確信犯的所業がもたらした軋轢です。
 政治家の責任を今さら言い募っても仕方ありません。解決に当るのは外務省で、大変な重責です。そんななか、外務省OBがこんなわけの分からない発言で現役官僚の足を引っ張っちゃ駄目でしょう。いえ、屁の突っ張りにもなりませんから、足を引っ張ってもいないか。
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五百七拾参  国難多事(2012/8/19)
竹島

 この件に関して、政府は次のようなステートメントを発表すればよかったのに。

「韓国の李大統領が島根県を訪問するものと見られています」
「現在のところ、日本政府に対して一切の連絡はなく、非公式な訪日と見られています」
「要人警護の問題もあり、政府は竹島への警備部隊派遣を検討しております。その対応のため、韓国政府に対して、大統領の訪日スケジュールを確認する予定です」

 きっと韓国の政府や世論はヒステリックに喚くでしょうが、淡々と島根県訪問を前提にした対応を進めれば面白かったのに。

尖閣

 不法侵入ということで、強制退去させる手法に問題はないと思います。ただ、船は証拠物件として抑えるべきです。返却する条件として、管理費とか手数料を請求し、納付された場合のみ返すということで。こういった手数料を算出する際には、人件費も含めるのが一般的です。
 当然、使用料・手数料に係る法整備が必要です。さっさと法整備して、今後尖閣に向かう活動家に備えましょう。ひょっとして、結構な収入になるかもしれません。

オスプレイ

 輸送ヘリCH46の代替ということですね。だったら、素直にそう言えばいいのに。オスプレイが日本の抑止力に資するとか言うもんだから、当然のこと反論もあるわけです。

 以前在沖海兵隊の司令官だったグレグソンって方が、オスプレイ配備により、朝鮮半島有事で有利とかのコメントを発しました。
 オスプレイが沖縄と半島をピストン輸送するのに有効とか主張したそうです。もう言ってることが理解できません。オスプレイが沖縄と半島をピストン輸送する状況ってなんなのでしょうか。

 在韓米軍がいて、韓国三軍総勢50万人がいて、なお在沖海兵隊が必要とされる状況ってなんでしょうか。まさか南侵を想定しての状況でしょうか。これはまさに有事です。でも、その際にはオスプレイでシコシコやってられないでしょう。揚陸艦や輸送艦で以って、兵員や機材を大量搬入集積に務めるでしょう。急ぐ分については、4発のC130で日本から輸送するでしょうし。いえいえ、米本土からC5で以って運ぶでしょう。

 オスプレイ配備反対派も馬鹿げた主張をしてますけど、推進派もそれ以上にナンセンスな主張を繰り広げてくれています。
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五百七拾弐  48年ぶりの快挙(2012/8/12)
 ロンドン五輪ボクシング競技において、村田諒太氏がミドル級を制しました。素晴らしい快挙です。

 五輪ミドル級メダリストといえば、フロイド・パターソン、 マイケル・スピンクス、ヴァージル・ヒル、ヘンリー・マスケ、クリス・バードなど、後にプロ転向して大成した世界チャンピオンがいます。また、今は廃止されているライト・ミドル級には、フランク・テート、ロイ・ジョーンズ、デービッド・リードなどがいます。

 村田選手は、彼らレジェンドと同じメダルを手にしたのです。日本人がミドル級の金メダリストになるなんて、まるで嘘のような話です。東京五輪以来の金メダルというだけでなく、ミドル級というのが味噌です。陸上競技に例えると、100m走で日本人が金メダルを獲得したようなものです。

 決勝戦は互角でした。対戦相手のブラジル選手への減点がなければ敗けていたかもしれません。ラストラウンドの手数は相手が勝っていましたから。
 反則はホールディング行為に対してです。村田選手の体重の乗った重いパンチが堪えていたのでしょう。村田選手はボディ中心に攻撃を組み立てていました。こういうのは今までの日本人にはなかったタイプです。近間でのショートパンチを得意にしているのもまた珍しいですね。
(C)


