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五百     最近の世相(2011/3/6)
四百九拾九  「ホテルカリフォルニア」再び(2011/2/27)
四百九拾八  “フィリピンの閃光”ノニト・ドネア(2011/2/21)
四百九拾七  アメリカと独裁政権の蜜月(2011/2/12)
四百九拾六  「大聖堂」ドラマ化(2011/2/6)
四百九拾五  中東革命なるか(2011/1/30)
四百九拾四  数十年ぶりの「思い出が多すぎて」(2011/1/22)
四百九拾参  中国製ステルス戦闘機(2011/1/16)
四百九拾弐  ジェフリー・アーチャー健在(2011/1/9)
四百九拾壱  今年の課題も対中戦略(2011/1/2)
四百九拾   オーディオチェック、完璧バランスでした(2010/12/25)
四百八拾九  爺様たちの忘年会(2010/12/19)
四百八拾八  中村見里の技(2010/12/11)
四百八拾七  上村松園の美(2010/12/4)
四百八拾六  長谷川2階級制覇(2010/11/27)
四百八拾五  長谷川復権なるか(2010/11/21)
四百八拾四  アジア最高のアスリート(2010/11/14)
四百八拾参  尖閣ビデオ流出(2010/11/6)
四百八拾弐  Vista 初のレジストリ掃除(2010/10/31)
四百八拾壱  西岡強し(2010/10/24)




五百      最近の世相(2011/3/6)
 京都大学のカンニング

 本当にくだらない話です。マスコミによると、「合格への重圧に負けた」とか報じているけど、しっくりきません。むしろ、「合格への欲に負けた」が適当でしょう。
 父親が亡くなって、母親へ負担をかけたくなかったなどと殊勝なことをぬかしていますが、矛盾があります。本当に家計への負担軽減を目指すなら、浪人生活を自宅でしろよ。まして、地元大学への進学は必須でしょう。言ってることとやってることが違っています。
 IPアドレスで特定されることくらい分からなかったのでしょうかねえ。大学の監督官も含めてお粗末です。


 スポーツ権

 民主党のスポーツ議員連盟(会長・谷亮子参院議員)は3日の幹部会で、今国会に議員立法で提出する「スポーツ基本法案」の大枠を固めた。国民にスポーツを行う権利などを保障する「スポーツ権」の確立に加え、政府内への「スポーツ庁」新設などを盛り込む。

 これもくだらないなあ。その昔、柔道の山下氏が審議会だったかで「スポーツ省設置」を提案した件と同類です。今、事業仕分けで無駄の排除をテーマにしていることをご存知ないのでしょうかねえ。お花畑満開です。

 「スポーツ権」の必要性を訴えるということは、これまで国民がスポーツに取り組むことが阻害されていたのでしょうか。いえいえ、もちろんそんな事実はありません。国体だって一巡以上し、日本全国スポーツインフラは贅沢なまでに整備されています。プロ野球、プロレス、大相撲などのかつて国民が熱狂した定番スポーツの凋落は、同時にスポーツ全般への浸透を意味しています。
 谷さんよ、利権漁りはあさましいですぜ。

自殺者:「就職失敗」大学生は倍増

 この件は深刻というか、根が深い話だと思います。単に雇用情勢云々の話でなく、子供たちに刷り込まれた職業意識の問題が横たわっているのではないですか。
 今の子供は自身の能力に生で向き合うことから守られています。能力差は厳然と存在するにも拘らず、絶対評価などという学校の中でしか通用しない悪弊が罷り通っています。結果、「自分に向いている、あるいは能力を発揮できる分野が必ず他にある」とか、馬鹿親による「やればできるはず」とかの幻想にしがみついたりするんじゃないですか。

 本来、“個性の尊重”には、“能力主義”も重要な要素として含まれるはずです。自分の分を認識すれば、同じ高みを目指すこともなくなるでしょう。いいかげんに、「子供たちには無限の可能性がある」式の根拠のない刷り込みは止めるべきです。
 でないと、どうしようもない現実に直面したとき、いたたまれない疎外感に苛まれるのではないでしょうか。自殺者倍増の原因は、そのような疎外感に由来するものではないかと想像しています。
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四百九拾九  「ホテルカリフォルニア」再び(2011/2/27)
 先日、よく訪問するブログでイーグルスの「ホテルカリフォルニア」が話題になりました。ブログ主は、この曲があまりに大ヒットしたことから、聴く気がしなかったとか、歌詞やメロディがつまらないとか主張しました。これに同意するレスが多かったため、イーグルスの名誉のために反論を書き込んでしまいました。

 書き込んだ後で懐かしくなり、思わず検索して聴き入ってしまいました。あまりにポピュラーな曲なので、誰でもご存知だとは思います。ただ、若い方で知らないという方は一度聴いてください。

 私がこの曲を聴いたのは、大学時代です。バンド活動をしていた友人に強く薦められたのがきっかけだったと記憶しています。友人はギターを担当していたので、この曲をよく練習していました。
 当時、バンドをやってた連中は、みんなこの曲の演奏を希望したことでしょう。でも、意外に演じられることは少なかったのではないでしょうか。友人のバンドにしても、結局やりませんでした。

 難点はギターでしょう。エレキの方は簡単でも、アコースティックが難しかったのではないでしょうか。ちなみに友人のバンドがコンサートでやった演目には、ツェッペリンの「移民の歌」やウィングスの「ジュニアーズ・ファーム」があったのを憶えています。「ホテルカリフォルニア」のエレキがこれらに比べて難しいってことはないでしょう。

 歌詞といい、メロディといい、泣きのギターといい、聴かせどころ満載です。ロックのスタンダード・ナンバーに相応しい名曲だと思います。これまで、いろんなアーチストにもカバーされ、広く愛されてきました。
 ちなみに甲斐バンドの「氷のくちびる」のギターは、「ホテルカリフォルニア」をパクっていますね。ギター担当の大森さんもイーグルスのファンだったのでしょう。真似をした気持ちはよく分かります。
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四百九拾八  “フィリピンの閃光”ノニト・ドネア(2011/2/21)
 昨日、ラスベガスにおいて、WBC/WBO統一王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)vsWBC4位ノニト・ドネア(比国)戦が行われました。結果は2回2分25秒TKOで、ドネア選手が勝利を収めました。

 敗れたモンティエル選手は、バンタム級で長谷川選手をTKOした強豪です。一方のドネア選手もまた、無人の野を行くが如き拳豪です。フライ/スーパーフライ級を制覇し、バンタム級に上げてきたところです。バンタム級での試運転として、昨年11月に元王者のウラジミール・シドレンコ選手と対戦しました。結果はワンサイドの展開で、4RTKOで元王者を完膚なきまで叩きのめしました。

