I'm home!
arc3後|2008.02.09
生あくびを噛みしめ、浮かんだ涙で瞳を潤す。
久しぶりのパルトス。その賑やかな街の一角にある茶色と緑の落ち着いたデザインのアパート。
ここはビビガがオーナーを務めるアパートだ。
再会した彼が、またアパート経営を始めると聞いたときには驚いた。
世界最先端技術を担っていたロマリアが崩壊し、それによって技術者不足が問題となっている今の世界で、そんなことをしなくても超一流のメカニックである彼が、飯に困ることは無いだろうと思ったからだ。
素直にそう口にすると、彼は照れたように鼻の上を指でこすった。
『お前等ハンターも、世界になくてはならない存在だろ?休息の場所を、守ってやりたいと思ってな』
別にそんなことを言われなくても借りるつもりはあったのだが、言われてしまっては尚のこと。
しかも、フリーで技術者もするというのだから、資金援助もちょっとは兼ねて。
以上のことからエルクは現住所を、ビビガのアパートに置いている。
まだ築1年。入居してからも1年。
でも、帰ってきたと、この少々重量のある扉を開ければ、そう思う。
「おーい、ビビ…ガ?」
てっきりカウンターで新聞でも読んでいるのかと思っていたビビガの姿が見えない。
昨日、お昼頃到着すると電話した。
そうやって事前に連絡を入れておくと、必ずポストに入りきらなかった宅配物を持って、苦笑しながら出迎えてくれるから。
正確に約束したわけでもないのに、拍子抜けしてしまっている自分がいて。それに苦笑して、エルクはポストを開けた。
が、そこでもまた、いつもとは違うことがひとつ。
「…え?からっぽ…?」
しぱしぱと瞬きをふたつ。
それから、横に張り付いていないだろうか、天井はどうだろうか、ぐるりとよく見渡してみる。しかし、一通も見当たらない。
3ヶ月も留守をしていたのにもかかわらず、からっぽだなんておかしな話だ。
首を傾げながらも、もしかしたらビビガが回収しておいてくれているのかもしれないと考える。だがそれならば、彼が居ないことは余計に不自然になってしまうのだが、エルクはあまり深く考えることなくポストを閉めた。
そして、2階へと上がる。
階段を上ってすぐ。表札はついていないが、自分の部屋の前に立つ。
本来インターフォンがある位置に、同じような黒色ではあるがどう見ても違う機械がとりつけられている。
これは、職業柄(火の中、水の中、森の中、洞窟の中、下水道の中エトセトラを駆け回る機会がとてつもなく多い)鍵をなくしがちな自分のために、ビビガが取り付けてくれたエルク専用のロックシステムである。
指紋を認証させながら、ある一定温度にまで上げなければ解錠されないそれ。
手を当てて、意識する。ピッと認識の音が鳴って、エルクはドアを引いた。
が、ガキンと固い手応え。
「………………は?」
え、ちょ、どゆこと?エルクは3つ目の異変に、とうとう動揺した。
(落ち着け自分!たしかに今音なったよな……ん?ってことは、まさかオレ今)
閉めたわけでしょうか。
思わず敬語になったのは、開けっ放しという不用心な自分がいたかもしれない嫌悪だ。だらだらと嫌な汗が背中をつたっていく。
久しぶりのパルトス。その賑やかな街の一角にある茶色と緑の落ち着いたデザインのアパート。
ここはビビガがオーナーを務めるアパートだ。
再会した彼が、またアパート経営を始めると聞いたときには驚いた。
世界最先端技術を担っていたロマリアが崩壊し、それによって技術者不足が問題となっている今の世界で、そんなことをしなくても超一流のメカニックである彼が、飯に困ることは無いだろうと思ったからだ。
素直にそう口にすると、彼は照れたように鼻の上を指でこすった。
『お前等ハンターも、世界になくてはならない存在だろ?休息の場所を、守ってやりたいと思ってな』
別にそんなことを言われなくても借りるつもりはあったのだが、言われてしまっては尚のこと。
しかも、フリーで技術者もするというのだから、資金援助もちょっとは兼ねて。
以上のことからエルクは現住所を、ビビガのアパートに置いている。
まだ築1年。入居してからも1年。
でも、帰ってきたと、この少々重量のある扉を開ければ、そう思う。
「おーい、ビビ…ガ?」
てっきりカウンターで新聞でも読んでいるのかと思っていたビビガの姿が見えない。
昨日、お昼頃到着すると電話した。
そうやって事前に連絡を入れておくと、必ずポストに入りきらなかった宅配物を持って、苦笑しながら出迎えてくれるから。
正確に約束したわけでもないのに、拍子抜けしてしまっている自分がいて。それに苦笑して、エルクはポストを開けた。
が、そこでもまた、いつもとは違うことがひとつ。
「…え?からっぽ…?」
しぱしぱと瞬きをふたつ。
それから、横に張り付いていないだろうか、天井はどうだろうか、ぐるりとよく見渡してみる。しかし、一通も見当たらない。
3ヶ月も留守をしていたのにもかかわらず、からっぽだなんておかしな話だ。
首を傾げながらも、もしかしたらビビガが回収しておいてくれているのかもしれないと考える。だがそれならば、彼が居ないことは余計に不自然になってしまうのだが、エルクはあまり深く考えることなくポストを閉めた。
そして、2階へと上がる。
階段を上ってすぐ。表札はついていないが、自分の部屋の前に立つ。
本来インターフォンがある位置に、同じような黒色ではあるがどう見ても違う機械がとりつけられている。
これは、職業柄(火の中、水の中、森の中、洞窟の中、下水道の中エトセトラを駆け回る機会がとてつもなく多い)鍵をなくしがちな自分のために、ビビガが取り付けてくれたエルク専用のロックシステムである。
指紋を認証させながら、ある一定温度にまで上げなければ解錠されないそれ。
手を当てて、意識する。ピッと認識の音が鳴って、エルクはドアを引いた。
が、ガキンと固い手応え。
「………………は?」
え、ちょ、どゆこと?エルクは3つ目の異変に、とうとう動揺した。
(落ち着け自分!たしかに今音なったよな……ん?ってことは、まさかオレ今)
閉めたわけでしょうか。
思わず敬語になったのは、開けっ放しという不用心な自分がいたかもしれない嫌悪だ。だらだらと嫌な汗が背中をつたっていく。