 相手選手は昨年の世界大会で、ダウンを含む大差判定で負けています。その反省に立ち、対村田作戦をよく研究していました。右肘を下げ、右脇腹を守っていました。右脇腹にはレバーがあるので最大の急所なのです。しかも、サウスポーとあって、かなり苦戦しました。サウスポーに対しては、角度的に相手の左ボディへの右クロスはまともに当ります。しかし逆に右ボディへのフック(アッパー)は、いい角度で当てづらくなります。

 サウスポー対策としては、右回りに動くのが有効なのですが、疲れから足が動かなくなり、正面から出るばかりでした。一方で感心したのは、ダッキングが身についていた点です。大き目のフックは、うまくダッキングでかわしていました。あれで相手側ポイントを削いだかと思います。



 ボクシングファンとしては、今五輪における最大の快挙と賛辞を送りたいです。
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五百七拾壱  中村美里破れる(2012/8/4)
 ロンドン五輪期待の女子柔道52kg級中村美里選手は残念でした。相手の安選手は2戦目であり、初戦である中村選手にとっては不運でした。
 中村選手の五輪は1試合のみで終わりました。負けたとはいえ、素晴らしい柔道でした。その経過を紹介します。

(C)NHK
 試合会場に入る前に礼。


 対戦相手に礼。


 試合開始の礼。


 開始早々、内股を仕掛け、この技の切れ味がもうひとつでした。


 逆に、裏投げで返されました。これが“技あり”となり、勝敗の分かれ目となりました。


 時間は十分あります。焦りも見せず、内股で“技あり”を取り返しました。


 安選手は一応背中から落ちており、十分かと思われました。主審だけでなく、副審も異議を挟みません。
 しかしながら、例のジュリーとかが“有効”止まりとしました。 (>_<)


 さらに朽木倒しを仕掛けたものの、ポイントにはならず。
 腹這いに逃れたとはいえ、勢いといい“有効”を採ってもおかしくはないんじゃないですかね。


 開始位置に戻る際、彼女は必ず道着を改めます。


 そのため、試合終盤ではご覧の状況です。安選手は帯までほどけています。こんなじゃ、技もかかりませんわな。
 いかなる状況であろうとも、中村選手は自分の為すべき正しいことを行います。


 負けました。淡々と相手に礼。


 試合会場に礼。


 会場退出の礼。


 敗れたりとはいえ、中村選手が演じたのは、間違いなく超一流の柔道でした。男女を問わず、あるいは全階級を通じても、最も高みに達した柔道家でしょう。
 と同時に、柔道をあくまで武道として位置づけ、武道家としての佇まいを見につけているのです。若い娘さんなのに見事な生きざまです。

 彼女が柔道家として発する生きざまは、見る者を惹きつけずにおきません。私なんかは、勝ち負けを超えて、彼女の試合に魅了されているのです。
 願わくば、彼女の生きざまがすべての人に伝わることを願って止みません。
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五百七拾   尖閣とオスプレイ(2012/7/29)
 なんか、森本防衛大臣がTV出演して、オスプレイが尖閣を守るために有効とか訴えていたそうです。私は該当番組を見ていないこともあって、どうにも言ってることの状況がイメージできません。

 南沙諸島や西沙諸島は小さな島や岩礁ですから論外として、尖閣諸島もかなり小さな島です。ですから、マキンやタラワの攻防戦をイメージすべきでなく、むしろ、メジュロ環礁を連想するのが適当かと思います。メジュロにおける日本軍守備隊は、艦砲と爆撃ですり潰されたと記憶しています。地形が変わるほどの艦砲射撃を受けながらも、日本軍守備隊は地下で難を逃れた将兵もいたそうですけど。