 下から上げてきたドネア選手の方が大きく、パンチもパワフルでした。距離が長いため、シドレンコ選手はパンチを届かせるのさえ苦労していました。シドレンコ選手が踏み込んで右フックを振るのを冷静に見切り、カウンターの左フックをテンプルに当てました。まさにピンポイントで急所を抉るフィニッシュでした。


 で、モンティエル戦ですが、すでにWebで試合結果や動画が流れていました。私は、本日放映のWOWOWを見てからアップしました。
 下図は戦慄的な左フック炸裂の瞬間です。
 (C)WOWOW


 フィニッシュは唐突に訪れました。シドレンコ戦と同じカウンターの左フックです。モンティエルの踏み込みながらの右フックを見切って、ドンピシャの左フックです。
 動く相手の急所をピンポイントで迎撃するのは極めて困難です。ドネアのセンスというか、距離合わせの能力は最上レベルです。フロイド・メイウェザーやパッキャオに匹敵する能力と思われます。あるいは、かつてのマービン・ハグラーをさえ髣髴させます。

 今回の試合で気になったのは、ストップのタイミングです。モンティエルは最初のダウンで痙攣しています。一瞬、意識も飛んだように見えました。立ち上がってもふらついていましたから、試合続行は危険な判断ですよ。再開後の猛攻に、レフェリーもすかさずストップしましたけど。
 倒れたモンティエルの足が浮いているのは痙攣のためです。


 これで、ドネアは3階級制覇を為し遂げました。バンタム級にもはや敵はいないでしょう。さっさとスーパー・バンタム級に上げてください。西岡選手との対戦も視野に入ってきますね。多分、現在のチャンピォンたちでは太刀打ちできないでしょう。
 そこで4階級制覇を為し遂げて、次なるフェザー級へ行ってほしいな。フェザー級にはクリス・ジョン、ユリオルキス・ガンボア、ファンマ・ロペスがいます。これはもう、どの組み合わせでもスーパーマッチです。ドネア選手に体力面での不安はありません。来年辺りでの実現を期待しています。
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四百九拾七  アメリカと独裁政権の蜜月(2011/2/12)
 エジプトのムバラク大統領が退陣しました。きっと、この後混乱が続くでしょうね。国民の側もダブル・バインドに苛まれるのではないか。
 国民大半の気運は反イスラエルでしょう。一方で、現在のイスラエルとの和平路線は歓迎すべき政策でしょう。シナイ半島を舞台にした戦乱を望むものはいないでしょう。
 軍にしても、アメリカの支援なしでは今後立ち行かなくなるのは承知しています。アメリカの年間支援額は、イスラエルが3,000億円、エジプトが1,000億円です。どちらに対しても、アメリカは戦争抑止を要望するでしょう。

 今後の政権がどのようなものになろうとも、軍はイスラエルとの対決路線を忌避することと思います。それでも、反イスラエルのナショナリズムを訴求する人間は必ず現れるだろうし、一定の支持も受けるでしょう。
 現実路線を堅持する人間にしても、そういった集団にも理解を示しながらバランスを取る必要があります。反イスラエル・グループにも上手く対応しなければならないのがアラブの政体の難しい点です。


 それにしても、アメリカの手前勝手さには反吐が出ます。民主主義とか人権をうるさく言うくせに、なんとまあ独裁政権を支援してきたことか。
 韓国の李承晩、南越のゴジンジェム、イランのシャー、イラクのフセイン、エジプトのムバラク、ホンジュラスのアスコナ、サウジアラビアのファハド、カンボジアのロンノル、フィリピンのマルコスなどなど、いずれもろくなものではありません。独裁を非難するくせ、独裁政権を樹立したり、支援したりで勝手なものです。

 アメリカが余計なことをしなければ、戦後世界はどれほど平和であったことか。自国の都合に合わせるため、他国の政体をでっち上げ、あげくにフセインのように殺しさえします。独裁者を殺すだけならまだしも、国が混乱に巻き込まれて国民生活がすり潰されてしまいます。イラクの混乱は未だ終息の気配さえ見られません。
 エジプトの混乱ができるだけ早く収まることを願ってやみません。
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四百九拾六  「大聖堂」ドラマ化(2011/2/6)
 いよいよNHK BShiでケン・フォレットの「大聖堂」の放映が始まりました。先日、第1回「無政府時代」を見終えたところです。

 原作は全世界で1,500万部の大ベストセラーとなりました。既にお読みの方には説明無用でしょう。この小説は3つの物語が同時進行しながら、かつ絡まり合っています。

・トム・ビルダーを始めとした、教会堂建設に挑む建築家たちの苦闘
・フィリップを軸にした、僧侶たちの教会内部における権力闘争
・リチャードたち豪族の、王家の闘争とリンクした領地戦争

 イングランドのキングスブリッジという架空の地に、空前の大聖堂が建立され、信仰の拠点となるまでを描いた大河巨編です。詳細はこちらをご覧ください。続編「果てしなき世界」は、こちらです。

 今回のドラマは金がかかっています。12世紀のイングランド国王や領主たちの居城を再現し、各所の教会も設営されていました。そこで立ち働くエキストラも数が多く、当時の服装を身にまとっていました。
キャスティングもグッドです。小説を読んだときのイメージに適っています。

 25年ほど前にTV朝日で放映されたジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」にも比肩しうる大河巨編です。8時間で描ききれるか心配していたところ、残念なことに危惧は適中しました。第1回での見所はキングスブリッジ教会の院長選です。信仰篤いフィリップが院長になれるかハラハラする場面なのですが、一切のプロセスを省いてあっさりと選出されました。見ていて肩透かしをくらいました。
 ここは物語の見所なのです。分院に赴任したフィリップは、財政面、労務管理、教育、信仰服務などで、わずか3年間で目覚しい成果を上げました。
 時期院長に最も相応しいフィリップではあるものの、若いことから、院内政治に身をやつす俗人どもに弾きだされそうになります。さて、フィリップの巻き返しは可能かとゾクゾクさせられる展開なのです。

 配役も贅沢なので、気を取り直して今後に期待します。皆さんも、騙されたと思って一度見てください。いえ、本当は原作をお薦めしますけど。
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四百九拾五  中東革命なるか(2011/1/30)
 チュニジアに発した市民革命がエジプトにまで飛び火しています。多分、ムバラク大統領は亡命を余儀なくされるでしょう。フィリピンのマルコス大統領追放劇にも似た趣です。