 海兵隊が尖閣相手になにをしようっていうんでしょうか。その状況下では、当然のこと制海権と制空権は確保していることと考えられます。そんななか、わざわざ不要の危険を冒して着上陸制圧戦をやるんですかい。日米の幕僚には、優秀な人材が揃っているはずです。そんな無用の流血戦、実施しないでしょう。ていうか、尖閣での紛争に米軍が出張るとは考え難いですけど。

 そもそもオスプレイでは、敵が散在する地点への輸送任務は厳しいのではないでしょうか。護衛の戦闘ヘリによる直協連携ができないはずです。だって、速度と航続距離が全然違うんでしょう。
 で、逆に制海権を有する状況下、敵のいない尖閣に兵を運ぶんなら、船の方が有効です。大量の兵士と機材を運べますからね。尖閣に絡めて、ことさらオスプレイを言い募る理由が分かりません。

 あるいは、オスプレイはヘリに比べて航続距離が圧倒的に長いとのことです。沖縄から上海までカバーするとかで、さかんにアピールしています。これを聞くと、私なんかはそれなら最初から輸送機を使えよとか思います。
 オスプレイは搭載量が少なく、カーゴスペースが狭く、輸送機としてはむしろ航続距離も短いのです。航続距離が長いとか自慢するなよと突っ込みたくなります。揚陸艦に搭載できることと、滑走路なしでも離着陸できることは大きな利点でしょう。でもね、そんなのは日本の国防には関係ない話です。それで以って抑止力とか言わないでね、森本防衛大臣様。
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五百六拾九  中国、尖閣打つ手なし(2012/7/23)
 石原都知事が尖閣購入を示唆して以来、中国は発狂気味です。野田政権も都から購入し、国が管理するとか言い始めました。
 外務省としては、都に尖閣諸島の管理をされたくないのです。あくまで現行どおり、国民の上陸を禁止し、日本が実行支配する形態をとりたくないのです。中国との軋轢を避け、平穏無事に過ごすことだけを希望しているのです。その結果、将来において日本の支配権が希薄になってもいい、今さえよければいいとの考えです。

時事ドットコムから
 尖閣抗議船の出航を阻止=「撃沈の恐れ」と中国当局

 【香港時事】22日付の香港紙・明報によると、中国浙江省寧波市で今月中旬、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の中国領有権を主張する「保釣」(釣魚島防衛)運動活動家20人が漁船をチャーターして、日本への抗議のため尖閣海域に向かおうとしたところ、同市当局に阻止された。
 20人は全国各地から寧波に集合したが、市当局者は「日本の巡視船に撃沈される恐れがある」「今は休漁期なので、出航できない」などとして、出航を認めなかった。


 中国も苦しい状況ですね。ここのところ、日本側の尖閣購入議論に対して、不快感を示すコメントを発し続けていましたが、日本側はまったく相手にしませんでした。期待した効果が得られなかったものだから、今度は沈静化に躍起です。「尖閣抗議船の出航を阻止=「撃沈の恐れ」と中国当局」の苦し紛れの対応は、見てて気の毒なほどです。

 “尖閣は中国の領土”を国民にアピールしすぎると、政府の弱腰を批判されるだろうし、それがひいては党への批判となり、自分の頚を絞めかねません。今後は方向転換して、領土問題が表面化しないような方向に持っていくものと考えられます。

 一昨年の尖閣事件は、日本人の原則堅持意識を見事に確立してくれました。江沢民が利用してきた贖罪意識の桎梏から、きっちり解き放たれた模様です。

 ここで、秘話をひとつ。
 沖縄返還前、台湾が尖閣領有を主張し始め、それに対抗する形で中共も主張しました。
 当時は天皇への大臣による奏上が行われていました。これが中止になる直前のことです。山中貞則総務長官が沖縄返還交渉の状況報告に参内した際のことです。
天皇「尖閣諸島には蘇鉄が生えているか」
山中「まだ確かめておりません」
天皇のひとりごつ「蘇鉄は沖縄にはあるが、台湾にはない」

昭和天皇は、名君であったかと思います。
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五百六拾八  競馬シリーズ最終章(2012/7/15)
 ディック・フランシスの“競馬シリーズ”が45作目『矜持』で以って最終作となりました。1967年に『興奮』が訳出されたのが初版で、以後毎年1冊ずつ刊行されてきました。まずハードカバーで出版され、続いて文庫化されるパターンで、私は文庫本のみを追いかけてきました。

 フランシス氏は元々競馬騎手で、引退後ライターである奥方の協力を得て著述業に転進しました。奥方の死後は執筆に間が空いたものの、子息の協力を得て『再起』以後の5作は、子息との共著作として出版されました。
 一昨年、フランシス氏の逝去により、競馬シリーズは終了となったのです。で、先月に文庫刊行された『矜持』が最終作となった次第です。


 本作は最終作に相応しい佳作です。主人公は傷病軍人で、アフガンで右脚を無くしています。ちょうど、シッド・ハレーの片腕と同じ按配です。義足というハンデを背負って見えない敵に挑むという、いつものパターンです。

 良好とはいえない親子関係、両親を苦しめる陥穽などの見慣れた展開が、見慣れた“競馬シリーズ”世界に誘ってくれます。ですから、不満点についても同じくいつもどおりです。
 ファンド詐欺を仕掛けた悪漢たち。やがて悪事は暴かれ、証拠隠滅が優先事項なのに、なぜか主人公を自ら殺そうとします。相変わらずの意味不明展開です。ちなみに、殺したところでどうにもなりません。単に罪状が増え、犯罪をより明確化させるだけです。

 また、初対面の人間に自室で待たせてもらうという親切を受け、さらにビールを勧められての返事が「いただこう」です。こんな傲岸不遜な物言い、読んでて不愉快になります。訳者の北野美枝子氏は菊池光テイストを継承しているため、こういう不自然な会話もまた健在です。


 これでやっと私も心安らかになれます。残念な気持ちより、これでもう読まなくてすむという安堵です。“競馬シリーズ”は決して嫌いでないものの、マイクル・コナリーみたいに心待ちする気分じゃありません。
 最悪だったのは、パトリシア・コーンウェルの“検視官シリーズ”です。あれはもう愚作というより、奇書といっていいほどのトンデモ本でした。読み続けるのが辛く、10作目くらいで読書放棄しました。
 死んだはずの恋人が生き還るわ、主人公をモテモテおばさんに留めおくため、いきなり10歳くらい若返らせるわで、もう無茶苦茶展開でした。あるいは、フロリダの広大な湿地帯に存在する敵アジトに、たまたまピンポイントで行き当たる偶然、ありえね〜。
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五百六拾七  尖閣の実効支配を(2012/7/8)
 東京都による尖閣諸島購入が実現しそうです。所有者の栗原氏は、国へ売る気はまったくありません。現在は国が借り上げて、外務省主導の下に上陸禁止措置を採っています。重要な実効支配を、むしろ拒否する施策を続けてきたわけです。

 外務省は中国との軋轢を避けるため、あえて宙ぶらりんな状況を演出しているのです。そして、領土問題は存在しないと公式に語るばかりです。この件については、時間が経てば経つほど難しい問題が生起します。領土問題は記憶と密接な関係があります。怖いのは、日本の正統性が風化することです。
 中国が狙っているのは、まさにその点です。日中国交回復時に領土問題の明確化を避け、ケ小平時代にも領土問題解決には100年かかるとし、不利な状況下での協議を避けてきました。

 外務省が実施していることというのは、その中国に歩調を合わせることです。石原都知事は、そのあたりのことを熟知しています。「百参  東アジアの脅威 (2003/10/19)」で紹介した「日本青年社」の件には、石原都知事が関係しています。この頃から、石原氏と栗原家とは係わってきた経緯があるのです。