 これがイランのシャーだと亡国難民となりました。それでもまだましです。南ベトナムのゴ・ディン・ジェムやルーマニアのチャウシェスクは射殺されましたからね。

 エジプトは長くイスラエルと対峙してきました。ナセル大統領は間違いなく名君だったと思います。ナセルの急死がサダトを元首に押し上げ、サダトはそれなりに中東和平に寄与したと思います。
 アラブ人の夜郎自大な面がサダトを死に追いやり、サダトの後継となったのがやはりアメリカの意を受けたムバラクだったわけです。

 今回のエジプト革命にさほどの衝撃はありません。むしろ、この影響がヨルダンにまで及んでいる点がポイントです。ヨルダン国王は前王ともども治世に対して真摯であり、国民の支持もあります。そのヨルダン王が追い落とされるようなことがあれば、間違いなくサウジアラビアにも飛び火するでしょう。サウジ王家への攻撃こそが、まさに中東革命の本命です。

 サウジ革命を最も恐れるのはアメリカでしょう。さすがにアメリカは、サウジ革命阻止のためならなんでもやるでしょうね。買収、殺人、暴力、脅迫なんでもありでしょう。
 私は、サウジ王家も滅びるべきと考えています。国土に眠る資源は国家のものです。これを一族の所有物とし、国家を王家の被り物としているような連中は滅び去るべきです。サウジ王家が滅びれば、やがてクウェート王家も追い払われるでしょう。

 彼らはいずれも国家元首と同時に国軍最高司令官も兼ねています。でも、近年の革命においては、部隊司令官たちも蜂起した数万人の民衆を前にしては制圧を放棄しています。
 独裁者たちは予防拘束や公安機関を活用し、そのような羽目にならないよう常に注意しています。しかし、NET利用者たちによる草の根式の蜂起にはさすがに対処できないみたいですね。

 はたしてサウジにまで影響が及ぶかどうか、目が離せません。
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四百九拾四  数十年ぶりの「思い出が多すぎて」(2011/1/22)
 TULIPはデビュー前のアマチュア時代に数枚のレコードを出しています。その中でも、東芝から発売されたジョイント構成でない「私の小さな人生」は名曲です。この曲は後のデビューアルバムにも収録されていますが、アレンジが大きく変更されました。バラード調のアコースティック構成であるアマチュア版の方が、むしろできが良いかと思います。
 この曲は最近復刻されたそうで、検索するとYouTubeにアップされていました。パソコンで作業する傍らで、お気に入りに登録したこの曲を飽かず聴いています。

 チューリップ 私の小さな人生

 先週のこと、YouTubeの曲を聴きながら、ふとある曲のことを思い出しました。「ひとりぼっちの部屋」でデビューした高木麻早が、翌年リリースした「思い出が多すぎて」です。当時高校3年生だった私はこの曲がいたく気に入り、クラスの友人たちも声を揃えていい曲だと絶賛しました。

 で、友人の一人がEP版を購入しました。私を含め友人たちはレコードを貸してくれと懇願し、一人一日ずつ借り受けることができました。最初に借りた私は、帰宅するや繰り返しレコードを聴いて歌詞もすべて憶えました。

 やがてレコードが友人たちの間を一巡し、皆が歌を憶えたところで、休憩時間に教室で繰り返し合唱しました。女子たちは、胡散臭い眼で私たちを眺めていましたね。ただ、不快じゃなかったみたいです。近くに寄って、けっこう真剣に聞いていましたから。

 そんなお気に入りだった曲も、以後は耳にすることもなく先週まで過ぎてきたわけです。多分、40歳以下の方は知らないでしょう。一度聴いてください。きっと気に入ることと思います。
 複数投稿されている中で、最も音質がいいものを紹介します。

 思い出が多すぎて

 ついでに、シグナルの「二十歳のめぐり逢い」も紹介しときます。この曲には本当に思い入れがあります。
 この曲は昭和50年9月発売ですが、なにぶん新設の弱小レコード会社所属だったため、プロモーションに金をかけられませんでした。TV局へのプッシュはなく、ラジオ番組と有線放送へのPRだけでした。

 それでも、楽曲そのものの素晴らしさから、有線放送で徐々にリクエストが増え、口コミでヒットになりました。私がこの曲を聴いたのは、多分翌年のことだったと思います。つまり、異例のロングヒットとなったわけです。

 その年に私自身が20歳であっただけに、余計に思い入れもありました。この年、クリスマス時分の商店街に「二十歳のめぐり逢い」が繰り返し流れていたのを憶えています。その商店街の人波を自転車で進みながら、いろいろあって気が塞いでいた私の胸を抉ってくれました。

 20歳のめぐり逢い/シグナル

 例によって、複数投稿されている中で、最も音質がいいものを紹介しておきます。初めて聴いた方は、「手首の傷は消えないけれど、心の痛みは」のフレーズにドキッとさせられるのではないですか。
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四百九拾参  中国製ステルス戦闘機(2011/1/16)
 先日、中国の新型戦闘機J-20(殲撃20)が試験飛行に成功しました。中国当局の言い分では、第5世代機に当るとされています。ロシアの当局者は、4.5世代機が妥当としていますけど。

 さっそく、中国空軍の脅威を煽り立てる向きもありますが、そんな心配する話ではありません。公開されている画像や映像から、すでに3面図が起こされ、サイズも見当がついています。そこから、いろいろなことが推測されます。

 まず、サイズが巨大です。F22に比べてかなり大きく、ロシアの新世代機T-50(Pak Far)をも上回っています。ステルスに関しては、もちろん小さい方が有利です。
 機体各部の傾斜を揃えているものの、先尾翼とあってレーダー反射の押さえ込みは厳しいでしょう。しかも先尾翼と主翼の角度が揃っていないので、反射波はかなり多方向へ拡散するでしょう。

 そもそも材質面でのステルスの実現には、極めて高度な基礎技術が必要です。この辺りについては、おそらく日本の技術を勝手に使用することと思います。電派吸収・減衰の技術は、必ずしも軍事目的だけではないので、密かに技術転用することは可能と思われます。

 それでも、非金属系材料を機体に利用したり、高性能な電波吸収材料の使用には限界があろうことから、なんちゃってステルス程度のものでしょう。

 機動性にも疑問符がつきます。大型であることから、乾燥重量は20tを軽く超え、22tくらいかと想像します。これをドライ燃焼だけでスーパー・クルーズさせるエンジンはありません。ロシアが開発中のエンジンも、この機体をマッハ越えさせるのは苦しいでしょう。ロシアの開発成果次第でしょうが、私は厳しいと見ています。