 外務省や自民党が長年行ってきた媚中外交を栗原氏は苦々しく眺めてきたのです。今の民主党政権はそれ以上に信用できませんから、栗原氏が国に売ることはありえないのです。

 しかし、尖閣を東京都に売ったところで、その後で国に売れば意味がありません。国はあくまで上陸禁止にし、アンタッチャブルな取扱いを行うでしょう。結局、実効支配を拒否する姿勢となるわけです。
 以前石原氏は、東京都には沖ノ島を管理してきた実績があり、尖閣諸島も同じように管理するノウハウを持っていると説明していました。これこそが王道でしょう。東京都に寄付した方々も東京都による管理を期待してのことでしょう。

 最近の石原氏の発言はトーンダウンしています。多分、国は裏で石原氏に対して脅しをかけているんじゃないかと想像しています。石原氏にも、つつかれると具合の悪いことがいろいろあるでしょうから。
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五百六拾六  消費税アップだってさ(2012/6/30)
 先週は親戚の叔父さんが亡くなって、葬式に追われていました。友引を避けたため、納棺、通夜、告別式と日にちを変え、金曜日から日曜日まで費やしました。日曜は初七日も兼ね、集った親類一堂で久々の久闊を温めました。おかげで3年半ぶりにサイトへの書き込みをさぼってしまいました。

 消費税率アップの法案が衆議院で可決されました。高福祉負担への対応ということであれば、やむをえない税制改革ではありましょう。しかし、どうにも怪しいですね。

 消費税導入時と同じインチキが罷り通りそうです。
 昨夜の報道ステーションによると、整備新幹線事業が3兆400億円の予算規模で再開するそうです。消費税導入の際にも、決定直後にそれまで凍結されていた整備新幹線事業が復活しました。まったく同じ構図ですね。

 実は私、今回の件を予想していました。かなり前から某ブログで予想を披瀝していたのですが、誰の賛同も得られませんでした。多分、変なオヤジの変な書き込みと取られていたのでしょう。
 税制改革法案が衆議院で可決した途端にこれですもん。本当に舐めています。昨夜のニュース映像で馬渕国交大臣が映っていましたが、なんか冴えない表情でした。きっと内心で忸怩たるものを感じていたのでしょう。

 本来、国交省が取り組むべきは整備新幹線の再開なんかじゃないはずです。新設でなく、むしろ日本国中の痛んだインフラを修繕することこそが重要命題です。都道府県と市町村が管轄する道路や橋の要修繕箇所について、未だ一割程度しか補修ができていないそうです。そんな重要課題を無視して、よくも新たな新幹線建設などといえたものです。

 なんかもうね、本当に“今さえよければいい”路線まっしぐらです。原発の廃炉にしても、今後どれほど巨額の資金が必要となるのか。もう、税金の無駄使いをしている余裕なんてないでしょうに。そもそも福島の現状は、もはや人間が手出しできない状況にまで立ち至っています。よくもまあ、収束宣言など出したものです。
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五百六拾五  最近の世相(2012/6/17)
オスプレイ墜落

 フロリダで訓練中のオスプレイが墜落しました。海兵隊普天間基地への配備が予定されており、沖縄の反発が強いことから、前段階として岩国基地へ一時的に配備されます。岩国もたまったもんじゃないです。特別枠の交付金欲しさに海軍機を受け入れたばかりに、在日米軍関係の押しつけが止まるところをしりません。まあ、岩国自身が選択したことですから、仕方ありませんけどね。

 オスプレイの10万飛行時間当りの事故率は1.93とされています。バートルCH46が1.11で、垂直離着陸のハリアーは6.76です。今回の事故で、数字はさらに大きく悪化したことでしょう。飛行時間母数がまだ小さいので、事故率は当面厳しい数字が続かざるをえないでしょう。現状では、普天間でのオスプレイ運用は揉めに揉めるかと思われます。