 結局、アフターバーナーなしでのスーパークルーズは無理でしたってことになるのではないか。ステルス性もそこそことあって、ロシア当局が言う、4.5世代機というのが妥当だと思います。

 もっと問題なのは、航空機を支援するシステムが不十分であることです。いくらステルスといっても、相手を認識する必要があります。そのためには、自分はレーダー波を出さず、地上やAWACSからのデータを受け取って処理しなければいけません。
 また、第5世代機を謳うなら、データ統合システムを実現しなければならないのですが、これがもっと難しい点です。アメリカのようなアビオはとてもものにできないでしょう。

 F22とJ-20を比較すると次のようになるかと。
 機動性   F22 >> J-20
 ステルス性 F22 >>> J-20
 アビオ   F22 >>>>> J-20
 取りあえず心配する必要はないものの、日本も第5世代機の開発を急いでいただきたいです。
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四百九拾弐  ジェフリー・アーチャー健在(2011/1/9)
 正月にジェフリー・アーチャーの「遥かなる未踏峰」を見つけました。新作が出ていたのを知らなかったのでびっくりしました。
 本作はジョージ・リー・マロリーの一代記です。リー・マロリーといえば、「なぜ山に登るのか」と問われ、「そこに山があるから」と答えた逸話の登山家です。
 文庫の裏表紙解説で、一代記ものと知って嬉しかったです。アーチャーの作品は、3ジャンルがローテーションで書かれています。一代記、ポリティカル・スリラー(コンゲーム)、短編集の3ジャンルです。私が心待ちにしているのは、サーガと称される一代記ものです。

 ここでアーチャーの作品を発表順に整理してみます。
 ◎ 読書人必読の傑作
 ○ お奨め
 △ 普通
 × 期待はずれ

 ○『百万ドルをとり返せ!』(1977年)
 ×『大統領に知らせますか?』(1978年)
 ◎『ケインとアベル』(1981年)
 ○『十二本の毒矢』(1987年)
 △『ロスノフスキ家の娘』(1983年)
 ○『めざせダウニング街10番地』(1985年)
 ×『ロシア皇帝の密約』(1986年)
 △『無罪と無実の間』(1988年)
 ○『十二の意外な結末』(1988年)
 未読『最後の特ダネ』(1993年)
 ◎『チェルシー・テラスへの道』(1991年)
 △『盗まれた独立宣言』(1993年)
 ○『十二枚のだまし絵』(1994年)
 △『メディア買収の野望』(1996年)
 ×『十一番目の戒律』(1999年)
 ○『十四の嘘と真実』(2001年)
 △『運命の息子』(2003年)
 未読『獄中記 地獄篇』(2003年)
 未読『獄中記 煉獄篇』(2004年)
 ×『ゴッホは欺く』(2007年)
 △『プリズン・ストーリーズ』(2008年)
 ○『誇りと復讐』(2009年)

 で、今回の「遥かなる未踏峰」は、「運命の息子」以来の一代記ものです。待ちに待ったサーガとあって、十分に楽しめました。これまでの一代記ものといえば、商売や政界での上昇を描いていました。権謀術策が渦巻くなかで、主人公が窮地に陥ったり、あるいは相手を出し抜いたりの経緯を描いた物語です。

 本作はリー・マロリーが主人公とあって、イギリス国民の悲願である“人類初のエベレスト制覇”に挑む物語です。従来の金や地位を争うのでなく、名誉を争う物語です。

 さすがアーチャー、期待はまったく裏切られませんでした。この作品は誰であっても自信を持ってお薦めできます。内容については話せません。読んでのお楽しみです。
 時代背景は、1910年代から1920年代です。ただ、主人公の冒険家としての資質や性格、志などを伝えるために、生い立ちから描いています。おかげで、私の好きな19世紀のイギリス社会にも触れることができます。

 贅沢な読書体験を堪能できました。ジェフリー・アーチャーまさに健在です。
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四百九拾壱  今年の課題も対中戦略(2011/1/2)
 昨年最大のイベントは、なんといっても尖閣事件でしょう。この件に関しては、政府の対応の拙さが指摘されています。それはそうでしょう。証拠物件たる漁船を早々と返却するなんて理解に苦しみます。船長を起訴したところで、物証なしでどうする心算だったのでしょうか。

 また、政治的判断で船長を釈放しました。政治的判断はありだとは思います。密かに中国側と取引すればいいのです。例えば、尖閣方面の違法操業を取締るよう求めるとか。そして、日中双方が互いに面子の立つよう格好いいコメントを出すわけです。

 現実には、管政権は底の浅いドタバタを演じました。でもいいじゃないですか。そのおかげで中国側の問題が浮き彫りになり、日本人にも広く認識されたわけだし、なによりマスコミの対中配慮がなくなったことが最大の功績でしょう。

 先月に閣議決定された「防衛計画の大綱」において、明確に対中シフトが謳われています。新大綱では、南西諸島方面への中国海軍の進出や北朝鮮の弾道ミサイル、国際テロリズムに機動的・実効的に対応できるよう「動的防衛力」の方針が打ち出さています。残念ながら、武器輸出3原則の見直しは流れていますけど。

 ここまで対中シフトを打ち出せたのは、まぎれもなく尖閣事件の成果でしょう。中国、特に江沢民なんかは切歯扼腕したことでしょう。江沢民のやり口というのは、日本国内で国防が正面から議論されないよう萎縮させることを狙ってきました。そのために日本側の中国に対する贖罪意識を刺激するというものでした。

 さすがに今回は、この手が使えませんでした。フジタ社員の拘束、レアアース禁輸、船長釈放騒ぎ、内外でのデモ騒ぎ、そして極めつけはビデオ流出騒ぎとトップニュースが相次いだため、日本の過去の清算云々を演出する余地がありませんでした。
 そして、12月の防衛計画の大綱決議です。今後は日中問題について、歴史問題に引きずられない冷静な議論が可能でしょう。以前であれば、島嶼防衛を言い出せば、中国に対する無用の対立を煽るものだとの批判が出たでしょう。

 防衛省も気兼ねなく新しい大綱に取り組むことができました。それもこれも中国漁船さまさまです。防衛省は、あの船長に勲章を与えたいくらいでしょう。


 今年、中国海軍はロシアから買い取ったワリヤーグを就役させる予定です。擬装が完了するとかの話ですが、なにかの間違いでしょう。
 電子機器の擬装が完了するとはとても思えません。膨大な機器システムの動作確認も大ごとです。さらに機関の出力試験、航走試験、注水・漏水試験なども長期間かかるはずです。
 そしてなにより、未だ艦載機の目処が立っていません。ロシアからSu33を購入し、国産化を進めています。しかし、Su27の国産版殲11が不具合から空軍に引取りを拒否されたとも報じられています。Su33も同じというか、艦載機はよりハードルが高いですし。

 何度も言いますが、中国の空母は恐れる必要ありません。空母を有効に運用すハードルは極めて高いのです。これまで空母を運用した国は、日本、アメリカ、イギリス、フランス、インド、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、スペイン、ソ連、イタリアの10ヶ国でしょうか。このうち実戦での運用を経験しているのは、日本、アメリカ、イギリスの3ヶ国のみです。しかも、複数の空母を多数の補助艦艇とともに集中運用したのは日本とアメリカだけです。
 なんの経験もない中国では、まともに運用できませんよ。まあ、中国にはせっせと海軍予算を無駄に捨てていただきましょう。
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四百九拾   オーディオチェック、完璧バランスでした(2010/12/25)
 もう長いことオーディオ関係雑誌を買っていません。昨日、久しぶりに本屋で「Stereo 1月号」を手に取ったところ、下図のオーディオチェックCDが付録についていたので購入しました。



 内容は定番のチェック信号類です。私はこの種のチェックディスクをいくつか持っています。ただ、今回のディスクにはいつもの信号に加えて、定位や周波数、分解能のチェック用に音楽が使われていたのが嬉しいところです。

 ・定位のチェック
 まったく問題なしのうえ、このパートの最後に石田善之氏が録音した「大井川鉄道の通過音」が収録されていました。この音源ディスクは既に所持していますが、改めて再生すると完璧でした。

 左方遠くから近づいてくるSL、やがて凄まじい重低音の擦過音を伴って、SLが眼前を掠めてゆきます。全帯域にわたって剛性が確保されていないと、十分な再生ができない厳しい音源です。いわゆる長岡系の音源ですね。しかも、ワンポイント録音とあって、音場感に優れたシステムなら、音が左右の彼方まで広がります。

 昔のシステムでは、部屋の外からSLが近づいてくるイメージでしたが、現行スピーカーだと音がスピーカーからさほど離れてくれませんでした。ところが、今回の再生ではスピーカー外側にも見事に広がってくれました。

 きっとシステム全般、特にスピーカーのエージングが進んで本来の能力が発揮され始めたのでしょう。もう、なにも文句をつける部分がなくなりました。


 ・分解能のチェック
 分解能については、以前から不満はありません。


 ・部屋の共振や吸収のチェック
 今回は大音量で鳴らさなかったので問題は起こっていません。もう少しボリュームを上げれば、きっと部屋のビビリ音が発生する可能性があります。超低音を高レベルで再生すると、部屋が共振を始めます。これは仕方ないというか、そもそもそのようなソースは滅多にありません。


 ・残響のチェック
 リボンツイーターを付加しているので、美しい残響音を響かせてくれました。ピンクフロイド「狂気」のA面で、多くの時計やベルが一斉に鳴り響きますね。あの部分では、部屋中が音の洪水に溢れかえります。


 上記付録ディスクは昔のチェックディスクに比べ、明らかに音質が向上しています。ディスク素材やプレス技術、あるいは信号変換の際のノウハウが向上しているのでしょう。

 4年前、私のオーディオシステムも上がり状態かなと思わされました。そのときの判断は正解でしたね。もう、いうことがありません。これで安心して往生できるというものです。
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四百八拾九  爺様たちの忘年会(2010/12/19)
 昨夜、地元自治会の忘年会がありました。私は下戸というか、飲酒運転を避けるために酒は飲みません。こういう酒席では、酒を飲んだ方が勝ちですね。酒を飲んでいい気分のクダ話にうんざりさせられました。

 私ともう一人以外の出席者はすべて60歳以上で、さらにその半数は70歳以上です。世代が違うものですから、もう話が合いません。昔から出席するのが苦痛でした。昨夜も爺様たちは酒が進むに従って、中国がどうたら、北朝鮮がどうたら、辺野古がどうたらと喧しいものとなりました。

 爺様たちは数十年間も生きてきて、複雑な世上もリアルタイムで見てきたはずです。それなのに、なんとまあシンプルなナショナリストに堕していることか。
「北がミサイルを撃ってきたらどうするんだ」
「普天間移設が駄目だって。じゃあ、アメリカがいなくなったらどうするんだ」
「中国にやられてしまうじゃないか」
「鳩山も菅も無能だ」

 そりゃあまあ、鳩山前首相や菅首相は無能でしょうけど。しかしねえ、日米安保の認識がこの程度だってのには哀しくなります。彼らも、厚木を始めとした空港の騒音訴訟をニュースで知っているはずです。それ以外にも、米軍がらみの問題で、日本がいかに困った状況におかれてきたか、爺様たちは見聞きしてきたはずです。
 関東空域の管制権が米軍にあるため、日本の航空事業がいかに阻害されてきたか。成田闘争も本来は不要な話です。
 富士演習地の接収、東北の民間空港が米軍の都合で運行に支障をきたすこと、岩国の夜間騒音などなど。そして、沖縄の惨状です。

 爺様たちも知っているはずです。それなのに、米軍が出て行ったら困るという認識には戸惑いました。やはりメディアの影響なのでしょうか。TVで語る親米評論家の尤もらしい−実は安っぽい−言説を鵜呑みにしてしまうのでしょうね。
 爺様たちの威勢のいいクダ話を聞いていると、かつての「暴支膺懲」とか「支那撃つべし」の気勢がこのようなものだったかと連想させられます。
 もし、日本が外交的に切羽詰った状況に至ったとき、彼らのような言説を嗜めたり、説得するのは極めて困難だと思われます。仮に、私が説得しようにも、いっさい耳を貸さないでしょうね。
「若造がなにを偉そうな口を利いているんだ」
「この非国民」
 いえ、さすがに「非国民」はないでしょうが。

 忘年会の酒席で、図らずも世論の実態を見せつけられました。もちろん、若輩者の私は聞くだけでしたよ。辛い時間でした。
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四百八拾八  中村見里の技(2010/12/11)
 先日閉幕した広州アジア大会において、日本の女子柔道勢は健闘しました。北朝鮮の選手に顔を張られたり、ローキックを蹴られたにも拘らず、正々堂々と闘って打ち負かしました。