 アメリカ本土では、人口の少ない山岳地帯での飛行訓練でさえ見直すことになりました。一方の普天間は市街地でっせ。米軍にとって、ダブルスタンダードの意識は皆無でしょう。日本なんて文句を言わない便利屋くらいにしか認識していないでしょうから。

 日本の政府・国防関係者には、せめてアメリカ本土並みの運用を求めてもらいたいです。なんぼポチだからといって、アメリカ住民に対するのと同等の扱いを希望してもバチは当らんでしょう。


大学生の自殺

日経新聞電子版(6月8日)より

 2012年版の「自殺対策白書」では、昨年の学生・生徒の自殺者数が1,029人で、初めて1,000人を上回ったとし、自殺者数が急増した1998年を起点とした推移でも近年は20代の自殺率が高まっており、若年層の雇用情勢が悪化していることが影響していると指摘している。

読売新聞(6月9日)より

就活悩み自殺、急増‥‥東海3県大学など「心のケア」充実策
昨年150人 4年で2.5倍に
 就職活動の失敗を苦にして自殺する10〜20歳代の若者が急増している。
 警察庁によると、昨年は大学生など150人が就活の悩みで自殺しており、2,007年の2.5倍に達した。雇用情勢が厳しさを増す中、「就活自殺」を防ごうと東海3県のハローワークや大学が心のケアを充実させる取り組みに力を入れている。

 大学生の就職率は昨年4月に過去最低の91%を記録した。06年の自殺対策基本法の施行を受け、07年から自殺原因の調査を始めた警察庁のまとめによると、10〜20歳代の自殺者で就活が原因とされたケースは07年の60人から11年は150人に急増。このうち、学生は52人で3.2倍に増えた。


 若者の雇用問題に詳しい千葉大の明石要一教授(教育社会学)は「今の若者は大手企業への就職にこだわり、失敗すると目的を失ってしまう傾向もみられる。就活自殺などの悲劇を防ぐためには、各大学で温度差のある支援を充実させるほか、行政を含めた相談窓口の周知も徹底する必要がある」と指摘している。

 この件に関しては、昨年3月の「最近の世相」でも触れています。
 自殺にまで至る心の病は、教育に問題の根源があると考えています。上で千葉大の明石教授も語っているように、就職先がないわけでなく、中小企業まで対象にすれば求人企業はたくさんあります。

 若いうちに社会の多様性を認識できていれば、他人と違った方向に進もうとも、心に欠落部分を抱えずに済むはずです。むしろ、他人と違った価値観を持つことに誇りさえ感ずることも可能でしょう。
 ポイントとしては、教育といっても学校教育でなく、家庭教育こそが肝要でしょう。しかしどうなんでしょう。教育に力を入れている親というのは、えてして学校の成績を重視し、いい会社へ入れだの、役人になれだのの定型的な価値観を植えつけているやに思われるのですけど。
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五百六拾四  パッキャオ陥落(2012/6/10)
 本日、ラスベガスMGMガーデンでWBOウェルター級タイトルマッチが開催されました。王者パッキャオに無敗のJr.ライト級王者ティモシー・ブラッドリーが挑戦した一戦です。

 結果は意外なパッキャオの判定負けでした。う〜ん、よく分からない判定です。悪くても小差の判定勝ちと見ていたのですけど。最悪でも引き分けでしょう。ブラッドリーが7Rも取ったというのでしょうか。
 ブラッドリー側の関係者自身びっくりしたのではないでしょうか。なんか物議を醸しそうな気がします。いえ、外野の野次がですけど。

 試合後のインタビューで、パッキャオは判定への不満を口にせず、ブラッドリーのファイト・スタイルを讃えていたのは立派でした。パッキャの偉大さは、こういう点でも光っています。

(C)WOWOW


 試合開始から、サウスポーのパッキャオはオーソドックス・スタイルのブラッドリーに対して左に回りこんでいました。上図でいうと、右側のパッキャオは左に動いてボックスをしていました。このシーンを見て、パッキャオの勝ちは動かないなあと思っていました。それがまさかの敗戦で、試合後こうして書きながらも放心状態です。