 なかでも、私が楽しみにしていたのは52kg級の中村見里選手です。今秋の世界選手権では、決勝で西田選手に敗れたものの、このクラスの第一人者であるのは万人の認めるところでしょう。北京五輪準決勝で敗れた安選手(北朝鮮)にも、準決勝で借りを返しました。

 決勝戦の相手は手の内を知り尽くしているムンフバートル選手(モンゴル)で、まったく危なげのない横綱相撲でした。世界的にも、「負け方を忘れた中村」とまで評されており、現役女子柔道家では最強でしょう。ちなみに、未だ21歳なので、今後がさらに楽しみな選手でもあります。


 決勝戦の闘いぶりは、「これはもう、棲んでる世界が違う」といっていいほどのものでした。

 コンパクトで速い小内刈りに、相手は対応できません。
(C)NHK


 ムンフバートル選手の内股です。中村は予め読んでいたかのような対処を見せます。


 跳ね上げる左足を、跳んで跨ぎました。


 この場合は、左脚を上げてすかしました。上体の姿勢を見てください。まったく崩れていません。姿勢を崩さず、左脚だけ上げ、相手の身体を押さえ込んでいなしました。信じ難いほどのバランスです。




 内股を仕掛けた際の姿勢です。剣道や柔術も同じなのですが、形(姿勢)で以って技が極まります。美しい形でしょう。


 ムンフバートル選手に、道着を改めるよう注意がありました。中村選手は常に道着を直しているので、その必要がありません。まったく試合に臨む際のお手本です。


 背負いにいくところですが、中村選手は仕掛けた側より早い動作で対応しました。背後で素早く腰を落としています。




 彼女は寝技が得意で、常に相手をコントロールしていました。


 ポイント大差を挽回するため、起死回生の巴をしかけた瞬間です。このタイミングで、すでに後ろ重心のバランスをつくっています。


 すかさず馬乗りになり、足でロックし、縦四方に移行しました。


 もう、ムンフバートル選手のすべてが封じられていましたね。女王の貫禄というか、つけ入る隙のない柔道でした。

 怪我さえなければ、ロンドン五輪の最有力金メダル候補でしょう。私は中村選手のストイックな佇まいに共感します。谷亮子氏とは対照的ですね。帝京大学入学についての事前のなんちゃらとか、帝京ともの別れしてのTOYOTA入社の経緯とか、大人の事情が多すぎます。谷さんよ、武道家が物欲で動いちゃ駄目ですぜ。

 中村選手にはひたすら柔道に精進し、谷氏の記録を塗り替えるまでの偉業を期待しています。
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四百八拾七  上村松園の美(2010/12/4)
 8日前、京都国立近代美術館で開催されている「上村松園展」を観覧しました。東京展に続くもので、東京では20万人の入場を数えたそうです。さすが、松園人気は凄いものです。

 前日には東京へ飛び、三井記念タワー内の三井記念美術館主催の「丸山応挙展」を訪ねました。三井が所蔵する「雪松図屏風(国宝)」を中心に、応挙の空間構成を堪能しました。残念ながら、前後期に分かれてたため、「雲龍図屏風(重文)」を見ることはできませんでした。


 紅葉の秋に染まる京都で、上村松園を堪能するなんて最高の贅沢でした。こういうビッグ展は、応挙もそうでしたが、前後期に分かれていて、作品が一部入れ替わります。私が観覧したのは後期展だったので、代表作「序の舞」を見ることができませんでした。「序の舞」は前期の目玉で、後期は「焔」です。やはり「序の舞」が見たかったです。


 下図は松園が鈴木松年の画塾に学びながら、15歳のときに展覧会へ出品した作品です。ちなみに、この絵は来日していた英国の皇子に買い上げられて話題になりました。
(C)TV東京


 松年門下でありながら、許されて幸野楳嶺門下ともなりました。楳嶺が没後、楳嶺の高弟である竹内栖鳳に学ぶようになりました。私は栖鳳の教えを受けたことが、松園を高みに押し上げたのではないかと想像しています。

 生涯、人物像−特に女性像を描き続けた松園の画業をご覧ください。私はこれらの作品を生でたっぷり堪能しました。









 後期展の目玉である「焔」です。松園が年下の男に失恋した痛手からスランプになり、精神のバランスを欠いた時期に描かれた異色作です。
 松園さんあなた、失恋っていっても40過ぎでしょう。当時の40過ぎっていったら、孫がいる世代でっせ。



 そして「序の舞」です。残念なことに、結局今回も未見に終わりました。



 凛とした立ち姿です。松園自身、若い頃から能を嗜んでいました。息子の嫁をモデルにしたそうです。まさに清澄の極みです。



 この作品の完成度の高さは尋常ではありません。松園の技法自体が高みを極めていたからこそ為しえたものだと思います。その点に関しての私見ですが、竹内栖鳳の薫陶によって得たものではないかと考えています。



 着物や帯の描出が完璧です。



 髪の表現には、栖鳳の鯉に通じるものがあるように感じます。







 扇子を持つ手指や握り締めた左手から、この女性の精神性が伝わってきませんか。松園の女性像は、日本の美術史でも傑出していると思います。
 来場者の9割以上が女性で、40代から50代が占めていました。子育てが一段落し、自身の人生を振り返ったとき、松園の独立不羈の生き様や毅然とした女性像にシンパシーを感じるのではないでしょうか。
 男である私でさえ、その気持ちが理解できます。松園の作品にはそれだけの力があるのです。
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四百八拾六  長谷川2階級制覇(2010/11/27)
 長谷川選手が足を止めての打ち合いに応じた激戦でした。しかも体格に勝るブルゴス選手に完全に打ち勝っての勝利です。文句なしの新チャンピォン誕生劇でした。
 バンタム級からフェザー級へ、2階級上げての戴冠だけに値打ちがあります。跳び級での2階級制覇は、日本初の快挙です。

 先週書いたとおり、スピード差が顕著でした。ブルゴス選手のパンチは空を切るばかりでした。今回の長谷川選手は積極的に打ち合うスタイルだったので、バックステップは少なく、ダッキングでのディフェンスが主でした。素早い動作での低いダッキングでした。

 下図でもブルゴス選手の右フックが空を切っています。
(C) 日本TV


 一方で、フェザー級でやっていく上での課題も明らかになりました。まず、相手を打ち倒すボクシングは、今後は無理だということです。バンタム級で鮮やかに相手を倒したパンチも、ブルゴス選手にはまったく通じませんでした。

 フェザー級の強打者のパンチ力は、長谷川選手にとって異次元ともいえるものでしょう。ファン・マヌエル・ロペス選手とやったら一蹴されるでしょう。あるいはガンボア選手、マルケス選手なども脅威です。今回もブルゴス選手のアッパーでぐらつかされましたね。



 長谷川選手は、もはや並みのパンチ力であると自覚し、スピードでポイントアウトするスキルを磨き上げるべきです。そのスピードにしても、ガンボアはさらに上回っています。あるいは、クリス・ジョン選手(WBAスーパー王者)と闘ったら、長谷川選手の出鼻や打ち終わりに巧みに軽いパンチを合わせてくるでしょう。

 そこで重要になるのがガードです。長谷川選手はステップワークとボディワークによる防御が主です。従来は攻撃主体のため、パンチを出しやすいこのスタイルで闘ってきました。今回もそうでした。
 でも、今後は通用しないでしょう。しっかりブロックしないと、一発で効かされる羽目になります。今回も、左アッパーや左ストレートを打つ際に、顔面ががら空きでした。
 それに、長谷川選手のブロックは緩めです。ロペスやムタグァ選手の強打であれば、打ち抜いてしまう恐れがあります。バーナード・ホプキンス選手などは、いかなるときでもパンチを食わないように、位置取りや姿勢だけでなく、ブロックの備えが完璧です。

 フェザー級には、ロペス、ガンボア、マルケス、ジョンと4人の強豪がいます。現在のところ、このいずれにも勝てそうにありません。今後の課題はパンチ力を身につけること、ブロックを堅固なものにすることの2点です。
 長谷川選手が課題を克服すれば、きっとスーパーファイトになるでしょう。私はどこまでも応援します。
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四百八拾五  長谷川復権なるか(2010/11/21)
 春の連休に王座から陥落した(四百五拾六   無念!長谷川穂積)長谷川穂積選手が、週末に再挑戦します。WBC世界フェザー級王座決定戦です。相手は1位のファン・カルロス・ブルゴス選手です。

 正規王者のエリオ・ロハス選手が怪我で欠場したことによる暫定王者決定戦なのでしょう。最近は正規王者だの、暫定王者だの、スーパー王者だのが林立して、どうにもすっきりしません。

 ファン・カルロス・ブルゴス選手は、173cmのナチュラル・フェザーです。一方の長谷川選手にしても、13kgもの減量をこなして下の階級でやっていたわけで、体格のハンデはさほどありません。

 両者のスキルを比較すると、これはもう圧倒的に長谷川選手有利です。まず、スピードが違います。ブルゴス選手は長谷川選手のスピードにまったく対応できないと思います。
 ブルゴス側としては、強引に距離を詰め、ガチャガチャの打ち合いに持ち込むしかないでしょう。ストレートの威力はありそうです。ただ、スピード差があるだけに、構え合った距離からのストレートは当らないでしょう。ジャブも遅く威力のないものです。得意のストレートに繋ぐワンツー攻撃も見え見えで、長谷川選手は軽く捌くでしょう。


 フェザー級には、WBO王者のファン・マヌエル・ロペス選手やWBA/IBF王者のユリオルキス・ガンボア選手が君臨しています。さすがの長谷川選手でも、彼らには勝てそうもありません。
 でもね、夢は広がります。いつか、長谷川選手がアメリカのリングでロペスやガンボアと闘う姿を見てみたいものです。負けてもいいじゃないですか。試合内容がよければ評価は下がりません。むしろ、世界のボクシング・ファンに認められ、さらなるビッグマッチが組まれる可能性が生まれます。

 まずは、ブルゴス選手との王座決定戦です。しっかり応援しますから。
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四百八拾四  アジア最高のアスリート(2010/11/14)
 本日、WBCスーパー・ウェルター級タイトルマッチが行われます。マニー・パッキャオvsアントニオ・マルガリートとの対戦です。パッキャオがデラ・ホーヤに続いて、史上2人目の6階級制覇を実現するかに世界中が注目しています。

 パッキャオの驚異的な軌跡については、私もずっとウォッチングしてきました。
 「百八 東洋の誉れ
 「弐百弐拾九 東洋発スーパースター
 「参百八拾壱 パッキャオ、史上初の快挙
 「四百参 史上最高のボクサー決定
 「四百四拾八 パッキャオ・オン・ステージ

 すでに5階級制覇を成し遂げているパッキャオが、ボクシング史上の頂点に辿りつけるかが問われる一戦です。私はパッキャオの勝利を確信しています。パックがコンディションづくりに失敗していない限り、マルガリートをスピードで翻弄し、徐々に強打で鈍らせていくことと想像できます。

 パックマンがモチベーション不足から、うまくコンディションをつくれていないとの報道もあり、若干の危惧もあります。しかし、それくらいのハンデがあって、初めて試合が競ったものになると思われます。マルガリートにもスピードやスタミナ、打たれ強さに衰えが見えますから。

 同じスピードスターであるシェーン・モズリーとの対戦では、モズリーにパンチを掠らせることさえできませんでした。パックマンのスピードはモズリー以上ですからね。

 あと数時間で試合開始となります。今、TVの前に陣取り、すでに録画の態勢を整えたところです。試合後、すかさず結果を報告します。

追加 11/14 14:45
 パッキャオが一方的な攻勢をとって判定勝ちしました。
 途中、マルガリートのボディ・フックが効いて身体を折るシーンもありましたが、その他は強打の乱れ打ちでワンサイド・ゲームでした。

 しかも、試合当日の体重差は7kgもありました。身長差11cmも相当なものですけど、この体重差は普通じゃないです。よくもやれるもんです。

 これでパッキャオは6階級制覇を為して、文字どおりボクシング界の頂点を極めました。もう、現役でありながら、生けるレジェンドです。今後二度と見ることのできないであろう奇跡を、リアルタイムで確認できて幸せです。
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四百八拾参  尖閣ビデオ流出(2010/11/6)
 今回のビデオ流出は、間違いなく不祥事です。流出元が検察であれば、政権に対する意趣返しでしょうね。船長釈放という高度な政治判断、それも外交判断を地検ができるはずがありません。

 あるいは海保であれば、これはもう政権に対する警鐘でしょう。東シナ海における海保の警備活動は、文字どおり身体を張っての警察活動です。菅政権はその使命に泥を塗った格好ですから、不満や危機感が渦巻いていることでしょう。個人的には、海保関係者が流したものと推測します。