 敗因は、疲れによる終盤の失速でしょう。個人的には体重を重くしたのが原因かと想像しています。序盤に攻勢をかけ、ブラッドリーを痛めつけながらも、中盤過ぎから逆にスタミナの下降線を見せました。秋に行われるであろう再戦に際しては、慎重にウェイトをつくっていただきたいです。私はパッキャオの再浮上を信じていますから。
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五百六拾参  怪作「デイブレイカー」(2012/6/3)
 SFあるいはホラーの怪作です。アイデアの独創性とアンビリーバブルな未来社会を丹念に描いていることから、快作と呼んでもいいでしょう。2010年に公開されたそうです。昨夜WOWOWで放映されたものを見るまで、私は知りもしませんでした。

 バンパイアものは多種あります。それらは概ね二種に分かれるでしょう。ブラム・ストーカーの原作をベースにして、原作に忠実な古典的世界を描いたタイプが代表です。もう一つは、ゾンビ的世界と融合させたタイプです。
 本作は後者であり、「オメガ・マン」のようなSF近未来ものに仕上げています。DVD映画メディアの販売を行っている(株)スティングレーの作品情報から引用します。一部省略整理しています。

 人類の大半がヴァンパイアと化し、彼らによる新たな社会が築かれた近未来の地球を舞台に、人類の減少で食糧問題に直面するヴァンパイアと残りわずかなとなった人間たちの運命を、ユニークな設定とひねりの利いたストーリーで描き出していく。
 2019年、普通の人間がヴァンパイアへと変貌してしまう謎のウイルスの蔓延によって95%もの人間がヴァンパイアとなり、いまや世界は彼らが市民生活を送るための社会システムに取って代わっていた。また人間たちは捕獲され、血液供給源として管理・飼育されている。そんなヴァンパイア社会では、人類の減少による食糧問題が深刻化していた。 巨大製薬企業“ブロムリー=マークス社”で代用血液の研究開発に従事するエドワード。人類に同情的な彼は、ある夜、ヴァンパイアに追われる人間たちと遭遇、とっさに彼らの逃亡を手助けする。こでがきっかけで人間のレジスタンス組織の信頼を得たエドワードは、やがてコーマックという謎の男と引き合わされる。そして彼から、驚くべき事実を聞かされるエドワードだったが…。


 紹介にあるように、ヴァンパイアたちが新たな社会システムを構築した世界が丹念に描かれています。薄めた血液を販売するファースト・フード店が登場します。TVニュースでは、血液供給のための政府広報が流れ、血液不足がもたらす社会問題が語られたりします。
 このあたりを緻密に描くことによって、作品世界のリアルさや、登場人物たちの生き様などが切実なものとして迫ってきます。

 ヴァンパイアと人間双方を救う手段である“代用血液”開発に携わる主人公は、ひょんなことから生き残りの人間たちと係わります。そして、ヴァンパイアから人間への再生の方途を模索し始めます。
 同じくヴァンパイア救済を目的としながらも、製薬会社はあくまで事業として成立する方法を採ります。主人公の発見した方法は、むしろ製薬会社を無意味なものにしかねません。せっかく世界を救う方法を発見しながら、主人公たちは製薬会社に追われる羽目となります。

 ラスト、今までのヴァンパイアものにはなかった結末です。多分、レンタルの対象にもなっているでしょうから、詳細は書きません。こんなアイデアがあったのか、と思わせられる映画です。
 ヴァンパイアものが好きな方には、絶対観ておいて欲しい映画です。断っておきますが、あくまでB級映画です。「トワイライト」シリーズみたいに高尚な映画ではありません。
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五百六拾弐  中村美里の技U(2012/5/26)
 先日の5月半ば、全日本選抜柔道体重別選手権大会が行われました。ロンドン五輪代表選考も兼ねた大会です。私が注目したのは、もちろん女子52kg級です。

 中村美里選手の2大会連続出場なるかで、私はTV前で待機していました。準決勝の相手は橋下選手です。代表戦だけに、出場選手は実力者揃いです。決定的なシーンがない中、試合終了直前に中村選手は憎いまでに冷静な切り返しを見せました。

 橋本選手が内股を仕掛けたところ、その右脚を抱え込みました。そのまま前方に投げ、相手の下肢を自分の脚でコントロールしながら回転させました。これで優勢勝ちです。

(C)フジTV






 橋下選手、よくないですね。中村女王が常に道着を正すのを目の前にしながら、ご覧のとおりです。



 決勝戦は実力どおり西田優香選手と闘いました。撃剣帖の「52kg級中村美里こそが女王(2010柔道世界選手権)」でも触れたカードです。この後、両者の対戦成績は2勝1敗となっていました。まさに宿敵といったところです。
 ところで、撃剣帖で西田選手の試合に臨む態度を批判していますが、その後あらたまっています。ひょっとして私の声が届いたのかなどと思ったりしました。多分、西田選手の周辺にも、同じように感じた方がいたのでしょうね。
 試合中にも道着を整えていますし、試合後の態度もきちんとしていました。まあ、当たり前のことなんですけどね。



 このよくある態勢から、中村ワールドが展開しました。
 相手の身体をコントロールして返すため、自身の両脚をロックします。



 相手をひっくり返して上に乗ります。押さえ込みの態勢にさせないよう、西田選手は脚で中村選手を捕らえます。このせめぎあいの中、すでに西田選手の左腕を極めにかかっています。



 身体を抜いたところで横四方となりました。もはや西田選手は抵抗もできません。



 横綱相撲というか、見事なものです。この勝利によって、中村選手は晴れて五輪代表となりました。
 今回の大会では、なぜか48kg級の福見友子と浅見八瑠奈の対戦ばかりが話題になっていましたね。なんでかなあ。今や女子柔道の女王は中村見里でしょう。そのライバルとしての西田優香も大変な実力者だし、対戦興味は断然こちらだと思うのですがねえ。
 今回の試合が気持ちよかったのは、西田選手の試合態度が改まっていたからです。ただ試合終了後、すぐに立たず、寝たままだったのはいただけません。以前、サッカーの試合でもありましたね。ワールドカップで某N選手が見苦しかったです。
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五百六拾壱  尾形光琳展(2012/5/19)
 一昨日、早朝から東京へ飛び、昼前には羽田を発ちました。東京半日の日帰りは初めての体験でした。土曜出勤の振り替えで休みを取り、根津美術館を訪ねたのです。

 10時開館前に到着したところ、すでに行列ができていました。誰もが考えることは同じですね。「尾形光琳展」の威力は流石です。

 今回の目玉は、根津美術館所蔵の「燕子花図屏風」とニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の「八橋図屏風」の揃い踏みです。

 前回、「八橋図屏風」が日本で公開されたのは100年前だそうです。となると、今回の展示を見逃すと、もう一生見ることが叶いません。飛行機代は惜しいけど、贅沢をさせていただきました。

 上下ともに、6曲1双屏風の右隻です。



 言うまでもなく、国宝としての風格が凛然としています。下の「八橋図屏風」に比べ、燕子花の配置が完璧です。「八橋図屏風」の方が後年に描かれたそうですが、意匠としての完成度は「燕子花図屏風」が上でしょう。



 今回の展覧会、もし国立博物館の主催であれば、きっとMOA美術館の「紅白梅図屏風」も引っ張って、光琳の集大成版展覧会としたことでしょう。いえいえ、そんな贅沢は言いません。今回の展覧会も十分以上でした。

 先週、いい死土産になると書きましたが、まったくそのとおりです。できうることなら、学生時代にこの絵を観ておきたかったです。
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