 いずれにしても、データを持ち出した人間は懲戒免職を覚悟のうえでの行動でしょう。やったことは公務員規範を大きく逸脱するものです。

 漁船返還と船長釈放は、法を捻じ枉げる判断でした。巡視船の指示に従わずに逃走し、あげくに衝突させるなんてのは決して許されるものではありません。政府は本来立件すべき事案を握りつぶしたのです。うやむやにするため、ビデオ公開を渋ったのも当然でしょう。
 まるで日本政府が“愛国無罪”を保証するような話です。中国の漁船にとって、菅政権は心強い味方ですね。


 今後の方策としては、政府は中国側と裏で話をつけなきゃならんでしょう。正面対決は避けるべきです。日本側に理のある事件ですけど、胡錦濤政権を追い込むのは得策ではありません。

 胡錦濤は国家主席であると同時に、共産党総書記、中央軍事委員会主席です。問題は中央軍事委員会の主席ポストです。この地位は軍を掌握するための重要なポストです。先任の江沢民は、他のポストを胡錦濤に譲った後も、2年間にわたって居座り続けました。そのため、胡錦濤が目指した“和諧社会(調和的発展)”を実現するための融和策が上手く軌道に乗らなかったのです。

 今も、江沢民は軍に強い影響力を持っており、軍と結託して胡錦濤政権に揺さぶりをかけています。反日デモなんか、どうみてもそのための仕掛けです。
 江沢民一派の復権は、日本にとって大きなマイナスです。まして、軍は江沢民に協力しただけ、その貸し分を取り返そうとするでしょう。しかも、海洋権益の確保は、中国の国益とも合致するだけに、尖閣での強硬路線を先鋭化させかねません。

 そのような事態にならないよう、日本側は胡錦濤政権の国内向け面子を立てるよう配慮すべきです。つまり、互いに納得づくで猿芝居を演じるのです。
 例えば、中国は監視船を多数遊弋させ、漁船の侵犯を取り締まる一方、国内向けには「日本の海保と引かずに対峙している」とか報じるのです。

 日本としては、今後いかなる問題が起こっても対処できるようチャイナリスクの分散を心がけるべきです。かつての通州事件などの悲劇が起こらないよう、政府だけでなく企業人も危機管理に備えましょう。
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四百八拾弐  Vista 初のレジストリ掃除(2010/10/31)
 WindowsやMacを使っていると、ごみファイルがひたすら蓄積してきます。Windows95系OSには、フリーの強力なレジストリー・クリーナーがありました。WindowsNT系用クリーナーとしては、エーアイソフトの「Disk Tools」を活用してきました。
 気に入っていた「Disk Tools」も、Vistaには対応しませんでした。Vistaからファイルアクセスの権限が強化されたため、うまく機能させることができないのでしょう。

 4年前から使っているVistaとあって、不要なレジストリがてんこ盛りでしょう。なんとかクリーニングしたくて、フリーのソフトをいくつか試してみました。MSからもリリースされています。

 これらの大半は、チェックだけは無料でできるものの、いざ削除するとなると登録(有料)を求めてきます。無料ソフトを探し続け、本日英語版ながら「Free Window Registry Repair」を見つけました。

 インストールのうえ、実行してみると快調でした。あまり素性の知れないソフトなので、念を入れて復元ポイントを作成しながら作業を進めました。

 4年間のごみの堆積は凄まじかったです。削除した不要レジストリは数百個もありました。いえ、本当はもっとありましょうが、安全面から絞っていると思われます。おかげで再起動しても、なんの問題も起こっていません。しかも、起動が明らかに速くなりました。
 私のVistaは不要なサービスを停止したり、不要なスタートアップを止めているので、そもそも起動は速めです。それがスマートというか、違いが実感できるほどきびきびと立ち上がるようになりました。単に削除するだけでなく、最適化も行っているとあって効果覿面です。

 なお、気づかない問題が生じている可能性もあるので、念のためMSの「Fix it」を実行しておきました。チェックをかけたのは、アイコンやファイル、フォルダ構造です。アイコンのサイズをカスタマイズしていたのが、元のサイズに復帰したことから、チェックと修正は完全に為されたと判断していいでしょう。

 マイクロソフトも有意義なシステムを構築してくれたものです。みなさんも「Fix it」を活用してください。映像や音声関係、DVDのドライバ修復などにも有効ですよ。

 ところで、レジストリ掃除は、あくまで自己責任で行ってください。紹介したソフトもフリーですから、なんの保障もありません。
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四百八拾壱  西岡強し(2010/10/24)
 本日、両国国技館でWBC世界S.バンタム級タイトルマッチが行われました。王者の西岡利晃に世界1位のレンドール・ムンローが挑んだ一戦です。

 結果は大差の判定勝ちでした。西岡選手はハードパンチャーであると同時にスピードスターでもあります。戴冠以来、先の試合まで割合に楽な試合ばかりでした。いえ、文句なしの強敵ばかりでした。それでも、西岡選手と挑戦者との間には大きな力の差が認められました。

 今回のムンロー選手のボクシング技術はそう大したものではありません。ただ、圧倒的にタフでした。打たれ強いうえ、回復が早く、スタミナも満点でした。
 西岡選手の左ストレート、右フックがヒットしても、まったく効いたそぶりも見せませんでした。ときおり放つ強烈なボディブローにも平気な顔でした。それが5Rから効き始めまして、完全な西岡ペースとなりました。
下図はムンローの左脇腹を抉る右フックです。


 ムンローのタフネスを打ち破るため、西岡選手はひたすら丁寧なアウトボクシングを展開しました。ムンローの前進圧力を左右へのステップワークでいなしながら、間隙を衝いて強打を叩き込みました。
 なんか、どこかで見たことのあるボクシングですね。あのマニー・パッキャオそっくりです。まあ、スピードやパンチ力が若干下回りますけどね。

 このような強敵に怯みもせず、自分を失わずにボクシング・プランを淡々とこなす姿から、西岡選手の過去の蓄積や苦労が見え隠れしていました。


 西岡選手は24歳から28歳の間にウィラポン・ナコンルアンプロモーションに4度挑戦して、2度の引き分けと2度の判定負けを喫しています。
 このウィラポンとの対戦のなかで、西岡選手は徹底的にボクシングスキルを高めていきました。サウスポーからの踏み込んでの左ストレート。半身の姿勢から踏み込むことによって、“モンスターレフト”の異名を取るようになりました。また、身体を正面に向けた姿勢からの右フックもまた強烈です。

 対ウィラポンに向けて磨き上げたスキルによって、今や西岡選手を脅かすボクサーはいなくなりました。私は西岡利晃こそが、S.バンタム級最強であると確信しています。
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